我々は
斯くの如くして先の命題を
そうせよと初めの折に請われし侭に
証明せり
Q.E.D. 証明終了とは、加藤元浩によるミステリー漫画。
講談社の『マガジンGREAT』(休刊)で開始し、その後継誌の『マガジンイーノ』(休刊)を経て、さらにその後継誌である『月刊少年マガジン+』(休刊)にて連載していた。『マガジン+』休刊後は49・50巻を単行本描き下ろしで刊行し全50巻で一区切りとしたのち、2015年からタイトルを『Q.E.D.iff -証明終了-』と改めて『少年マガジンR』で連載。2023年1月同誌が休刊後『月マガ基地』に移籍し連載中。
『Q.E.D.iff -証明終了-』はニコニコ静画 (マンガ)でも、第1話クライマックスまでの66ページが無料公開されている。
概要
15歳でMITを首席卒業した天才数学少年・燈馬想と、行動力は人一倍の元気少女・水原可奈のコンビが様々な事件に立ち向かう推理漫画。『マガジンGREAT』時代からの看板作品であり、隔月刊誌での連載でありながら既に単行本は合計60巻を超え、講談社における隔月刊誌連載作品の歴代最高売り上げ部数を誇る人気シリーズである。
ミステリー漫画では『金田一少年の事件簿』と『名探偵コナン』という2大タイトルがあるが、その2作品に比べて殺人事件の頻度が低く、日常の些細な謎を解き明かす、いわゆる「日常の謎」タイプの事件も多く描かれるのが特徴。また推理において駆使される精密なロジックから、本格ミステリのファンからも評価が高い。
同作者が『月刊少年マガジン』で同時連載中の『C.M.B. 森羅博物館の事件目録』は同じ世界の物語で、主人公はいとこ同士。作中で競演したこともある。近年は両者の単行本も同時に出る事が多い。また、同作者のミステリー小説『捕まえたもん勝ち!』シリーズ(講談社ノベルス刊)とも同一の世界であり、iffにおいて燈馬くんとキックの共演も実現した。
2009年の1月から3月にかけてNHKでテレビドラマ化された(全10話)。
また日本テレビのバラエティ「超再現!ミステリー」の第1回で本作の第1話「ミネルヴァの梟」が取り上げられている。
登場人物
- 燈馬想(とうま そう)
- 主人公。15歳でMITを首席で卒業した天才児だが、何故か咲坂高校に転入してきた。iffでは3年生に進級。大学時代に数々の特許を取得しており、定期的に入る特許料はかなりのもの。日本で一人暮らしをしており、証明終了ではマンションの一室、iffでは一軒家に暮らしている他、それとは別に資料保管のための倉庫も借りている。高校の友人からは“燈馬くん”、海外の友人からは“トーマ”と呼ばれる。父は建築家、母は歴史学者であり、歴史的建造物の修復活動のために揃って世界中を飛び回っている。妹・優は言葉のスペシャリストであり、家族揃って分野違いの天才。
- 他人の感情に鈍感。決して人嫌いなわけではないのだが、その自身の“空気の読めなさ”を自覚しており、他人の領域に踏み込むことを酷く嫌う。MIT入学当初に大失敗を経験してしまったこともあって、たとえ他人が抱える悩みへの解決策を持っていたとしても、何かのきっかけがなければ関わろうとしない。しかし「A-KS役員連続殺害事件」をきっかけにクラスメイト・水原可奈と親しく なったことで、否応なしに巻き込まれることが増えた。本人はその変化を、戸惑いつつも前向きに捉えている模様。
- モットーは「自分の時間は自分のために使いたい」であり、いわゆる「安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティヴ)」。可奈が集めてきた情報を元に論理パズルを組み立て、あたかも数学の証明のごとく事件の真実を突き止めるスタイル。完璧主義者であり、論理矛盾や理不尽を嫌う。その為、証言が食い違ったり正当な論理の結末を受け入れない人を見ると苛立つこともある。
- 燈馬くんが真相解明のヒントを語り終え、「Q.E.D.」を示す何らかの図案(パソコンのコマンド、トランプの文字など、話によって様々)が挿入されると解決編に移行。基本的には関係者が集まる中、感情を極力排除しつつ、講義のように事件の真実を淡々と“証明”していき、全ての真相開示が終了すると「以上…証明終了です。」という決め台詞で締める。
