債務(debt、obligation)とは、法律用語の一つである。
ある人が特定の人に対して行為を要求するとき、特定の人が負う義務を債務(debt、obligation)という。反対語は債権(claim)である。
債務者が債権者に提供する行為のことを給付という。債務者の給付によって債権が消滅することを弁済という。
金銭を提供する債務などのような、資本(営利追求の事業活動の基金)になりうる財産を提供する債務は、負債と扱われ、貸借対照表の負債の部に書き入れることができる。
第三者が見ていないところで踊ることを提供する債務などのような、お金にならない行為を提供する債務は、負債とは見なされず、貸借対照表の負債の部に書き入れることができない。
前項で述べたように、債務と負債は、少し意味が異なる。債務はお金にならないものの提供も含む幅広い言葉で、負債はお金になるものの提供に限定する言葉である。
しかしながら、世間一般では、債務と負債を混同する例が多く見られる。実際には、債務のほとんどが負債であるからだろう。
債務と負債を混同する典型例は、債務超過という言葉である。この言葉は簿記の世界で使われるもので、貸借対照表の負債の部の金額が膨れあがって純資産の部の金額がマイナスに転じることをいい、倒産や上場廃止を強く連想させる言葉である。本来なら負債超過と呼ぶべきだが、慣例的に、債務超過と呼ぶことが多い。
債務者が給付(要求された行為)を約束通りに提供できないこと、つまり弁済できないことを、債務不履行(デフォルト、default)という。
世の中の債務の多くが負債で、世の中の負債の多くが金銭債務なので、債務不履行は「金銭を支払う義務を履行できないこと」と受け取る人が多い。
アルゼンチン政府は債務不履行の常習犯で、ドル建てアルゼンチン国債を何度も債務不履行にしている。またギリシア政府もユーロ建てギリシア国債の債務不履行をやったことがある。債務不履行といえば、この2国の名前が挙がる。
債権者が意思を表示して債権を放棄し債権を消滅させることを債務免除という(民法第519条)。お金を貸してしばらく取り立てていたが債務者のことを気の毒に思い債権放棄する例や、親が他界したときに子が相続放棄をして銀行預金すなわち銀行に対する債権を放棄する例などが、挙げられる。
債務には、「○年○月○日に行うべき」といったような期限が設けられることがある。
期限までの期間が短ければ短いほど、債務としての厳しさが増す。また、期限までの期間が長ければ長いほど、債務としての厳しさが緩和されていく。支払期日が1日後の100万円手形は非常に厳しい債務であり、支払期日が100年後の100万円手形は極めて緩やかな債務である。
資産を支払う債務、すなわち負債は、期限までの期間が短ければ短いほど財務状況に悪影響を与えると評価され、期限までの期間が長ければ長いほど財務状況に好影響を与えると評価される。償還期日が30日後の100万円社債を売り出した場合と、償還期日が10年後の100万円社債を売り出した場合は、後者の方が会社の財務状況に好影響を与えると評価される。
借り換えと呼ばれる行為がある。これの代表例は、「支払期日までの期間が短くて厳しい金銭債務」を「支払期日までの期間が長くて優しい金銭債務」へ変換させるものである。
ちなみに、世の中には、期限までの期間が極端に長い債務がある。支払期日が100億年後の手形というのは、期日が来る頃には太陽系が消滅しているだろうから、極端に期限が長いといえる。
「債務の期限が100億年後」と明記してもいいのだが、そういう風に書くのもバカバカしいので、たいていは「返済期限は無期限」と書くことになる。
期限までの期間が極端に長く、「無期限の債務」と言われるものの典型は、日本銀行が発行する日本銀行券(1万円札などの紙幣)である。1万円の日本銀行券は、もともと「1万円に相当する金塊を即時に日本銀行が支払う債務」だったのだが、1931年になって日本銀行が債務の履行を停止し、金塊支払いの期限が100億年後といった感じの極めて遠い将来に先送りされ、「返済期限が無期限の債務」ということになった。詳しくは、兌換銀行券や不換銀行券の記事を参照のこと。
日本銀行券は返済期限無期限の債務なので、日本銀行にとって極めて緩い債務であり、日本銀行の財務に対して全く悪影響を与えないものである。
債権者が一定の期間を超えて債権を行使しなかった場合、その債権は時効が完成して消滅する。
日本国において、基本的にすべての債権の時効は5年である。ただし、債権者が権利を行使できることを知らない場合は10年になる(民法第166条)。実際には、債権者は自分の権利を熟知していることがほとんどなので、「日本において債権の時効は5年」と憶えておいて差し支えない。
以上の規定は、2017年5月26日に国会で可決されて2020年4月1日から施行されている民法に載っている。
また、小切手の時効は6ヶ月(小切手法第51条)、手形の時効は3年(手形法第70条
、手形法第77条
)、電子記録債権の時効も3年である(電子記録債権法第23条
)。これらに関しては、民法よりも小切手法などの特別法が優先して適用される。
2020年3月31日以前は、旧民法や旧商法により債権が細かく分類され、異なる時効になると定められていた。
期間 | 種類 | 関連法 |
---|---|---|
10年 | 民事取引(商法上の商人![]() |
民法第167条![]() |
5年 | 下記以外の商取引(少なくとも片方が商法上の商人![]() |
商法第522条![]() |
3年 | 医者・助産婦・薬剤師の診療報酬、建設業の報酬 | 民法第170条![]() |
2年 | 小売業の販売代金、製造業の報酬、学習塾の月謝、弁護士の報酬 | 民法第172条![]() ![]() |
1年 | 運送代、飲食代、宿泊代、芸能人のギャラ、短期アルバイトのギャラ | 民法第174条![]() |
手形や電子記録債権の時効よりも短いものがあり、法律問題の格好の題材になっていた。そのことについては、原因関係の記事を参照のこと。
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最終更新:2025/03/31(月) 12:00
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