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車体と車軸とを取り持つ装置。我々が乗っている電車の車体はこの台車の上に載せられている。
主たる機能は下記の3つ。
鉄道の車体は巨大であるが故に、直接車軸を取り付けると線路のカーブ・アップダウン・ねじれに対応できず脱線する恐れがある。そこで考案されたのが、軸同士が近い台車を2つ用意し橋を架けるように車体を載せる方式(ボギー車)である。
台車は車体に対してある程度の自由な回転が許されておリ、車輪に無理な力が掛かったり浮いたりすることは無い。
また上下方向のサスペンションを仕込むことで乗り心地の向上も同時に行える。現在も更なる乗り心地の追求のため改良が続けられている。
揺れの吸収には2段階のサスペンションを経ている。車体と台車のメインフレーム(台車枠)とを介する「枕ばね」、そして台車枠と車軸とを介する「軸ばね」である。これらには基本的にコイルバネ、板バネ、空気バネ、積層ゴムが用いられ、効果的に組み合わされている。
これらのバネ単体では折れたり撓んだりする不要な動きもしてしまい形状を維持できない。前後方向の大きな変位はブレーキや加速の安定性を揺るがしかねない問題である。よって可動部間には垂直方向の変位は許し水平方向にはズレさせない機構を備えている。
線路のブレに素直に従う台車と乗客を乗せる車体とを緩衝するバネで、大きな揺れやひねりに対応する。台車が回転する機構との兼ね合いで複雑になりやすいが、近年空気バネの変位を利用することで革命的な軽量化と簡素化を果たした。
以下では枕ばね周りの機構「車体支持方式」の種類ごとに、車体から見た各部品の回転と揺れ吸収の動作の違いをイラストと共に簡単に説明する。
回転吸収:車体〜上揺れ枕(センターピン+摺動板) 振動吸収:上揺れ枕〜下揺れ枕(枕ばね)
回転と上下動を枕木方向に渡した2つの揺れ枕によって別々に行っている原始的な仕組み。車体~上揺れ枕間には回転中心となるセンターピンが渡っており、外側の摺動板と共に重量が掛かる。2つの揺れ枕の間に枕ばねが設けられ、下揺れ枕はリンクで台車枠に吊られている。
下揺れ枕は一見省略できそうにも見えるが、空気バネの実用化以前は枕ばねが大きかったためこのような二重構造で高さを稼ぐ以外方法がなかった。またリンクで吊ることは台車の左右の振動を吸収する効果も持っている。
部品点数が多く質量も大きい。また摺動部の一部は擦り減ると乗り心地に大きく影響してしまう。先述の通り古い方式で、国鉄時代に製造された車両に残されているのみである。
回転吸収:枕ばり〜台車枠(センターピン) 振動吸収:車体〜枕ばり(枕ばね+ボルスタアンカー)
上記スイングハンガー式の2つの揺れ枕を統合した「枕ばり(ボルスタ)」が枕ばねと台車枠の間に置かれ、振動と回転の動きを取り持っている。
車体と枕ばりとは「ボルスタアンカー」と呼ばれるリンクで直接結ばれ(=ダイレクトマウント)、上下および前後方向の動きと回転を許容しつつ動力を伝達している。
枕ばりと台車枠の間では回転のみ行われる。
枕ばりの分ボルスタレス式(後述)には重量、部品点数の多さに起因する整備性で劣るが、台車の動きが枕ばねである空気バネの撓みに依らないことから線路への追従性が高いのが特長。
近年ではこの特長が見直されつつあり、東京メトロなど一部の事業者で部品点数の少なく保守性の高い新世代のダイレクトマウント台車が採用され回帰する動きがある。
回転吸収:車体〜枕ばり(センターピン) 振動吸収:枕ばり〜台車枠(枕ばね+ボルスタアンカー)
枕ばりの下に枕ばねを置き、回転中心は上面に設けた方式。枕ばりは台車と一緒に回転し、ボルスタアンカーは台車と枕ばりを結んでいる。