知識に貪欲で本に目がなく、日本の古文書解読を依頼されるなど、文理問わず非常に広範な知識量を誇る。反面、転校してきたばかりの時はもんじゃ焼きを知らないなど、日本の世俗に疎い面もあった。MIT在学時の専門は数理で、研究テーマは「ゼータ関数、及び周辺領域の証明」。それゆえ数学関係者や数学そのものが絡むトラブルも多く、そうした場合は自ら積極的に動くことも多い。
- 弱点は「歌」で、聞いた人間を石化させてしまうレベルだが、当人にはその自覚はないらしい。視力もあまりよくはなく、初期は眼鏡もかけていた(現在はコンタクトに変えた模様)。
- 燈馬くんにとって可奈は自分と外界を(本人の意志を無視して)つなぐ貴重な架け橋であり、有難くもはた迷惑な相棒(?)のような感じ。その関係性について、本人は「水原さんが答える通り」としている。ただ、自ら体を張って守ろうとする程度には「大切なモノ」であると考えている模様。可奈を傷つけた者がいた場合、話の最後にきっちりと仕返しをしていたりもする。
「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」の主人公・榊森羅は従弟にあたり、森羅からは「想兄ちゃん」と呼ばれる。
- 名前は萩尾望都「トーマの心臓」から“トーマ”を使おうと着想。最終的に「走馬燈」をひっくり返してこの名前になったとか。
- 水原可奈(みずはら かな)
- もうひとりの主人公。咲坂高校に通う燈馬くんのクラスメイト。髪を長く伸ばしており、普段はポニーテイルにまとめている。燈馬くんからは“水原さん”、女友達からは“可奈”と呼ばれている。父親は刑事。母親は故人健在であり、可奈の強引な性格はどうやら母に似た模様。
- 正義感が強く、世話焼きで、行動力の塊。燈馬くんとは対照的に何かトラブルがあると手を貸さずにはいられない性分であり、事件が起きれば積極的に関わろうとする。その際に周囲の人間を巻き沿えにするため、燈馬くんも当然のように事件に巻き込まれるハメになる。父が捜一の刑事であることもあり、一介の高校生にもかかわらず殺人事件に遭遇する頻度が妙に高い…が、他の推理マンガのヒロインと比べると寧ろ低いから、なんかモニョる。
- 燈馬くんが知の天才とするならば、可奈は運動能力の天才と言って良い。運動ならば未体験の種目であろうとすぐにモノにできるセンスを持ち、身体能力そのものもズバ抜けている。学校では剣道部に所属しており、警察署に出稽古にも出かけるほど熱心で、“女武蔵”の異名を持つ。さらに、剣道だけではなく徒手格闘能力も高い。素手で武装した過激派軍団を撃退するという離れ業すらやってのけた(その際は「C.M.B.」のヒロイン・七瀬立樹との共闘を果たした)。 クラスメイトからも腕っ節の強さを恐れられており、その為にクラスのまとめ役を任されることが多い。黙っていれば美少女なのにね。
- 実は家事も得意で、一人暮らしの燈馬くんを心配しては手料理を食わせたり、家の食卓に招待したりして、がっちり胃袋を掴んでいる。ダメな点は学業方面。特に数学は壊滅的で、燈馬くんもどう教えたものか頭を抱えている。
- 事件に遭遇した時の可奈の役目は、まず積極的に動いて証言を聞きまわったり、現場の状況を確認したりする事。然る後に情報を整理し、燈馬くんに提示すること。その身体能力に目を奪われがちだが、情報収集に役立つ詐術、集めた情報を完璧かつ簡潔に纏めて燈馬くんに提示できる記憶能力及び編集能力をもっており、名探偵の相棒役として非常に有能である…なぜこの能力が学業に生きないのか。
- 燈馬くんとの関係については、周囲からは付き合っていると認識されているが、冷やかそうものなら文字通り鉄拳が飛ぶ。可奈自身にそのような認識は無いが、単純でも無いようで「それ(燈馬くんとの関係)にはまだ名前がついていない」と答えている。しかし、燈馬くんが他の女性と仲よさげにしているとヤキモチをやく複雑な乙女心もお持ちのご様子。
- 名前の由来は加藤先生の作業を邪魔したラジオ番組のパーソナリティ・水谷加奈さん(文化放送アナウンサー)から。
- 燈馬優(とうま ゆう)
- 燈馬くんの妹。耳が非常によく、音を捉える能力に優れることから、様々な言語をすぐに覚える特殊な才能(砂の耳)の持ち主。燈馬くんを“想”と呼び、反対に燈馬くんからは“優”と呼ばれる。
- 理屈人間の燈馬くんが理屈抜きに信頼している数少ない1人であり、可奈にヤキモチを焼かせたことも。
- 好奇心の塊で、迷ったら面白そうな選択肢を選ぶ性格。何かに気づくと周囲をシャットアウトして思索に没頭してしまう悪癖を持つ。この悪癖のためにトラブルを起こしたことも…。
