輸入 単語

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輸入import)とは、経済学の言葉である。反対語は輸出である。

概要

定義

輸入とは、何らかの通貨を支払って外で生産される財・サービスを購入することをいう。

輸入で支払われる通貨

輸入で支払われる通貨は、基軸通貨であることが一般的であり、2025年現在においてドルアメリカ合衆国ドル)であることが一般的である。このため、輸入で支払われる通貨は輸入にとって自通貨であることもあるし外通貨であることもある。

基軸通貨発行の居住者が輸入するとき、自通貨(基軸通貨)を支払う。アメリカ合衆国の居住者が輸入するときはドルという自通貨を支払う。

非基軸通貨発行の居住者が基軸通貨発行の居住者から輸入するとき、外通貨(基軸通貨)を支払う。日本の居住者がアメリカ合衆国から輸入するときはドルという外通貨を支払う。

非基軸通貨発行Aの居住者が非基軸通貨発行Bの居住者から輸入するとき、外通貨(基軸通貨)を支払う。日本の居住者がオーストラリアから輸入するときはドルという外通貨を支払う。

輸入という行為の正体は政府購入や消費や投資のいずれか

輸入をするときは、政府購入や消費や投資のいずれかが増える。

A政府購入とは、A政府が自や外で生産される財・サービスを購入する行為の総計をいう。自で生産される財・サービスを購入する政府購入を内支出政府購入G'と呼び、外で生産される財・サービスを購入する政府購入を輸入政府購入G"と呼ぶ場合、「政府購入G=内支出政府購入G'+輸入政府購入G"」が常に成り立つ。

Aの消費とは、A計が時に損耗する的で自や外で生産される財・サービスを購入する行為の総計をいう。自で生産される財・サービスを購入する消費を内支出消費C'と呼び、外で生産される財・サービスを購入する消費を輸入消費C"と呼ぶ場合、「消費C=内支出消費C'+輸入消費C"」が常に成り立つ。

Aの投資とは、A計・企業が長い時間をかけて損耗する的で自や外で生産される財を購入する行為の総計をいう。自で生産される財を購入する投資を内支出投資I'と呼び、外で生産される財を購入する投資を輸入投資I"と呼ぶ場合、「投資I=内支出投資I'+輸入投資I"」が常に成り立つ。

以上の定義経済学教科書で再確認できる[1]

以上の定義からすれば、Aの居住者が輸入をするときは、A政府購入や消費や投資のいずれかが増えることになる。言い換えると、輸入という行為の正体は政府購入や消費や投資のいずれかである。

輸入の例

Aの居住者がB企業から工作機械とか石油といった資本財を買ったときはAの輸入投資となり、投資と輸入の両方が増える。

Aの居住者がB企業から食品鉛筆といった非耐久消費財を買ったときはAの輸入消費となり、消費と輸入の両方が増える。

Aの居住者がB企業から電話インターネットを通じて技術相談というサービスを買ったときはAの輸入消費となり、消費と輸入の両方が増える。

Aの居住者がB旅行して土産物という非耐久消費財を買ったときはAの輸入消費となり、消費と輸入の両方が増える。

Aの居住者がB旅行して音楽コンサートを鑑賞して音楽コンサートというサービスを買ったときはAの輸入消費となり、消費と輸入の両方が増える。

Aの居住者が海外旅行をして外で非耐久消費財やサービスを買ったときはAの輸入消費となり、消費と輸入の両方が増える。

A政府がB政府に賠償金とか経済協力金とか戦争協力金といった名お金を差し出したとする。これは「A政府が何らかのサービスをB政府から買った」と解釈できるので、Aの輸入政府購入となり、政府購入と輸入の両方が増える。ドイツヴェルサイユ条約に基づいて1920年代にフランスへ賠償金を支払ったが、これはドイツの輸入政府購入となり、ドイツ政府購入と輸入の両方が増えたことになる。日本日韓基本条約と同時に締結した『韓国との請権・経済協力協定』に基づいて1960年代から1970年代の10年間に3億ドル韓国へ支払ったが、これは日本の輸入政府購入となり、日本政府購入と輸入の両方が増えたことになる。日本1991年湾岸戦争の協力金として90億ドルアメリカ合衆国に支払ったが、これは日本の輸入政府購入となり、日本政府購入と輸入の両方が増えたことになる。

