輸出 単語

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輸出export)とは、経済学の言葉である。反対語は輸入である。

概要

定義

輸出とは、自で生産される財・サービスを外に居住する者へ売却して何らかの通貨を受け取ることをいう。

輸出で受け取る通貨

輸出で受け取る通貨は、基軸通貨であることが一般的であり、2025年現在においてドルアメリカ合衆国ドル)であることが一般的である。このため、輸出で受け取る通貨は輸出にとって自通貨であることもあるし外通貨であることもある。

基軸通貨発行企業が輸出するとき、自通貨(基軸通貨)を受け取る。アメリカ合衆国企業が輸出するときはドルという自通貨を受け取る。

非基軸通貨発行企業が基軸通貨発行の居住者に輸出するとき、外通貨(基軸通貨)を受け取る。日本企業アメリカ合衆国の居住者に輸入するときはドルという外通貨を受け取る。

非基軸通貨発行Aの企業が非基軸通貨発行Bの居住者に輸出するとき、外通貨(基軸通貨)を受け取る。日本企業オーストラリアの居住者に輸出するときはドルという外通貨を受け取る。

輸出の例

A企業がBの居住者に工作機械とか石油といった資本財を売ったときはAの輸出となる。

A企業がBの居住者に食品鉛筆といった非耐久消費財を売ったときはAの輸出となる。

A企業がBの居住者に電話インターネットを通じて技術相談というサービスを売ったときはAの輸出となる。

A企業がBから旅行してきた人に土産物という非耐久消費財を売ったときはAの輸出となる。

A企業がBから旅行してきた人に音楽コンサートを鑑賞させて音楽コンサートというサービスを売ったときはAの輸出となる。

A企業外国人観光客インバウンド)に非耐久消費財やサービスを売ったときはAの輸出となる。

A政府がB政府から賠償金とか経済協力金とか戦争協力金といった名お金を受け取ったとする。これは「A政府が何らかのサービスをB政府に売った」と解釈できるので、AがBサービスを輸出した現象とみなすことができる。フランスヴェルサイユ条約に基づいて1920年代にドイツからへ賠償金を受け取ったが、これはフランスドイツサービスを輸出した現象と見なすことができる。韓国日韓基本条約と同時に締結した『韓国との請権・経済協力協定』に基づいて1960年代から1970年代の10年間に3億ドル日本から受け取ったが、これは韓国日本サービスを輸出した現象と見なすことができる。アメリカ合衆国1991年湾岸戦争の協力金として90億ドル日本から受け取ったが、これはアメリカ合衆国日本サービスを輸出した現象と見なすことができる。

実質為替レートが輸出の量を決める

実質為替レートが輸出の量を決める。実質為替レートが高くなると輸出しやすくなって輸入しにくくなり、輸出が増えて輸入が減り、「輸出-輸入純輸出」で計算できる純輸出が増える。

物価が一定の短期において、名目為替レートの変化は実質為替レートの変化をそのまま反映するので、名目為替レート実質為替レートを決めて輸出の量を決める。名目為替レートが高くなると(自通貨安・外通貨高になると、日本なら円安ドル高になると)、実質為替レートも高くなり、輸出しやすくなって輸入しにくくなり、輸出が増えて輸入が減り、「輸出-輸入純輸出」で計算できる純輸出が増える。

物価が変動する長期において財政政策が輸出の量を決める

物価が変動する長期において、財政政策が実質為替レートを決めて輸出の量を決める。

国債を発行して資金を借り入れつつ政府購入をすることを減らしたり増税して消費を減らしたりして財政政策を縮小して緊縮財政を実行したとする。小国開放経済なら、実質利子率と投資が一定を保ち、純資本流出純輸出が増えて実質為替レートが上がり、輸出が増える[1]大国開放経済なら、実質利子率が下がって投資が増え、純資本流出純輸出が増えて実質為替レートが上がり、輸出が増える[2]

総供給と輸出

輸出は総供給に影響を与えない

輸出をしても総供給にを与えず、総供給が一定を保つ。

総供給とは、自で生産される財・サービス集合す。総供給Yは生産技術と労働時間Lと資本量Kで決まる。総供給Yがどのように決定されるかを説明する関数の中で有名なものはコブ=ダグラス生産関数である。

輸出をしても生産技術や労働時間Lと資本量Kにを与えないので、総供給Yが変化しない。

総需要と輸出

総供給を一定に保つ国が輸出を増やすと政府購入と消費と投資の合計が減って総需要が一定を保つ

総供給を一定に保つが輸出をZだけ増やすと、自で生産された財・サービスに対する内支出政府購入G'と自で生産された財・サービスに対する内支出消費C'と自で生産された財に対する内支出投資I'の合計額がZだけ減り、総需要が一定を保つ。

