中禅寺秋彦とは (チュウゼンジアキヒコとは) [単語記事]

概要

東京都の中野区で古書店を開いている男。武蔵晴明神社という小さな神社の宮司にして陰陽師でもある。

これだけ聞くと胡散臭い人物だが、「この世には不思議なことなど何もない」という言葉を決め台詞としていることから分かるように、その実は知識を貴び誤っている妖怪や宗教の認識を徹底的に嫌う現実主義者である。

書痴と言えるほど読書好きであり、古書店を開いたのも好きな程本を読めるのが理由。

百鬼夜行シリーズの作中では主にその本で得た知識と論理的思考に基づいた「推理役」及び事件を「解体」する「憑き物落とし」を行う役目を持つ。

憑物落とし

中禅寺明彦の奥義にして百鬼夜行シリーズ最大の特徴。

上記の本によって得た大学教授もかくやという膨大な知識と徹底した論理的思考によって複雑に入り組んだ事件を整理し、因果や妄執をその弁舌によって、当事者に納得できる「形」に「解体」する奥義。これは中禅寺と同じく書痴と称されるほど読書好きであり、妖怪・民俗学の研究家としての顔も持つ京極夏彦氏の本領発揮と言える要素である。

その弁舌は「わしはオカルトなんて信じないぞ」という医者や科学者の老人ですら手玉に取り、宗教や妖怪の類を信じさせてしまうほど。下手をすれば巨大な宗教組織を作りかねないと読者に思わせるほどの能力であるが、当然ながら本人はその技術を感情のまま使うことを固く禁じている。

また、この憑物落としはあくまで言葉で説明することであり、言葉そのものが通用しない「禅」には基本的に効かない。

仕事について

上記で述べたように古書店の店主、陰陽師、神主という三つの顔を持つが、そのどれも真面目にこなしている。

古書店についてはしょっちゅう知合がたむろしていて趣味としてやっているんじゃないかと思われがちだが、その実古本屋の業界でも鑑定が難しい本や珍しい本を扱っていることから得意先が結構いる模様。また、他の古書店とも真摯な付き合いがあり、本屋の開店には相当用意周到に準備していたようだ。

陰陽師としての仕事は上記の通り、憑き物落としをやっている。なお、憑き物落としの依頼料は本人曰く高額らしい。

神主の仕事においても真面目にやっており、とある人物の葬式を神道の方式で行ったこともある。

そんな状況のため、日常生活において特に困窮している場面は見られない。どこぞの関口君とは違うのだよ。

経歴

作中によれば下北半島出身で、幼少時は祖父母の下で育つ。

榎木津礼二郎及び関口巽と同じ高校を通う。この頃からしょっちゅう本を読んでいた。

作中から7年以上ほど前に当たる戦時中には日本が第二次世界大戦で勝利した時に必要となる外国人の国家神道への改宗を行うための研究をさせられていた。当然ながら本人はその過去を最も忌まわしい過去として語りたがらず、戦争犯罪だと唾棄している。この過去のためか、大学教授もかくやという知識を持つにも関わらず、本人が学問の世界に出入りしている様子は見受けられない。

戦後は高校教師を務める。スピンオフである「中禅寺先生物怪講義録」ではこの頃の話が描かれる。そして、教師を辞めて本屋を開業し、作中の時代に至る。

勘違いされがちなこと

主に百鬼夜行シリーズの未読者において勘違いされることが多い人物でもある。以下、例をあげる。

主人公だと思われる。

実質的に事件を推理する役目ということで主人公だと勘違いされがちだが、実際には各作品において語り部が登場して主人公と言える活躍をする。あくまで中禅寺は事件を推理し、憑き物落としを行う役目であり、主人公と言えることは基本的にしない。ただし、スピンオフの「中禅寺先生物怪講義録」では名実ともに主人公と言える活躍を見せる。