実質為替レートが輸入の量を決める

実質為替レートが輸入の量を決める。実質為替レートが低くなると輸出しにくくなって輸入しやすくなり、輸出が減って輸入が増え、「輸出-輸入=純輸出」で計算できる純輸出が減る。

物価が一定の短期において、名目為替レートの変化は実質為替レートの変化をそのまま反映するので、名目為替レート実質為替レートを決めて輸入の量を決める。名目為替レートが低くなると(自通貨高・外通貨安になると、日本なら円高ドル安になると)、実質為替レートも低くなり、輸出しにくくなって輸入しやすくなり、輸出が減って輸入が増え、「輸出-輸入=純輸出」で計算できる純輸出が減る。

物価が変動する長期において財政政策が輸入の量を決める

物価が変動する長期において、財政政策が実質為替レートを決めて輸入の量を決める。

国債を発行して資金を借り入れつつ政府購入を増やしたり減税して消費を増やしたりして財政政策を拡大して積極財政を実行したとする。小国開放経済なら、実質利子率と投資が一定を保ち、純資本流出純輸出が減って実質為替レートが下がり、輸入が増える[2]大国開放経済なら、実質利子率が上がって投資が減り、純資本流出純輸出が減って実質為替レートが下がり、輸入が増える[3]

総供給と輸入

物価が変動する長期において輸入をすると総供給が増えたり一定を保ったりする

物価が変動する長期において、輸入をすると、総供給が増えたり一定を保ったりする。言い換えると、輸入は総供給にを与える可性がある。

総供給とは、自で生産される財・サービス集合す。総供給Yは生産技術と労働時間Lと資本量Kで決まる。総供給Yがどのように決定されるかを説明する関数の中で有名なものはコブ=ダグラス生産関数である。

工作機械のような生産設備や石油のような原材料を輸入すると、資本量Kが増えて、総供給Yが増える。さらには、タテ軸物価・ヨコ軸実質GDPの総需要-総供給モデルにおいて、「資本量が増える有利な供給ショック」が起こって長期総供給曲線(垂直線)が右に行移動し、均衡点が総需要曲線右下がり)に沿って右下に移動し、実質GDPが増え、物価が下がり、インフレが抑制されたりデフレが促進されたりする。さらにいうと、資本量を増やして総供給を増やす輸入の典は、「政府購入のなかの公共資本財を買うもの」と投資である。

食品のような非耐久消費財やサービスを輸入すると、資本量Kが一定を保ち、総供給Yが一定を保つ。さらには、タテ軸物価・ヨコ軸実質GDPの総需要-総供給モデルにおいて、「資本量が増える有利な供給ショック」が起こるわけではないので長期総供給曲線(垂直線)が固定され、均衡点が総需要曲線右下がり)に沿って移動することがなく、実質GDPが一定を保ち、物価が一定を保ち、インフレデフレがそのままになる。さらにいうと、資本量を保って総供給を保つ輸入の典は、「政府購入のなかの消費財やサービスを買うもの」と消費である。

総供給と総需要は同量であり続ける

物価が変動する長期において、「外で生産された財・サービスを購入する投資」のように総供給を増やす輸入をした場合は、総供給が増えただけ総需要が増え、総供給と総需要が同量であり続ける。

物価が変動する長期において、「外で生産された財・サービスを購入する消費」のように総供給を一定に保つ輸入をした場合は、輸出が一定を保って「輸出-輸入=純輸出」で計算できる純輸出が減って総需要が一定を保ち、総供給と総需要が同量であり続ける。

