ARX-7 アーバレストとは、賀東招二氏のライトノベル「フルメタル・パニック!」、及びそれを原作とするアニメシリーズに登場する人型兵器、アーム・スレイブの機種名である。
概要
全高 | 8.5m |
基本重量 | 9.8t |
最高自走速度 | 280km/h(推定) |
最大跳躍高 | 45m(推定) |
最大作戦行動時間 | 100時間 |
動力源 | パラジウム・リアクター(常温核融合炉) ロス&ハンブルトン製APR2500C |
固定武装 | AM11 12.7mmチェーンガン×2 XM18ワイヤーガン×2 対人用テイザー×2 |
ミスリルがM9 ガーンズバックのプロトタイプをベースに建造したラムダ・ドライバ実験機。一応、分類上は実験機だが、実際には完全に実戦投入を想定した設計がなされている。
生産性は完全に度外視し、ただひたすらブラック・テクノロジーの導入を追求した機体である。開発者はウィスパードであるバニ・モラウタで、この機体の最大の特徴であるラムダ・ドライバとその関連ユニットは殆ど彼一人の手で設計されている。完成から間も無い内にバニ・モラウタが自殺してしまった為、再生産は不可能で、ミスリルが保有する唯一のラムダ・ドライバ搭載型ASとなっている。
アマルガムのラムダ・ドライバ搭載型ASが「通常型ASを駆逐する為の機体」なのに対し、アーバレストは「ラムダ・ドライバ搭載型ASに対抗する為の機体」として設計されている。
ちなみに、本機はデザインの変更が何度か行われており、ドラゴンマガジン連載開始時とファンタジア文庫の挿絵、TVアニメ1期と3期でそれぞれ形状が異なる(特にTV版以前と以後の変化が大きい)。
立体化や各種ゲームに登場する際はTV版デザイン(特に第3期版)が採用されることが多いが、文庫版デザインについては挿絵などで確認可能。ただし、現在刊行されているファンタジア文庫新装版の表紙に描かれている本機はTV第3期版である。
詳細
上記の通り、当機はM9 ガーンズバックをベースに設計された機体であり、ラムダ・ドライバを除く基本的な機体性能はM9と大差無い為、下では主にM9との相違点を中心に述べる。M9 ガーンズバックの項も併せて参照。
M9とは装甲の形状等が異なるので、一見すると全く別の機体に見えるが、基本的な駆動系や電子兵装は通常のM9と同じで、部品や使用できる火器の多くには互換性が有り、運動性能もM9と変わらない。
しかし、大電力を消費するラムダ・ドライバとその関連ユニットが相応の機内容積を占めている為、M9と比べ稼働時間が短い。骨格系については搭乗者の神経構造を模す専用の物が用いられている。ただしM9の骨格系を流用すること自体は可能である(そういった描写がなされる前に大破したが)。
原作では冷却を補助する4枚の羽根状のパーツが装備されており、類似する形状のサブコンデンサや武装などに換装することも可能であると書かれ続けたが、最後までその機会は訪れなかった。
アニメ版ではラムダ・ドライバ使用の際には肩部及び背部から合計6枚の放熱板が展開される。
頭部センサーの形状はM9がゴーグル型の単眼式なのに対し、当機のそれは双眼式のデュアル・センサーである。人間で言う口の部分にはM9には無い兵装保持用のハード・ポイントが増設されており、ここに散弾砲や単分子カッターのような携行武装を「咥える」様に装備出来る。その姿は巻物を咥えた忍者を彷彿させる。
アニメでは形状デザインの変更により、小型の対戦車ダガーなどしか咥えられないサイズになっている(実際に他の武装が咥えられないという描写や設定はない)。作中で使用されたのは長編3巻で散弾砲を咥えたのみ。
機体色は白を基調としており、M9と同じグレーの塗装を施された時期もあったが、ラムダ・ドライバが発動した際に塗料が剥げ落ちてしまった為、その後は白い状態のまま運用されている。
長編一巻「戦うボーイ・ミーツ・ガール」にて、北朝鮮(アニメ版では「ハンカ自治区」)に取り残された相良宗介達の元にトゥアハー・デ・ダナンからSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を改造した輸送コンテナで送り込まれ、初陣を飾る。この際、当機のラムダ・ドライバは図らずも最初の搭乗者となった宗介の脳波パターンに最適化されてしまった。開発者であるバニ・モラウタは既に死亡していた為、この設定を後から変更する事は不可能となり、以後、当機のラムダ・ドライバは宗介にしか駆動させる事は出来なくなる。
宗介は当初、不本意に押し付けられる形となった上に、原理が不確かで思う様に使いこなせないラムダ・ドライバに苛立ちを募らせ、当機に対しても嫌悪感を抱いていたが、紆余曲折を経て長編五巻「終わるデイ・バイ・デイ(下)」の終盤ではほぼ自在にラムダ・ドライバの力を操れる様になり、当機とそのAIのアルを自分の相棒として認める様になる。
しかし、長編七巻「つづくオン・マイ・オウン」にてレナード・テスタロッサの駆る最強のAS、Plan1055 ベリアルと交戦し当機は大破、完全に再起不能となる。その後、当機の残骸からは壊滅したミスリルの残党であるレイス達の手によりラムダ・ドライバのコア・ユニットとAIのアルが回収され、事実上の後継機であるARX-8 レーバテインとして復活を果たした。
その一方で、それ以外の部分については紆余曲折を経て日本政府の手に渡ることとなり、解析により得られた技術は後に、AS-1 ブレイズ・レイヴンに活かされることになる。
AI「アル」
