金城哲夫とは (キンジョウテツオとは) [単語記事]

金城哲夫とは、日本の脚本家である。

概要

1938年 7月5日生まれ。沖縄県島尻郡南風原町出身だが、生まれは東京の芝。
玉川学園高等部、玉川大学文学部教育学科卒業。

玉川学園高等部時の担任であり玉川大学文学部の専任講師であった上原輝男の影響を受け、脚本に興味を持ち始める。大学卒業後の進路として脚本家を志望していたところ、上原教諭によって円谷英二を紹介される（上原は円谷皐を教えていた縁で円谷英二と面識があり、劇場映画の脚本の相談も受けていた）。
英二の紹介で関沢新一に師事。関沢はアニメーターの経験が有り、「絵が浮かんで書く」タイプの脚本家であった事が、映像化を念頭に入れた制作スタイルに繋がっている。

1959年の夏から円谷宅を訪れるようになる。英二は元より、長男の円谷一から特に気に入られ、宛ら本物の兄弟のように仲が良かったという。
1961年、TBSの円谷一演出作である『絆』で脚本家デビュー。

1963年に円谷プロダクションへ入社。企画文芸部の主任として、『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『快獣ブースカ』などの初期円谷プロ製作の特撮テレビドラマの企画立案と脚本を手掛け、その才覚を遺憾無く発揮、円谷プロの黄金期を支えた。
また、他のシナリオライターへの発注・改訂作業を行ったり、監督のローテーションを組むなど、所謂シリーズ構成としての役割も担っていた。

しかし、その後『マイティジャック』『怪奇大作戦』などヒット作に恵まれず番組の受注が途絶えた円谷プロは、経営状態が悪化したため大幅なリストラを敢行。文芸部も廃止され、脚本家ではなくフリーのプロデューサーとしての立場を迫られた事などから1969年に円谷プロを退社し、沖縄に帰郷。

帰郷後は、琉球放送のラジオ番組『モーニング・パトロール』のパーソナリティーやテレビ出演、沖縄芝居の脚本・演出などで活躍、1975年には沖縄海洋博の構成･演出も務めたが、円谷プロで見せた辣腕を振るう事は無かった。
ラジオでの発言や、海洋博の不振などから地元住民の不評を買ってしまい、酒に溺れる精神的な要因になったとも言われる。1973年頃よりアルコール依存症の症状が見られ、沖縄の母・つる子から「酒を飲ませてくれるな」との電話があったという。

1976年 2月23日、泥酔した状態で自宅2階の仕事場へ直接入ろうとして足を滑らせ転落。直ちに病院に搬送されたものの、3日後の2月26日に脳挫傷のため死去。37歳没。

人物・作風

作風は、エンターテイメントに徹したオーソドックス且つ骨太なものであり（これについては関沢新一の影響が強い）、躍動感溢れるト書きなどにより「読んだだけで絵が浮かぶ」と評されている。

『セブン』に登場するキングジョーの名前が彼、若しくは彼の父親の渾名が由来であることはファンの間では有名。

怪獣や宇宙人の名前に沖縄を想起させるものが多数登場しており、創作の背景に「まれびと」の存在を指摘されている。
また、『セブン』の「ノンマルトの使者」などにおいては被征服民の悲哀、迫害・差別が描かれ、それが沖縄人としてのアイデンティティであったという考察もあるが、満田穧・上原正三・古谷敏といった当時のスタッフ・キャストは、沖縄出身であることが人格に暗い影を落としていた事は無かったと語っている（但し上原は「傷が深ければ深いほどそんなに簡単に出すわけがない」とも述べている）。
『マン』の「禁じられた言葉」におけるメフィラス星人の問いに対するハヤタの言葉で、出身地の沖縄と当時住んでいた東京の二つの地で生きていく事を表現している。