生物系三大奇書とは、「生物を扱った奇妙な書籍のうち、主たる三つを指して呼んだ言葉」とされるものである。
日本のインターネット利用者の間では
の三冊であるとされることが多い。
Wikipedia日本語版の「三大奇書」「鼻行類」「平行植物」「アフターマン」の記事にもこの言葉が記載されている(2018年8月13日現在)など、それなりに広まっているようだ。
『平行植物』の邦訳版を出版している工作舎のウェブサイトでは、2017年に『平行植物』の新装版第3刷出来を伝えるニュースリリースで
最近はネットで「生物系三大奇書」の一冊として話題です。ちなみに「生物系三大奇書」とは、レオーニの『平行植物』(工作舎)、ハラルト・シュテュンプケ 『鼻行類』(平凡社ライブラリー)、もう1冊が『秘密の動物誌』(ちくま学芸文庫)か、ドゥーガル・ディクソンの『アフターマン』(ダイヤモンド社)のどちらかだとか。
と、この言葉に言及している。[1]
だが明確な出典が不明な言葉でもある。そのため上記のWikipedia記事4つのうち「三大奇書」「平行植物」の記事では、この「生物系三大奇書」という言葉には、長らく「要出典」マークが付けられていた。[2]
Wikipedia日本語版において、「鼻行類」の記事の「関連項目」に「平行植物」が追加されたのは2006年2月27日(UTC)、「アフターマン」の記事は2006年5月25日(UTC)の初版時点で「関連項目」に他の2作が記載されており
、「平行植物」の記事に「生物系三大奇書」について追記されたのは2006年5月31日(UTC)
、「三大奇書」の記事に「生物系三大奇書」について追記されたのは2006年10月21日(UTC)
であり、いずれも2006年に集中している。
2006年5月以前の「生物系三大奇書」という言葉の使用例はGoogle検索などで見つけられないため、Wikipedia日本語版において、「鼻行類」や「アフターマン」の記事を元に「平行植物」の記事にいわゆる「独自研究」的に「生物系三大奇書」という言葉が記載され、それが広まってしまったものではないかとも考えられる。
ただし「消滅してしばらく経ったサイト」はGoogle検索ではヒットしなくなっていくため、2006年からかなりの年数が経過していることを考えると「Wikipedia外に出典があったが既に時間経過によってサイトが消滅して閲覧できなくなった」という可能性もある。もちろんインターネット上ではなく、なんらかの印刷物、テレビやラジオの番組、催しなどなどに出典があった可能性もある。
2002年に「教えて!goo」に投稿された「あやしい本・変な本教えてください」という質問は、質問文に「鼻行類やクラフトエヴィング商会みたいな本」という一節が含まれていた。この質問に寄せられた回答の一つは「鼻行類の名が挙がっていたので…」と前置きしつつ、『平行植物』『アフターマン』を含む3冊の本を勧めている。少なくとも2002年時点では『鼻行類』と『平行植物』『アフターマン』は「共通点がある」本と見なされていたことがわかる。[3]
「アフターマン」と同じドゥーガル・ディクソンの著書である『新恐竜』(原題:The New Dinosaurs: An Alternative Evolution。1988年)の、1988年に太田出版から出版された版では、帯に荒俣宏による推薦文が載せられていた。そこでは『鼻行類』『平行植物』とこの『新恐竜』が「20世紀後半に誕生した三大名著」として称賛されている[4]。この荒俣宏の言う「20世紀後半に誕生した三大名著」のうち、『新恐竜』が何らかの理由で同作者の別作品『アフターマン』とすり替えられて成立した概念だったのではないかとも考えられる。正直、このメンツに並べるなら「新恐竜」より「アフターマン」の方がしっくり来るし、奇ッ怪な本である事に違いはないと思われるので、すり替えられるのもやむを得ないのかもしれない…
『鼻行類』『平行植物』『アフターマン』の三冊はいずれも洋書を和訳したものであるため、「生物系三大奇書」が元々海外由来の概念という可能性も無くはない。
だが、少なくとも2018年8月現在時点で上記の書籍の外国語版タイトル等で検索してみても、この三つの書籍を「三大」と並び立てている例はほぼ日本語サイトでしか見つからない。よっておそらく日本で生じたものではないかと思われる。
簡体中国語のサイトで一件のみ発見できたが、2012年の記述であり、上記のWikipedia日本語版での言及より新しい。日本語と中国語の双方を理解できる人物が、Wikipedia日本語版の「三大奇書」のページを参考に中国語で記載しただけではないか。
なお、三冊のみで挙げられているわけではないので「生物系三大奇書」の概念元としては当てはまらないが、Wikipedia英語版の「Speculative evolution」(スペキュレイティブ・エボリューション)の記事、ならびにWikipediaイタリア語版の「Evoluzione speculativa」(エボルツィオーネ・スペクラティーバ)の記事
にはこの三冊を含む複数の書籍や映像作品、ウェブサイトが挙げられている。[5]
Wikipedia日本語版には「スペキュレイティブ・エボリューション」の記事は2018年8月13日現在ではまだ無いが、英語版記事によればフィクションの一ジャンル「スペキュレイティブ・フィクション」(speculative fiction)のうち、特に「生命がもしこう進化したら」という仮説的要素にフォーカスを当てたものを指すという。
ただし、日本の「生物系三大奇書」と、海外(主に英語圏)の「スペキュレイティブ・エボリューション」では微妙に考え方が異なっている。前者は荒俣宏が日本に広めた影響からかサブカルチャーとして受け取られる傾向が強く、後者は純粋なハードSFの一分野と見られている。
そのため、海外では『平行植物』や『秘密の動物誌』といった幻想的な要素を持つ作品がスペキュレイティブ・エボリューションの文脈で出てくることは少なく、逆に日本においてSF小説である『竜の卵』や『ガラパゴスの箱舟』が三大奇書と同列に語られる事は少ない。
「この三冊気に入ったから他にもこういうの読みたいな」という人は、「スペキュレイティブ・エボリューション」というジャンルにも注目するとよいかもしれない。このジャンルに関する日本語情報は、本記事下部の「関連リンク」に掲載したブログ記事を参照。
Wikipedia英語版の「Speculative evolution」の記事に掲載されている作品(2018年8月13日現在)のうち、邦訳版が存在するもの。
掲示板
2 ななしのよっしん
2021/03/04(木) 17:36:40 ID: cnM7O9ifyL
生物系三大奇書のWikipedia記事に出典がついたよ!やったね!
3 ななしのよっしん
2021/05/18(火) 19:59:10 ID: 2Tp2GZdA0r
だいしゅきホールドの悲劇を見て、起源を追記した次第です。
因みに「思弁進化」という訳語を考案したのは、「ティラノサウルス友の会」という20年近く前のWebサイトです。
http://w
4 ななしのよっしん
2023/02/17(金) 15:07:24 ID: FPKs5jFMf0
スペキュレイティブ・エボリューションで、もし自動車事故に人間が適応したら…みたいなのがツイッターに上がってた事があったな。
提供: ウェザー
提供: びんずる
提供: Vaion(kukki)
提供: los
提供: 石野 蒼
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最終更新:2025/04/15(火) 21:00
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