クレジットカード国際ブランドによる表現に対する要請への対応

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本記事『クレジットカード国際ブランドによる表現に対する要請への対応』では、クレジットカード国際ブランド（以下、決済ブランド）による表現に対する要請に対して、成人向けコンテンツ販売プラットフォームやクリエイター向けプラットフォームがどのように対応したかをまとめていく。

まずはじめに何が起きているのか？

2020年代に入り、 決済ブランドが成人向けコンテンツの販売を運営するプラットフォームに対し、
クレジットカード決済の利用停止および制限を設けるようになった。

これに至る背景は近年「児童ポルノをはじめとした違法コンテンツや、社会通念上に反するコンテンツの販売・流通に決済ブランドが手を貸している」などと、人権団体やマスメディアなどの批判が相次ぎ、決済ブランドが表現規制や利用停止をするよう動き出したのである。

日本においても、国内の大手プラットフォームが一部決済ブランドまたはクレジットカードそのものの決済停止や、サイト内の利用規約を改訂するなどの大きな動きが見られている。

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あ行

プラットフォーム	ジャンル	対応	備考
EIC-BOOK ラビリンス	ジュニアアイドルDVD通販・PPV販売及び電子版ジュニアアイドル写真集販売サイト	クレジットカード決済取りやめ	EIC-BOOKとラビリンスは有限会社ウェブサービスの運営するグループサイトである (かつてはアダルトビデオ販売サイトEIC-AVも運営していた) 。 2023年をもってクレジットカード決済が停止となったが、 2023年5月31日をもちましてすべてのクレジット決済が停止となりました。 昨日連絡を受け本日停止となっており、今後のサイト運営に関しましては 決めかねている状況です。決まり次第お知らせいたします。 お知らせ一覧 | グラビアDVD通販 EIC-BOOK と有限会社ウェブサービスサイドは寝耳に水であったかのような説明を行っている。それ以降もクレジットカード決済を再開する試みをすることもなく、そのまま銀行振込・代引しか利用できなくなっている。
OnlyFans	成人向けサブスクリプションサービス	身分証明・生体認証・同意書の義務付け	2021/08/19に10/01からポルノを禁止すると通達するも反発にあい撤回。代替として身分証明・生体認証・同意書を義務付ける。実写コンテンツを扱うため児童買春を懸念されて銀行からの支援を受けられなくなったため。 このとき類似サービスFanslyに多くのセクシャルコンテンツのクリエイターが移住する騒ぎにもなっている (参考) 。

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か行

プラットフォーム	ジャンル	対応	備考
Gumroad	決済機能持ちURL生成サービス	特定表現に関わるファイルの販売停止	決済会社StripeとPayPalのポリシーに従い、2024/03/17よりNSFWに該当する作品の販売を終了。なお前日の2024/03/16に駆け込みで90万ドルの売上があったことを報告している (参考1 / 参考2) 。
Getchu	デジタル同人・コスプレROMなどの販売	表現の置き換え	特定表現があるものについては該当の文字を「***」に置き換えて販売。該当作品の販売者には「クレジットカード会社から禁止表現の指摘があった」と説明している (参考) 。
Gyutto	デジタル同人・コスプレROMなどの販売	表現の置き換え	特定表現があるものについては該当の文字を「***」に置き換えて販売。該当作品の販売者には「クレジットカード会社から禁止表現の指摘があった」と説明している (参考) 。 なおGyutto運営元の株式会社ハブロッツはGetchu運営元の株式会社ゲインズのグループ企業であり、ハブロッツの代表取締役社長も2024年現在親会社のゲインズの代表取締役社長と兼任である。

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さ行

プラットフォーム	ジャンル	対応	備考
Skeb	コミッション支援サービスサイト	暗号資産の創設	2021年に大手クレジットカード会社から複数の出版社に対して「商品の表題に『○○殺人事件』等の特定表現のある商品ではクレジットカード決済が取り扱えなくなる」という通知が来たことから、新たな決済手段として仮想通貨『Skeb Coin』を開発。 2024年5月下旬にはZaifに上場予定 (参考) 。

