
プリンセスナイン 如月女子高野球部とは、1998年にNHKBS2で放送されたアニメーションである。
制作はフェニックス・エンタテインメント。
概要
名門お嬢様学校「如月女子高校」の理事長が野球部設立を計画。天性の野球の才能を買われ、特待生と入学した早川涼であったが、母とおでん屋を切り盛りしていた涼にとって学園生活は慣れないことばかり。しかも彼女は大酒飲みの監督と部員集めから始めなければならないのだった。
一見女性だけの野球部というキャラに媚びた内容と見られがちだが、内容自体は「恋愛・友情・熱血」をテーマとしたスポ根とラブコメを重視したアニメである。ライバル、御曹司、熱い投球名などスポ根世代からすると懐かしくもあり、知らない人からすると新鮮に映る作品であろう。
監督は望月智充で、前年まで監督を務めた『勇者指令ダグオン』の声優陣が多く起用されている事も特徴(長沢美樹、長沢直美、子安武人など)。
後にDVDBOX等も発売されているが、現在はニコニコチャンネルの定額制サービス「dアニメストア ニコニコ支店」内で配信されており、加入していれば全話無期限で見放題となっている。
如月女子高校野球部
如月女子高校野球部、通称"如月ナイン"は、学園の理事長・氷室桂子によって創設された女子硬式野球部。既に発足していた兄弟校・如月高校の男子野球部とも対等に渡り合い、最終的に甲子園出場を目指すことを目的とした本格的な女子野球部として発足した。
中学時代に日本各地でその名を知らしめていた優秀な軟式野球部員やスポーツ部員の女子生徒を多数スカウトしたチームだったが、それでも部員集めは難航し、野球未経験者を含め部員数は9人と、チームを満たすギリギリの人数しか集まらなかった。
それでも個々の能力は総じて高く、初陣で中学生の男子チームとの練習試合に勝利したのを皮切りに、甲子園を目指す男子野球部とも対等に渡り合うほどのチームに成長した。
発足したばかりのチームのため、全員が1年生で構成されている。
その他の部内関係者
登場人物
- 早川涼(はやかわ りょう) CV:長沢美樹
- 本作の主人公。おでん屋を営む母と二人暮らしをしている。如月高校の夏目誠四郎とは幼馴染の間柄。
- 幼い頃亡くした父とのキャッチボールが縁で野球に興味を持ち、中学時代は地元の大人の草野球チームに助っ人として登板しながら話題を集めていたところを、如月女子高校の氷室理事長にスカウトされる。
- 明るい性格で、如月ナインでは最初期のメンバーとしてヒカル、ユキと共に召集を受け、キャプテンを任される。唯一の投手であるが、ヒットを全く許さない完璧なピッチングで三振の山を築き一人でゲームを作る完投型投手。コントロールも抜群で、四死球を滅多に出すことがない。
特に父譲りの魔球"イナズマボール"は男子野球部顔負けであり、その為初期の如月ナインは野球素人が出場していても守りに関しては盤石で、反面「いかに点を取るか」が課題となっていた。
当初は真央の技術を考慮して変化球は一切投げていなかった(イナズマボールも直球の一種である)が、15話にて真央が変化球を捕球できるようになってからは、カーブを投げていると思しきシーンも登場する。
兄弟校の野球部員・高杉宏樹とは草野球時代に知り合って以降惹かれ合うが、故に同時にいずみからはライバルとして認知されている。宏樹からは"ガンモちゃん"と呼ばれている。
- 氷室いずみ(ひむろ いずみ) CV:金月真美
- 理事長・氷室桂子の娘。また高杉宏樹の幼馴染で、彼に惚れており恋人のように慕う。優雅なお嬢様。
縦ロール、プライドが高い、努力家、天才テニスプレーヤー、という『エースをねらえ!』の竜崎麗香(お蝶夫人)の特徴を模した典型的なキャラクターであるが、本作では母や宏樹が自分よりも涼に目を向けていると感じ嫉妬心・対抗心を燃やした結果、髪型を変えテニスも捨て野球に打ち込むことになった。
如月ナインでは野球未経験ながらスポーツセンスに長けた持ち前の技術の高さから4番打者に抜擢される。彼女の持ち味は"漫画野球"と比喩される異次元プレーであり、獣のように跳躍して守備を掻い潜り塁に出たり、ビーンボールを読んで"テニス打法"で長打にするなどして勝利に貢献。後述の性格面もあれど、味方であれば非常に心強い存在であると言える。
完璧主義者のしっかり者だが、恋愛によって感情を左右されがちであり、また団体種目に対しての意識が薄くスタンドプレーを度々指摘されるなど、小煩い嫌われ役としての立ち位置になることも多い。しかし、他のナインがスランプに陥っている際には的を得た発言で一喝したり、冷たい言動をしながらもキーマンとして立ち直らせることに貢献することも多い(ツンデレ)。
- 森村聖良(もりむら せいら) CV:氷上恭子
- 中学時代までは名の知れた陸上選手だったが、両親の別居が元で不良になっていた。
