デスクトップパソコンとは、持ち運びを前提としていない据え置き型のパソコンのことである。持ち運び可能なノートパソコンやタブレットPCと対置される。
概要
古くは横置きでディスプレイを上に置いて使うタイプのもののみを指し、縦置きのタワー型と区別していた(後述)が、現在ではバッテリーを内蔵しておらず、机の上で電源を繋いで使う据え置き型パソコン全てがデスクトップ型パソコンと呼ばれる。
ディスプレイが一体化しているものや、手のひらに載るほど小さいものもある。初期のパソコン(1970年代後半から1980年代前半)ではキーボードが一体となっている機種も多かった。
過去に比べると利用者層は限定的になり、個人ユーザーでは高性能なビデオカードを必要とする人が中心である。PCゲーマー、動画配信者、3DCGの制作者やCADオペレーター、大規模言語モデルをローカルで走らせたりAIイラストを生成したりするユーザー、マルチモニターを利用するデイトレーダーなどである。また、自作可能なパソコンはほぼデスクトップに限られる。
メリット・デメリット
デスクトップ型を購入・使用する上でのメリットとデメリットについては、次のようなものが挙げられる。メリットは一体型には当てはまらないものが多い。
メリット
性能当たりの価格が安い
ノートパソコンのような小さな筺体の中に納める必要がないので、3.5インチハードディスクやデスクトップ用CPUなど、より高性能なパーツをより低コストで実装できる。しかし、現在のPCはデスクトップであってもSSDやスリムタイプの光学ドライブなどモバイルと同様のデバイスを用いることが多くなり、このメリットは目立たなくなっている。
大型の周辺デバイスを内蔵したり多数繋いだりしやすい
サイズの制約が緩い分、より高性能でサイズの大きなパーツを内蔵したり、より使いやすいインタフェースを利用することができる。広いディスプレイを2台も3台も繋げたり、光学ドライブやハードディスクドライブを2つも3つも内蔵することも可能。ノートパソコンでもUSBなどで外付けすることは可能であるが、ゴチャゴチャと煩雑になる。
電源供給・排熱による機能制限が少ない
一般にノートと比べて筐体内スペースが広く、大容量の電源や大きな冷却ファンも装備できる。発熱の激しいビデオカードなどのパーツを組み込んでも平気で、3DCGや機械学習のようなGPUを酷使するタスクにはうってつけである。近年はノートパソコンでもThunderbolt接続の外付けGPUボックスを利用することが可能であるが、非常に高額であるし、性能的には内蔵タイプに一歩及ばない。
カスタマイズ・修理が楽、自作が可能
多くのデスクトップパソコンは、側面の蓋を開けるだけで内部のコンポーネントに簡単にアクセスでき、点検・清掃がやりやすい。更にデスクトップ型パソコンのパーツは(一部のメーカー製を除いて)統一規格で製造されているので、規格が合致する限り(仕様上は)どのような組み合わせも可能である。古いパソコンで使っていたグラフィックカードを新しいパソコンに使いまわしたり、調子の悪い電源だけ取り換えたり… といったことも容易である。このため、好みのケースや部品を組み合わせた自作ができる。
盗まれにくい
自宅内で使うならあまり目立たないが、公共の場に置かれるパソコンではメリットになる。ノートPCは小さく軽く運びやすいので簡単に持ち去られてしまうが、デスクトップPCは画面などを取り外す必要があり、大きくて重く運ぶと目立つので、盗難抑止になるのである。
デメリット
持ち運びが出来ない
デスクトップ型は据え置き前提なので、楽に持ち運びができる工夫は原則されない。持ち手をつけたケースもあるが、これは主にメンテナンスを考慮したものである。iMacのような液晶ディスプレイ一体型であれば持ち歩くのは簡単だが、電源がないと動かない。外回りのお伴にちょっと…と言って持ち出すにはあまりに大仰である。
スペースを取る
ノート型はディスプレイ・本体・キーボードが全て一体になっているのに対し、殆どのデスクトップ型はそれらが分離・独立しているため、その分のスペースの確保が必要になる。もっとも、液晶一体型であればノートパソコンより机上の占有面積が少ない...と強弁することも可能ではあるが。
そして電源接続が必要な関係上、使わないときは棚の上に片付けておいたり、引き出しの中にしまっておくといったこともできない。
机の上でしか使えない
ノートパソコンは使う場所を選ばない。ソファでくつろぎながら膝の上に置いて使ってもいいし、食後のテーブルで使ってもいい。極論、床に寝転んでの利用もできる。しかしデスクトップパソコンは電源のある机の上に縛られ、時間や気分によって使う場所を変えたりすることはできない。
停電に弱い
バッテリーを装備しないので、停電やブレーカー落ち、コンセントの予期しない抜け落ちが発生すると、作業中だろうが何だろうが一瞬で電源が落ちてしまう。そうなるとストレージに保存していないデータは消去されてしまい、更に場合によってはシステムそのものにダメージを与えてしまう。落雷や停電に備えてUPS(無停電電源装置)などの蓄電装置が用意されることもある。デスクトップでも省電力の構成で、大容量のポータブルバッテリーを繋げれば、そこそこ長時間使用することはできる。しかしそこまでやるなら、素直に普通のノートパソコンを用意した方が確実で安上がりだろう。
