半減期 単語

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半減期Half-life)とは、物質の個数や濃度が崩壊や化学反応により半分に減るのにかかる時間である。

  1. 物理学的半減期 - 放射性核種の数や放射能の強度が、崩壊により半減するのにかかる時間。
  2. 生物学的半減期 - 体内の放射性核種の数が、体外への排出により半減するのにかかる時間。
  3. 実効半減期 - 体内の放射性核種の数が、崩壊と排により半減するのにかかる時間。
  4. 消失半減期 - 物の血中濃度が、代謝と排により半減するのにかかる時間。

単に半減期という場合、物理学の分野においては1を、医学薬学の分野においては4をすことが多い。ほかにも、なにかが半分に減るのにかかる時間として広く使われており、たとえば、化学反応の速度を論じる際に、反応物の半減期が扱われる。

概要

物理学的半減期

放射性同位体(RI:Radio Isotope)は核種ごと、決まった確率で崩壊していく。崩壊とはα崩壊、β-崩壊、β+崩壊など、放射線放出して核種が安定化する現象のことで、崩壊によって核種(核種)は別の核種(核種)へと変わる。そうして放射性同位体の量が半分に減るまでの時間を半減期、あるいは区別のために物理学的半減期(物理的半減期)という。それぞれの核種ごとに固有の値を持ち、温度、圧力、化学的あるいは物理的な環境の違いによって変化しない。ただし、このような環境の違いが放射性核種の崩壊にを及ぼさないという意味にすぎず、原理的に絶対不可能であることを意味するものではない。

はじめの量を1としたとき、半減期Tだけ時間が経過すると、1/2に減る。これは、指数関数的な減少であり、半減期の2倍の時間(2T)が経過すると0ではなく1/4になる。

なお、放射性崩壊が確認されて半減期が判明している核種のうち、最長のものは128Te(テルル128)で、その半減期は2.2×1024年(2.2×1兆×1兆年)、最短のものは7H(七重水素)で、その半減期は2.3×10-23

放射性核種 物理学的半減期 備考
1億年以上 232Th(トリウム232) 141億年 天然一存在するThの同位体
較:宇宙年齢137億年
238U(ウラン238) 45億年 天然に存在するUの99%を占める
40K(カリウム40) 12億年 岩石の年代測定に利用される
235U(ウラン235) 7億年 原子力発電所で利用される
1万年以上 237Np(ネプツニウム237) 214万年 ネプツニウム系列の核種
99Tc(テクネチウム99) 21万年 医療で利用される
239Puプルトニウム239) 24,000年 原子力発電所で利用される
1000年以上 14C(炭素14) 5,700年 年代測定に利用される
226Ra(ラジウム226) 1,600年 キュリー夫妻が発見
100年以上 241Amアメリシウム241) 430年 海外で煙感知器に使用されている
10年以上 137Csセシウム137 30年 原子力発電所事故で知られる
90Srストロンチウム90) 29年
3H(三重水素 12年 地下の年代測定に利用される
1年以上 60Co(コバルト60) 5年 医療・工業分野で利用される
1ヶ以上 125I(ヨウ素125 60日 医療で利用される
1週間以上 32P(リン32) 14日
131I(ヨウ素131 8日 原子力発電所事故で知られる
1日以上 67Gaガリウム67) 78時間 医療で利用される
1時間以上 123I(ヨウ素123 13時
99mTc(テクネチウム99m) 6時
18F(フッ素18) 110 医療で利用されるポジトロン核種(プラスの電荷の陽電子を放出する核種)
1分以上 11C(炭素11) 20分
13N(窒素13) 10分
15O(酸素15) 2分

生物学的半減期

体内に取り込まれた放射性同位体は、生体内で代謝を受け、体外に排出されることによりその数を減らしていく。そうして半分に減るのにかかる時間を生物学的半減期という。

物の血中濃度が半分になるのにかかる時間をそう呼ぶ場合もある。→消失半減期

実効半減期

上記の放射性核種の崩壊による半減期(Physical half-life)と、生物学的半減期(Biological half-life)からめられる、実際に体内に存在する放射性核種が半分になるのにかかる時間を実効半減期または有効半減期(Effective half-life)という。実効半減期(Te)の逆数は、物理学的半減期(Tp)と生物学的半減期(Tb)それぞれの逆数の和である。

たとえば、131I(ヨウ素131)の生物学的半減期は138日、物理学的半減期は8.04日であるので、実効半減期は7.60日となる。実効半減期が物理学的半減期に近いものは、体内被ばくの危険性が高い。

放射性核種 集積組織 実効半減期 物理学的半減期 生物学的半減期
3H(三重水素 全身 12日 12年 12日
14C(炭素14) 40日 5,700年 40日
90Srストロンチウム90) 18年 29年 50年
226Ra(ラジウム226) 44年 1,600年 45年
137Csセシウム137 筋肉 70日 30年 70日
131I(ヨウ素131 甲状腺 8日 8日 138
59Fe59) 42日 45日 600日
60Co(コバルト60) 脾臓・肝臓 10日 5年 10日

消失半減期

治療において、医薬品の適正使用は極めて重要である。医薬品の適正使用のために用いられる標の一つとして、物の血中濃度が挙げられる。物の血中濃度は、高すぎれば副作用性が発現し、低すぎれば十分な治療効果を得られない。適切な血中濃度の維持は、副作用を最小限に、作用を十分に発現させることにつながる。

消化管からの吸収や静脈内投与によって血中に移行した物は、全身に分布してその作用を発現する。そして肝臓で代謝を受け、さらに胆汁中や尿中に排されるため、その血中濃度が徐々に低下していく。こうして血中濃度が半分に減るまでにかかる時間を、消失半減期、血中濃度半減期、生物学的半減期、あるいは単に半減期という。

消失半減期には個人差があり、生活習慣や併用によってを受ける。たとえば、肝機や腎機が低下した患者は物の代謝速度や排速度が低下しているため、消失半減期が延長する。喫煙の習慣がある患者は物の代謝酵素が誘導されており、その代謝酵素で代謝される物の消失半減期が短縮する。併用のある患者は代謝酵素の誘導ないし阻、あるいは排経路の重複による競合的阻などによって、消失半減期が変動する。

点滴による静脈内投与や反復投与によって物の血中濃度は定常状態(治療濃度域で安定した状態)に至るが、ジギトキシンフェノバルビタールのような消失半減期の長い物は定常状態に到達するまで長い時間を要する。

消失半減期 利用
ジギトキシン 60360時間 強心
フェノバルビタール 50120時間 抗てんかん睡眠薬抗不安薬
ジゴキシン 2060時 強心
カルバマゼピン 1030時 抗てんかん・三叉神経痛治療気分安定薬
メトレキサート 815時 抗がん薬・抗リウマ妊娠中絶
バルプロ 617時 抗てんかん気分安定薬
オフリン 58時間 気管支拡
キニジン 47時間 抗不整脈
バンコマイシン 46時 抗菌薬抗生物質
アセトアミノフェン 24時 解熱鎮痛薬
ストレプトマシン 23時 抗菌薬抗生物質
リドカイン 12時 局所麻酔・抗不整脈

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