足の速さを買われ木戸監督にスカウトされ1番打者として出場。野球未経験ながら、俊足で内野安打を量産する。
一人称は「オレ」。当初は成り行きで野球をやることになり違和感を持っていた。学園でもイヤリングをつけ制服ではなくジャケットを着込むガサツな不良生徒…なのだが、如月ナインの中ではいずみが嫌われ役を常に買っているためか、どちらかと言えば協調性を重視するツッコミ役だったり、常識的な言動の方が目立っている。
ナインに溶け込む内に明るい言動が増えていき、合宿では恋話にも加わるなど、不良っぽさは次第に薄れ姉御肌の頼りになる人物として描かれていった。性格が正反対の陽湖とはしばしば漫才のような言い争いをしている。
- 吉本ヒカル(よしもと ひかる) CV:長沢直美
- 大阪府出身の元軟式野球部。ツインテールが特徴的。
大阪弁を話す陽気な人物で、ツッコミは鋭い。苗字は吉本興業から取ったものと思われる。
中学時代は軟式野球部の全国大会で最優秀選手に選ばれた実績も持つが、如月ナインでは2番打者として出場。外野からの正確な中継プレーで走者を刺したり、上手いテキサスヒットで打線を繋いでチャンスを広げる、隠し玉でランナーをアウトにする、マウンドで焦る涼に常に声をかけるなどしてチームに貢献。また守備練習時には二遊間を守ったり、真央が入部するまでは捕手として涼の球を受ける(後に頓挫)など、ユーティリティプレイヤーっぽさも覗かせる。
如月ナインで最初に召集された野球部特待生の一人で、涼を事ある毎にバックアップしていた。涼の幼馴染の夏目誠四郎に惹かれている。父がガサツな人間らしく、恋愛感や木戸監督など男性に対しては独自の価値観を持っている。
- 堀田小春(ほった こはる) CV:矢島晶子
- 高知県出身。土佐弁を喋る。漁師の父がおり"お父やん"と呼び慕っている。
中学時代はソフトボール部を経て、男子の硬式野球部に所属し"土佐の秘密兵器"という異名を持っていた。波をも砕くと言われる必殺打法"荒波スイング"を武器に、ある試合で逆転打を放ったが、女子だという事がバレて退部させられ、その後は学校に通いながら父の漁師を手伝っていた。
一度は如月女子高校のスカウトを断り、高校に進学せず家業を継ごうとしていたが、涼の対決まがいの説得により野球の情熱を取り戻し、父にも「漁師として未熟であり、野球で修業をして来い」と言われたことで如月ナインに入部する。
如月ナインでもその打棒は抜群で中軸を担い、"荒波スイング"で男子野球部相手にホームランを放つことも。相手チームをして「あれが女子のバッティングかよ…」と度々恐れられていた。
性格は兼ね常識的で心優しい性格だが、物語終盤ではとある事件をきっかけに本来の力を出せなくなってしまう。
- なお余談だが、1999年発売のCAPCOMの対戦格闘ゲーム「ストリートファイターIII 3rd STRIKE」のまことは、外見や設定、発表時期等から小春が元ネタであると言われている。
- 東ユキ(あずま ゆき) CV:川澄綾子
- 野球部特待生として入部した初期の如月ナインの一人。
物静かで時折優しげな表情を見せるが、他の部員とは部活動以外ではほとんど関わろうとせず、口数は非常に少ない。"ユーカラ星人のフィーフィーちゃん"というキーホルダーマスコットを自分の唯一の理解者と称し、腰に常に身に着け話しかけている。
物語中盤より、実は中学時代は関東地区の女子軟式野球大会で最優秀選手に輝いたこともある名外野手で、キャプテンも務めていたが、大会後にチームメイトからユニフォームを切り刻まれた挙句無理矢理部を追い出されるなどのイジメを受け不登校になった挙句、それを理解しない両親からも叱責されるなどして自殺未遂を図るなど、過酷な日々を送ってきた経緯が明らかとなる。
後にナインと打ち解け他の部員と交流することも多くなった。特に恋愛に悩む涼に対しては、その動揺を見透かしたように気遣う場面も見られた。
如月ナインでは主に5番打者として活躍。ナインと打ち解けるまでは気のない地味なプレーに終始していたが、確実な捕球と助走なしにも関わらず凄まじい強肩を見せるなど、ポテンシャルの高さを見せていた。ナインと打ち解けた後は、打席で不敵な笑みを見せるなど別人のようなプレーをし始め、いずみの後を打つ打者としてランナーのいる場面で確実にスクイズを決める、フェンスをよじ登ってフライキャッチを試みるなどしていた。
- 三田加奈子(みた かなこ) CV:笠原留美
- 如月女子高校校長の一人娘。丸メガネがトレードマーク。学業成績がよく、温厚な性格。
中学時代は軟式野球部に所属し、全国大会でも名ショートと称される守備で名の知れた存在であり、ヒカルにも知られていた。
しかし如月女子高校入学後は、将来医学の道を志すという名目で父から野球を禁じられていた。それでも野球を諦めきれず発足したばかりの如月ナインの練習を見守っていたが、そのことで部室へ連れ込まれ、変装した上で出場すればバレないだろうと口説かれ入部に至る。変装時はかつらを被り小中多美(こなか たみ)の偽名を使う。
