それまでのハリウッド映画には僕らの世代が共感できるものが全くなかったと思う。
ベビー・ブーム世代が僕らに貼ったレッテル、即ち無気力・無目的・怠惰な世代という見方には僕を含め誰にとっても違和感があった。
ファイト・クラブ(Fight Club)とは、チャック・パラニューク(“お前は人生を無駄にしているという考えにいつも悩まされている”という言葉が有名)による小説、およびそれを原作として作られた1999年公開の映画である。この記事では主に映画版について記載する。
僕はジャックの簡潔なあらすじです。
「僕」は全米を飛び回りながら車のリコール調査に従事する不眠症に悩む大手自動車会社のサラリーマンである。
医者が睡眠薬をくれず頼みの綱の互助セミナーもマーラ・シンガーという厄介者の登場により効き目が薄くなってしまったなか出張中の飛行機であった石鹸の行商人、タイラー・ダーデンとふとしたことで殴り合いをしてしまう。
痛みの中に生きている実感を見出した二人はそれからも駐車場で定期的に殴り合いを決行する。
そんな光景に見物人も徐々に一対一のファイトに参加し始めるようになっていく。
場所を地下室に移しタイラーはこれをファイト・クラブと名付け全員が公平に参加できるようにルールをつくり指揮し始める。
ルールその1、ファイトクラブのことは決して口外するな。
僕はジャックの無駄に長い概要です。
「Cacophony Society(不協和音協会)」の元メンバーである原作者が欲しいものに囲まれていれば幸せなんだろうか?というアンチ物質主義を描いた作品(監督したデヴィッド・フィンチャー自身は別にアンチ物質主義者ではないと表明している)。
最初はピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』など)を監督に予定していたが『さまよう魂たち』の撮影中であったためNG。その次のダニー・ボイル(『トレインスポッティング』など)は途中で関心が別のプロジェクトに移り断念。3番目に打診されたブライアン・シンガー(『X-MEN』など)は脚本に目を通しもしなかった。そして紆余曲折ありフィンチャーに白羽の矢が立てられた。
当時すでに『セブン(映画)』や『ゲーム』などで高い評価を得ていたとはいえ処女作『エイリアン3』が自身の意向を無視した20世紀フォックス主導で作られた屈辱をフィンチャーは忘れていなかった。そのため今作は製作が始まる前にプレゼンしまくり、徹底的に主権と予算を求めた。その結果、70億円近い予算を引き出す。行き過ぎた物質世界をコケにする映画のために、行き過ぎた消費社会と資本主義の権化であるハリウッドの巨大スタジオから行き過ぎた予算をせしめることに成功したのだ。
タイラーを演じたブラッド・ピットは映画の公開後しばらくは酒場でよくケンカを売られて大変だったらしい。
エドワード・ノートンは自身の出演作を見返すのが嫌いだが『ファイト・クラブ』は何度も見ているという。また嫌煙家のため『ラウンダーズ』ではタバコを拒否したがこの映画では吸うなどお気に入りの様子。
北欧家具で揃えられたマンションの部屋はフィンチャーがLAに移って初めに住んだ部屋。いつも爆破したいと思っていたとか。
公開当時は当初の予定ほどの興行収入を得られず制作会社の重役が複数人解雇される事態となってしまったがレンタルで徐々に評判を広め世界各地で実際にファイト・クラブが結成されるほどとなった(しかしほとんどがすぐに警察沙汰となり処分されてしまった。現実世界でルールその1を守るのは難しかったようだ)。現在はインターネット・ムービー・データベースで長いこと映画史上10位に位置付けられているなど高い評価を得ている。
『虐殺器官』や『ハーモニー』、『MGS4』のノベライズなどで知られる伊藤計劃氏も本作をオールタイムベストの一本にあげて絶賛している。
撮影にはフィルムを通常の2時間映画の3倍の1500缶以上使用した。そのため単位時間当たりのカットとシーンが非常に多い。伊藤計劃曰く「史上最速の映画」。
イギリスの映画雑誌エンパイアが行った最高の映画キャラクターランキングで見事タイラーが一位に輝いた。
