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半減期(Half-life)とは、物質の個数や濃度が崩壊や化学反応により半分に減るのにかかる時間である。
単に半減期という場合、物理学の分野においては1を、医学・薬学の分野においては4を指すことが多い。ほかにも、なにかが半分に減るのにかかる時間として広く使われており、たとえば、化学反応の速度を論じる際に、反応物の半減期が扱われる。
放射性同位体(RI:Radio Isotope)は核種ごと、決まった確率で崩壊していく。崩壊とはα崩壊、β-崩壊、β+崩壊など、放射線を放出して核種が安定化する現象のことで、崩壊によって核種(親核種)は別の核種(娘核種)へと変わる。そうして放射性同位体の量が半分に減るまでの時間を半減期、あるいは区別のために物理学的半減期(物理的半減期)という。それぞれの核種ごとに固有の値を持ち、温度、圧力、化学的あるいは物理的な環境の違いによって変化しない。ただし、このような環境の違いが放射性核種の崩壊に影響を及ぼさないという意味にすぎず、原理的に絶対不可能であることを意味するものではない。
はじめの量を1としたとき、半減期Tだけ時間が経過すると、1/2に減る。これは、指数関数的な減少であり、半減期の2倍の時間(2T)が経過すると0ではなく1/4になる。
なお、放射性崩壊が確認されて半減期が判明している核種のうち、最長のものは128Te(テルル128)で、その半減期は2.2×1024年(2.2×1兆×1兆年)、最短のものは7H(七重水素)で、その半減期は2.3×10-23秒。
放射性核種 | 物理学的半減期 | 備考 | |
---|---|---|---|
1億年以上 | 232Th(トリウム232) | 141億年 | 天然に唯一存在するThの同位体 |
比較:宇宙の年齢は137億年 | |||
238U(ウラン238) | 45億年 | 天然に存在するUの99%を占める | |
40K(カリウム40) | 12億年 | 岩石の年代測定に利用される | |
235U(ウラン235) | 7億年 | 原子力発電所で利用される | |
1万年以上 | 237Np(ネプツニウム237) | 214万年 | ネプツニウム系列の親核種 |
99Tc(テクネチウム99) | 21万年 | 医療で利用される | |
239Pu(プルトニウム239) | 24,000年 | 原子力発電所で利用される | |
1000年以上 | 14C(炭素14) | 5,700年 | 年代測定に利用される |
226Ra(ラジウム226) | 1,600年 | キュリー夫妻が発見 | |
100年以上 | 241Am(アメリシウム241) | 430年 | 海外で煙感知器に使用されている |
10年以上 | 137Cs(セシウム137) | 30年 | 原子力発電所の事故で知られる |
90Sr(ストロンチウム90) | 29年 | ||
3H(三重水素) | 12年 | 地下水の年代測定に利用される | |
1年以上 | 60Co(コバルト60) | 5年 | 医療・工業分野で利用される |
1ヶ月以上 | 125I(ヨウ素125) | 60日 | 医療で利用される |
1週間以上 | 32P(リン32) | 14日 | |
131I(ヨウ素131) | 8日 | 原子力発電所の事故で知られる | |
1日以上 | 67Ga(ガリウム67) | 78時間 | 医療で利用される |
1時間以上 | 123I(ヨウ素123) | 13時間 | |
99mTc(テクネチウム99m) | 6時間 | ||
18F(フッ素18) | 110分 | 医療で利用されるポジトロン核種(プラスの電荷の陽電子を放出する核種) | |
1分以上 | 11C(炭素11) | 20分 | |
13N(窒素13) | 10分 | ||
15O(酸素15) | 2分 |
体内に取り込まれた放射性同位体は、生体内で代謝を受け、体外に排出されることによりその数を減らしていく。そうして半分に減るのにかかる時間を生物学的半減期という。
薬物の血中濃度が半分になるのにかかる時間をそう呼ぶ場合もある。→消失半減期
上記の放射性核種の崩壊による半減期(Physical half-life)と、生物学的半減期(Biological half-life)から求められる、実際に体内に存在する放射性核種が半分になるのにかかる時間を実効半減期または有効半減期(Effective half-life)という。実効半減期(Te)の逆数は、物理学的半減期(Tp)と生物学的半減期(Tb)それぞれの逆数の和である。
たとえば、131I(ヨウ素131)の生物学的半減期は138日、物理学的半減期は8.04日であるので、実効半減期は7.60日となる。実効半減期が物理学的半減期に近いものは、体内被ばくの危険性が高い。
投薬治療において、医薬品の適正使用は極めて重要である。医薬品の適正使用のために用いられる指標の一つとして、薬物の血中濃度が挙げられる。薬物の血中濃度は、高すぎれば副作用や毒性が発現し、低すぎれば十分な治療効果を得られない。適切な血中濃度の維持は、副作用を最小限に、主作用を十分に発現させることにつながる。
消化管からの吸収や静脈内投与によって血中に移行した薬物は、全身に分布してその作用を発現する。そして主に肝臓で代謝を受け、さらに胆汁中や尿中に排泄されるため、その血中濃度が徐々に低下していく。こうして血中濃度が半分に減るまでにかかる時間を、消失半減期、血中濃度半減期、生物学的半減期、あるいは単に半減期という。
消失半減期には個人差があり、生活習慣や併用薬によって影響を受ける。たとえば、肝機能や腎機能が低下した患者は薬物の代謝速度や排泄速度が低下しているため、消失半減期が延長する。喫煙の習慣がある患者は薬物の代謝酵素が誘導されており、その代謝酵素で代謝される薬物の消失半減期が短縮する。併用薬のある患者は代謝酵素の誘導ないし阻害、あるいは排泄経路の重複による競合的阻害などによって、消失半減期が変動する。
点滴による静脈内投与や反復投与によって薬物の血中濃度は定常状態(治療濃度域で安定した状態)に至るが、ジギトキシンやフェノバルビタールのような消失半減期の長い薬物は定常状態に到達するまで長い時間を要する。
薬物 | 消失半減期 | 利用 |
---|---|---|
ジギトキシン | 60~360時間 | 強心薬 |
フェノバルビタール | 50~120時間 | 抗てんかん薬・睡眠薬・抗不安薬 |
ジゴキシン | 20~60時間 | 強心薬 |
カルバマゼピン | 10~30時間 | 抗てんかん薬・三叉神経痛治療薬・気分安定薬 |
メトトレキサート | 8~15時間 | 抗がん薬・抗リウマチ薬・妊娠中絶薬 |
バルプロ酸 | 6~17時間 | 抗てんかん薬・気分安定薬 |
テオフィリン | 5~8時間 | 気管支拡張薬 |
キニジン | 4~7時間 | 抗不整脈薬 |
バンコマイシン | 4~6時間 | 抗菌薬(抗生物質) |
アセトアミノフェン | 2~4時間 | 解熱鎮痛薬 |
ストレプトマイシン | 2~3時間 | 抗菌薬(抗生物質) |
リドカイン | 1~2時間 | 局所麻酔薬・抗不整脈薬 |
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最終更新:2024/12/23(月) 03:00
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