艦砲、または艦載砲とは、艦艇に搭載した砲のことである。
艦艇の攻撃用途として搭載された砲を艦砲と呼び、艦砲は中世から現代にかけて最も一般的に使用された艦載兵器である。この記事では艦砲全般について記述し、特に艦砲射撃の最盛期となる20世紀初頭から第二次世界大戦までを重点的に記述する。
艦載兵器としての砲は古来より使われているが、16世紀のガレオン船から艦砲も本格的に使用されることになる。
当初の艦砲は鉄球を火薬の爆発で飛ばすだけの代物であり、艦艇を撃沈するほどの威力はなかった。この頃の艦砲は舷側に多数の砲を並べて斉射し、船体の破損や乗員の殺傷により、艦艇の戦闘能力を奪うことを目的としていた。やがて火薬を内蔵した砲弾が登場すると、艦砲も十分な攻撃力を持ち、艦艇の撃沈も可能となった。
艦砲射撃で艦艇が撃沈可能になると、艦艇の装甲により砲弾を防御することが重要視された。そして19世紀に登場したのが装甲艦である。
装甲艦登場までは、非装甲で砲を舷側に多数配置した帆船である、戦列艦が軍艦の主流となっていた。しかし、舷側に砲を多数配置すると、防御が脆弱になるという欠点があった。装甲艦は戦列艦の欠点を解消するため、装甲を施して防御力を強化し、砲は高火力のものを少数を配置した。また、動力も蒸気機関となり、速力が向上した。軍艦の主流は戦列艦から装甲艦へと移行するが、やがて装甲艦は大型になり、船体の大部分を鉄鋼で造るようになった。これが戦艦(前弩級戦艦)となる。
このようにして艦艇は高防御力となり、それに伴い砲も高火力になる。これが後の大艦巨砲主義となった。
1906年、イギリスが戦艦ドレッドノートを建造することにより、大艦巨砲主義が始まる。ドレッドノートは艦の中心線上に主砲を配置することにより、砲を効率良く使用することが可能になった。主砲斉射の火力が飛躍的に高まったことは世界中を驚愕させ、ドレッドノートに並ぶ能力を有する、弩級戦艦が建造される。やがて弩級戦艦以上の能力となる超弩級戦艦の登場により、艦砲の大型化はさらに進行していく。
この艦艇や艦砲の大型化競争は予算面で世界各国を疲弊させ、ワシントン海軍軍縮条約締結により一時的に休止となった。しかし、この条約は後に破棄され、戦艦の大型化競争は再開された。その競争の過程で、最大最強の艦砲を搭載した大和型戦艦が日本で建造された。
そして第二次世界大戦が勃発。極致となった大艦巨砲主義による実戦を迎えることになる。しかし、第二次世界大戦では航空機が発達し、戦場の主流は航空戦となった。また、小型艦の主兵装となる魚雷も十分な火力を有していた。そのため、戦艦は大した活躍が出来ず、航空機や潜水艦からの攻撃で多数の戦艦が沈没した。
これにて大艦巨砲主義は終わり、艦砲が主兵装の時代は終焉を迎える。
第二次世界大戦終結後は航空機に続きミサイル技術が発達する。これにより小型艦でも高火力を有することになり、さらに魚雷と比べて長射程で精度も高まった。ミサイルが艦砲を代替し、艦艇の新たな主兵装になったのである。極端な例では、就役当初は艦砲を搭載しなかった原子力ミサイル巡洋艦のロングビーチや、ミサイルの搭載能力のみに艦艇を特化させたアーセナル・シップという構想も登場した。
しかし、ミサイルは高価な兵器であり、弾数も限られているため、艦砲を完全に廃れさせるまでには至らなかった。小型となったものの、命中精度や速射性が向上し、砲塔内は無人化され、仰角も高角が標準的となる速射砲が対空射撃や近距離攻撃用として現代艦に搭載されている。また、近年では艦砲射撃による対地支援が見直されており、アメリカのズムウォルト級駆逐艦は、かつての軽巡洋艦並みの155mm単装砲を搭載。砲弾には誘導能力を付加しており、砲撃能力の高い艦艇となっている。
艦砲は通常、口径長と砲身内径でサイズを示し、連装数で砲塔1基の門数を示す。ここでは例として大和型戦艦の主砲で解説する。
大和型戦艦の主砲は45口径46cm3連装砲である。45口径は口径長、46cmは砲身内径、3連装は連装数である。口径長は砲身の長さを表し、砲身内径に口径長の長さを乗算することで砲身長を示す。つまり、大和型戦艦の主砲は46cm*45口径=2,070cm(20.7m)が砲身長となる。
時代や国によって長さの単位が異なり、ミリメートル表記、センチメートル表記、インチ表記がある。
また、弾丸が鉄球だった時代は弾丸の重量を砲のサイズの単位としていた。例として、戦列艦の艦砲には18ポンド砲があり、これは18ポンド(5kg)の弾丸を撃ち出す艦砲となっている。
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最終更新:2025/12/24(水) 01:00
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