水素爆弾とは (スイソバクダンとは) [単語記事]

水素爆弾とは、1950年代から開発された戦略的核兵器の一種である。水爆とも。

概要

水素の同位体である重水素やトリチウムの核融合反応に伴い放出されるエネルギーを用いるため、こう呼ばれる。
技術的には原子爆弾よりも複雑なものである。
保有国は、アメリカ、ロシア（旧ソビエト）、イギリス、フランス、中国の五カ国。

現段階では核融合反応を誘発させるために核分裂反応(原子爆弾)を用いたものが配備されている。
また、第二次世界大戦以降の軍拡競争の折、米ソを中心に水爆実験が多数行われ、多くの被害者を出した。（後述）

映画の初代『ゴジラ』（1954年）はこういった時代背景もあり、出現の原因が水爆による環境破壊という設定であった。

キューバ危機後の、部分的核実験禁止条約に調印した国では、実験は地下へと移された。
ソ連崩壊以降の軍縮の流れもあり、近年では核兵器技術が未発達なインド、パキスタンなどで行われたのみである。詳しくはこちらを参照されたし。『核実験の一覧』

「第五福竜丸事件」と水爆被害

1954年 3月1日、マーシャル諸島付近で操業していた日本のマグロ漁船「第五福竜丸」は、
アメリカのビキニ環礁における水爆実験に遭遇、間接的に搭乗者23名が被爆した。

同実験における当該地域での被害者は二万人以上といわれている。
事件以降、日本国内では非核・反核運動が非常に活発になり、これに対応してアメリカも補償金総計200万ドルを支払うこととなった。

日本国外でも、チベット、アルジェリア、カザフスタン、ニュージーランドなど水爆実験が行われた地域やその付近において、被爆・被曝者または水爆が原因と思われる癌患者の増加などが報告されており、被害は計り知れない。

純粋水爆？

起爆時のエネルギー源として原子爆弾に替わって放射線を放出しないレーザーなどで代用した純粋水爆（いわゆる「きれいな水爆」）の開発が進んでいる、と考える（科学者を含む）人々がいる。

だが、起爆用の原子爆弾に匹敵するエネルギーを核分裂以外の手段で、たとえばミサイルの弾頭に収めるほどのサイズで実現させることは現代の科学ではどう考えても不可能である。

純粋水爆とは、その開発が新たな核軍拡を生み出すのではないかと危惧しすぎたために生み出されてしまった妄想、あるいは疑似科学の産物と考えるのが常考であろう。