空中給油 単語

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空中給油とは、ガソリンスタンドである。

概要

読んで字のごとく航空機が飛行中にを飛びながら給油を受けることで、航空機は航続距離を伸ばすことができる。

空中給油の歴史は古く、1920年代には給油機から伸ばしたホースパイロットが掴んで燃料タンクに差し込むという原始的な方法で実験を成功させている。しかし当時は技術的な問題とそれに対する利点がさほど見合わないことから、「そこまですることなくね?」と本格的な軍事利用にまでは発展しなかった。

冷戦時代になり、ソはお互いの大陸爆撃する戦略を練るにあたって空中給油の実用化にむけて動き出した。爆撃機はたいてい大きく、燃料も大量に搭載できるため航続距離も長大だが、大陸間を安全に往復するため、また命が下るまで中で長時間待機するには、空中給油でさらに滞時間を延伸する必要があったからである。

1948年には空軍B-29改造した空中給油機KB-29の運用を開始、1949年2月にはB-50がKB-29から4回の給油を受けて世界一着陸飛行を実施、空中給油が航空機の航続力を局限まで押し広げたことを世界に示している。

二つの方式

現在、空中給油の方式は二つにわけられている。フライングブーム式と、プローブ・アンド・ドローグ式である。

それぞれどんな長所と短所があるのだろうか。

フライングブーム式

給油機の尾部から給油ブームと呼ばれる棒状のものがにゅ~っと伸びてきて、これを受機の受口に差し込み、給油するというもの。給油機の下後方で受機がブームでつながれているさまはトンボ交尾にも似ている。

この方式だと一度に給油できるのは一機ずつだが、毎分30005000リットルと大量に給油できる。飛行機、とくに戦闘機はただ飛んでいるだけですさまじい量の燃料を消費するので、時間あたりの給油量が多いに越したことはないのだ。

また、給油機側のオペレーターが、UFOキャッチャーみたいなノリブームを操作し、受口に差し込んでくれるので、受側のパイロット較的楽である(あくまで較的だが)。

ただし、専用の空中給油機が必要なことから、この方式を採用しているのは、空軍と、航空自衛隊NATOの一部に限られている。

プローブ・アンド・ドローグ式

給油機から吹き流しのように給油ホースを垂らし、その先端には金属バスケットドローグ)がある。受側は、ドローグに自らの受ブームプローブ)を挿入、給油を受ける。

給油ホースがふらふら揺れるので、そこにブームを突っ込まなければならない受側のパイロットはとにかく大変。よくいわれる例えが、「全力疾走しながら針のに糸を通すようなもの」。何度も差し込みそこなっていると燃料不足で帰投不能になる可性さえある。

また、給油量も毎分2000リットルと少ないが、同時に2~3機が給油することができる。

ドローグとホース、ついでに追加燃料タンクを装着すれば理論上はどんな飛行機給油機にできるのが大きな利点。米海軍ではF/A-18E/F戦闘機を必要に応じてこの方式の空中給油機にして、お仲間F/A-18E/F給油したりしている。きょうも空母への着艦訓練でボルター(着艦をしくじってやり直すこと)を繰り返すあまり燃料がこころもとなくなったルーキーのために、給油キットを装備したF/A-18が飛び立っていることだろう。給油機のF/A-18が着艦を何度もミスって燃料が足りなくなるとまた新たなF/A-18給油キットを抱えて発艦しなければならないので、給油機に乗る操縦士はベテランが選ばれるという。

空中給油専用機についていけないヘリコプターも、ヘリ給油機にすれば空中給油が受けられるのでこの方式が鉄板

専用の給油機を調達しなくてもよいので、世界的にはこの方式が標準となっている。

フライングブーム プローブ・アンド・ドローグ式
時間あたりの給油    多い      少ない
一度に給油できる機体    一機     複数オッケー
専用の給油機が必要?    必要  どんな機体も給油機に!
側のパイロットさんからは  「まあ楽だね」 「毎回生きた心地がしないよ」

空中給油はぜいたくか?

