江戸川乱歩賞とは、日本推理作家協会が主催するミステリー小説の公募新人賞。後援は講談社とフジテレビ。
概要
1955年設立。「乱歩賞」と略されることが多い。最初は江戸川乱歩がポケットマネーから賞金を出す、探偵小説分野の功労賞として始まった。第3回から公募新人賞に切り替わり、現在まで続いている。
募集対象は広い意味でのミステリー小説。賞金1000万円。受賞作は講談社から刊行される。応募資格はプロ・アマを問わないため、既に著作のあるプロ作家が受賞することも多い。選評は「小説現代」誌上に掲載されるほか、日本推理作家協会の公式サイトでも読むことができる。
長い歴史をもち、1980年に横溝正史賞が設立されるまでは20年以上にわたって事実上唯一の長編ミステリーの公募新人賞であった。そのため推理作家の登竜門として数多くの有名作家を輩出しており、文学賞の中では高いレベルの一般知名度を誇り、ベストセラーになった受賞作も多い。講談社も力を入れて売り出すため、少なくとも90年代までは数作で消えてしまう作家はほとんどいなかった。その一方、受賞作の傾向が似通っており、「傾向と対策」に沿った作品がそのまま受賞しやすいということもよく言われていた。
21世紀に入ってからは出版不況に加えて他の新人賞に押されて苦戦が続いており、受賞者が数作で消えてしまうことも珍しくなくなっている。というか活躍してる受賞者の方が少ない。
人工的な設定の本格ミステリが受賞することはほぼ無く、中井英夫の『虚無への供物』や島田荘司の『占星術殺人事件』(応募時のタイトルは『占星術のマジック』)などが落選していることはわりと知られている。綾辻行人や法月綸太郎ものちのデビュー作の原型となる作品を応募していた。そのほかにも、土屋隆夫『天狗の面』、笹沢左保『招かれざる客』、夏樹静子『天使が消えていく』、中町信『模倣の殺意』、岡嶋二人『あした天気にしておくれ』、折原一『倒錯のロンド』など、後に刊行されて高く評価された最終候補作は多い。
週刊文春が毎年行っているランキング企画「週刊文春ミステリーベスト10」では、2003年頃まで乱歩賞受賞作がほぼ毎年ベスト10入り、大抵はベスト3入りしていた。その頃の乱歩賞作品の順位の信憑性は同じ年の「このミス」の順位と比較してみると解りやすい。2004年以降はそういう傾向はほぼ無くなっている。
大百科に記事のある受賞作・候補作
大百科に記事のある受賞者・候補者
- 早川書房 (第2回受賞 「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」の刊行に対して)
- 仁木悦子 (第3回受賞 『猫は知っていた』)
- 土屋隆夫 (第3回最終候補 『お天狗様の歌』) ※後に『天狗の面』として刊行
- 天藤真 (第8回最終候補 『陽気な容疑者たち』)
- 西村京太郎 (第11回受賞 『天使の傷痕』)
- 皆川博子 (第18回最終候補 『ジャン・シーズの冒険』) ※未刊行
- 栗本薫 (第24回受賞 『ぼくらの時代』)
- 井沢元彦 (第26回受賞 『猿丸幻視行』)
- 島田荘司 (第26回最終候補 『占星術のマジック』)※後に『占星術殺人事件』として刊行
- 岡嶋二人 (第28回受賞 『焦茶色のパステル』)
- 東野圭吾 (第31回受賞 『放課後』)
- 折原一 (第34回最終候補 『倒錯のロンド』)
- 長坂秀佳 (第35回受賞 『浅草エノケン一座の嵐』)
- 真保裕一 (第37回受賞 『連鎖』)
- 若竹七海 (第38回最終候補 『夏の果て』) ※後に『閉ざされた夏』として刊行
- 桐野夏生 (第39回受賞 『顔に降りかかる雨』)
- 池井戸潤 (第44回受賞 『果つる底なき』)
- 福井晴敏 (第44回受賞 『Twelve Y.O.』)
- 呉勝浩 (第61回受賞 『道徳の時間』)
- 佐藤究 (第62回受賞 『QJKJQ』)
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 直木賞
- 芥川賞
- 吉川英治文学新人賞
- 山本周五郎賞
- 本屋大賞
- 日本推理作家協会賞
- 本格ミステリ大賞
- 柴田錬三郎賞
- 三島由紀夫賞
- 野間文芸新人賞
- 吉川英治文学賞
- 大藪春彦賞
- 山田風太郎賞
- 泉鏡花文学賞
- 中央公論文芸賞
- 吉川英治文庫賞
- 日本ミステリー文学大賞
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