こんごう型護衛艦とは、海上自衛隊が保有するミサイル搭載護衛艦(DDG)である。
イージス艦を開発した米国以外では初めて配備されたイージス艦であり、当然ながら海上自衛隊が最初に保有したイージス護衛艦である。
1993年より配備が始まり、4隻が建造された。いずれも現役で、4個護衛隊群に1隻ずつ配備されている。
海自の艦隊防空の要であるとともに、弾道ミサイル防衛(BMD)の要でもある。
艦名は全て山の名前からつけられている。(例「こんごう」→「金剛山」)
アーレイ・バーク級をベースにしているが、艦隊旗艦としての能力を追加。その他にもダメコンのための冗長性、船体強度向上などが図られ一回りも大型化している。船体は一世代前の「はたかぜ型護衛艦」よりも3000トン近く大型化、特に艦橋構造物は2層高い大きな物である。
1隻あたりの値段は1200億円以上と従来のターター搭載艦の倍額以上だが、相応の高性能を誇る。それまでのミサイル搭載護衛艦が一度に2つの目標に対処するのが限界だったのに対し、こんごう型は同時に12以上の目標に同時対処できるというまさしく段違いの性能を有する。
アーレイバークオリジナルのSQQ-89対潜情報処理装置、SLQ-32電子戦装置などはイージスのコアシステムと同等の機密を有し、こんごう型の開発段階では供与を受けられなかったため、国内で開発されている。こんごう型の能力補完のほか、本型開発で得られた技術はむらさめ型護衛艦、たかなみ型護衛艦等にも広くフィードバックされた。
同等品を国産化しうる能力を示したことで、後のあたご型護衛艦ではイージスオリジナルの最新サブシステムもライセンス製造と運用が認可された。
近年ではその優れた能力を生かして弾道ミサイル防衛(BMD)任務が与えられ、洋上での探知と迎撃を行うため、全艦がBMD対応改修を完了。弾道弾に見立てた高速目標への迎撃試験にも成功を収めている。
なお、こんごう型はヘリコプターを搭載することができないが、哨戒ヘリへの燃料給油自体は可能である。但し整備設備がないために哨戒ヘリのエンストを防ぐため、ヘリ側のエンジンを回したまま給油行動を行う。この点は格納庫を持ちながらも着艦拘束装置や整備設備が後日装備となっているあたご型護衛艦でも同様である。
全長 | 161.0メートル |
全幅 | 21.0メートル |
排水量 | 基準7250トン 満載9500トン |
乗員 | 300名 |
武装 | 54口径127mm単装速射砲 1基 高性能20mm機関砲(ファランクスCIWS) 2基 Mk.41 VLS(垂直発射装置) 前部29セル・後部61セル (装填弾)スタンダードミサイルSAM(SM-2/SM-3) アスロックSUM(VL-ASROC) ハープーン4連装発射筒 2基 3連装324㎜短魚雷発射管 2基 |
レーダー | AN/SPY-1D多機能レーダー OPS-28D対水上レーダー OPS-20航海用レーダー |
ソナー | OQS-102バウソナー OQR-2曳航ソナー |
ECM/ESM | NOLQ-2 |
速力 | 最大30kt |
主機 | COGAG方式 4基2軸 出力10万馬力 「LM2500」ガスタービンエンジン 2万5000馬力 4基 |
搭載機 | なし(着艦と給油は可能) |
石油や食料を輸入に頼る日本では海上交通路(シーレーン)の安全確保が重要ということで、1980年代ごろシーレーン防衛のため艦隊防空能力の向上が論議された。海上自衛隊と防衛庁(当時)にとって、最大の敵は「相手が対処できないくらいたくさんミサイル撃ち込めばいいじゃない」という「飽和攻撃」を、盾となる空母艦載機を強行突破して米空母に通じるレベルまで磨き上げるソ連軍であった。
