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薩摩国にて松方正恭と袈裟子の四男として生を受け、13歳で藩校・造士館に入塾する。が、時を同じくして両親を亡くす。その後は低い身分の生まれながらも藩士として藩政に関わり、島津久光の側近に至るまで頭角を現していく。生麦事件や寺田屋事件には松方も関与していた。1866年には当時の老中が苦労していたアメリカからの軍艦の買い付けを藩から任されると、長崎と鹿児島を往復しながらも藩の軍備増強に尽力した。
明治の世となり、明治政府が生まれると松方は日田県(現在の大分・福岡に跨る地域)知事として、別府港を造り(これにより別府は温泉街としても貿易港としても現代にいたるまでの発展を遂げる)、一方で旧福岡藩に主導されていた大規模な偽札流通事件を明らかにするとこれが参議・大久保利通の目に留まり、民部省、次いで大蔵省(1871年に民部省は大蔵省に吸収される)に入るという、半沢直樹ばりのスピード出世で財政畑を突っ走っていく。
しかし1877年の西南戦争の戦費調達に伴ったインフレをどう処理するかで大蔵卿(大蔵省トップ。このころの省庁の役職は上から卿、大輔、小輔、大丞...となっており、松方は当時ナンバー2の大蔵大輔だった)大隈重信と対立。外国に国債を売って本位貨幣である銀(このころ東洋圏の各国に対応するため形式的には金本位制を取りつつも対外的には銀本位制を取っていた。銀本位制については後述)を調達することでインフレを脱却できるとする大隈と、財政収縮をしようとする松方という構図であったが、結局松方が敗れ、仲裁に入った伊藤博文から譲られる形で1880年内務卿に就任、大蔵省を去った。
が、翌年政府内部のごたごたで大隈が失脚すると、再び大蔵省に返り咲く。大蔵卿として日本銀行を創設し、たばこや酒などへの増税・政府予算の圧縮・官営工場の民間払い下げなどの大規模なデフレ政策(通称松方デフレ、松方財政)を行い、赤字だった財政収支を立て直し、同時に銀本位制(ざっくり言えば外国との交易に銀を利用する制度。当時日本政府には銀ではなく主要国に倣った金本位制を導入する目論見があったが、金の保有量に乏しく、このままでは国内の金がなくなってしまう状況にあった)の導入を目指し、1885年にはこれを達成。一方、強引なデフレ政策によって国内米価が下落すると農民の貧富の差が拡大し、不景気にあえぐ世論からは反感を買ってしまい、農民とその支持政党である自由党員による暴動がこのころ国内各地で多発している。
1885年に内閣制度が発足すると第1次伊藤博文内閣で松方は初代大蔵大臣を、その次の黒田清隆内閣では大蔵・内務大臣を、続いた第1次山縣有朋内閣でも蔵相を担い、1891年5月満を持して組閣。しかし同年発生した大津事件による対露戦争を危惧した海軍大臣・樺山資紀が第2回衆議員議会で軍備拡張を唱えて「今日本があるのは我々藩閥が外国相手に頑張ったから当然我々を優先すべき(意訳。樺山は薩摩閥出身)」と主張、いわゆる蛮勇演説を行って民党と対立、議会を解散。第2回衆議員選挙で内務大臣・品川弥二郎を中心に選挙干渉を行うも失敗、第3回議会で糾弾されると、樺山海相の辞任も重なり1892年8月に閣内不統一を理由にあっけなく総辞職。
第2次伊藤内閣を挟んで1896年9月、再び組閣。蔵相も兼任し、勢力を拡大する自由党を抑えるため三菱財閥の岩崎弥之助のあっせんにより進歩党党首となっていた大隈重信を外相として入閣させた(三菱は先の西南戦争にて政府に資金援助を行っており、その後ろ盾となった縁で大隈は三菱と太いパイプを持っていた)。松方は日清戦争で得た巨額の賠償金を元手に、日銀総裁となった岩崎の協力もあって懸案の金本位制導入に成功、ついでに八幡製鉄所を建造した。さらに進歩党懸案の新聞紙条例改正(1875年に自由民権運動の抑圧のために制定されていた条例。言論封鎖を目的としていた)も達成する。が、陸相人事で薩長間に軋轢が生じると、進歩党への依存度を強める松方に薩摩閥内でも反発の声が上がり、政府の財政難解消のために第11議会にて地租増徴を決めると、支持基盤を民衆に置く進歩党からもとうとう見限られ、後ろ盾を失い慌てた松方は進歩党と対立する自由党に接近するもうまくいかず、衆議院解散を断行するも結局そのまま総辞職。2度の組閣はどちらも内部分裂によって脆く崩れ去ったのであった。
のちに山縣有朋らが世を去る中、元老として西園寺公望とともに影響力を持ち、1922年には加藤友三郎内閣を成立に導いている。1924年、90歳で死去。青山霊園に葬られた。
第3代 | 第4代 | 第5代 |
山縣有朋(無所属) 1889~1891 |
松方正義(無所属) 1891~1892 |
伊藤博文(無所属) 1892~1896 |
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最終更新:2025/04/24(木) 00:00
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