以上のことは恒等式を使って表現されることがある。内の総生産Y(実質GDP)は様々な需要に対して供給される。内の総生産Y(実質GDP)に対する需要の合計を総需要と呼ぶが、その総需要は政府購入Gと消費Cと投資Iと純輸出NXの4つに分類できる。このためY=G+C+I+NX恒等式が成り立ち、その恒等式の左辺を総供給と呼び、その恒等式の右辺を総需要と呼ぶ。そして総供給を一定に保つが輸出をZだけ増やすと、政府購入Gと消費Cと投資Iの合計をZだけ減少させて総需要を一定に保つ必要が発生する。

また、次のように恒等式を使って表現されることがある。自の総生産Y(実質GDP)は、自で生産された財・サービスに対する内支出政府購入G'と、自で生産された財・サービスに対する内支出消費C'と、自で生産された財に対する内支出投資I'と、輸出Xの4つに対して販売される。ゆえに開放経済恒等式はY=G'+C'+I'+Xと書くことができる[3]。この恒等式の左辺は総供給で、右辺の合計は総需要である。そして総供給を一定に保つが輸出をZだけ増やすと、内支出政府購入G'と内支出消費C'と内支出投資I'の合計をZだけ減少させて総需要を一定に保つ必要が発生する。そして、内支出政府購入G'と内支出消費C'と内支出投資I'の合計がZだけ減少するときは、政府購入Gと消費Cと投資Iの合計がZだけ減ることになる。

保護貿易と輸入

保護貿易の4形態

保護貿易という政策がある。政府の操作によって輸出や輸入を増加させたり減少させたりするもので、4つの形態に分類できる。

  1. 輸出を増やす保護貿易で、自産業を保護する
  2. 輸出を減らす保護貿易で、外産業を保護する
  3. 輸入を増やす保護貿易で、外産業を保護する
  4. 輸入を減らす保護貿易で、自産業を保護する

本記事で取り上げるのは1.と2.である。

輸出を増やす保護貿易

輸出を増やす保護貿易として次のものが挙げられる。これらの政策は内産業を保護するために政府が外政府などに圧力を掛けることで行われる。

  1. における輸入補助金
  2. における外製品優先購入制度(政府購入において外製品の購入を優先すること)

1.も2.も、A政府がB政府に圧力を掛け、BにおけるA製品の購入を増やさせるものである。

輸出を減らす保護貿易

輸出を減らす保護貿易として次のものが挙げられる。これらの政策は外産業を保護するために外政府などの要請を受けて行われる。

  1. 輸出関税
  2. 輸出割当制度や輸出自主規制
  3. に居住しない者に対する出

3.の出税は、外国人観光客に対して「あのに入したら出するときに税金を払う羽になる」と思わせて外国人観光客の流入を抑制するものである。

3.の出税は2019年になって国際観光旅客税という名前日本にも導入された。ただし日本国際観光旅客税は、日本に居住する者にも外国人観光客にも等しく課税するので、「輸入を減らす保護貿易」や「輸出を減らす保護貿易」の両方の性質を持つ。

輸出を増やす保護貿易に見えるがそうではないもの

輸出補助金という制度があり、政府が輸出業者に対して値引きをさせながら値引きによって発生する損失の補填として補助金を支払うものである。

これは自で生産される財・サービスに対する政府購入である。「Aの輸出補助金とは、A政府が自で生産される財・サービス政府購入の一環として買い上げ、A商品を買い取った外業者に対してA政府が財・サービス償で渡し、自の輸出業者の価格競争力を高めるものである」と解釈してもよい。

輸出補助金の制度を行うと、政府購入が増えるだけで輸出が増えない。ゆえに輸出補助金の制度は財政政策の一種であり、貿易政策の一種ではなく、保護貿易に該当しない。

変動相場制を採用する小国開放経済の国の短期における保護貿易

変動相場制を採用する小国開放経済が、物価が一定の短期において「輸出を増やす保護貿易」や「輸出を減らす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPが一定を保つ。