このことはタテ軸物価・ヨコ軸実質GDPの総需要-総供給モデルで説明できる。総需要給曲線は右肩下がりで、長期総供給曲線は垂直である。長期総供給曲線の位置は総供給の規模を示しているが、それが実質GDPの規模を決め、総需要の規模を決める。

総需要と輸入

物価が変動する長期において総供給を一定に保つ輸入をすると総需要が一定を保つ

物価が変動する長期において、総供給を一定に保つ輸入をZだけ増やすと、輸入という行為の正体は政府購入や消費や投資のいずれかなので、政府購入と消費と投資の合計額がZだけ増える。そのとき、小国開放経済なら純輸出がZだけ減って総需要が一定を保つのだが、そのことはタテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルで説明される[4]。また、そのとき、大国開放経済なら投資と純輸出の合計額がZだけ減って総需要が一定を保つのだが、そのことはタテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルなどの3つのモデルで説明される[5]

以上のことは恒等式を使って表現されることがある。内の総生産Y(実質GDP)は様々な需要に対して供給される。内の総生産Y(実質GDP)に対する需要の合計を総需要と呼ぶが、その総需要は政府購入Gと消費Cと投資Iと純輸出NXの4つに分類できる。このためY=G+C+I+NX恒等式が成り立ち、その恒等式の左辺を総供給と呼び、その恒等式の右辺を総需要と呼ぶ。総供給を一定に保つ輸入をZだけ増やすと、輸入という行為の正体は政府購Gや消費Cや投資Iのいずれかなので、「政府購入Gと消費Cと投資Iの合計額」がZだけ増える。しかし、小国開放経済なら純輸出NXがZだけ減って総需要が一定を保ち、大国開放経済なら「投資Iと純輸出NXの合計額」がZだけ減って総需要が一定を保つ。

また、次のように恒等式を使って表現されることがある。自の総生産Y(実質GDP)は、自で生産された財・サービスに対する内支出政府購入G'と、自で生産された財・サービスに対する内支出消費C'と、自で生産された財に対する内支出投資I'と、輸出Xの4つに対して販売される。ゆえに開放経済恒等式はY=G'+C'+I'+Xと書くことができる[6]。この恒等式の左辺は総供給で、右辺の合計は総需要である。そして総供給を一定に保つ輸入を増やして「外で産出される財・サービスに対する需要」を増やしても、G'とC'とI'とXは変化せず一定を保ち、総需要G'+C'+I'+Xが一定を保つ。

保護貿易と輸入

保護貿易の4形態

保護貿易という政策がある。政府の操作によって輸出や輸入を増加させたり減少させたりするもので、4つの形態に分類できる。

  1. 輸出を増やす保護貿易で、自産業を保護する
  2. 輸出を減らす保護貿易で、外産業を保護する
  3. 輸入を増やす保護貿易で、外産業を保護する
  4. 輸入を減らす保護貿易で、自産業を保護する

本記事で取り上げるのは3.と4.である。

輸入を増やす保護貿易

輸入を増やす保護貿易として次のものが挙げられる。これらの政策は外産業を保護するために外政府などの要請を受けて行われる。

  1. 輸入補助金
  2. 製品優先購入制度(政府購入において外製品の購入を優先すること)

で生産される財・サービスを購入する政府購入(内支出政府購入G')を減らして外で生産される財・サービスを購入する政府購入(輸入政府購入G")を増やして政府購入Gを一定に保つ貿易政策を行うときは、1.や2.を実行する。

1.は、政府計に対して使い定しつつお金を給付しているので、政府購入の一種になる。あるいは「政府が外で生産される財・サービスを購入して輸入と政府購入を増やし、購入した財・サービス計に償で渡す制度である」と解釈してもよい。

