高等専門学校の概要解説と,高等専門学校における注意点
The Delineation of College of Technology and The Important Point of The College
ドワンゴ高等専門学校 百科事典作成学科 二胡百科
Key Words : niconico, encyclopedia, National College of Technology
緒言
高等専門学校とは,日本の学校の形態の一種である.基本的にほとんどの高等専 門学校で工学を主とした専門的学問を学ぶことができ,就職率100%および高い進学率を誇っている.公教育全体から見ればマイナーな教育機関であるため,社会一般の認知度は低いものの,工学系専門 教育の分野,あるいは卒業生を受け入れている産業界においては,現状においても一定の評価を受けているものと見られる.
本論文では,高等専門学校における基本的な概要を簡単に提示するとともに,高等専門学校への進学を希望する若き技術者の卵たちに,進学するにあたっての注意点などを説明する.
概要
一般的な略称は『高専』である(以下,高等専門学校を「高専」と表記する).大学と同じ高等教育機関と位置付けられている.学校教育法115条には,「深く専門の学芸を教授し職業に必要な能力を育成することを目的とする」学校とある.稀に「専門学校」と勘違いする人がいるが,それとは全く別物なので注意.
学業においては高等学校程度の教育に加え,高等教育レベルの専門科目を学習する.大学の学科と同じように「○○科」が設置されており,そこで各々の専門的な教育,研究を行う.修業年限は,一般的に5年だが,商船に関する学科については5年6ヶ月である.入学できるものは学校教育法118条により,高等学校と入学できる者と同じ(同57条)となっている.要は中学卒業後に進学する選択肢の一つである.
高専には専攻科と呼ばれるものが設置でき,専攻科とはいわば大学の3~4年にあたるものである.
高専が設置されていない県は埼玉県,神奈川県,山梨県,滋賀県,佐賀県の5県.その他の都道府県には設置されている.
高専の英語表記は,単科大学や短期大学に相当する「College」が一般的で,国立の工業高専は,ほぼCollege of Technologyと呼称している.
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進路
卒業後は企業等の就職か,大学への編入,また上記にある専攻科への進学が進路としてある.進学においては,国立大学工学部への進学が多い.特に高専生の受け入れ先となっているのは長岡技術科学大学と豊橋技術科学大学である.ほとんどの高専は高い就職率 ( ほぼ100%)を誇る.
高専で学ぶということ
高専は良くも悪くも特殊な学校であり,校風になじむ人間にとっては天国ともいえるほどに心地よい学校だが,半端な気持ちで入学すると人生設計が高確率で狂う学校でもある.ここでは,高専に入学するにおいて必要な知識や心構えについて記述する.
志望理由
高専は専門的な技術者を育成する学校なので,当然ながら 将来科学技術に関わって生きるつもりが無いなら志望しないほうがいい.年に何人かは「家が近かった」「ちょっと勉強できるからどうせなら偏差値が高い学校に」「就職率が高い」等の理由で入学してくるが,ごく一部のレアケースを除いて1年も持たずに辞めていく.こういった理由で進学しようとしているのなら,普通科高校に進学することを強くオススメする.
というのも,高専に入学すると技術分野以外でのツブシが効かない.また,3年生以降の授業は専門教育がメインになるので,専門分野への興味が無いのならばまさに地獄である.少なくとも,「そこら辺の一般的な中学生よりは専門分野に詳しい」と言えるぐらいには興味を持っているべきである.流石に知識がゼロだと結構苦労する.
逆に,将来の夢が技術者で,進学校に入学して,大学の工学部に入学することを既に決めているのならば,むしろ高専の受験を勧める.大学受験が無く,教養科目を省略して技術者になるための勉強に打ち込
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むことができるので,楽しい毎日を過ごすことができるだろう.
学費
国立高専の学費は年間で234,600円であり,国立大学の約半額である.専攻科も同額.このため,専攻科に進学すると,国立大学に比べて安価に学士資格を得ることができる.学費免除制度等も充実しているので,積極的に活用しよう.