変動相場制を採用する小国開放経済が物価が一定の短期において「輸出を増やす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPが一定を保つ。タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでいうと次のようになる。A政府が外政府に圧力を掛けて自製品を買わせてAの輸出が増えた場合、A政府購入Gと消費Cが一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸出が増えたことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が増えるのでIS*曲線(右肩上がり)が右に行移動する。均衡点はLM*曲線(垂直線)に沿って下に行移動し、名目為替レート実質為替レートを下げ、輸入を増やし、純輸出を一定に保つ。つまり、輸出を増やす保護貿易をすると、名目為替レート実質為替レートが下がり、輸入の増加によって純輸出が一定を保ち、実質GDPが一定を保つ。ちなみに、ここでの輸入の増加は、内支出政府購入G'が輸入政府購入G"に代わったり内支出消費C'が輸入消費C"に代わったり内支出投資I'が輸入投資I"に代わったりするものであり、政府購入Gや消費Cや投資Iを一定に保つものである。

変動相場制を採用する小国開放経済が物価が一定の短期において「輸出を減らす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPが一定を保つ。タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでいうと次のようになる。A政府が輸出割当制度を導入してAの輸出が減った場合、A政府購入Gと消費Cが一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸出が減ったことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が減るのでIS*曲線(右肩上がり)が左に行移動する。均衡点はLM*曲線(垂直線)に沿って上に行移動し、名目為替レート実質為替レートを上げ、輸入を減らし、純輸出を一定に保つ。つまり、輸出を減らす保護貿易をすると、名目為替レート実質為替レートが上がり、輸入の減少によって純輸出が一定を保ち、実質GDPが一定を保つ。ちなみに、ここでの輸入の減少は、輸入政府購入G"が内支出政府購入G'に代わったり輸入消費C"が内支出消費C'に代わったり輸入投資I"が内支出投資I'に代わったりするものであり、政府購入Gや消費Cや投資Iを一定に保つものである。

固定相場制を採用する小国開放経済の国の短期における保護貿易

固定相場制を採用する小国開放経済が、物価が一定の短期において、「輸出を増やす保護貿易」をすると純輸出が増えて実質GDPが増えて外貨準備高が増え、「輸出を減らす保護貿易」をすると純輸出が減って実質GDPが減って外貨準備高が減る。

固定相場制を採用する小国開放経済が物価が一定の短期において「輸出を増やす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPと外貨準備高が増える。タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでいうと次のようになる。A政府が外政府に圧力を掛けて自製品を買わせてAの輸出が増えた場合、A政府購入Gと消費Cが一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸出が増えたことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が増えるのでIS*曲線(右肩上がり)が右に行移動する。均衡点がLM*曲線(垂直線)に沿って下に行移動し、名目為替レートを下げる。固定相場制を維持する中央銀行が自通貨売り・外通貨買いを行ってマネーサプライMと外貨準備高を増やして名目為替レートを上げ、名目為替レートを一定に保つ。LM*曲線が右に行移動し、実質GDPが増える。輸出が増加しつつ輸入が一定を保って純輸出が増え、純輸出の増加がそのまま実質GDPの増加になる。

固定相場制を採用する小国開放経済が物価が一定の短期において「輸出を減らす保護貿易」をすると、純輸出と実質GDPと外貨準備高が減る。タテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでいうと次のようになる。A政府が輸出割当制度を導入してAの輸出が減った場合、A政府購入Gと消費Cが一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸出が減ったことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が減るのでIS*曲線(右肩上がり)が左に行移動する。均衡点がLM*曲線(垂直線)に沿って上に行移動し、名目為替レートを上げる。固定相場制を維持する中央銀行が自通貨買い・外通貨売りを行ってマネーサプライMと外貨準備高を減らして名目為替レートを下げ、名目為替レートを一定に保つ。LM*曲線が左に行移動し、実質GDPが減る。輸出が減少しつつ輸入が一定を保って純輸出が減り、純輸出の減少がそのまま実質GDPの減少になる。

大国開放経済の国の短期における保護貿易

大国開放経済は、閉鎖経済小国開放経済の中間に位置する。つまり大国開放経済の中には、「固定相場制を採用する小国開放経済」の性質を持つや「変動相場制を採用する小国開放経済」の性質を持つがある。

このため、大国開放経済が物価が一定の短期において保護貿易を行ったときは、「固定相場制を採用する小国開放経済」や「変動相場制を採用する小国開放経済」と同じ結果を生む。