当機に搭載されている機体制御用の人工知能。当初は他のM9のそれと変わらないただの戦術支援AIでしかなかったが、長編五巻「終わるデイ・バイ・デイ(下)」にて宗介からバニ・モラウタの死を告げられた際、生前のバニが自分の死後に備えて仕掛けていたフラグが立ち、アルはラムダ・ドライバと共生する新たな存在として変化していく。
フラグが立ってからは、普通のAIなら反応しない様な宗介の独白や命令以外の発言にまで常に反応を返す他、勝手に雑談を始めたり、冗談まで口にする様になり、直感や予感といった人間にしか出来ない思考をも身に付け、徐々に他のAIとは明らかに一線を画する、限り無く人間に近い自我を持った存在へと成長している。
作戦前に機内の宗介をリラックスさせようとネットから勝手に落とした楽曲を流そうとしたり、時にはわざと融通の利かない「普通のAI」のフリをしたりと、かなり冗談や悪戯を好む性格に見えるが(テッサは、もし宗介が違う環境で育っていたらアルみたいになっていたかも知れない、と語った)、これらは実際には宗介が常に最良のコンディションで戦える様にする為の、彼のメンタル・チェックを兼ねた行為であり、宗介も表面上はアルがこの手の発言をする度に「スクラップにするぞ」等と怒鳴っているものの、内心ではアルに対して戦友の様な感情を抱いている。
武装
固定装備としてM9と同じ12.7mmチェーンガンとワイヤーガンを2基ずつ装備する他、基本的にM9と同様の装備が可能。本項目では作中、相良宗介が主に使用したものを記載する。
- オットー・メララ 「ボクサー」 57mm散弾砲
散弾銃を原形とした(と言いつつも構造的にはモーゼルC96に近い)短砲身の滑腔砲。APFSDS(安定翼付き徹甲弾)や00-HESH(小型の粘着榴散弾×8)、00-HEAT等様々な弾種の運用が可能となっている(現実にボックス(箱型)マガジン式の散弾銃は存在する)。
装弾数は6発+1。フルオート射撃も可能。ポンプアクション(ガシャッ、と装填する)の動作の描写はない。
また、短銃身と描かれていないものもあるので長銃身モデルも存在する可能性がある。
(クロスボウが奪った散弾砲は給弾なしで10発以上射撃している)
『SWATの隊員が44マグナムのリボルバーを使用するようなもの』と言われる程に癖が強い火器であり、M6やサベージを始めとする第2世代機では取り回しに難がある。ただし、本機やM9を始めとする第3世代機では問題なく運用可能であり、至近距離でのケンカ・ショットで威力を発揮するとされる。
初登場時はOO-HESHが装備されていたが、それ以降はAPFSDSが用いられている。一度だけOO-HEATが用いられた。アニメでは散弾類は一度も使用されず、徹甲弾(一粒弾)のみが使われている。(ゲームでは逆にほぼ散弾)
相良宗介はARX-8 レーバテイン以外の殆どの機体搭乗時においてこれを用いており、アーバレストの主兵装と言うよりもむしろ、彼の愛用品と表現した方が適切と考えられる(ちなみにレーバテインの場合、より大口径の「ボクサー2」76mm散弾砲を使用しており、基本的な方向性には変化がない)。
アニメでは通常のポンプアクション式(自動装填ができないという設定はない)の散弾銃をモデルにしている(原作でもマオが使っているレミントンだと思われる)。漫画版でもベへモス戦からこちらに変更。チューブマガジン式。
装弾数は不明。劇中では最大で14発ほど射撃している。TSRのPVではアルの「残弾ゼロ」の報告時に「0/30」という表示があるが、これが散弾砲の装弾数かは不明(予備弾倉を含めているという説もある)。
「リボルテック・ヤマグチ」から発売される際にマガジンや砲弾(ショットシェル)・ラックなどが新規に設定された。
マガジンは装弾数3~4発×3(連結装着など可能)、ショットシェル4発を固定可能なラックが1つが付属。
チューブマガジンの長さと砲弾の大きさから、チューブへの装填は恐らく最大4発、マガジンの装着で計7~8発。
(アニメではこのマガジンは登場していないことや、劇中の射撃回数と矛盾することから公式的な設定として固まっているかは不明である)
また、前述の通り、ゲーム中ではなぜか散弾が発射されることが多い。 - ジオトロン・エレクトロニクス GRAW-2 単分子カッター
M9と同型のものを装備する。
実は機体デザインの変遷に合わせてこの武器のデザインが大きく変化している。TV第1期版までは人間用のコンバットナイフを拡大したような形状で、脇の武装ラックや頭部ハードポイントでも保持が可能なサイズに収まっているのに対し、TV第3期版では大型化され、専用の鞘に収納するようになっている。 - ロイヤル・オードナンス M1108 対戦車ダガー
こちらもM9と同型のものを装備する。成形炸薬を内蔵したナイフ状の投擲爆弾。
地形によってASの天敵である戦車の厚い装甲を貫き、戦闘ヘリの迎撃にも使われる。アンダースローで真っ直ぐに投擲する他、アニメでは回転させて投げている描写もある(ASの腕力により威力が増しているとも考えられる)。
アニメでは通常の投げナイフ爆弾(投擲)以外に、コダールの単分子カッターを受け止めた他、刺突用の武装としても用いられている(信管さえ作動させなければ使用は可能だと思われる)。原作でもM9のファルケが刺突に用いる(確実に破壊するために至近距離から突き立てる)ことはあったが、爆発させる場合は爆風の範囲外へ退避しなければならない。
A.C.E.RのOPでは突き立てた後に捻じりを加えて食い込ませ、離脱している。
関連動画
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関連項目
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