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た行

プラットフォーム	ジャンル	対応	備考
DMM.com	通販・動画配信・オンラインゲーム・FX他。	Mastercard取引停止	2022年7月29日を持ってMastercardとの決済に関する契約を終了。具体的な理由は契約事項に該当するため非開示となっているが、成人向けサービス『DMM.R18 (現：FANZA) 』を手掛けていたことが要因と見られる。 実際、2022年当時の時点ではDMM.comから分社化した (直接の資本関係はない) 株式会社デジタルコマースがFANZAの運営を手掛けているもののアカウントはDMMと同じアカウントが使用でき、決済も統一されていることもあり問題があったと見られる。 詳細は『FANZA』の項も参照のこと。
DLsite	同人販売	表現の置き換え Visa・Mastercard・American Express取引停止	2024/03/26にクレジットカード会社から成人向けコンテンツを扱うサービスに対する要請を受けて、登録サークルが閲覧可能な管理画面で表現の置き換えをアナウンスした (参考1 / 参考2) 。 内容は以下の通り(後述の再修正含む)。 修正前 修正後 メスガキ ざぁ～こ♡ レイプ 合意なし ロリ ひよこ つるぺた ロリババア ひよこババア つるぺたババア 監禁 閉じ込め 鬼畜 超ひどい 逆レイプ 逆レ 強制/無理矢理 命令/無理矢理 近親相姦 近親もの 拷問 責め苦 催眠 トランス/暗示 獣姦 動物なかよし 畜えち 洗脳 精神支配 痴漢 秘密さわさわ 調教 しつけ 奴隷 下僕 陵辱 屈辱 輪姦 回し 蟲姦 虫えっち モブ姦 モブおじさん 異種姦 異種えっち 機械姦 機械責め 睡眠姦 すやすやえっち 催眠音声 トランス/暗示ボイス 『ひよこババア』『動物なかよし』『秘密さわさわ』がその語句のインパクトから話題となり、X (旧：Twitter) のトレンドに浮上。更に『ひよこ鑑定士』や『ひよこクラブ』『ひよこ饅頭』も関連語彙として浮上する事態となった。 発表翌日の27日には、変更予定後の単語となる「ひよこ」「ひよこババア」「動物なかよし」は「つるぺた」「つるぺたババア」「畜えち」に変更することも発表された(参考)。推測だが「ひよこ」についてはロリ系AVブランドの名前からそのまま持ってきて後々トラブルになりかねないこと(参考)、「動物なかよし」については「動物」「なかよし」と2単語で検索して偶発的に目に触れる可能性があるため避けるようにしたと思われる。 そして、発表から8日後の2024/4/3にVISAとMastercard、さらにその翌日にAmerican Expressの利用を一時的に停止すると発表した。停止期間は未定。停止理由に関して「回答は差し控える」とした。以後のクレジットカード決済で利用可能なのはJCBのみとなった。
Duga	アダルトビデオ配信	Visa・Mastercard取引停止	2024/02/22ごろより一部クレジットカードカードブランドでの決済が正常でないことをお知らせで明かしている。

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な行

プラットフォーム	ジャンル	対応	備考
NAN-NET	アダルトコミュニティ	Visa・Mastercard取引停止	20年以上の歴史を持つ総合老舗アダルトコミュニティーサイト。 2024/2/28に『決済代行会社に加盟している他サイトの内容のレギュレーション違反』を理由に月額有料サービスでのVISA・Mastercardの利用を停止。JCBカードへの移行を勧めていたが、後日BitCash決済での有料期限延長・新規入会を可能にすることで対応した（参考）。
ニコニコ	UGC共有ポータルサイト	Mastercard・American Express取引停止 Visa取引停止予定	2023/11/08に一部Mastercardでの有料サービスの決済を一時停止。理由は公開されていないが、2014年に投稿された動画『汚い仔猫を見つけたので虐待することにした（1匹目）』がMastercard社より「動物虐待、児童虐待、自傷行為、不適切なアダルトコンテンツを含む動画が存在しており、違法もしくはブランド棄損に当たる禁止商材に該当」するとニコニコに指摘し、非公開にしろと要請していたことによってニコニコが当該動画を非公開にしたことを、当該動画の投稿者：eiz5963が明かしている (参考1) 。 その後American Expressが2024/3/15より (参考) 、一部のVisaが2024/5/10より、Visa全体で2024年5月下旬ごろ (参考) に一時停止 。当ブランドについてもドワンゴは「諸般の事情」とのみ説明している。

