蜷川親長とは (ニナガワチカナガとは) [単語記事]

「蜷川親長」（にながわ・ちかなが 1533 ～ 1610）とは、室町幕府に仕えた「新右衛門さん」である。

※アニメ「一休さん」に登場する蜷川新右衛門さんは先祖の「蜷川親当」がモデルで、蜷川氏の当主は代々「新右衛門」を名のっている。

室町幕府の事務方を務めた他、有職故実に通ずる連歌の達人と言う一級の文化人でもある。

概要

蜷川氏は、物部氏の流れを汲む宮道親直が、越中国蜷川庄を賜った事から蜷川をなのったのを祖とし、室町幕府においては、政務・財務を統括する「政所（まんどころ）」を世襲していた伊勢氏に仕えていたが、「一休さん」の新右衛門さんのモデルとされる蜷川新右衛門こと蜷川親当の代より、室町幕府の政所代を世襲することとなり、政務・財務を担当した一族である。

※代々の当主が新右衛門をなのっていた為、蜷川親長の父・蜷川親世も蜷川新右衛門であり、むろん蜷川親長も蜷川新右衛門である。

蜷川親長は、有限の剣製に定評のある室町幕府将軍・足利義輝に父と共に仕え、丹波国船井郡桐野河内を領して蟠根寺城を居城とした。

政治と文化の中心地であった京都で育った事もあってか、蜷川親長は、

室町幕府の政務・財務を担当する事務方
中世以来の官職・儀式・装束等の先例「有識故実（ゆうそくこじつ）」に通じる有識者（ゆうそくしゃ）
伊勢氏と小笠原氏より弓術・馬術・書礼等の所作の秘伝を受け、連歌にも通じた一級文化人

という政治家＋有識者＋文化人として軍事以外の面で活躍した。

※先祖で新右衛門さんのモデル「蜷川親当」は連歌史に名を残す達人の一人。

しかし、足利義輝が松永久秀や三好三人衆の手にかかって暗殺されると、室町幕府が転げ落ちるように没落していくのにあわせて蜷川親長も没落し、妻の姉妹を娶っていた四国の鬼若子・長宗我部元親に招かれて、岡豊城下の蓮如寺に屋敷を与えられて、長宗我部元親夫妻に連歌を教授した。

古典や礼法や連歌に通じ、京都の事情にも精通していた蜷川親長は、長宗我部元親から厚遇され、中央政権とのつなぎ役として外交交渉を任されたり、長宗我部元親夫妻の雅号を、等持寺の僧・策彦周良に求める使者として京都に赴いた。

センゴクのせいで未来を期待された長宗我部信親が戦死した事から歯車が狂い始めた長宗我部家が、関ヶ原の戦いにて西軍についたことから戦後に所領没収・改易となった際に、財務処理に手腕を発揮し、その途中に発生した浦戸一揆を桑名吉成らと共に平定した功績や、故実に通じる有識者であった事から、徳川家康より山城国に500石を与えられて旗本となり、御伽衆として仕える事となった。