日本では航空自衛隊フライングブーム式の空中給油機としてKC-767を4機導入している。ちなみに1機がだいたい223億円である。

「そんなに高いものを税金で買ってまで中で給油しなければならないの? 基地に降りて給油すればいいじゃん」

では空中給油機はぜいたく品なのだろうか。

飛行機にとっていちばん不要な部品は、脚である。飛んでるときにはまったくなんの役にも立たない。できれば離陸と同時に捨ててしまいたいくらいである。しかし脚がないと着陸できない。そこで設計者たちは考えた。

「脚にもっとも負担がかかるのは着陸時だ。で、着陸するころには兵装や燃料もある程度消費してるから軽くなってるはず。じゃあ強度を落として軽く作るか」

つまり戦闘機の脚はけっこう弱くできている。どれくらい弱いかというと、極端な言い方をすれば、燃料と兵装をフルに搭載したら地上で脚が折れるくらいである。現代の戦闘機は強度と重量のバランスを極限まで後者に傾ける形で設計されているのだ。

というわけで、戦闘機爆弾ミサイルをしこたま積むいっぽう、燃料はちょびっとだけしか入れずに離陸し、空中給油を受けておなかいっぱいにしてから作戦におもむくという方法をとるにいたった。ようするに、現代の戦闘機は、空中給油がないと申し訳程度の武器しか積まずに飛ばなければならないわけである。空軍では空中給油ができないパイロットはエリミネート(クビ)の対となっている。つまり空中給油はぜいたくではなく、あるのが前提という認識なのである。

これは専守防衛を是とする日本でも同様で、たとえばF-15戦闘機は、機内燃料だけでも巡航速度で4~6時間ほど飛行できるが、アフターバーナー全開の状態では18分しか飛んでいられない(実際に連続で18分もバーナー炊いたらエンジンが溶けるので、合計時間で、ということである。念のため)。で、スクランブル発進となるといちはやく標のいる高度まで上がらなければならないため、離陸滑走から急上昇のあいだはアフターバーナーを点火しつづける。数分後、予定の高度に達してバーナーを切るころには、満載だった燃料がお寒いことになっているのは想像に難くないだろう。ここから標機への対領侵犯措置、場合によっては敵航空機との戦闘が待っているし、終わったあとはちゃんと基地へ帰ってこなければならない。燃料はいくらあっても足りないのである。

このように内を防衛するだけでも空中給油はもはや必須なのが現状なのだが、航続距離が伸ばせる=他への侵略が可ということで、日本では長らくタブーとされてきた。F-4戦闘機の導入にあたっては、過剰な性兵器を配備することは周辺用な軍事的緊を強いることになるとして、核兵器運用力や爆撃コンピュータなどとともに空中給油力もオミットして調達することが決定した。これがF-4EJである。のちに本機をF-4EJ改に改修するにあたって空中給油機復活された。

そんなで空中給油機の導入にあたりなにもないわけがなく、当時の野党は反撥。安全保障会議を翌日に控えた99年12月13日には、社会民主党の党首(当時)土井たか子氏が、小渕総理(当時)あてに空中給油機の導入を取りやめるよう談話を発表している。exit

ちなみに、空中給油機があると、戦闘機給油のために着陸をしなくてもよくなるので、離発着の騒音問題は軽減される。また、給油のたびに飛行場と訓練域とを往復する行程を省くことができるので、実は燃料も時間もかえって節約できるのである。

フィクションで見る空中給油

ロブ・コーエン監督映画ステルス』では、主人公の乗る架ステルス戦闘機F/A-37タロンが空中給油を受けるシーンがある。この空中給油機もやはり架の機体で、どうやって飛んでいるのかわからない、もはや宇宙ステーションのようなびっくりどっきりメカだったが、空中給油の方法はプローブ・アンド・ドローグ式で意外と現実に沿っている。F/A-37は艦上機という設定で、すなわち海軍所属なので、専用の空中給油機を要するフライングブーム式は採用できない。空中給油の方式は必然的にプローブ・アンド・ドローグ式となるだろう。映画製作軍事へのこだわりが見てとれる。

フライトシューティングゲームエースコンバットシリーズでは、ストーリーの一部でプレイヤーが自機を操作し、空中給油を体験することができる。現実とは較にならないほど簡単にされているとはいえ、慣れていないプレイヤーはけっこう神経を使う。本シリーズにはそもそも燃料の概念がないので、空中給油は戦闘機パイロットなりきりたいプレイヤーのためのおまけイベントといった意味合いが強い。そういうわけでスキップもできる。機種ごとにフライングブーム式かプローブ・アンド・ドローグ式かちゃんと再現されているのもポイント

エースコンバット アサルト・ホライゾン』では、マルコフの駆るPAK-FAが、子分のイリッチの乗るPAK-FAプローブ・アンド・ドローグ式で空中給油するデモシーンがある。給油がすんだのち、給油キットは中投棄された。

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