- 現在はボストンで1人暮らしをしつつ、現地の学校に通学中。
警察関係者
- 水原幸太郎(みずはら こうたろう)
- 可奈の父親で、捜査一課の警部。フルネームは連載当初は不明だったが、ドラマ化にあたって設定された。有能な刑事であり、目端も機転も利く。所属は警視庁咲坂警察署で、いわゆる“所轄”の刑事。後輩にあたる本庁捜査一課の伏見警部曰く、何度も本庁の捜一にスカウトされているが「柄ではない」と断り続けているという。可奈以上の剣道の腕前を持っており、下手に喧嘩を売ったり可奈に危害を加えたりすると小手を砕かれかねないので注意。
- 家庭では子煩悩な良い父親。度々家に来る燈馬くんについてもよく面倒を見ており、燈馬くんの人格形成(矯正?)に好影響を与えている人物の1人。
- 事件になると燈馬くんにアドバイスを求めることも多いが、自ら真相を暴くことも。
- 余談だが、「C.M.B.」にもカメオ登場している。
- 笹塚(ささづか)
- 警視庁咲坂警察署の若手刑事で、水原警部の部下。ファーストネームは「真人」現在のところ不明。地元はT県Y市で、刑事ドラマに憧れて上京、刑事になった。水原警部と一緒に捜査したり、燈馬くんの力を借りることが多く、登場回数もかなり多い。
- 東京地検の陽垣検事とは親しい間柄らしい。
MIT関係者
- ロキ(本名:シド・グリーン)
- MIT時代に意気投合した燈馬くんの親友であり、同じ数理屋にして互いを理解し合えるレベルの天才。悪戯が大好きなことから「ロキ」(北欧神話のトリックスター)というニックネームをつけられた。燈馬くんが唯一、愛称で呼ぶ存在でもある。燈馬くんが来るまで数理の首席だったことから、「燈馬くんをMITから追い出した」との疑惑をかけられたこともあった。
- エバとは公私に渡るパートナーで、彼女に何かあれば全てを差し置いてでも動こうとする。
- 外見は金髪ロン毛のイケメン白人。可奈に対してちょいちょいセクハラをかますなど、本当に怖いもの知らずである。
- エバ・スークタ
- MIT出身の情報工学者であり、ロキの天才的な考えを形にできる数少ない、良き理解者。肌は褐色で、名前からインド系と思われる。専門は人工生命の開発。1976年生まれで、登場時の年齢は22~23歳(8話「ヤコブの階段」で判明。雑誌掲載時1999年)になる。
- ちょっと泣き虫な点がある。ロキを思う気持ちが高じ過ぎて、暴走したことも…。
- アラン・ブレード
- PC用OS「Wings」で巨万の富を築いたアランソフト社の会長。モデルは勿論ビル・ゲイツ。
- 我儘で他人の感情を斟酌せず、人に頭を下げることが出来ない性格に加え、金の暴力と社会的地位を容赦なく振るう大迷惑な男で、“災厄の男”と呼ばれる。
- Wingsの開発にあたってはMIT時代の燈馬くんに力を借りており、当初は燈馬くんをヘッドハントしようとあの手この手を考えてはやり込められていた。
- 最近は引き抜きを仕掛けることはないが、厄介事の解決に燈馬くんを巻き込むことが多い。
- 当初は独身だったが、作中で7人目に雇った秘書・エリーにプロポーズし、いまや新婚さんである。
- エリー・フランシス
- アランソフト社の女性社員で、ヤリ手の会長秘書。アランが雇った7人目の秘書で、面接の際にいきなりアランを叱り飛ばした所、何故か好感されて採用された。暴走するアランに振り回されることも多いが言う時はビシっと言える、アランの周囲においては稀有な存在である。
- アラン誘拐騒動の際にプロポーズされ、受諾。その後、夫婦名義で国際慈善団体を立ち上げている。
咲坂高校関係者
- 江成姫子(えなり ひめこ)
- 咲坂高校ミステリ同好会(旧・探偵同好会)会長。その女王様気質から「クイーン」と呼ばれる。元ネタ(?)は勿論江成クイーン→エラリー・クイーン。家はお金持ちで、女王様な気質は祖母から受け継いだ模様。
- 口癖は「あなた、とてもいいことを言いました」(この口癖も祖母譲り)。
- 名探偵に強く憧れているのだが、基本的に同好会メンバーが動くと概ねトラブルを引き起こしてしまい、燈馬くんと可奈を巻き込むことになる。
- 長家幸六(ながいえ こうろく)
- 咲坂高校ミステリ同好会の会員その1。シャーロキアンなのか、よくシャーロック・ホームズのコスプレをしている。長い家→家が複数ある→Homesという強引な解釈から、自らを「ホームズ」と呼ぶ(但し、シャーロック・ホームズのスペルはHolmes)。