輸入を減らす保護貿易

輸入を減らす保護貿易として次のものが挙げられる。これらの政策は内産業を保護するために企業などの要請を受けて行われる。

  1. 輸入関税
  2. 輸入割当制度
  3. 海外旅行規制や、海外旅行の際に外貨を持ち出すことの規制
  4. に居住する者に対する出税(海外旅行規制の一種)
  5. 製品優先購入制度(政府購入において自製品の購入を優先すること)

で生産される財・サービスを購入する消費(内支出消費C')を増やして外で生産される財・サービスを購入する消費(輸入消費C")を減らして消費Cを一定に保つ貿易政策を行うときは、1.や2.や3.や4.を実行する。

で生産される財を購入する投資(内支出投資I')を増やして外で生産される財を購入する投資(輸入投資I")を減らして投資Iを一定に保つ貿易政策を行うときは、1.や2.を実行する。

で生産される財・サービスを購入する政府購入(内支出政府購入G')を増やして外で生産される財・サービスを購入する政府購入(輸入政府購入G")を減らして政府購入Gを一定に保つ貿易政策を行うときは、5.を実行する。

3.の「海外旅行規制や、海外旅行の際に外貨を持ち出すことの規制」は、1960年代ごろまでの日本が盛んに行っていて、自民に対して観光的の旅行をすることを許可しなかったり、自民に対してビジネス的で旅行をすることを許可しつつ外貨の持ち出しを制限して海外で行う買い物を制限したりした。1964年4月1日にやっと観光的のパスポートの発行が許可されたが、観光的の海外旅行は1人につき1年に1回までに規制され、さらに外貨の持ち出しが500ドルにまで制限されていた。このため1960年代ごろまでの日本において海外旅行は高嶺のだった。

4.の出税は2019年になって国際観光旅客税という名前日本にも導入された。ただし日本国際観光旅客税は、日本に居住する者にも外国人観光客にも等しく課税するので、「輸入を減らす保護貿易」や「輸出を減らす保護貿易」の両方の性質を持つ。

5.の自製品優先購入制度はアメリカ合衆国が導入していて、バイアメリカン(Buy American 米国製品の購入)という名前で呼ばれている。1933年バイアメリカン法が制定され、歴代の大統領がその法律を強化する大統領を発した。

変動相場制を採用する小国開放経済の国の短期における保護貿易

変動相場制を採用する小国開放経済が、物価が一定の短期において「輸入を増やす保護貿易」や「輸入を減らす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPが一定を保つ。

変動相場制を採用する小国開放経済が物価が一定の短期において「輸入を増やす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPが一定を保つ。タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでいうと次のようになる。外製品優先購入制度などで内支出政府購入G'が減って輸入政府購入G"が増えて政府購入Gが一定を保ち、消費Cも一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸入が増えたことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が減るのでIS*曲線(右肩上がり)が左に行移動する。均衡点はLM*曲線(垂直線)に沿って上に行移動し、名目為替レート実質為替レートを上げ、輸出を増やし、純輸出を一定に保つ。つまり、内支出政府購入G'を減らして輸入政府購入G"を増やす保護貿易をすると、名目為替レート実質為替レートが上がり、輸出の増加によって純輸出が一定を保ち、実質GDPが一定を保つ。

変動相場制を採用する小国開放経済が物価が一定の短期において「輸入を減らす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPが一定を保つ。タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでいうと次のようになる。自製品優先購入制度などで内支出政府購入G'が増えて輸入政府購入G"が減って政府購入Gが一定を保ち、消費Cも一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸入が減ったことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が増えるのでIS*曲線(右肩上がり)が右に行移動する。均衡点はLM*曲線(垂直線)に沿って下に行移動し、名目為替レート実質為替レートを下げ、輸出を減らし、純輸出を一定に保つ。つまり、内支出政府購入G'を増やして輸入政府購入G"を減らす保護貿易をすると、名目為替レート実質為替レートが下がり、輸出の減少によって純輸出が一定を保ち、実質GDPが一定を保つ[7]

