2013年度より就役を開始したロシアの第4世代戦略原子力潜水艦。
これまでの慣例にあるNATOコードネームは付けられておらず、本級のニックネームとして付けられたものが西側各国で使用されている。
前世代のタイフーン級(プロジェクト941)ではなくデルタ級(プロジェクト667B)の設計を母体としている。
武装はR-30【ブラヴァー】(西側呼称SS-N-30)を搭載する他、533㎜魚雷と対潜ミサイルを搭載する。
そもそもの設計開始は1982年に開始されたが、ソ連崩壊により一旦設計作業はストップしてしまう。
1番艦は1995年に艦艇リストに入り【サンクト・ペテルブルグ】と命名され、1996年5月1日に名称を【ユーリイ・ドルゴルーキイ】に変更し、同年11月6日に起工した。 この当時は2007年に洋上テストを開始し2008年の就役を目指していた。
ちなみに進水したのは2007年4月15日。進水まで10年も掛かった理由としては、ソ連の崩壊による技術者・熟練工の流出、ウクライナが供給していた特殊鋼や設備を独立と同時にブッチ、そこに経済的混乱による予算不足、更には1番艦の設計変更(後述)まであり、至れり尽くせりの大炎上ぶりを発揮したためである。
ちなみにそれでも進水させたのはこの艦がロシアの次世代主力艦であるためである。
こうして本艦は2008年に海上公試を行い、2009年にロシア海軍に引き渡せることとなった。めでたしめでたし。
とは為らなかったのである。それもこれも全部あいつのせいなんや!!
本級の主武装にしてメイントラブル源であるのが搭載するSLBMである。
そもそもは、本級と一緒になって開発されていたD-19/R-39【バルク(Bark)】(SS-NX-28)が予算不足もあり絶不調で1994年、97年、98年に実施した発射テストにすべて失敗してしまう。
そんな折、モスクワ熱技術研究所が「ウチのミサイル使いませんか?」と声をかけてきた。同研究所はもともと陸上の戦略ミサイルを開発しており、それを転用すれば開発費用も期間もウハウハですぜ!という塩梅である。
転用されるミサイルは、RT-2PM2【トーポリM】大陸間弾道ミサイル(西側呼称SS-27、NATOコード【シックルB】)。移動発射機により用いられるロシアの主力ICBMである。
これを潜水艦発射用に改修したものがR-30【ブラヴァー】である。なお改修に際し、全長を切り詰めており最大射程は約8,000~10,000kmとなっている。なおトーポリMのそれは10,000~11,000kmである。
この決定によりバルク搭載を前提としていた本級は設計変更を行っている。
こうしてトーポリMからブラヴァーへの改修にあたり、海上発射プラットフォームとしてタイフーン級 「ドミトリー・ドンスコイ」が改修されている。
2004年に飛行を伴わない発射テストが成功したことを受けて「ドミトリー・ドンスコイ」での発射テストが繰り返された。
発射の工程表を以下に示す。
2006年に3回連続で失敗した際にはさすがにロシア議会でも問題視されたが、そもそもソ連時代からミサイルの開発には3~4年費やしており、そもそも開発スタートが遅く、かつ予算の少ない同海軍では満足にテストを進行させることが難しかったことが、試験の長期化の原因である。
2013年に1番艦 「ユーリイ・ドルゴルーキイ」が就役したのち、現在4番艦まで建造が進んでいる。
現在の各艦の状況は以下の通り。
艦番号 | 艦名 | 起工年 | 進水年 | 就役年 |
K-545 | ユーリイ・ドルゴルーキイ | 1996年11月2日 | 2007年4月15日 | 2013年1月10日 |
K-550 | アレクサンダー・ネフスキー | 2004年3月19日 | 2010年12月6日 | 2013年(予定) |
― | ウラジミール・モノマーフ | 2006年3月19日 | 2012年12月30日 | 2014年(予定) |
― | クニャージ・ウラジミール | 2012年7月30日 | ― | 2015年(予定) |
― | アレクサンドル・ズヴォーロフ | 2013年7月28日(予定) | ― | ― |
― | ミハエル・クトゥーゾフ | 2013年11月(予定) | ― | ― |
― | 計画中 | ― | ― | ― |
― | 計画中 | ― | ― | ― |
艦番号K-545。
ボレイ型の1番艦で本級は「ユーリイ・ドルゴルーキイ級」と呼ばれても良さそうなモノであるが、残念ながらその兆候はない。ヤーセン型は呼ばれてるのに。くすん。
名前は【ユーリー1世ドルゴルーキー】Юрий I Владимирович 'Долгорукий' 、1099年頃 -1157年5月15日)に由来する。キエフ大公であり、モスクワを建設した人物として知られる。
前述の通り、1996年11月2日に起工式が行われたが、度重なる予算不足や設計変更のため進水までに10年の月日を要した難産な子。
2003年に最初の乗組員が組織され、ファーストチーム艦長にコンスタンチン・ミトキン1等海佐、セカンドチーム艦長にウラジーミル・シリン1等海佐。2009年6月に工場航海試験に出航、これが本艦の最初の航海となる。なお、この際はセカンドチームが運航を担当している。2010年にセカンドチーム艦長がA.パヴロフスキーに交代した。
2012年12月29日、国家運用試験を無事終了し、受領証書への署名が行われた。
2013年1月13日。ロシア海軍旗掲揚。北方艦隊第31潜水艦師団に配属された。
現在慣熟訓練中で2014年前半に最初の戦略パトロールに出航する見込み。
艦番号K-550。
ボレイ型の2番艦。本艦より設計変更され当初より【ブラヴァー】搭載を前提として設計・起工されているが、それでも進水式まで6年を要しているあたり、熟練工の流出というのは深刻なようである。
名前の由来はアレクサンドル・ネフスキーАлександр Ярославич Невский,1220年5月30日‐1263年11月14日)に由来する。ロシア正教会の聖人に列聖されている。また、スウェーデンとの間で発生したネヴァ湖畔の戦いにおいて圧倒的少数にもかかわらず勝利し、敵将を打ち取った英雄でもある。
2010年12月6日に進水式を終えたが、プーチン首相(当時)が来訪したことに合わせ、改めて12月13日に進水式を行っている。
2011年10月22日に処女航海。乗員は太平洋艦隊から集められたとのこと。
2012年10月1日工場航海試験を終了。同年12月に国家受領試験を実施。2013年7月までに国家受領試験を完了する見込み。なお、この間に【ブラヴァー】の発射試験が行われる模様。
その後8月~9月にかけて引き渡し受領証書の署名が行われ、2013年度中にロシア海軍に引き渡される模様。
本艦より改良が施され【プロジェクト995‐A】(ボレイA型)となる。当初はSLBM搭載数を20基に増加させる事が報じられていたが、ロシア海軍はこの報道を否定している。
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最終更新:2025/04/24(木) 04:00
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