概要
もともとビールの製造においては、中にいるイースト菌(酵母)を殺菌して過度に発酵させないため、アルコールが沸騰しない程度の温度まで加熱する(パスチャライゼーション)のが一般的だった。
まだ冷蔵庫や冷蔵輸送が一般的でない時代では、熱処理をしないと中で発酵が進み、輸送中や保管中に発生した炭酸ガスによって栓が飛んでしまう問題があったためである。
そのため、生ビールを味わえるのはビール工場から近い場所にあるビアガーデンや食堂などに限られていた。
しかし、1967年にサントリーが「純生」 を発売。ミクロフィルターを使って濾過をすることで酵母を除去することに成功、熱処理をしない生ビールとして全国に初めて市販された。
これに他社が異議を唱えた(イースト菌のないビールを生とは言えない)が、1979年に公正取引委員会が生ビールを「熱処理をしないビール」として定義したことで決着、それ以降他社も生ビールを出すようになった。
現在ではビールにおいて生ビールであることがほぼ当然となっており、熱処理されたビールは少ない。
サントリー
一度は撤退したものの、1967年に生ビールとして「純生」を発売し、世間を驚かせた。
しかしビールの販売では先行する3社に負け続けていた。
樽生ビールが一般的になった1980年代前半では、プラスチックパッケージの樽生ビールを販売、ピヨピヨと音の出る細かい泡を出すための注ぎ口を付けていた。
1985年に麦芽100%ながら低価格の「モルツ」を発売。ドライ戦争で負けるもモルツを前面に押し出す戦略は成功、2003年にはさらに上級の「ザ・プレミアム・モルツ」のヒットによって黒字転換し、現在はシェア3位に上がっている。
- モルツ
- ザ・プレミアム・モルツ
サッポロビール
公正取引委員会の判断の前、1977年に濾過による生ビールを全国発売(1989年にサッポロ黒ラベルと名称変更)し、他社を出し抜いたものの、1990年代からアサヒ、サントリーの後塵を拝すようになり、シェア最下位に沈んでいる。
びん生の発売後、樽生ビールや特大びん(サッポロジャイアンツ)のほか、小さい瓶に入った「ぐい生」「サッポロ生ひとくち」を販売し、生ビールの浸透に努力をしていた。
アサヒビール
1968年に酵母を取り除かない生ビールとして「本生」を発売し、サントリーに異議を唱えるも、賞味期限が短く販路も限られたために完敗。
1970年代末期に濾過による生ビールの販売を開始するとともに、金属の家庭向け樽生ビールを販売し、各社が樽生ビールを出すようになった。
1985年に、キレを重視した味にリニューアルしてヒットし、さらにドライビールの先駆けとして「アサヒスーパードライ」を発売して大ヒットとなった。その後ドライ戦争と呼ばれるドライビールの競争が起こるもトップの座は揺るがず、ついにキリンビールを抜いてトップシェアを確保するに至った。
キリンビール
1980年代から青ラベルの生ビールを出していたものの、フラグシップであった赤ラベル(キリンラガービール)を重視した戦略に変わりはなかった。
その間に、素材を厳選した麦芽100%生ビールとして、ハートランドビールをミニボトル限定で販売、テレビ番組とのタイアップ企画で誕生したこともあって知名度は高く、スマッシュヒットを飛ばした。
アサヒスーパードライに対抗してキリンドライを販売するも、スーパードライの牙城は崩れなかった(それでも販売2位)。しかし、ドライビールのキレの良さは消費者に受け入れられたこともあり、ドライビール並みのアルコール度数を持ちつつも、一番搾り麦汁だけを使用した「一番搾り・生」を発売し、ヒットした。
一番搾りの好調を見て、1996年にキリンラガービールも生ビールに転換した(ラガーの名称については後述)。それによって従来のユーザーを失う結果となり、のちに熱処理ビールとして「キリンクラシックラガー」を発売した。
しかし、コクの強いビールへの嗜好は薄くなっていき、現在では一番搾り・生が最も売れている。
ラガービール
ラガービールとは、下面発酵するイースト菌を使って低温で発酵、熟成されたビールを指す。
そのため、生ビールでも下面発酵であればラガービールに属する。
熱処理された意味ではないので要注意。
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