概要
ボールを4球投げて打者の出塁を許すことである。当然であるが、ここでの"ボール"とは野球のボールではなく、ストライクゾーンに入らず空振りもされなかった投球のことである。
死球と読みが同じため「よんたま」という読み方で区別されることもあり、死球と合わせて四死球と呼ばれる。フォアボール(four ball)と呼ばれることが多いが和製英語であり、英語では「base on balls (BB)」と呼ばれる。また、四球を選んで歩くことを俗に「walk」と言う。
四球のルール
四球はボールインプレーであり、打者走者が安全に一塁にいけるのはあくまでも一塁分の安全進塁権によるものである。すなわち、打者走者は一塁までしか行けないというわけではなく、一塁進塁直後に二塁を狙っても構わない。より具体的には、四球が暴投になっていた際に、二塁への進塁を試みても良い。
逆に言うと、四球が成立した場合、打者走者は必ず一塁に行かねばならない。2015年7月28日のオリックス日本ハム戦にて、6回2死二塁の場面で代打として打席に入った大谷翔平は、敬遠された直後に一塁ベースを踏まずに代走と交代し、そのままベンチに戻ってしまった。本来、走塁放棄としてアウトが宣告されるべきプレーだったのだが、たまたまオリックスの投手交代でタイム(ボールデッド)が掛かっていたため、その間にベースを踏み直したことで事なきを得ている。
打者走者ではない走者も同様である。一塁走者が3ボールからの投球直後に二塁への盗塁を企画し、捕手がボールと判定された投球(この時点で四球が成立)を捕球して二塁手へ送球し、二塁手が走者にタッチした場合を考える。走者一二塁間の時にタッチが行われてた場合、走者にも安全進塁権が発生しているためアウトにはならない。一方、オーバーランなどで二三塁間にいる時にタッチした場合、三塁への走塁意図があったと判断されアウトになる。
稀にだが、球審がボールカウントを間違え、四球が宣告されないというプレーが発生する場合がある。この場合、次のプレー(投手が次の投球を始めるまで、あるいは攻守交替で内野手がファールラインを超えるまで)になるまでに球審へ申し出る(いわゆるアピールプレーをする)必要がある。近年では2018年8月9日の広島中日戦で、鈴木誠也の打席で3ボール2ストライクからボールを記録したが、球審による四球宣告がされなかった。審判団は全員間違いに気づかず、広島の選手及び監督からも申し出がなかったため、プレーも継続され、最終的に鈴木はセカンドゴロで凡退した。
逆に、3ボールなのに四球が宣告されるというプレーが発生する場合もあり、球審に誤りを申し出る必要があるのも同様。2007年7月29日のヤクルト中日戦で、青木宣親の打席で2ボール2ストライクからボールを記録したが、球審から四球が宣告された。青木はボールカウントがおかしいことに気付いていたようだが、審判団や中日の選手・監督は間違いに気付かず申し出も無かったため、四球として出塁した。
四球に関する公式記録
四球を選んだ打者には四球が、四球を与えた投手には与四球が記録される。詳細は与四球を参照のこと。
四球が多い選手は、選球眼が良いかつ早打ちをしないという評価が与えられやすい。また、強打者や、投手の前の打者は、チャンスの場面で勝負を避けられるケースが多いため、四球が多くなる傾向がある。後述の「敬遠(故意四球)」も参照のこと。
故意四球(敬遠)
故意四球とは、強打者、好調な打者、投手の前の打者などとの「勝負を避ける」目的で意図的に出す四球のことである。報道などでは、正式名称の故意四球より、別称の「敬遠」が使われることがほとんどである。
敬遠は、得点圏にランナーを置き、かつ一塁が空いている時に不調の打者や投手といった比較的得点期待値の低い打者と勝負するために出される場合に多く見られる。またアウトカウントが一死以下の場合、併殺を取りやすくする意図もある。星稜高等学校時代の松井秀喜のように、打者として強すぎるが故に戦況に関わらず敬遠が指示されたり、シーズン終盤でタイトルを争う相手打者にタイトルを獲らせないために敬遠をするケースもある。
敬遠自体は立派な作戦であるため、基本的に批判される行為であるとは言えない。敬遠が指示されると球場内でブーイングが起きることが多いが、これはブーイングする者も作戦と認識した上でのお約束程度のものが大半である。
以前は捕手がミットをストライクゾーンから大きく外す程度で敬遠が行われていたが、不用意に投げた敬遠球を痛打されたケースが複数あったため、現在は捕手が体ごとプレートから離れて打者が打てない場所に投げるようにするか、捕手がプレートから離れないまでも、バットが届かないくらいの完全に外れたボール球を投げるのが普通である。
なお、捕手が立ちあがって完全なボール球を投げて敬遠した場合のみ「故意四球」と記録される。明らかに勝負してなくても捕手が立ちあがっていなければ、単に「四球」となる。
申告敬遠
2017年シーズンよりMLBで、翌2018年にはNPBで、監督の申告だけで故意四球を認める新ルール(申告敬遠)が採用された。なお、申告制自体はMLBが最初に採用したというわけではなく、ソフトボールでは以前より国際ルールで(日本でも2013年から)採用されていた。
申告敬遠は投球数にカウントされない(4球加算されるわけではない)。但し、監督の申告は何時でも実施できるため、それまでに打者に投じた投球数はカウントされる。
より大きな違いとして、通常の四球はボールインプレーであるのに対し、申告敬遠はボールデッドであることが挙げられる。前述のような塁上の緊張感は発生しようがなく、大袈裟に言えば野球の本質を変える制度である。
MLBが申告敬遠を採用した理由は、試合時間の時短を狙ったためと言われている。打者登場時の曲の長さを制限し、走者無しの時に打者がボックスから離れることも禁止し、4球投げるぐらいなら1球(死球)で済ませるという過激な考えをする投手も居る、MLBらしいルールではある。しかしながら、故意四球自体が1試合でそれほど多くあるわけではないこともあり、時短効果が目に見えてる形にはなっていない。
関連項目
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