当時の海上自衛隊は対潜作戦能力については高レベルだったが、防空能力はきわめて貧弱で、ソ連爆撃機などの飽和攻撃への対抗手段の保有が急務だった。当時の艦隊防空を担うミサイル搭載護衛艦は1つの射撃指揮レーダーに対して誘導できるミサイルが1基だけであり、レーダーの数の敵しか対処できない問題があった(たちかぜ型・はたかぜ型DDGでは2つなので最大2目標である)。
性能の不足は火を見るより明らかだったが、解決手段として射撃指揮レーダーを増やしても、今度は探知した多数の目標を追尾、判別しそれらに割り振るのは人間業では不可能という問題にぶち当たる。一時期はハリアー戦闘機を搭載した軽空母複数を配備し護衛艦隊の防空力強化、という案も真剣に検討されていた。
そんな中、米国から世界最高峰の艦載戦闘システム「イージスシステム」供与の話が舞い込む。海自は軽空母よりもこちらの方が防空能力強化にはるかに有利と判断。その上で開発、建造が行われたのが海上自衛隊にとって最初の、米国以外初のイージス艦であるこの「こんごう型護衛艦」である。なお海自がイージスシステム導入を決心したのは昭和56年と極めて早く、後述する俗説は甚だ信憑性に欠ける。
こんごう型護衛艦の導入が決定された当時、日本は米国に対して莫大な金額の貿易黒字を有していた。そのため高価なイージスシステム搭載艦の導入はこの貿易黒字を解消するもので、ソ連崩壊に伴う冷戦時代集結もあり自衛隊には不要とさえ言われた。
実際のところは憶測のみで語られた俗説で、実態は上述のとおり、ソ連の対艦ミサイル飽和攻撃への対処能力が切実に求められたが故である。この当時は冷戦終結と前後していたため、こんごう型護衛艦を含めて各種自衛隊装備への風評被害が跡を絶たなかった時期でもある。
イージスシステムは対艦ミサイル飽和攻撃に対抗するため、
「多数の目標をノイズの嵐から暴き出して常時追尾し続ける高性能レーダー」
「多数のミサイルを同時に誘導することができる射撃管制レーダーと対応したミサイル」
そして最大の肝である「多数の目標を自動識別・判定しミサイルにデータを送る自動判断システム」
これらを中核とした物である。(きわめておおざっぱな説明なので注意)
結果、イージス艦は「500km先の300の目標を追尾」し、さらには「同時に12以上の目標に攻撃できる」というとんでもない能力を有している。(但し近距離になるにつれ、対処目標数は減少する)。
なお、こんごう型のイージスシステムは、アーレイ・バーグ級のCICの大型ディスプレイが2面なのに対し、司令部機能を有するタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦と同じ、4面に強化されるなど改修が施された、日本仕様のイージスシステムである。搭載ベースラインは4ないし5であり、日本独自のサブシステムも併用されたため「J1」とも呼ばれる。
BMD追加だけでなく、ベースラインそのものも近代化は実施されており、5.2と6.3の複数説があるが、世界の艦船の記事の記述では概ねベースライン5.2への全艦更新という内容が多い。このバージョンはサブシステムに民生品を適用、通信能力を特に改善しLink16など高速データリンクシステムへの対応も達成した。
全艦がBMD改修を完了させ弾道ミサイル迎撃能力を有しており、将来的にはより優れた性能を持つ迎撃ミサイル「SM-3 Block2A」への換装も期待される。
また、近年勢力を増す中国海軍に対抗する海上自衛隊にとって、こんごう型の優れた艦隊防空能力はきわめて重要で、今後も日本国への航空機・弾道弾脅威の警戒、排除に活躍し続けることであろう。
なお、先代の「こんごう」である「金剛型高速戦艦」のネームシップは、太平洋戦争中、日本戦艦の中では一番の老朽艦だったが、その優れた速力と火力を生かして、日本戦艦の中では特段の武勲をあげた戦艦でもあった。建造は「ちょうかい」を除き三菱長崎造船所で行われ、この造船所は同じ金剛型戦艦「霧島」を建造した縁も持つ。
