核兵器禁止条約とは、世界から核兵器を廃止・根絶することを目的として締結された、国際的な条約の一つである。
「核禁止条約」とも呼ばれる。
概要
核兵器の開発、保有、使用などを禁止した国際条約である。五大国(米・英・仏・中・露)だけに核保有を認めている核拡散防止条約(NPT)の体制下では核軍縮が進んでいないことに不満を持った非保有国が提案して始まった。交渉会議は3月と6~7月の2回にわけて行われ129ヶ国が参加し、2017年7月7日に採択が行われ、賛成多数により条約として正式に制定された。[1]
これまで核軍縮に関する話は何度もなされており、核拡散防止条約(NPT)や核実験全面禁止条約(CTBT)などの核関連の規制を行う条約はいくつも作られてきたが、これらは特定的なものを禁止したり部分的に抑制する程度にとどまっており、明確な文章やルールに基づき核兵器を違法化する条約は今回が初となる。
しかし五大国をはじめとする核保有国はこの条約に反対しており、交渉などでも参加しておらず、実質的に骨抜きとも言われている。核廃絶に関してはどのように進めていくのか、核保有国との話し合いや妥協点は見いだせるのか、といった点が課題として残っている。
2020年10月、条約の発効に必要な批准国が50ヶ国に到達し、2021年に発効することとなった。 [2] [3] [4]
2017年 | 7月: 核兵器禁止条約を採択。賛成122カ国、反対1カ国、棄権1カ国。 |
2020年 | 10月: 批准国が50か国に到達。2021年に発効。 |
内容
細かい内容については上記の外務省Webサイトを参照。英語原文と暫定的な翻訳も載っている。
核保有国が参加する道筋として、「核放棄してから条約に参加する方法」と、「核兵器を保有している段階で条約に参加して廃棄計画を示す手順」を提示。非締約国にはオブザーバーとして2年に1度、締約国会議や条約発効5年後の再検討会議に参加を認める規定も設けている。
条約では、核兵器の使用をちらつかせる「脅し」も禁止項目の一つとして明記されている。当初「脅し」に関する文言は、核保有側の国々も参加しやすくなるよう配慮する意味で、条約には入れない予定だったが、交渉会議で議論が本格化するとそれに反対する国が現れるようになり、最終的に「具体的な行為と解釈できる表現を"脅し"として扱う」とすることで調整され、文言として入れられた。[5]
余談・その他
- 条約の会議においては、NATOから唯一オランダが参加している(オランダも核の傘に入っている国であるため、採決ではもちろん反対票を投じている)。
- 採択後の2018年には、米・英・仏・ロ・中の国連安保理5カ国からは共同で反対声明が出た。共同声明では「核拡散防止条約が50年間にわたり有効に機能してきた」としており、核のない世界の実現を最終目標としている一方、核兵器禁止条約は急進的で現在の国際安全状況を無視していると批判している。中国などはメディアの環球時報を通じて「われわれが反対するのは正当であり、正義であり合理的だ」と主張した。[6]
- 批准の達成直前に、発効の影響を懸念し条約に反対していたアメリカが、複数の批准国に対して批准の取り下げ・撤回をするよう要求していた事が報じられている。[7] [8]
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関連項目
脚注
- *核兵器禁止条約を採択 賛成122カ国 オランダが反対、シンガポールが棄権 (産経新聞 2017.7.8 00:57)
- *核兵器禁止条約 来年1月に発効へ 批准した国と地域が50に (NHKニュース 2020年10月25日 6時28分)
- *核兵器禁止条約、来年1月発効 批准50到達、使用や威嚇を禁止―保有国は不参加 (時事通信 2020年10月25日09時23分)
- *核兵器禁止条約 来年1月に発効へ ホンジュラス批准し条件達成 (産経新聞 2020.10.25 07:29)
- *朝日新聞 2017年8月9日 より
- *安保理5カ国が「核兵器禁止条約」に反対する共同声明、中国メディア「正当で正義、合理的だ」 (Record China 2018年10月30日(火) 21時20分)
- *核兵器禁止条約の発効目前に圧力…アメリカが複数の国に批准撤回求める (東京新聞 2020年10月22日 10時43分)
- *なおアメリカは条約の採択時には不参加である。NATO関係から採択に出ているのはオランダのみ。
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