- 理論的な推理を得意としている…らしいが、彼の推理はたいがい穴だらけ。
- 盛田織里(もりた おりさと)
- 咲坂高校ミステリ同好会の会員その2。彼の趣味はミステリーはミステリーでも、Xファイル的なミステリーの方で、アダ名は「モルダー」。
- 彼の推理は宇宙人だの幽霊だの、大概が超常的存在を前提としたもので、自称理論派のホームズといつも喧嘩になる。
- 菱田丸男(ひしだ まるお)
- 咲坂高校ミステリ同好会の会員その3。探偵同好会に偽装入部しで部室を乗っ取り、クイーンら3人を追い出すことに成功。しかしミステリ同好会を立ち上げた燈馬くんにハメられ、部室を取り返されてしまった。その際、クイーンにふみつけご褒美を頂いたことでマゾヒスティック下僕としての喜びに目覚め、以降忠実なしもべとしてクイーンに仕えている。
- その忠誠心は、クイーンの気まぐれな冗談を真に受けて南極まで行くレベル。
- 香坂さん(こうさか)
- 燈馬くんと可奈のクラスメイトの女の子。ファーストネームは「まどか」現在のところ不明。咲坂高校剣道部の部員であり、可奈の小学校時代の幼馴染でもある。ショートヘアにソバージュをかけており、チャームポイント(?)はそばかす。初期から登場しているサブキャラであり、実は登場回数は水原警部についで多い。しかし登場機会の多くはモブとしてであり、名前が判明したのは50話「夏のタイムカプセル」(KC26巻)。第1話の雑誌掲載から実に9年4ヶ月後のことだった…それでも水原警部のフルネーム判明までの期間(11年5ヶ月)より早いが。
用語
- Q.E.D.
- Quod Erat Demonstrandumの略で、非常に大雑把にいうと「証明終了」の意。
- 数学で、命題を証明し終わったことを示す言葉。詳しくは「Q.E.D.」の項目を参照。
- 作中では、解決編に移行する際の合図に使われる。
- このページ最上段の文章はQ.E.D.を加藤先生なりに訳した文章で、各単行本の扉ページに記されている。
- MIT
- マサチューセッツ工科大学の略称。
- アメリカ・マサチューセッツ州ケンブリッジに実在する名門大学で、81人ものノーベル賞受賞者を輩出(2014年現在)している。
- QS世界大学ランキングでは2012年以降ずっと1位を継続中。
- リーマン予想(RH)
- ドイツの数学者ベルンハルト・リーマンによって提唱された「ゼータ関数の零点分布に関する仮説」であり、ミレニアム懸賞問題の1つ。素数の謎の解明につながるという燈馬くんの研究テーマであり、物語に度々登場する。
- 詳しく話すと鼻血が出るのでここでは省略。
- オイラーの公式(オイラーの等式)
- スイスの数学者レオンハルト・オイラーが発見した公式「eiθ = cosθ + i sinθ」。
- この公式の特殊なケース(θ = π)が、数学史上最も美しい等式と言われる「eπi = -1」。
- 作中で何故か燈馬くんの命を脅かすことになる悪魔の公式である。
- 全く無関係なはずの4つの数(自然対数の底e、円周率π、虚数単位i、負数-1)が実にエレガントにまとまっている。
- 詳しくはオイラーの等式の項目を参照。
- iff
- 「if and only if」の略。日本語では「同値」または「等価」。演算器号は「⇔」など。
- 2つの命題がともに真、或いは偽の時に「真」となる論理演算。
- 命題A、Bがある時「AならばB」「BならばA」をともに満たす場合、論理演算「A ⇔ B」は真となり、
- 「AはBであるための必要十分条件である」または「AとBは同値である」という。
- ツポビラウスキー症候群
- 無秩序を得意がり、人を傷つけることに喜びを感じるようになってしまう、世界中で発症者多数の病。発見者は安西東悟医師。
- 以下ネタバレ注意(反転してどうぞ)。
- そんな病気は存在しない。安西医師曰く、その正体は「闇を封じて地獄におとすまじない」。
- 人の死を芸術と宣う殺人犯に対し、「貴様は特別でもなんでもない。ありふれた病気の患者でしかない」と伝えることで、自らを特別と信じる犯罪者を絶望の底に叩き落とす。そのために安西医師がでっち上げた病名である。
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