保守とは、以下の事柄を指す。
保守とは、既存の価値・制度・信条などを「改革」する、すなわち、根本的に覆そうとする思想が現れた時に、これに反対して、既存の価値・制度・信条などを守る動きから形成される思想である。
したがって保守は、反対の対象となる「改革者」=「敵」の存在を必要とする傾向がある。
たとえば日本の保守は、後述するように、戦後、共産・社会主義に反対する立場から生まれたものである。そのため、冷戦構造の終焉とともに、「敵」を見失って衰退することになった。
一方、最近の日本では、インターネットや一部の雑誌メディアを中心に、保守を再評価する動きがみられる。戦後保守を経験していない40代以下の世代が「保守に目覚める」といった様態をとることも多い。これは、個人の権利を無条件に認めるような行き過ぎたリベラリズムという「敵」を新たに見出したためと解すことができる。
保守思想は、歴史の中で個人が果たすべき責任を最も重視する。
先人から伝えられたものは、数多くの人々によって培われ、長い歴史の検証に耐えて生き残ってきたものである。現代に生きる我々個人の知恵などは、それに及ぶべくもない。伝えられて今あるものは極めて「よい」ものであるはずだと考える。したがって、
すなわち、保守思想を信奉する者は、後人から見て、営々と築き上げ受け継いできた数多くの先人の一人として叙されることを最上の栄誉、喜びとするのである。
先人への尊敬の念は、過去から現在、そして未来へと敷衍される。尊敬の念は、まず、改善を施そうと努力する同時代人へと及ぶ。彼らは、未来において尊敬されるべき先人となる人々だからである。そして子孫には、受け継ぐものとしての役割を期待し、育てるのである。
伝えることへの思いはまた、いわゆる歴史・伝統・文化に対する敬意、それらを培ってきた先祖への尊敬、先人の築いてきた国家・国柄に対する誇り、後継者を育てる家庭の愛護などへと自然につながる。
このように保守は、歴史の巨大な流れの中で自らに課す極小の責任を認識する謙虚さを信条とする。そして、
逆に、保守思想家は、社会的・歴史的責任を果たそうとしないものに対しては、強い嫌悪を抱くことが多い。そのため、自由・平等といった個人の権利を無条件に認めるようなリベラリズムとは相容れないのである。
ここまでの展開は論理的であるが、一方で保守は(定義にもよるが)宗教との相性が良い。
たとえば、ここまでの考え方は、科学者・研究者にとっては極めて自然なことである。新しい理論は、ほぼ例外なく、既存の理論の修正・拡張として現れる。たとえ ば、相対性理論の登場によってニュートン力学が完全に否定されるということはない。「先行研究が間違っていた」と言い出す者はトンデモさんだと思ってまず間違いない。
一方で、歴史・伝統・文化に対する敬意、先祖への尊敬などは、歴史ある宗教と容易に結び付く。実際に、欧米ではキリスト教との、日本では神道、そして、天皇との結びつきが見られる。
特に日本では、天皇への尊崇を保守に不可欠のものと考える、あるいは、天皇への尊崇から保守思想が始まると考える思想家も多い。そのような思想家の中には、天皇に対する異なる考え方に対して不寛容である者も多く、実際、そのような考え方の違いから分裂することも多い。
ここでは日本の「保守」について時代を追って説明する。
自民党のいう保守は自由経済を守るという保守である。当時日本はソ連、中国という代表的な共産・社会主義圏の国には地理的には近いが、資本主義の立場を取るアメリカなど西側諸国に属しているというカオスな状態にいた。
そして戦後共産党や社会党の活動が合法とされ、また保守政党も乱立する事態となっていた。しかし1955年社会党の右派・左派が合併し与党第一党となり、それに危機感を覚えた財界の要望もあり日本民主党と自由党が合併し自由民主党となり、与党第一党となり、社会党に政権交代するまでいわゆる55年体制が続くこととなった。自民党は決してはっきりした右派政党ではなく、自民党に左派やハト派の議員がいるのは、まったく不思議なことではないのである。
論壇界の保守は1960年代学生運動が活発であり、岩波の「世界」や朝日新聞などが主導する左翼思想、いわゆる全共闘運動、革マル派、中核派、連合赤軍などの過激な思想が全盛期だったころ、それに対抗する、戦前の肯定や戦後民主主義、平和憲法に対する批判がスタンスの、「諸君!」が1969年5月に創刊された。この手の保守(右派)雑誌の誕生は左派に対して一定の効果があり、朝日新聞は左翼臭が薄まり、岩波も学生運動が静まると共に没落していった。
しかし平成に入り冷戦も終わり、日本でも社会党が消滅すると、保守論壇の存在意義すら怪しくなっていった。保守論壇のパイオニア「諸君!」が休刊したのがその象徴でもある。
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最終更新:2025/12/24(水) 13:00
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