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は行

プラットフォーム	ジャンル	対応	備考
Patreon	クリエイター支援プラットフォーム	PayPal決済停止 (後に再開)	2014/03、成人向けコンテンツのクリエイターに対するPayPalによる決済が停止された。2016/07にBraintree経由で支払いが可能になるも、2017/10に一部コンテンツの取扱を禁止する方針転換を行う (参考) 。Patreonサイドは元から禁止していたものを明確化しただけと主張している。
FANZA	アダルトビデオ通販・PPV販売・オンラインアダルトゲーム運営他	Mastercard取引停止・表現の一部修正	DMMと同じアカウントを使用するサイトであるため、2022年7月29日を持ってMastercardとの決済に関する契約を終了したDMMの都合により、こちらも同日をもってMastercardでの決済が事実上終了。というより、FANZAの存在こそがMastercard決済が終了した大きな要因であろう。 また、2019年12月頃から表現が一部修正されるようになりつつある。例えば『痴漢』『レイプ』『凌辱』『輪姦』『催眠』などは『痴●』『レ●プ』『凌●』『輪●』『催●』と置き換えられている (参考1 / 参考2) 。
pixiv FANBOX BOOTH	イラスト投稿SNS クリエイター支援 ネット販売	特定表現のある作品の作品非公開措置及びクリエイター・販売者に対する表現修正要求	2022年にサービス共通規約の改定を行い (参考) 、それ以降作品非公開措置を行っていたが、クリエイターサイドから具体的な理由・審査基準について教えてほしいという声が相次いだことで、規制理由が「クレジットカード会社・決済代行事業者の規約に違反するため」であることを明かしている (参考1 / 参考2) 。 しかし内容に「姉」「母」などの親兄弟を思わせるような語句があったことを理由とする規制があったことも報告されている。
Pornhub	アダルトビデオ共有サイト	VISA・Mastercard・PayPal決済停止	2019/11/15にPayPalが利用規定ポリシーに違反しているとしてサービスの利用を停止 (参考) 。 2020/12/09にVISAとMastercardが共同で「『Pornhubは児童ポルノやリベンジポルノから収益を得ている』という報道に関して精査する」と発表。Pornhubサイドは未承認ユーザーによるコンテンツの削除などを行ったものの、VISAとMastercardは相次いでPornhubでの決済を停止 (参考) 。 これらによってPornhubに自身の制作したコンテンツを公開し収益化しているユーザーたちとPornhubは大打撃を受けることとなる。なおPornhubは2018年より仮想通貨取引を導入しているため、これによって暗号資産の需要増加で相場が高騰するという珍事も招いているとか (参考) 。

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プラットフォーム	ジャンル	対応	備考

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プラットフォーム	ジャンル	対応	備考

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ら行

プラットフォーム	ジャンル	対応	備考

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わ行

プラットフォーム	ジャンル	対応	備考

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余談・その他

• アダルト分野への表現規制として国際的に広まっている決済ブランドが話題になることは多々あるが、決済代行を行っているPaypalも同様の措置を行っている。
  クレジットの大手ブランドと同様に大手サイトPornhubへの決済停止やDMM（現・FANZA）への表現規制も行っていることで知られており、実はアダルト分野における表現規制が最も厳しいとされるのはPaypalの方であるとされている（Paypal自体、成人向けコンテンツの利用決済は2000年代から禁止している）。 ^{[1] [2] [3]}

関連リンク

• DMMの「Mastercard取引停止」で考える“カード決済の裏”　クレカの扱いがなくなる複数の理由（2/3 ページ） - ITmedia NEWS
• スケブが暗号資産「Skeb Coin」開発へ　“クレカの表現規制問題”に突破口　NFTには「関与しない」 - ITmedia NEWS
• pixivなど同人マンガ界隈で「クレカ決済拒否」が大変な騒動になっている件について | 文春オンライン
• ピクシブ、銀行口座から直接引き落とす決済手段追加へ　クレカ決済せずに作品を買えるように - ITmedia NEWS
• 「児ポ」「獣姦」──pixivの一部サービスで規制強化、対応なければアカ停止も　ユーザーからは批判相次ぐ - ITmedia NEWS

脚注

1. *"タッチ決済"が今年の主役に！ 「スマホ＆オンライン決済」の新常識 (週プレNEWS)
2. *世界最大のポルノサイトPornhubがPayPalから突然サービスの利用を停止される (GIGAZINE)
3. *PayPalの厳しい用語規制が明らかに。アダルトプラットフォームの問題点が浮上 (おたぽる)