オイルショック(英:oil crisis)とは、主に以下のものを示す。
- 第4次中東戦争(1973年)に端を発する石油価格急騰に伴う経済活動の収縮現象。
- イラン革命(1979年)に端を発する石油の供給不足及び価格高騰に伴う経済活動の収縮現象。
- クウェート侵攻(1990年)に端を発する石油価格急騰。湾岸戦争によりすぐに価格が戻った。
- 中国・インドなどの新興国での原油需要増加など(2004~2008年)に端を発する石油価格の急騰。
- 日テレのZIP!内で放送されているコーナー「MOCO'Sキッチン」に対する視聴者の反応。
→ オイルショック(MOCO'Sキッチン)
当記事では1・2の第1次オイルショック・第2次オイルショックを中心に述べる。
概要
オイルショックとは
石油危機とも呼ぶ。簡単に言えば、石油の価格が急速に上がることで、大不況などの世界的な経済の混乱が訪れる現象を指す。
1970年代当時は、石油がエネルギー資源の中心だった。さらに、石油はサウジアラビアやアラブ首長国連邦などの中東諸国が生産の中心で、この国々の情勢が世界経済に及ぼす影響が大きかった。石油は世界どの国でも採れるわけではないので、特に石油資源を輸入に依存している国には深刻な影響が出ることが多かった。
しかし、天然ガス需要の拡大やアメリカでのシェールガス・シェールオイルの採掘量増加などによって、近年はエネルギー資源の採掘国が分散している。そのため、石油価格の高騰による大不況は以前と比べると起きにくい[1]状態になっていると考えられる。実際、上記3・4のオイルショックは日本にはそこまで大きな影響を及ぼしていない。
第1次オイルショック
「トイレットペーパー不足」で有名なオイルショック。しかし、実際はトイレットペーパーなどの紙類生産が不足していたわけではない。トイレットペーパーの騒動は本来はオイルショックとは直接関係ないデマが原因で起こった騒動である。トイレットペーパー騒動については「トイレットペーパー騒動」の記事を参照。
第1次オイルショックを指して単に「オイルショック」と呼ぶことも多い。ここではトイレットペーパーの件にはあまり触れず、オイルショックの内容として、石油価格の高騰と経済の混乱を中心に述べる。
オイルショックの経緯
1973年に第4次中東戦争が起こる。第4次中東戦争は「イスラエルvsアラブ諸国」という構図となった。このとき、アラブ諸国の経済が不安定となったうえ、イスラエルを多くの欧米諸国が支持・支援した。そのため、石油を産出するアラブ諸国は、OPEC(石油輸出国機構)加盟国のうちのペルシャ湾岸6ヶ国や、OAPEC(アラブ石油輸出国機構)での会合を通じて、石油の減産、イスラエル支持国への石油禁輸措置、輸出価格の急激な引き上げによって自国の経済を守ろうとし、欧米諸国に対抗した。
これによって、中東に石油資源の多くを依存していた先進国には深刻な経済混乱が訪れることになった。当時の海外の民衆の生活を写したものとして、「NO GAS」と書かれたガソリンスタンドの看板、「10.00Limit」という給油量の規制、ガソリンスタンドに並ぶ車の列などの写真が残っている。
日本も日米安保条約などによりアメリカと軍事同盟を結んでいるとみなされたため、同様の措置がとられた。この結果、物価が平均約20%上がる急速なインフレーションが発生し(狂乱物価)、日本の経済成長率は戦後初めてのマイナスとなった。これにより、日本の高度経済成長が終わったとみなされることが多い。また、これ以降日本は、資源の分散のため原子力発電所などの原子力産業の開発に力を注ぐこととなり、東日本大震災が起こる2011年まではこの傾向が続いた。
第2次オイルショック
1970年代のイランは、国際石油資本(先進国の石油関連企業)に石油産業を独占されており、イラン国王のパフレヴィー2世も近代化を進めるという理由でそれを推進していた。このようなイランの先進国、特に英米への依存的な政策に対する不満などから、1979年にイラン革命が発生し、イラン国王が亡命した。これによりイランは共和制に移行し「イラン・イスラム共和国」となった。
イラン革命の混乱を受け、国際石油資本がイランから撤退したため、これを機にイランは石油資源の国有化を行い、自国産業の保護のため石油の禁輸措置をとったため石油価格が上昇した。
日本では第1次オイルショックの経験があったため、政府や企業などが素早く対応できたこともあり、影響は少なく済んだ。
関連動画
関連項目
- 1970年代
- 自動車
- ガソリンスタンド
- 火力発電
- イラン
- インフレーション
- 準備預金制度
- トイレットペーパー騒動
- G7 - オイルショックから開始された
- コンコルド効果 - オイルショックの影響などで生産・運用が困難になるが…
- 第一次コイルショック
- 逆オイルショック - オイルショックとは逆に石油価格が暴落して経済が混乱する現象
脚注
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