分類
デスクトップパソコンは、ケースの形態によって数種類に分類される。かつては大まかにタワー型・デスクトップ型に分けられ、筐体の高さや厚みで細分されていたが、デスクトップでもノートパソコンの部品を利用することが当たり前になった近年は、さらに小型化した形態も出てきている。
タワー型
背が高く、巾が狭い筐体で、比較的大型のもの。ケースの接地面(水平面)に対し、マザーボードは垂直に配置され、光学ドライブやハードディスクなどのストレージは平行に配置される。
デスクトップ型パソコンとしては最も一般的な形で、自作パソコンでもおなじみのタイプ。一般的なパソコンの形態の中で、もっとも拡張性が高く、もっともメンテナンスがしやすい。ディスプレイ・キーボードなどと離して、机の下に配置されることも多い。
ケースの大きさや拡張性などにより、フルタワーやミドルタワー、ミニタワーなどと呼び分けられるが、厳密な定義があるわけではない。
ブック型
マザーボードの配置はタワーと同じだが、光学ドライブ・ストレージも接地面に垂直に配置されるもの。タワー型と比べ幅が狭くスリムだが、その分拡張性は犠牲になる。マザーボードに装着する拡張カードは、通常より幅の小さいLowProfile型のものでないと使えないことが多い。内部拡張性を廃し、さらに薄さと小ささを追求したものは超小型となる。
デスクトップ型
上述の通り、かつてはデスクトップ型といえば横置きでCRTディスプレイを上に置いて使うタイプのもののみを指した。マザーボードがケースの接地面(水平面)に対し並行に配置され、光学ドライブ・ストレージもまた、接地面に平行に配置される。横に置くとデスクトップ型、縦に置くとブック型として使えるものもあった。天板の大きさに比べて極端に背が低い薄型のものはピザボックスと呼ばれていた。
12〜15インチサイズのCRTを本体に重ね置きすることでスペースを節約できるメリットがあったが、ディスプレイの大型化が進むと、あまりにも背が高くなり使いづらくなることからタワー型が主流になった。2000年代以降は液晶ディスプレイの普及により横置きデスクトップは廃れ、現在ではHTPCなどのAV用途を除いて殆ど見ることはできない。
構造上、マザーボードに装着する拡張カードを装着するのに十分な幅を確保すると筐体の背が高くなるため、かつてメーカー品のPCではライザーカード(こんなの)を使ってカードの向きを変えることで、筐体の薄型化をはかったモデルもあった。LowProfile規格の誕生により現在では使われることは少ない。
キューブ型
直方体ないし立方体の形状のケースで、比較的小型なもの。大手メーカーから出ている機種は少なく、ショップブランドや自作が中心である。マザーボード及びストレージの配置はデスクトップ型に準ずる。デスクトップ型の幅を縮めたものと考えてよいが、ディスプレイを上部に置くことは考えられていない。ただ通常規格の拡張カードが自由に挿せるだけの高さが確保されていることが多く、その点ではブック型や超小型より優れている。
超小型
ノートパソコンの部品を使用してブック型やキューブ型よりもさらに筐体を小さくしたもの。大きさは弁当箱サイズから手のひらに載る程度である。内部拡張性はほとんど排除され、メモリ増設とSSD換装程度しかできない。構造的には、ノートパソコンをデスクトップに仕立てなおしたものと考えてよい。電源もノートパソコンのように外付けにしたものもある。多くの機種はVESAマウントを活用して液晶ディスプレイの背面に取り付け、ディスプレイ一体型のように使うことが可能になっている。
ディスプレイ一体型
ディスプレイを内蔵したデスクトップパソコン。本体とディスプレイ間の配線を省けるので、非常にすっきりした外観となる。液晶ディスプレイと区別がつかないほど薄いものも多く、非常に省スペースであるが、一般的なデスクトップパソコンのメリットは享受できない(排熱がシビア、内部拡張性がほとんどない、メンテナンス性が悪い...etc)。マザーボードは接地面と垂直に、ディスプレイと平行に配置される。
昔はCRT内蔵で、ハンドルがついているものもあったが、非常に重かった(初代iMacで17.3kg)。さらに昔のIBM 5100(1975年)などはキーボードも内蔵し「ポータブル・コンピューター」を名乗ったが、24kgもあり、到底持ち歩ける代物ではなかった。
キーボード一体型
8ビット時代のレトロPCによく見られた形態。16ビット以降はフロッピーディスクドライブを複数台内蔵するニーズが増えたことからデスクトップ型がほとんどになり、キーボード一体型は非常に少なくなった。
2009年の「EeeKeyboard PC」を皮切りに、「PCを内蔵したキーボード」といった趣の機種がいくつか出たが、ガジェット好きの間で話題になるにとどまっている。
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関連項目
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