固定相場制を採用する小国開放経済の国の短期における保護貿易

固定相場制を採用する小国開放経済が、物価が一定の短期において、「輸入を増やす保護貿易」をすると純輸出が減って実質GDPが減って外貨準備高が減り、「輸入を減らす保護貿易」をすると純輸出が増えて実質GDPが増えて外貨準備高が増える。

固定相場制を採用する小国開放経済が物価が一定の短期において「輸入を増やす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPと外貨準備高が減る。タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでいうと次のようになる。外製品優先購入制度などで内支出政府購入G'が減って輸入政府購入G"が増えて政府購入Gが一定を保ち、消費Cも一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸入が増えたことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が減るのでIS*曲線(右肩上がり)が左に行移動する。均衡点がLM*曲線(垂直線)に沿って上に行移動し、名目為替レートを上げる。固定相場制を維持する中央銀行が自通貨買い・外通貨売りを行ってマネーサプライMと外貨準備高を減らして名目為替レートを下げ、名目為替レートを一定に保つ。LM*曲線が左に行移動し、実質GDPが減る。輸入が増加しつつ輸出が一定を保って純輸出が減り、純輸出の減少がそのまま実質GDPの減少になる。

固定相場制を採用する小国開放経済が物価が一定の短期において「輸入を減らす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPと外貨準備高が増える。タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでいうと次のようになる。自製品優先購入制度などで内支出政府購入G'が増えて輸入政府購入G"が減って政府購入Gが一定を保ち、消費Cも一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸入が減ったことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が増えるのでIS*曲線(右肩上がり)が右に行移動する。均衡点がLM*曲線(垂直線)に沿って下に行移動し、名目為替レートを下げる。固定相場制を維持する中央銀行が自通貨売り・外通貨買いを行ってマネーサプライMと外貨準備高を増やして名目為替レートを上げ、名目為替レートを一定に保つ。LM*曲線が右に行移動し、実質GDPが増える。輸入が減少しつつ輸出が一定を保って純輸出が増え、純輸出の増加がそのまま実質GDPの増加になる『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』380~381ページ

大国開放経済の国の短期における保護貿易

大国開放経済は、閉鎖経済小国開放経済の中間に位置する。つまり大国開放経済の中には、「固定相場制を採用する小国開放経済」の性質を持つや「変動相場制を採用する小国開放経済」の性質を持つがある。

このため、大国開放経済が物価が一定の短期において保護貿易を行ったときは、「固定相場制を採用する小国開放経済」や「変動相場制を採用する小国開放経済」と同じ結果を生む。

小国開放経済の国の長期における保護貿易

小国開放経済が物価が変動する長期において「輸入を増やす保護貿易」や「輸入を減らす保護貿易」をすると純輸出が一定を保つ。

小国開放経済が物価が変動する長期において「輸入を増やす保護貿易」をすると、純輸出が一定を保つ。タテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルでいうと次のようになる。外製品優先購入制度などで内支出政府購入G'が減って輸入政府購入G"が増えて政府購入Gが一定を保ち、消費Cも一定を保つので、民貯蓄が一定を保ち、純輸出供給曲線(垂直線)が固定されたままになる。輸入が増えたことでどの実質為替レートにおいても純輸出が減るので純輸出需要曲線(右肩上がり)が左に行移動する。均衡点は純輸出供給曲線に沿って上に行移動し、実質為替レートを上げ、輸出を増やし、純輸出を一定に保つ。つまり、内支出政府購入G'を減らして輸入政府購入G"を増やす保護貿易をすると、実質為替レートが上がり、輸出の増加によって純輸出が一定を保つ。