ボルスタアンカーが車体に直結されていない(=インダイレクトマウント)のが最大の違いで、動力はセンターピンを介して車体へ伝達される。
ダイレクトマウント方式では急曲線を通過する際にボルスタアンカーがつっかえ棒になってしまい一定の角度以上回転することはできないが、インダイレクトマウント方式であればその制約を受けることなく自由に回転することができる。
そのため現在でも路面電車や線路条件の厳しい路線を抱える事業者では新規に採用され続けている。
回転吸収:車体〜台車枠(枕ばね+センターピン) 振動吸収:車体〜台車枠(枕ばね+リンク)
台車枠と車体とを枕ばねで直接繋げており揺れ枕や枕ばりが廃されている。
一見回転が不可能にも思えるが、前後左右方向には剛性が低く上下方向にのみ剛性が高い特殊な空気バネの開発により回転と振動吸収を両立させている。
回転中心と水平方向の固定は内側に隠れているセンターピンとリンク機構(右イラスト)によっている。
20世紀後半に開発された最も新しい方式。
軽量で部品点数が少なく保守も容易なことから現在新造されている車両の大半がこの方式を採用しているが、乗り心地や線路への追従性では若干ダイレクトマウント方式に劣る。
そのためヨーダンパと呼ばれる台車の急激な回転を抑える部品や軸ダンパ、車体間ダンパを設けるなどの工夫を施したり、線路への追従性を優先し現在でも頑なにボルスタレス台車を採用しない事業者(例:京阪、京急など)も存在する。
乗り物では一般に車輪から最初のサスペンションまでの質量(バネ下重量)が小さいほど乗り心地が良くなるとされている。鉄道車両においても枕ばねよりもさらに下、台車枠と軸箱(車軸端やベアリングが収まる部分)の間に軸ばねを設けバネ下重量を小さくしている。
軸箱を押さえ込むことから軸ばね周りの機構全体を指して軸箱支持と呼ばれる。用いられるバネはコイルバネがほとんどで、軸箱との間に微振動を防ぐゴムを噛ませてあることが多い。
高速鉄道においては枕ばねは現在ボルスタレス式かダイレクトマウント式かのどちらかが主流だが、軸ばねでは依然各事業者で異なる方式が採用されており、注意して観察してみると様々な形態を見つけることができ面白い。
台車枠に上下動できるレール(軸箱守)を設け、そこに軸箱をバネと共に嵌め込む。以下にバネの置き方で2種紹介する。
いずれも国鉄時代の車両で多く採用されたものの、現在の新車ではほとんど見ることができない。
軸箱の周りに軸箱守がその名の通りしっかりガードするようにある。このタイプは軸箱が軸箱守にはまっている様子を特にわかりやすく観察することができる。バネは軸箱あたり1つで車軸の真上に収められている。
軸箱の両側にバネの座を設け、軸箱守の両側から2つのバネで荷重を受ける(ウイングバネ式)。バネ2つという点が後述の円筒案内式と似ているが、こちらは補強が多くごちゃごちゃしている。よって軸箱守の存在も外見からでは分かりづらい。
2つのコイルバネそれぞれの中にシリンダーのような二重の筒を設け、それをガイドに上下動する。
一見2つのバネだけのようにも見えるが、隙間からは内部構造の円筒が少し覗いているのを見ることができる。
軸箱の水平方向のブレが無く摩耗も少ないため、ダイレクトマウント式枕ばね同様に特定の事業者に愛用されている。
技術導入元の会社名を取ってシュリーレン式、シンドラー式、SIG式と呼ばれることもある。
リンクで軸箱の動きを上下のみに制限する方法。比較的単純な構造ながら、理想的な軸箱の動きを実現できる。
主に動作の違う2種を見ることができる。
1つの軸箱を2本のリンクで両側から保持する。
それぞれのリンクは高さを違えた「Zリンク」としているため、車軸は理想的である垂直な上下動をすることができる。
