ソノラマ文庫とは、今は亡き朝日ソノラマが2007年まで刊行していたライトノベルレーベル。
現在のライトノベルの源流・先駆けとなったレーベルである。「朝日ソノラマ文庫」は誤表記。
1975年11月創刊。創刊タイトルは福島正実『地底怪生物マントラ』、都筑道夫『蜃気楼博士』、山崎忠昭『悪魔がねらっている』、山村正夫『怪人くらやみ殿下』、光瀬龍『暁はただ銀色』『北北東を警戒せよ』、辻真先『死に神はあした来る』、加納一朗『透明少年』『夕焼けの少年』、そして石津嵐『宇宙戦艦ヤマト』(ノベライズ)の全10冊。
最初期は朝日ソノラマがそれ以前に出していたジュヴナイル叢書「サン・ヤング・シリーズ」「少年少女傑作小説」などからの再刊が多かったが、その中に創刊タイトルとして、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』のノベライズが入っていたことが、ライトノベル黎明期の歴史を語る上では重要なトピックとされる。
そもそも「アニメのノベライズ」というものが、この『宇宙戦艦ヤマト』が史上初のものであり(「アニメ化された漫画のノベライズ」はそれ以前にもあったが)、以降もアニメのノベライズはソノラマ文庫の主力のひとつとなり、これが後のライトノベルへと直接的に繋がっていくことになる。
もちろんソノラマ文庫の創刊当時には「ライトノベル」という言葉はなかったが、現在で言うところのライトノベルにあたる「漫画・アニメ的なイラストを表紙にした中高生向け小説の文庫レーベル」の先駆けがソノラマ文庫であり[1]、それを象徴するのがアニメのノベライズである『宇宙戦艦ヤマト』というわけだ。
1977年には高千穂遙『クラッシャージョウ』がスタート。1979年からは富野由悠季(当時は「富野喜幸」名義)による『機動戦士ガンダム』の小説版が登場しベストセラーとなる。また、アニメの脚本家だった辻真先が本格的に小説に進出することになったのもこのレーベルがきっかけである。
かくして初期はSF・ミステリーの書き下ろし新作と、商業的な主力だったアニメノベライズ、そしてベテランの有名作家が書いた少年向け小説(いわゆる「ジュヴナイル」)の再刊が混在していたソノラマ文庫だが、本格的に流れが変わるのが、夢枕獏『キマイラ・吼〈1〉 幻獣少年キマイラ』と菊地秀行『魔界都市〈新宿〉』がともに書き下ろしで出た1982年。この2作がともに大ヒット、特に菊地秀行はソノラマの稼ぎ頭となり、以降は文庫書き下ろしの新作が中心となる。1984年には笹本祐一『妖精作戦』が登場し、後世の作家に強烈な影響を与えた。1985年には小説誌「獅子王」を創刊、その後「グリフォン」にリニューアルして1994年まで続いた。
かくして80年代は競合レーベルがほとんど無かったこともあり、「SF」「推理」などジャンル表記がある緑色の背表紙を目印に、この分野の覇権レーベルだったソノラマ文庫だったが、80年代末から角川スニーカー文庫、富士見ファンタジア文庫といった競合レーベルが続々と台頭。『ロードス島戦記』や『スレイヤーズ!』が巻き起こした空前のファンタジーブームに乗ることができず、徐々に時代に取り残されていくことになってしまった。一説には同時期、ソノラマ文庫の目印だった緑色の背表紙を「色褪せしやすいし、印刷しにくい」という理由で白に変えたところ、書店で目立たなくなって売り上げが落ちたとかなんとか。
それでも90年代は前述の夢枕・菊地に加えて、千葉暁『聖刻1092』や庄司卓『倒凶十将伝』などがレーベルを支えていたものの、ジリ貧の状況は否めなかった。1995年には遅ればせながら自前の新人賞「ソノラマ大賞」を創設するも、第1回で最終候補にいた上遠野浩平を取りこぼしてしまうなど、目立ったヒット作は出ず、僅か4回で終了してしまう。1998年には派生レーベルとして、ソノラマノベルス刊行作品の文庫化を中心にした一般向けレーベルに近い「ソノラマ文庫NEXT」を創刊したが、これも方向性が不明瞭で20冊ちょっとでポシャってしまった。
その後は老舗レーベルとして、SFを中心に地味に刊行を続けていたが、2005年限りでほぼ手じまい状態となる。2007年、朝日ソノラマの廃業・解散とともに刊行を終了。菊地秀行『吸血鬼ハンターD』や夢枕獏『キマイラ』のような刊行継続中の人気作など一部の作品は、朝日新聞出版の朝日ノベルズ、ソノラマノベルス、朝日文庫ソノラマコレクションなどに引き継がれた。
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