音楽はダスト・ブラザーズやPIXIESなどが楽曲を提供。この他にレディオヘッドも参加する予定だった。結局流れたのだがトム・ヨークはこの映画を観返すたびに参加すればよかったという思いになるらしい。『Where Is My Mind』はカナダのエンタメサイトで映画史上ナンバーワンのエンディング曲と認定された。
サブリミナルを20世紀FOXのロゴの後ろにいれたいというフィンチャーの要求は流石に会社の法曹部から却下された。
小説を原作とするが差違はあり結末も若干異なる。原作者はこの映画を原作の改良版と認めている。具体的には映画では一つしか詠まれなかったが原作では所々に俳句表現が挟まれる・獣医を目指す人間は白人・タイラーとの出会いの場・クライマックスでの互助グループメンバーなど。
フィンチャー曰く「全てのショットのどこかにスタバのカップが映りこんでいる」。スターバックス社からは「店を滅茶苦茶にするのはいいがロゴは汚さないでくれ」と言われたという。2009年5月のニューヨークではこの映画に触発されたと供述している少年が現地のスターバックスと近くのベンチを破壊する事件が発生。
評論家からは内容があまりに暴力的だと批判を受けることも多くアメリカでは生放送中にネタバレを交えつつ酷評した司会者もいた。ただしとある理由からこの映画はそこまで暴力的でもないという意見もある。ノートンは「暴力の根源を検証していない映画に関わったことはない」と述べている。
余談だが本作が公開された1999年は他にも名作・話題作が多く映画史上最高の当たり年と言われることが多い。
コーネリアス?
- 「僕」
- 演:エドワード・ノートン
物語の語り手(ナレーター)。IKEAに夢中な不眠症を患うなで肩のヤッピー。虚弱。 - 互助グループに偽名で参加する。名前は不明。原作小説でも映画内でも本名が確定できるシーンはないが20世紀FOX公式サイトの記載名や音響監督の呼び名はジャックであり便宜上なのかただの勘違いなのか不明だがそう呼ばれることが多い。
- タイラー・ダーデン
- 演:ブラッド・ピット
子供向けアニメにポルノのワンカットを挿入したりホテルのポタージュに自分の排泄物を混入させたりする悪趣味な男。喧嘩もセックスも強い。
名前はセクハラで解雇された原作者の元同僚からとっている。 - マーラ・シンガー
- 演:ヘレナ・ボナム・カーター
老人への食事をくすんで食欲を満たしコインランドリーの服を売って生活の足しにするゴシック風メイクのヘビースモーカー。「僕」と最悪なときに出会った。
幼少期に原作者の妹をいじめていた同級生から名前をとっている。またアメリカ国内に同名の人物が一人おりこの人物とは無関係であることを20世紀FOXは弁護士を雇って証明した。 - ボブ・ポールセン
- 演:ミート・ローフ
筋肉を鍛えるため競馬用のステロイドを使い、それが原因で睾丸ガンになり男性機能を失った元ボディビルチャンピオンの巨漢。ホルモンバランスが狂い一部が女体化してしまっている。離婚者。消費社会に踊らされた80年代マッチョの残骸。小説での名称はビッグ・ボブであり支部を任せてもいいと判断されるまでになっている。 - エンジェル・フェイス
- 演:ジャレッド・レト
ファッキンブロンド。個を捨てたテロリスト軍団「スペース・モンキー」に早い段階で志願している。とある人物に一時やきもちを妬かれた。小説での名称は天使の君。 - リチャード・チェスラ―
- 演:ザック・グルニエ
- 「僕」の上司。
- 自社製品の欠陥を知りながら見て見ぬふりをつづけた結果多くの人が命を落とした。
- 原作小説においては映画よりも派手に退場する。
- メカニック
- 演:ホルト・マッキャラニー
- 背の高い痩せた男。原作では重用人物なのだが映画では特別な描写はされない。
前の住人はニコ厨だったらしい。
静画こそ最良の薬
関連リンク
関連項目を見てみろ。それが本当の地獄だ。
- ブラッド・ピット
- デヴィッド・フィンチャー
- サブリミナル
- アイデンティティ
- 資本主義
- アメリカン・ビューティー(同じ1999年に公開されたアカデミー作品賞受賞作品)
- 範馬刃牙
- チンコ
- 小説作品一覧
- 洋画
- 映画の一覧
- Fight Crab
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