小国開放経済が物価が変動する長期において「輸入を減らす保護貿易」をすると、純輸出が一定を保つ。タテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルでいうと次のようになる。自製品優先購入制度などで内支出政府購入G'が増えて輸入政府購入G"が減って政府購入Gが一定を保ち、消費も一定を保つので、民貯蓄が一定を保ち、純輸出供給曲線(垂直線)が固定されたままになる。輸入が減ったことでどの実質為替レートにおいても純輸出が増えるので純輸出需要曲線(右肩上がり)が右に行移動する。均衡点は純輸出供給曲線に沿って下に行移動し、実質為替レートを下げ、輸出を減らし、純輸出を一定に保つ。つまり、内支出政府購入G'を増やして輸入政府購入G"を増やす保護貿易をすると、実質為替レートが下がり、輸出の減少によって純輸出が一定を保つ[8]

大国開放経済の国の長期における保護貿易

大国開放経済が物価が変動する長期において「輸入を増やす保護貿易」や「輸入を減らす保護貿易」をすると純輸出が一定を保つ。

大国開放経済が物価が変動する長期において「輸入を増やす保護貿易」をすると、純輸出が一定を保つ。外製品優先購入制度などで内支出政府購入G'が減って輸入政府購入G"が増えて政府購入Gが一定を保ち、消費Cも一定を保つので、民貯蓄が一定を保ち、実質利子率と投資が一定を保ち、純資本流出純輸出が一定を保つ。タテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルの中で、純輸出供給曲線(垂直線)が固定されたままになり、輸入が増えたことでどの実質為替レートにおいても純輸出が減るので純輸出需要曲線(右肩上がり)が左に行移動する。均衡点は純輸出供給曲線に沿って上に行移動し、実質為替レートを上げ、輸出を増やし、純輸出を一定に保つ。つまり、内支出政府購入G'を減らして輸入政府購入G"を増やす保護貿易をすると、実質為替レートが上がり、輸出の増加によって純輸出が一定を保つ。

大国開放経済が物価が変動する長期において「輸入を減らす保護貿易」をすると、純輸出が一定を保つ。自製品優先購入制度などで内支出政府購入G'が増えて輸入政府購入G"が減って政府購入Gが一定を保ち、消費Cも一定を保つので、民貯蓄が一定を保ち、実質利子率と投資が一定を保ち、純資本流出純輸出が一定を保つ。タテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルの中で、純輸出供給曲線(垂直線)が固定されたままになり、輸入が減ったことでどの実質為替レートにおいても純輸出が増えるので純輸出需要曲線(右肩上がり)が右に行移動する。均衡点は純輸出供給曲線に沿って下に行移動し、実質為替レートを下げ、輸出を減らし、純輸出を一定に保つ。つまり、内支出政府購入G'を増やして輸入政府購入G"を減らす保護貿易をすると、実質為替レートが下がり、輸出の減少によって純輸出が一定を保つ[9]

長期において純輸出を増やしたいのなら緊縮財政をする

純輸出を増やして貿易赤字を減らす」という口実で輸入を減らす保護貿易をする政治家がいる。

しかし、輸入を減らす保護貿易という貿易政策には、物価が変動する長期において純輸出を増やす効果がない。そのため、「純輸出を増やして貿易赤字を減らす」という口実で輸入を減らす保護貿易をすることは意味なことである。

物価が変動する長期において純輸出を増やす効果を持つ政策というと縮小的な財政政策であり、緊縮財政である。財政政策を縮小して政府購入と消費を減らすと民貯蓄が増え、小国開放経済なら純資本流出純輸出が増えて実質為替レートが上がり[10]大国開放経済なら実質利子率が下がって投資と純資本流出純輸出が増えて実質為替レートが上がる[11]

変動相場制と輸入

変動相場制の自動調整メカニズム

変動相場制を採用する小国開放経済において、自商品を買わずに外製品を買うことが流行し、輸入が増えたとする。そのとき、変動相場制の自動調整メカニズムが発生し、名目為替レートが上がって(自通貨安・外通貨高になって)、短期で物価が一定である場合は実質為替レートも上がって輸入しにくくなる。

