対戦車ミサイル 単語


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タイセンシャミサイル

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対戦車ミサイルとは、主力戦車(MBT)をはじめとする地上兵器を破壊するためのミサイル兵器である。

自衛隊では対戦車誘導弾とよび、MATの略称も使われる。英語ではAnti-Tank missile(ATM)、Anti-Tank Guided Missile(ATGM)、Anti-Tank Guided Weapon(ATGW)等と呼称される。

概要

誘導装置と推進装置を備え、主力戦車の装甲を貫徹するのに十分な威力の弾頭をもつ。推進装置は固体燃料ロケット、弾頭はモンロー/ノイマン効果を利用した成型炸薬(HEAT)を用いるのが一般的。地上の対戦車ミサイル陣地に設置して使用されるほか、IFVや戦車駆逐車、ヘリコプターなどに搭載して運用される。
MBTだけではなく、他の装甲/非装甲車両、トーチカや敵陣地、舟艇などへの攻撃にも用いられる。

無誘導の対戦車兵器は第二次世界大戦中に登場し、大型の対戦車砲を装備しない軽歩兵部隊にも対戦車戦闘能力を与えたが、精度が低く有効射程も短かった。このような対戦車兵器に誘導能力をもたせ、精度(命中を期待できる)有効射程を増大させるための研究は第二次世界大戦中から行われていたが、実用化され実戦投入されるのは戦後に入ってからである。

主に誘導方式によって世代分類される。

戦後第1世代

AT-3サガー、64式MAT等。

発射後、飛翔するミサイルの炎などを目印に有線(ワイヤー)を通じて手動で操作し目標に誘導する方式。手動操作は習熟が難しく、命中するまで目視で目標を確認しつつ誘導しなければならないため操作員が危険にさらされるなど難点も多かったが、ジープやトラックで移動する歩兵部隊に有効な対戦車戦闘能力を与えた点で画期的である。
とくにAT-3は第四次中東戦争でイスラエル戦車部隊に対し集中運用されて戦果を挙げ、戦車不要論の嚆矢となった。

戦後第2世代

TOW、79式重MAT、ミラン等。

有線で誘導するのは変わりないが、SACLOS(半自動照準線指令誘導)と呼ばれる方式により手動操作なしに照準線に捉えるだけで自動的に誘導してくれるようになった。「半自動」なのは命中するまで目標を照準に捉え続ける作業が相変わらず必要になるため。

第2.5世代

ヘルファイア、87式中MATなど。

有線誘導を廃し、レーザー照準によって目標に誘導する方式。ミサイルはレーザーが照射された地点に向かって飛翔する。レーザー照準装置は発射機本体と離して設置することが可能になり、発射要員の生残性が向上した。

ただし有線誘導を廃した関係上、煙幕や電子妨害などジャミングを受ける可能性も若干増した。対する戦車の側もレーザー照射を検知するセンサーなどを装備するようになっている。

戦後第3世代

ジャヴェリン、01式軽MATなど。

赤外線画像シーカーに目標の形状を識別させることで、完全な撃ち放し(fire and forget)能力を得たタイプ。一度ロックオンして発射すればあとの誘導は必要なく、発射要員は速やかな離脱または再攻撃が可能。

赤外線シーカーの特性上、フレアや煙幕などの妨害手段の影響を受けやすく、また熱を持っていない目標のロックオンが困難。

その他のハッテン

誘導装置以外にも、閉じた場所でバックブラストなしの発射を可能にするカウンターマス、爆発反応装甲に対処するためのタンデムHEAT弾頭、戦車の脆弱な上部装甲を狙うためのトップアタックミサイルなど、改良が続けられている部分は多い。

また、HEATを使わずに高速のミサイル弾体を直接突入させて対象を破壊するLOSAT(開発中止)や、光ファイバによる有線誘導でミサイルからの画像情報の伝送を可能にした96式MPMSなどの変り種もある(光ファイバ有線誘導を実用化したのはいまのところ日本だけだったりする)。

MATという自衛隊用語

自衛隊では対戦車ミサイルを対戦車誘導弾と呼び、略称としてMAT(Missile Anti Tank)を用いている。

1950-60年代、アメリカから装備供与に頼りきりだった自衛隊が装備国産化の一環として開発したのが初の国産対戦車ミサイル(陸自では対戦車誘導弾)「64式対戦車誘導弾」(64式MAT)である。以来「重MAT」(79式対舟艇対戦車誘導弾)、「中MAT」(87式対戦車誘導弾)、「軽MAT」(01式軽対戦車誘導弾)等に「MAT」の略称が使用されているが、79式の直接の後継に当たる96式多目的誘導弾システムは戦車以外の目標に対する攻撃能力も主眼とされているため、MATではなくMPMS(Multi-Purpose Missile System)と略される。言いづらいので略称は「マルチ」。

英名の略称としては記述の通りATMのほうが自然なのだが、「ATM」が「核(Atomic)を連想させる」と騒いだプロ市民団体があったらしく、誤解を防ぐ為の配慮として「MAT」となる略称を用いるようになった、ということらしい。ただし開発名称や部内資料の中ではATMが用いられることがある。

まあ、車載クラスのミサイルであれば弾頭に小型の戦術核を搭載することも不可能ではないが、勿論日本はそのような核弾頭も核技術も保有していないし、そもそもそのような核搭載対戦車誘導ミサイル自体、付随的被害を考えれば軍事的に価値が薄く(無誘導の核無反動砲ならデイビー・クロケットがあるが)、真面目に実用化した国は冷戦華やかなりし頃でも存在しない。
ただ、近年ではATMというと金融機関の自動預払機がまず連想されるので、そこの混同を避けられた点は怪我の功名といえるかもしれない。

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関連項目

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  • 戦車 / AFV
  • 自衛隊 / 陸上自衛隊
  • ミサイル / ATM / MAT
  • MPMS

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