留年
高専は講義の単位を取るための合格ラインが厳しく,その代表的なのは「赤点は50点未満」というものがある.そのため,一般の高校より も比較的留年しやすい.どれくらい留年するかというと,標準で40人のクラスが,30人以下や50人近くになったりすることが結構ある.少なくとも,入学時の同級生が一人も欠けることなく同時に卒業することはほぼ不可能である.
必修科目を1つでも落とすと,いとも簡単に留年する.さらに,高専にもよるが進級に必要な単位が常にギリギリだと,卒業時に必要な単位を満たせず,卒業できないことがあるので注意しよう.また,近年ではいくつかの高専が『JABEE認定校』という資格を得たことで,さらに厳しくなっている.
『JABEE』とは,『 日本技術者教育認定機構』であり,『JABEE認定校』とは簡単に言うと,外部機関より「国際的に通用する技術者の育成に問題ない教育システムですね」という認定を受けた学校である. これがどういうことかというと,卒業するために修めるべき成績が,かなり高いレベルを求められるということである.具体的に例を挙げると,
- 赤点が60点未満.大抵の高校が30点未満ということを考えると非常に高いラインである.
- 客観的な評価になる.言い換えると,「教師の温情」というものが排除される.赤点を取った後に,教師に泣き付いても無駄である.また,日ごろの勉強態度がいくら良くても,成績には全く関係ないのです.
大抵の教科の単位は,中間,期末の試験の平均点によって評価される.一年を通じて行われる授業では試験の回数が多いため,悪い点をとってもなんとかなるが,試験の回数が少ない教科も相当数存在するので,シラバス(講義の大まかな学習計画表)をよく読んで注意すること.
1年生~3年生において合計2年間留年すると,3年で20歳なのに学生服を着るハメになる.「入学時の同級生が就職・進学や卒業を話題にしているのに」と鬱
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になるので留年しないようにしよう.(※留年してやけになっても,行内での飲酒・喫煙はやめましょう.)
高専にもよるが,留年しすぎると強制的に退学になってしまう.校則はきっちりと確認しておこう.
退学
将来の進路の変更,家庭の事情,成績不良などの理由によって高専を退学することになることがあると思うが,はっきり言って高専は退学するべきではない.4年生以降で退学すると世間での扱いが高卒扱いになって大学を受験することが可能になるが,それでも退学するべきではない.3年以前の高校中退扱いは当然ながら,大学受験も相当に厳しいことになるからである.
これは高専特有の教育システムによる.高専は5年間(高校 1年~大学2年)の長期に渡って専門科目をじっくり学んでいく学校であり,一般的な高校と違って,教養科目が軽視されているので,古文,漢文等に至っては,ほとんど勉強しないと言っても過言ではない.大学受験を一切考慮していないカリキュラムのため,卒業時の専門的な知識と学力は大学の工学部4年生すらも圧倒するが,受験に必要な学力やテクニックはそこら辺の高校生以下となってしまう.そのため,3年修了時に退学して大学受験をしようというのならば,あらかじめ高専と並行して予備校に通っておくぐらいのことは必要である.(そもそも予備校に通うぐらいなら1~2年のうちにとっとと退学して進学校に通うようにした方がいい.金と時間のムダである.)
大学に行きたいのなら,卒業後の大学への編入学を考えよう.学士資格が欲しいだけならば,専攻科に進学して卒業しよう.そうでないのならば,退学後のことをよく考えておこう.
というか,そもそも退学することが無いように,入学前によく考え,入学後はしっかりと勉強しておこう.
結言
高専という特殊な教育機関で修得できる学問は「狭く・深く」が基本である.そのため,その分野に興味がない限り,充実した学園生活を送るのは難しい.卒業後に進める分野も,当然ながらその狭い分野に特化したものばかりになってしまう.
入学を希望する場合は,入学する前によくよく考えるべきである.
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