父は如月ナイン発足に懐疑的な派閥の一人でもある。とある試合中に変装するのをやめたこともあって、一度は父に退部させられそうになるが、最終的に父の説得に成功して如月ナインの活動も軌道に乗り、父も応援に駆けつけることになった。
如月ナインでも持ち前の守備で貢献。素人の寧々が守備についた際にも的確に指示を出し正確な送球でアウトをもぎ取るなど、内野の要としての貢献度は高かった。
- 渡嘉敷陽湖(とかしき ようこ) CV:飯塚雅弓
- アイドル志望で、金髪小麦肌のコギャル風の女生徒。
オーディションに落ち失意の所を、『女子野球部発足』という見出しで自身の学園が新聞に取り上げられたことに興味を持ち、入部すれば目立つことができ、芸能界への近道になると考えた彼女は、如月ナインの入部テストを受ける。結果、野球未経験どころかスポーツ経験さえ感じさせないド素人であることが露呈したが、木戸監督はその内に眠る野心と、夢を達成するためなら何でもするという根気強さをも見通したのか、入部を許可するのだった。
入部当初は、練習嫌いなお転婆な性格、どんな所でもメイクに執着する所、試合中も怪我をしたくないという理由でフライが全く取れないなど、その存在は試合では足かせでしかなく、特に聖良との相性は最悪だった。
しかし元々プライドが強く自意識過剰なことや、運動神経も悪くないことから、試合や強化合宿を経てからはフライを取れるようになるどころか強肩ぶりも発揮し周囲を驚かせた。如月ナインでは下位打線を担うなどバッティングも期待されていなかったが、最終回では2安打2四球と全打席で出塁するなど、本作で最も技術的に成長した部員と言って良いのではないだろうか。
物語中盤には芸能事務所にスカウトされ「もう野球部にいる必要もない」と浮かれていたが、結局涼や如月ナインのことが気になってしまい、野球を続ける道を選ぶ。
容姿がいいという設定だが、トラブルメーカーやコメディリリーフとしての立ち回りが多い。
- 大道寺真央(だいどうじ まお) CV:進藤こころ
- 如月ナインの扇の要。太めで大柄だが気が弱い。涼の球を受けられる捕手を探していた木戸監督に見出される。
体格の良さから中学時代は柔道部に所属し名の知れた存在だった。しかしその反面精神面に課題があり、団体戦では無類の強さを発揮するも個人戦では幾度となく敗退していた経緯を持つが、その為に木戸監督からは「野球でチームプレーを学べば活躍できる」と考えていた。
如月女子高校でも当初は柔道部に所属していたが、気の弱い性格で周囲からからかわれており、入部テストで涼の球を受けた際自分の居場所を感じたことで転部する。
しかし野球に関しては素人であり、はじめは守備からの送球や涼の球を何度も取りこぼしていた。その為業を煮やしたいずみに特訓を課せられ、100球涼の球を受け続けることで克服し、当初は捕球できなかった変化球も経験を積んで克服する。一方で体格が良く、ホームのクロスプレーで男子高校生を跳ね飛ばし"バケモン"と評されたことも。
大学に所属する金メダリストの人物に惚れているらしい。
- 毛利寧々(もうり ねね) CV:川田妙子
- 絵に描いたような"世間離れしたお嬢様"で、学園の役員をしている父から如月ナインの発足を知り、元々野球部のマネージャーに憧れていた彼女は、呼ばれてもないのに部室に突然現れた。
いずみとは違ったタイプのお嬢様であり、いきなり洗濯の仕方を知らないという下りで登場し、高校生とは思えないほど子供っぽい能天気な性格だったりとやや頼りないが、元気と明るさと行動力だけは人一倍強く、毎度のごとく高級なデザートを用意したり、専用の高級車で部員と移動したり、バイオリンを弾いてユキを励まそうとするなど、精力的にその活動を鼓舞していた。
一応、補欠選手として登録されており、いずみが入部するまでは4番サード(の置物)として出場したこともある。しかし陽湖同様素人な上、無理なスイングをしすぎて試合中手が腫れ上がりリタイアしてしまった。
- 木戸晋作(きど しんさく) CV:石井康嗣
- 如月ナインの監督。かつては高校球児で捕手であり、涼の父・早川英彦とバッテリーを組んで甲子園の春夏連覇を成し遂げた経験を持ち、かつて英彦と付き合っていた氷室理事長との縁で、如月ナインの監督に就任する。
性格はルーズで飲んだくれオヤジであり、飲み過ぎて寝坊し練習時間をすっぽかすなど(表向きには)あまり人望があるとは言えない。しかし日本各地で有望な人材を集めたり、部員の心理状況を把握し言葉少なながら的確にアドバイスを送るなど、優秀な監督としての側面を持つ。
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