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ニフェジピン(Nifedipine)とは、カルシウム拮抗薬である。先発医薬品の販売名はアダラート®。
概要
ニフェジピンは、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(Ca2+チャネル遮断薬)である。血管を拡張して血圧を低下させる作用があるため、高血圧症や狭心症の治療に用いられる。オキシトシン拮抗薬(子宮収縮抑制薬)として、WHO必須医薬品モデルリストにも収載されている。
セリ科植物Ammi visnagaの果実に含まれる成分ケリンをもとに、ドイツの製薬企業バイエルが開発を進め1966年に発見された。日本では、1976年にアダラート®の名で販売開始された(2019年に販売中止)。1985年には1日2回内服・12時間持続製剤であるアダラート®L錠(2020年に販売中止)、1998年には1日1回内服・24時間持続製剤であるアダラート®CR錠が販売開始された。さらに、それぞれジェネリック医薬品が製造販売されている。
グレープフルーツ、ダイダイ、ブンタン、夏ミカンなどの柑橘類、およびそれらの果汁を含むジュースは、ニフェジピンと相互作用を引き起こすフラノクマリン類を含み、ニフェジピンの作用を強めるおそれがある。そのため、ニフェジピン内服中はグレープフルーツなどの摂食を避ける。温州ミカン、レモン、カボスにはフラノクマリン類がほとんど含まれておらず、摂食しても影響は少ない。[1]
効能・効果
異型狭心症に適応があるのはCR錠のみ。上記のほかに、切迫早産に適応外使用される[2]。レイノー病(手指の細動脈狭窄)、アカラシア(食道の蠕動運動機能低下による嚥下障害)などに対しても使用される。
用法・用量
高血圧症の治療の場合、ニフェジピン1回10mgを1日3回経口投与する。徐放性製剤であるL錠なら1回10~20mgを1日2回、CR錠なら1回20~40mgを1日1回経口投与する。いずれも症状に応じて適宜増減。最大でCR錠1回40mgを1日2回まで投与可能。
狭心症の治療の場合、ニフェジピン1回10mgを1日3回経口投与する。徐放性製剤であるL錠なら1回20mgを1日2回、CR錠なら1回40mgを1日1回経口投与する。いずれも症状に応じて適宜増減。最大でCR錠1回60mgを1日1回まで投与可能。
作用機序
カルシウム拮抗薬は、細胞膜に存在する電位依存性Ca2+チャネルを遮断して薬理作用を示す。電位依存性Ca2+チャネルには、L型、N型、T型などのサブタイプがあり、ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬は主に血管平滑筋細胞に存在するL型Ca2+チャネルを遮断する。L型Ca2+チャネル遮断によって細胞内へのCa2+流入が抑制され、血管平滑筋が弛緩して血管が拡張するため、血圧は低下する。
また、末梢動脈の拡張により末梢血管抵抗が減少するため、後負荷(心臓の収縮期に心筋にかかる負荷)は軽減される。冠動脈の拡張により冠血流量は増加し冠攣縮(発作性の異常な血管収縮)も緩解する。これらの作用は狭心症の症状を改善させる。
抗炎症作用や抗酸化作用の報告もある。
禁忌・副作用
過敏症の既往歴のある患者、心原性ショックの患者への投与は禁忌である。ニフェジピンカプセルやニフェジピン細粒など1日3回内服する速放性製剤は、急性心筋梗塞の患者への投与も禁忌である。
妊娠20週未満の妊婦、妊娠している可能性のある女性への投与は、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に可能。以前は添付文書上禁忌となっていたものの、この適正性について検討され、2022年12月に禁忌の項より削除された。
副作用として、動悸、頭痛、熱感(ほてり)、浮腫(むくみ)、歯肉肥厚(歯ぐきの腫れ)などがある。また、1日3回内服する短時間作用型の製剤は、血圧の急激な低下によるめまいや反射性頻脈を引き起こすおそれがある。急激な降圧や心拍数の上昇が心血管疾患の予後を悪化させる報告もあり、高血圧緊急症でも使用は推奨されていない。ただし、現在では短時間作用型の製剤はあまり用いられておらず、多くは徐放錠とりわけCR錠が処方されている(緩徐に作用する徐放錠のほうが副作用の心配が少ない)。
同種同効薬
ニフェジピンは、カルシウム拮抗薬(Ca2+チャネル遮断薬)であり、その構造からジヒドロピリジン系(DHP系)に分類される。これらは以下に示すように、“-dipine”(~ジピン)という共通の語幹をもつ。
第1世代DHP系Ca拮抗薬は、ニフェジピン(アダラート®)、ニカルジピン(ペルジピン®)。第2世代DHP系Ca拮抗薬は、マニジピン(カルスロット®)、ベニジピン(コニール®)、シルニジピン(アテレック®)など。第3世代DHP系Ca拮抗薬は、アムロジピン(アムロジン®、ノルバスク®)、アゼルニジピン(カルブロック®)が該当する。概ね第1世代<第2世代<第3世代の順に作用時間が長い。
カルシウム拮抗薬はDHP系のほか、ベンゾチアゼピン系のジルチアゼム(ヘルベッサー®)、フェニルアルキルアミン系のベラパミル(ワソラン®)などがある。DHP系は末梢血管への選択性が高く、ベラパミルは心臓への選択性が高く、ジルチアゼムはその中間程度の作用をもつとされる。
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関連項目
脚注
- *Ca拮抗薬と「グレープフルーツ」以外の柑橘系は大丈夫?~フラノクマリンを含む果実と相互作用 - お薬Q&A ~Fizz Drug Information~
- *“海外では、リトドリン塩酸塩よりも母体副作用が少ないことから、ニフェジピン(アダラート®)が切迫早産の治療に使用されている。システマティックレビューでも切迫早産治療としての有効性が報告されており、エビデンスレベルが高い。”(産婦人科診療ガイドライン産科編2020)
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