名もなき一日を走る。
長崎バス(正式名称:長崎自動車株式会社)とは、長崎市・西彼杵郡・西海市に路線網を広げるバス事業者である。
民間事業者では日本一運賃が安かった。現在でも九州の民間事業者では最安値を誇る。
概要
歴史
- 1936年4月、上野喜左衛門の出資によって長崎茂木乗合自動車㈱が設立され、同年8月15日に現在の長崎自動車㈱に改称した。以来、社名の変更歴はない。
- 1947年9月1日、エンジンが停止し、ブレーキも効かなくなった木炭バスが崖から転落しそうになった。この時の車掌が自ら輪留めとなって運転士・乗客を救助し、車掌は殉職した。現在は打坂地蔵尊としてその車掌が祀られている。
- 1959年6月、九州初の完全冷房バスを導入。
- 1966年10月22日、本社を現在地に移転。それまでは茂里町に本社があった。
- 1968年、路線バスのワンマン化が始まる。
- 1971年3月1日、長崎電気軌道の路線バス事業を譲受。
- 1987年10月1日、大島・崎戸地区の路線を大崎バス(大崎自動車㈱)として分社化。それまでは瀬戸営業所大島出張所だった。
- 1999年4月、同社初のワンステップバスが導入される。以後、2005年までに113台が増備された。2005年からはノンステップバスを主に導入していたが、2014・15年度は再びワンステップバスの新車が導入され、現在は150台を超える大所帯となっている。
- 2002年4月、長崎市さくらの里にバスターミナルを併設した桜の里営業所を新設。
- 2003年10月1日、瀬戸営業所をさいかい交通㈱として分社化。
- 2004年10月1日、さいかい交通が大崎バスを吸収合併。
- 2005年12月、同社初のノンステップバスの導入が始まる。翌年からは特注仕様で増備が進んでいる。半数以上がいすゞ・エルガ、残りは日野・ブルーリボンⅡなので全車ジェイ・バス製。2013年度初頭までに116台にまで増えた。
- 2008年10月1日、大型商業施設「みらい長崎ココウォーク」がオープン。それに先駆け、9月22日にバスターミナル「ココウォーク茂里町」が開業した。
- 2013年、エンジン不良により2000年式ワンステップバス1台が廃車。ワンステップバス初の廃車となった。
- 2014年4月1日、長崎県営バスの矢上・東長崎地区の路線を引き継ぎ、東長崎営業所を開設。急遽立ち上げたため、営業所の建屋はプレハブで車両も一部中古車を購入して充てている(ほとんどが京急バス・臨港バスからやってきた)。長崎バスの中古車購入は珍しく、電鉄バスからの車輌授受など一部のケースを除けば過去殆ど例がない。
- 2015年4月6日、時津北部ターミナル開設。同時に時津営業所を移転。また、一部路線の移管など組み替えも行われた。
- 2015年10月1日、運賃を値上げ。基準賃率は1kmあたり24.5円となり、民営事業者での最安基準賃率の順位は宇野バスに次ぐ2位、全事業者での順位は鹿児島市交通局、宇野バスに次ぐ3位となった。
- 2016年4月28日、創業80周年。それに先駆け、同年1月より役所広司主演・監督の運転士募集CMが放送開始。80周年と同時にポータルサイトがリニューアルされた。新しいポータルサイトのタイトルは「人と街をハッピーにつなげる長崎バス kataru net」。
- 2016年12月、九州で初めて新型ブルーリボンハイブリッドを2台導入。長崎バスでのハイブリッドバス導入は異例であり、ハイブリッドバス専用のデザインが採用されている。翌17年には5台増備され、大橋営業所を除くすべての営業所に1台ずつ配置されることとなった。
- 2017年11月、島原鉄道をグループ傘下に収めると発表。長崎バス悲願の島原半島進出が決定した。
路線バス
現在は長崎市・西彼杵郡を中心に路線網を展開し、西海市の一部まで乗り入れるものもある。民間事業者の中では2番目に運賃が安く、長崎新地ターミナルから最長距離路線・大串線に乗って終点の大串バス停まで行っても1000円しかかからない(所要時間は平均約1時間40分、走行距離は40km少し)。ちなみにさいかい交通の瀬戸・板の浦行きに乗ると長崎新地ターミナルから板の浦まで1140円になるため、こちらを最長距離路線とみなすことも多い。
2014年4月から消費税が8%になるため、各事業者も値上げに踏み切るところが多いが、長崎バスでは値上げを予定していないことを公表していた。しかし、安泰と思われていた運賃は2015年3月に「同年10月より値上げする」と発表し、10月1日をもって新たな運賃が施行された。消費税10%への増税を考慮し、ギリギリのラインで値上げした形である。これにより民間バス事業者日本一を誇っていた記録は宇野バスに譲ることとなったのである。さらに2018年12月には再度の運賃値上げが行われている。利用者の減少は否めないが、もっと乗車されるべき路線は非常に多い。
特異性
急坂、急カーブや狭隘道路が多い土地柄のため、高度な運転技術が必要とされる路線が多い。
道路事情で小型バスや中型バスで運行するのが良さそうな路線であっても、基本的には大型バスで運行する。
- 飯香の浦(いかのうら)線