小国開放経済の国の長期における保護貿易

小国開放経済が物価が変動する長期において「輸出を増やす保護貿易」や「輸出を減らす保護貿易」をすると純輸出が一定を保つ。

小国開放経済が物価が変動する長期において「輸出を増やす保護貿易」をすると、純輸出が一定を保つ。タテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルでいうと次のようになる。A政府が外政府に圧力を掛けて自製品を買わせてAの輸出が増えた場合、A政府購入Gと消費Cが一定を保つので、民貯蓄が一定を保ち、純輸出供給曲線(垂直線)が固定されたままになる。輸出が増えたことでどの実質為替レートにおいても純輸出が増えるので純輸出需要曲線(右肩上がり)が右に行移動する。均衡点は純輸出供給曲線に沿って下に行移動し、実質為替レートを下げ、輸入を増やし、純輸出を一定に保つ。つまり、輸出を増やす保護貿易をすると、実質為替レートが下がり、輸入の増加によって純輸出が一定を保つ。ちなみに、ここでの輸入の増加は、内支出政府購入G'が輸入政府購入G"に代わったり内支出消費C'が輸入消費C"に代わったり内支出投資I'が輸入投資I"に代わったりするものであり、政府購入Gや消費Cや投資Iを一定に保つものである。

小国開放経済が物価が変動する長期において「輸出を減らす保護貿易」をすると、純輸出が一定を保つ。タテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルでいうと次のようになる。A政府が輸出割当制度を導入してAの輸出が減った場合、A政府購入Gと消費Cが一定を保つので、民貯蓄が一定を保ち、純輸出供給曲線(垂直線)が固定されたままになる。輸出が減ったことでどの実質為替レートにおいても純輸出が減るので純輸出需要曲線(右肩上がり)が左に行移動する。均衡点は純輸出供給曲線に沿って上に行移動し、実質為替レートを上げ、輸入を減らし、純輸出を一定に保つ。つまり、輸出を減らす保護貿易をすると、実質為替レートが上がり、輸入の減少によって純輸出が一定を保つ。ちなみに、ここでの輸入の減少は、輸入政府購入G"が内支出政府購入G'に代わったり輸入消費C"が内支出消費C'に代わったり輸入投資I"が内支出投資I'に代わったりするものであり、政府購入Gや消費Cや投資Iを一定に保つものである。

大国開放経済の国の長期における保護貿易

大国開放経済が物価が変動する長期において「輸出を増やす保護貿易」や「輸出を減らす保護貿易」をすると純輸出が一定を保つ。

大国開放経済が物価が変動する長期において「輸出を増やす保護貿易」をすると、純輸出が一定を保つ。A政府が外政府に圧力を掛けて自製品を買わせてAの輸出が増えた場合、A政府購入Gと消費Cが一定を保つので、民貯蓄が一定を保ち、実質利子率と投資が一定を保ち、純資本流出純輸出が一定を保つ。タテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルの中で、純輸出供給曲線(垂直線)が固定されたままになり、輸出が増えたことでどの実質為替レートにおいても純輸出が増えるので純輸出需要曲線(右肩上がり)が右に行移動する。均衡点は純輸出供給曲線に沿って下に行移動し、実質為替レートを下げ、輸入を増やし、純輸出を一定に保つ。つまり、輸出を増やす保護貿易をすると、実質為替レートが下がり、輸入の増加によって純輸出が一定を保つ。ちなみに、ここでの輸入の増加は、内支出政府購入G'が輸入政府購入G"に代わったり内支出消費C'が輸入消費C"に代わったり内支出投資I'が輸入投資I"に代わったりするものであり、政府購入Gや消費Cや投資Iを一定に保つものである。

大国開放経済が物価が変動する長期において「輸出を減らす保護貿易」をすると、純輸出が一定を保つ。A政府が輸出割当制度を導入してAの輸出が減った場合、A政府購入Gと消費Cが一定を保つので、民貯蓄が一定を保ち、実質利子率と投資が一定を保ち、純資本流出純輸出が一定を保つ。タテ軸実質為替レート・ヨコ軸純輸出モデルの中で、純輸出供給曲線(垂直線)が固定されたままになり、輸出が減ったことでどの実質為替レートにおいても純輸出が減るので純輸出需要曲線(右肩上がり)が左に行移動する。均衡点は純輸出供給曲線に沿って上に行移動し、実質為替レートを上げ、輸出を増やし、純輸出を一定に保つ。つまり、輸出を減らす保護貿易をすると、実質為替レートが上がり、輸入の減少によって純輸出が一定を保つ。ちなみに、ここでの輸入の減少は、輸入政府購入G"が内支出政府購入G'に代わったり輸入消費C"が内支出消費C'に代わったり輸入投資I"が内支出投資I'に代わったりするものであり、政府購入Gや消費Cや投資Iを一定に保つものである。

長期において純輸出を増やしたいのなら緊縮財政をする

純輸出を増やして貿易赤字を減らす」という口実で輸出を増やす保護貿易をする政治家がいる。

しかし、輸出を増やす保護貿易という貿易政策には、物価が変動する長期において純輸出を増やす効果がない。そのため、「純輸出を増やして貿易赤字を減らす」という口実で輸出を増やす保護貿易をすることは意味なことである。