現代の「こんごう」も弾道ミサイル追尾で武勲を重ねている。2013年4月には北朝鮮の弾道弾発射を警戒。数度目のミサイル破壊命令を受け、「こんごう」「きりしま」が日本近海で警戒配置にあった。なお、新防衛大綱で海上自衛隊は、ついにはたかぜ型護衛艦の後継として、さらにイージス護衛艦2隻の建造を決心。
これによりこんごう型護衛艦4隻、あたご型護衛艦2隻、新イージス護衛艦2隻によるイージス護衛艦8隻体制を目指しており、艦隊広域防空から弾道弾迎撃、そして陸空と共同しての統合運用能力の向上を目指している。
しかしネームシップが1993年就役、2016年現在で艦齢23年ということもあり近代化には限度が生じている。現行のこんごう型が搭載しているイージスベースライン5は独自規格のミルスペックコンピュータ、それも1980年代の古い基盤計算機を中核としているためにCOTSを多用した新型護衛艦に比してこれ以上の近代化が難しい。
米海軍などはこんごうより古いタイコンデロガ級巡洋艦に力技でベースライン9(あたごのベースライン7より優れた処理性能を持ち、BMDと艦隊防空を同時にこなせる)を実装しているが、防衛省および海上自衛隊にそれほどの予算的余裕は当然だが存在しない。
またこんごう型に搭載されているBMDシステムのバージョンは3.6だが本家米海軍では4.0ないし5.0も逐次移行。これはシステム面での遜色だけでなく、弾道弾迎撃ミサイルの更新に伴い従来の古いSM-3の供給にも不安が抱かれている。元自衛艦隊司令官などはせめてBMDのみでも4.0への更新を世界の艦船などで提言している。
そして更に防衛予算にとって厳しい物は推定で12年後から始まるこんごう型護衛艦代艦建造である。一般的に護衛艦の平均運用寿命は35年であり、2028年にはネームシップこんごうは除籍される可能性が高い。そしてこんごう型は比較的ハイペースで配備されたため、この4隻をどのような形で代替するのかという点が現在注目されている。
艦名 | 艦番号 | 竣工日 | 配属 | 定係港 | 艦名由来 |
こんごう | DDG-173 | 1993年3月5日 | 第1護衛隊群第5護衛隊 | 佐世保 | 奈良県・大阪府県境「金剛山」 |
きりしま | DDG-174 | 1995年3月16日 | 第4護衛隊群第8護衛隊 | 横須賀 | 宮崎県・鹿児島県県境「霧島山」 |
みょうこう | DDG-175 | 1996年3月14日 | 第3護衛隊群第7護衛隊 | 舞鶴 | 新潟県「妙高山」 |
ちょうかい | DDG-176 | 1998年3月20日 | 第2護衛隊群第6護衛隊 | 佐世保 | 山形県・秋田県県境「鳥海山」 |
掲示板
75 ななしのよっしん
2024/09/25(水) 21:00:55 ID: rcNR8qaH7Z
ちょうかいはトマホーク搭載するらしいから運用期間延びそう。
搭載したら世界最強レベルの艦艇ということになるのだろうか
76 ななしのよっしん
2024/09/26(木) 11:57:12 ID: op4rgWg75R
何をもって最強と定義するのかは分からないけど、単に武器の射程や搭載量って意味なら、ミサイルガン積みしてる上に玄武3Dを搭載してるであろう世宗大王級駆逐艦バッチ2の正祖大王じゃないかな
77 ななしのよっしん
2024/09/26(木) 12:13:48 ID: D8ZbC+Yq0f
ミサイル搭載量で考えるならこんごう型は不利だね
装填用クレーンで合計で6セル潰しちゃってる
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最終更新:2025/04/19(土) 12:00
最終更新:2025/04/19(土) 11:00
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