名称はフランスの鉄道車両・インフラメーカーであるアルストム社より。
台車の中心側から1本の独立したリンクで軸箱を固定する。可動部が2カ所で軸箱が不安定にならぬよう、バネ内部には円筒案内式のような構造を備える。
車軸の軌跡は円弧であるが、常に軸箱を水平に保てるという利点がある。
軸箱の一方をまっすぐ横に伸ばし、台車枠との接続点を軸に上下動する。モノリンク式の軸箱とリンクを一体化したと考えればよい。バネは大抵一つで台車枠の中に半分以上隠れているものが多い。
現在ダントツで新車採用例が多い。イラストのようにボルスタレス式枕バネと組み合わせれば究極のシンプルが達成される。
軸箱と台車枠を水平に渡した板バネで保持する方式の総称がミンデン式である。
板バネ自身はサスペンションになり得るかたさを持たず、他の方式同様軸箱にコイルバネを1~2コ取り付けて用いる。
ウィングバネの軸箱の両側から板バネで押さえる。この場合、あまりに固定がガッチリしすぎるていると軸箱の上下動で板バネが引っ張られてしまうため、ミンデンドイツ式では外側の板バネを折り曲げ対応している
板バネはミンデンドイツ式同様に軸箱の両側であるが、こちらは前後で台車枠がガッチリと保持している。引っ張りへの対応はゴムを介して板バネを取り付けることで解決している。
2枚の板バネを片側へ並行に取り付けた方式。台車枠は小さく軸梁式と似ているが、こちらは変位によらず軸箱の水平を保てる。
Sミンデン式を発展させ、板バネの付け根にゴムを挟み前後方向のかたさを最適化した。これにより直線での乗り心地を保ちつつカーブでの安定性も向上することができる。現在の新車採用では、Sミンデンはこの方式に取って代わられている。
これまで紹介したものと違い、ゴムと鉄板の複合材料である積層ゴムを用いて揺れを遮る方式である。形や大きさがコイルバネを用いたものと大きく異なるため台車も独特の形状となる場合が多い。
円錐形のゴム2組をウイングバネ式のように取り付けたもの。水平方向の撓みに強い性質を持つバウムクーヘンのような積層ゴムを使用し軸箱を自立させる。これぞゴムの本気と言って良い。
軸箱と台車枠の間へ「ハ」の字型に積層ゴムを挟む方式。これで軸箱の上下動と衝撃吸収に効果があるという。JR化以降の高速貨車や路面電車で見ることができる。コイルバネを用いたものでは見られない形状の台車枠を持つ。
シェブロン式の類似として軸箱両側垂直に積層ゴムを取り付けたものや、軸箱と台車枠をゴムで固めてしまうものなどもある。
掲示板
45 ななしのよっしん
2019/06/05(水) 16:36:24 ID: rkL7mTaoMy
日車がNSシリーズ台車ってやつでタンデム式ってのを出したみたいね
46 ななしのよっしん
2020/04/03(金) 12:43:29 ID: a2ZNs0JwgV
ボルスタレスで検索して一番最初に出てくるページがよりによってなんでアレなのか…
某会社の信者(≠ファン)といい大迷惑だわ
47 ななしのよっしん
2022/07/24(日) 17:22:41 ID: uEiu7eix/v
インダイレクトマウント+円筒案内式の京阪1900系KS-70の乗り心地は良かった。
旧3000系登場後も「乗り心地だけは1900系のほうが良かった」と評された逸品。
提供: kihobonu
提供: ゆんなの
提供: 黒狐
提供: カミカゼ
提供: los
急上昇ワード改
最終更新:2025/03/25(火) 09:00
最終更新:2025/03/25(火) 09:00
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