物価が変動する長期において純輸出を増やす効果を持つ政策というと縮小的な財政政策であり、緊縮財政である。財政政策を縮小して政府購入と消費を減らすと民貯蓄が増え、小国開放経済なら純資本流出純輸出が増えて実質為替レートが上がり[4]大国開放経済なら実質利子率が下がって投資と純資本流出純輸出が増えて実質為替レートが上がる[5]

変動相場制と輸出

変動相場制の自動調整メカニズム

変動相場制を採用する小国開放経済のAがあり、A以外のにおいてA製品を買うことが流行し、Aの輸出が増えたとする。そのとき、変動相場制の自動調整メカニズムが発生し、名目為替レートが下がって(自通貨高・外通貨安になって)、短期で物価が一定である場合は実質為替レートも下がって輸出しにくくなる。

変動相場制の自動調整メカニズムは次のように説明される。輸出が増えると外為替市場において輸出業者による自通貨買い・外通貨売りの勢いが強くなり、名目為替レートが下がって(自通貨高・外通貨安になって)、短期で物価が一定である場合は実質為替レートも下がって輸出しにくくなる。

また、変動相場制の自動調整メカニズムはタテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでも説明できるのだが、その場合は「輸出を増やす保護貿易」のときとほとんど同じ説明になる。政府購入Gや消費Cが一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸出が増えたことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が増えるのでIS*曲線(右肩上がり)が右に行移動する。均衡点はLM*曲線(垂直線)に沿って下に行移動し、名目為替レートを下げて自通貨高・外通貨安にして、短期で物価が一定なので実質為替レートも下げて輸入を増やして純輸出を一定に保つ。つまり、輸出ブームが起こると、名目為替レートが下がり、短期で物価が一定である場合は実質為替レートが下がり、輸入の増加によって純輸出が一定を保ち、実質GDPが一定を保つ。

固定相場制と輸出

固定相場制を採用する小国開放経済の国において輸出の増加で外貨準備高が増える

固定相場制を採用する小国開放経済のAがあり、A以外のにおいてA製品を買うことが流行し、Aの輸出が増えたとする。そのとき、外貨準備高が増える。外貨準備高が増えることが十分に発生すると、際的投資が「将来においても固定相場制を維持できるだろう」などと安心するようになり、際的投資による投機攻撃が発生しにくくなる。ちなみに、際的投資による投機攻撃が過度に発生すると、自通貨安・外通貨高の名目為替レートを新たな標値にするようになって「自通貨切り下げ」の事態になり、固定相場制が実質的に崩壊する。このため固定相場制を採用する小国開放経済において、「輸出は安全な行動であり、輸入富の流入であり、輸出は繁栄である」などと語られやすく、輸出を待望する雰囲気が強くなりがちである。

固定相場制を採用する小国開放経済において輸出が増えると外貨準備高が増えることは次のように説明される。輸出が増えると外為替市場において輸出業者による自通貨買い・外通貨売りの勢いが強くなり、名目為替レートを一定にして固定相場制を維持するために中央銀行が自通貨売り・外通貨買いを行い、中央銀行の外貨準備高が増える。

また、固定相場制を採用する小国開放経済において輸出が増えると外貨準備高が増えることはタテ軸名目為替レート・ヨコ軸実質GDPのマンデル=フレミングモデルでも説明できるのだが、その場合は「輸出を増やす保護貿易」のときとほとんど同じ説明になる。政府購入Gと消費Cが一定を保つので、それらの要因でIS*曲線行移動しない。輸出が増えたことでどの名目為替レート実質為替レートにおいても純輸出が増えるのでIS*曲線(右肩上がり)が右に行移動し、均衡点がLM*曲線(垂直線)に沿って下に行移動して名目為替レートを下げる。中央銀行が自通貨売り・外通貨買いを行って外貨準備高を増やしつつマネーサプライMを増やすので、LM*曲線が右に行移動し、均衡点がIS*曲線(右肩上がり)に沿って右上に移動し、名目為替レートが上がって元の準に戻る。短期で物価が一定なので実質為替レートも一定の準を保ち、輸出が一定に保たれる。輸出が増えた分だけ純輸出が増え、実質GDPが増える。つまり、輸出ブームが起こると、外貨準備高が増え、輸出の増加によって純輸出が増え、実質GDPが増える。

関連項目

脚注

  1. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー175~176ページ
  2. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー213ページ
  3. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー165ページ
  4. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー188~190ページ
  5. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー212213ページ
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