変動相場制の自動調整メカニズムは次のように説明される。輸入が増えると外為替市場において輸入業者による自通貨売り・外通貨買いの勢いが強くなり、名目為替レートが上がって(自通貨安・外通貨高になって)、短期で物価が一定である場合は実質為替レートも上がって輸入しにくくなる。

また、変動相場制の自動調整メカニズムはタテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでも説明できるのだが、その場合は「輸入を増やす保護貿易」のときとほとんど同じ説明になる。自商品を買わずに外製品を買うことが流行し、内支出消費C'が減って輸入消費C"が増えて消費Cが一定を保ち、政府購入Gも一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸入が増えたことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が減るのでIS*曲線(右肩上がり)が左に行移動する。均衡点はLM*曲線(垂直線)に沿って上に行移動し、名目為替レートを上げて自通貨安・外通貨高にして、短期で物価が一定なので実質為替レートも上げて輸出を増やして純輸出を一定に保つ。つまり、内支出消費C'を減らして輸入消費C"を増やす輸入ブームが起こると、名目為替レートが上がり、短期で物価が一定である場合は実質為替レートが上がり、輸出の増加によって純輸出が一定を保ち、実質GDPが一定を保つ。

固定相場制と輸入

固定相場制を採用する小国開放経済の国において輸入の増加で外貨準備高が減る

固定相場制を採用する小国開放経済において、自商品を買わずに外製品を買うことが流行し、輸入が増えたとする。そのとき、外貨準備高が減る。外貨準備高が減ることが過度に発生すると、際的投資が「将来において固定相場制を維持できなくなるかもしれない」などと疑うようになり、際的投資による投機攻撃が発生する。際的投資による投機攻撃が過度に発生すると、自通貨安・外通貨高の名目為替レートを新たな標値にするようになって「自通貨切り下げ」の事態になり、固定相場制が実質的に崩壊する。このため固定相場制を採用する小国開放経済において、「輸入は危険な行動であり、輸入は富の流出であり、輸入は衰退である」などと語られやすく、輸入を忌避する雰囲気が強くなりがちである。

固定相場制を採用する小国開放経済において輸入が増えると外貨準備高が減ることは次のように説明される。輸入が増えると外為替市場において輸入業者による自通貨売り・外通貨買いの勢いが強くなり、名目為替レートを維持する固定相場制を維持するために中央銀行が自通貨買い・外通貨売りを行い、中央銀行の外貨準備高が減る。

また、固定相場制を採用する小国開放経済において輸入が増えると外貨準備高が減ることはタテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでも説明できるのだが、その場合は「輸入を増やす保護貿易」のときとほとんど同じ説明になる。自商品を買わずに外製品を買うことが流行し、内支出消費C'が減って輸入消費C"が増えて消費Cが一定を保ち、政府購入Gも一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸入が増えたことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が減るのでIS*曲線(右肩上がり)が左に行移動し、均衡点がLM*曲線(垂直線)に沿って上に行移動して名目為替レートを上げる。中央銀行が自通貨買い・外通貨売りを行って外貨準備高を減らしつつマネーサプライMを減らすので、LM*曲線が左に行移動し、均衡点がIS*曲線(右肩上がり)に沿って左下に移動し、名目為替レートが下がって元の準に戻る。短期で物価が一定なので実質為替レートも一定の準を保ち、輸出が一定に保たれる。輸入が増えた分だけ純輸出が減り、実質GDPが減る。つまり、内支出消費C'を減らして輸入消費C"を増やす輸入ブームが起こると、外貨準備高が減り、輸入の増加によって純輸出が減り、実質GDPが減る。

関連項目

脚注

  1. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』40ページ165~167ページ
  2. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー175~176ページ
  3. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー213ページ
  4. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー175~176ページ
  5. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー213ページ
  6. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー165ページ
  7. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』372373ページ
  8. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』192~193ページ
  9. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー215ページ
  10. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー188~190ページ
  11. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー212213ページ
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