ホセ・オルテガ・イ・ガセットとは (ホセオルテガイガセットとは) [単語記事]

ホセ・オルテガ・イ・ガセット（José Ortega y Ga sset、1883-1955）は、スペイン出身の哲学者・文筆家。

著作に「大衆の反逆」「ドン・キホーテをめぐる省察」「現代の課題」など多数。

概要

スペイン、マドリード出身。高名なジャーナリストの家系に生まれ、後には「輪転機の上で生まれた」と自称したこともある。

マドリード大学で哲学博士号を取得後、ドイツに留学。帰国後は高等師範学校教員を経てマドリード大学形而上学教授となる。

内戦勃発に伴ってスペインを離れるが、第二次大戦終結後の1946年に帰国。1950年ごろからはドイツを中心に講演活動を行う。

1914年の「ドン・キホーテをめぐる省察」にはじまり、多数の著作・講演・ジャーナリズムを通した啓蒙活動などを行った。その活動分野は哲学から美術・文学批評、社会教育、社会思想・政治など幅広い。

現在でも色あせることのない現代文明批評の先駆者として、20世紀思想の第一人者の一人ともいえよう。

オルテガには自らの思想を体系的な著作としてよりも試論（エッセイ）、批評、ジャーナリズムへの寄稿などを通して示唆する姿勢があった。現在の日本でもそれらの著作が多く翻訳されている。主なものに軽く触れる。

「ドン・キホーテをめぐる省察」: セルバンテスのドン・キホーテを取り上げ、スペインにおけるゲルマン的なものと地中海的なるものの対比、「小説」と「叙事詩」の対比などを通して、「我とは我と我の環境である」という形而上学的命題を提示している。
「現代の課題」: 「生の理性」という独自の哲学的命題を提示し、「純粋理性」をその軸とする既存の伝統哲学を克服することが必要であると論じる。オルテガの哲学の主軸をなす「生の理性」が初めて提示された論文である。
「大衆の反逆」: 現代を「大衆人（マスマン）の時代」と規定し、その内在する危機について論じた著作。1930年の刊行以来、現代文明の本質を明確に規定した著作のひとつとして現在でも評価されている。オルテガは大衆とそれを構成する大衆人を（及びそれと対比される「高貴な生」）を社会階級としての労働者階級（プロレタリアート）ではなくより精神的な部分において区分している。