最も知名度が高いであろう狭隘路線である。愛宕町バス停の先のへアピンを越えたあたりから道が段々と怪しくなり、「ここを大型バスで走れるのか!?」という山道を通り抜け、海沿いの農村にある終点の飯香の浦バス停へと辿り着く。2017年に導入されたハイブリッド・ノンステップバスも使用されている。神の島営業所管轄。 - 式見・相川(あいがわ)線
手熊バス停~式見バス停までは連続ヘアピンカーブや普通車でもすれ違いに苦労する狭い旧道を大型バスで攻める。その中でもトンネル口バス停がある式見トンネルは大型バス1台がギリギリで車両規制をクリアできる大きさのため、繊細なハンドル捌きが要求される。小江原経由は桜の里営業所管轄、福田経由は松ヶ枝営業所管轄。 - 式見-滑石線
長崎バスが運行する長崎市コミュニティバスの路線。式見よりも更に狭く厳しい連続ヘアピンカーブを中型バスで攻める。長崎バスが保有する路線の中で実はここが最も厳しいヘアピンカーブでなかろうかと思えるレベル。大型バスの通行が物理的に不可能であるため中型バスだが、中型バスでもなお曲がるのは厳しいレベルであり、大型とはまた別格の繊細なハンドル捌きが求められる。桜の里営業所の保有するコミュニティバス専用車両で運行。 - 戸町(とまち)経由ダイヤランド車庫線
途中の戸町二丁目バス停付近はあまりに狭隘で自動車同士のすれ違いが難しいため、信号による交互通行となっている。言うまでもないことであるが、一般的な大型バスでの運行である。しかも1時間4往復と道幅の割に本数も多い。大橋営業所・ダイヤランド営業所の共同管轄。 - 中央橋-立山線
珍しく長崎県営バスとの共管路線であり、30分置きの交互運行を行っている。時刻表には「マイクロバス」と書いてあるが、どう見ても普通の中型バスである。最初は本当にマイクロバスで運行されていたのだが、いつの間にか中型バスに移行し、名目だけマイクロバスとして運行している。やはり謎。目覚町バス停~立山バス停は流石の長崎バスも中型バスを投入せざるを得ないほどの狭隘区間である。大橋営業所管轄。
…ここに紹介しきれなかった数多くの路線もこれまたクセモノ揃いである。
また、前述のとおり、ノンステップバスは最初に投入された1台を除いて、床面高さを20cm上げた独自仕様であり、いすゞエルガ・日野ブルーリボンⅡでは更にセーフティーウインドウ付きの特注仕様(他に導入したのは京都市バスのみ)となる。また、全車両に左側路肩に向けたコーナリングランプが標準装備されている。
営業所一覧
- 桜の里営業所(長崎市さくらの里3-382-3)
- 松ヶ枝営業所(長崎市松が枝町6-6)
- 大橋営業所(長崎市油木町2-9)
- 神の島営業所(長崎市神ノ島町1-331-65)
- 時津営業所(西彼杵郡時津町日並郷1085-110)
- 柳営業所(長崎市小ヶ倉町3-76-48)
- ダイヤランド営業所(長崎市ダイヤランド4-10-276)
- 東長崎営業所(長崎市平間町373-2)
- さいかい交通本社・瀬戸営業所(西海市大瀬戸町瀬戸板浦郷920-10)
- さいかい交通大島営業所[1](西海市大島町字馬込1616)
高速バス
現在は九州内1路線を展開。かつては夜行バスを名古屋・京阪神に3路線運行していた。
2018年11月30日をもって、長崎バスは夜行バスから撤退。背景にはLCCの台頭や乗務員不足、利用者の減少など多くの原因が挙げられる。
なお、長崎バスは九州高速バス予約運営委員会「あっとバスで」に加盟していない。
OBC-VISION
2011年より従来の運賃表示機に代わって新しくレシップ製の「OBC-VISION」 が順次採用されている。ダイヤランド→大橋→時津→柳→桜の里→松ヶ枝→神の島の順番で行われてきた。2013年10月初頭に神の島営業所の車両も全て付け替えが終わり、なんと今度は従来の運賃表示機が見られると思っていたさいかい交通でもついに全車付け替えられてしまった。ちなみに、OBC-VISIONへの付け替え時に音声も変わっているが、案内の内容は変更されていない。しいて言えば、言い回しが変わったくらい。
エヌタスTカード
2002年に導入された長崎県本土の共通ICカード「長崎スマートカード」に代わる長崎バスグループの新ICカード。19年9月16日より運用開始。長崎バス・さいかい交通と長崎地区のタクシー事業者で使用できる。注目すべきは「交通系ICカードで初となるTポイントとの連携」というところ。
なお、長崎バスグループを除く県内他事業者は西鉄グループの「nimoca」を導入したが、長崎バスは九州大手の西鉄グループが運用する共通規格よりも提携企先である十八銀行を始めとする地元企業が提唱した独自の規格を偏重した。これによりとばっちりを受けたのがグループ会社に入っていた島原鉄道である…。
それでも長崎バスは運行エリアがJRとあまり競合しておらず、長崎スマートカード時代には発行枚数のシェアが1強だったこともあり、独自規格でありながら大きく普及してはいる。
関連動画
他にも路線バス車載動画は多い。
関連項目
外部リンク
脚注
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