ディープラーニング(深層学習)とは、機械学習の一種で、ガチの人工知能を実現するかもしれない核心技術(コア・テクノロジー)の一つである。この他の核心技術としては、ヒト・コネクトーム(ヒト神経回路地図)の完全解析などがある。
ディープラーニング自体はまったく新しい技術というわけではなく、既存の計算手法である「ニューラルネットワーク」(ニューロンと、ニューロンどうしが情報を伝達するシナプス結合を数学的にモデル化したもの)がベースになっている。
初期のニューラルネットワークでは、ある基本的な演算ができないことが証明されたことでいったん研究は下火になったが、地道な改良が重ねられて1980年代には基本的な手法や理論がほぼ完成、21世紀に入るとニューラルネットワークのレイヤーを重ねれば高度な推論ができることが示された。これに「何段にも重ねた計算を行うための膨大なコンピュータパワー」と「学習に必要な大量のデータ(ビッグデータ)」が入手できるようになったという要素が加わって、ディープラーニングは実用的な技術になった。
※ディープラーニングが注目されるきっかけとなった「AlexNet」(2012年に画像認識の精度を競うコンテストで優勝)ではニューラルネットワークの深さは8層だったが、OpenAIのGPT-3では96層にもなる。
Google、Facebook、Twitter等のネットサービスでは莫大な情報(ビッグデータ)を蓄積することで利用価値の高い学習データを揃えており、ニーズの掘り起こしから広告戦略までビジネスに直結する可能性が高まり、政府民間を問わず盛んにこれを推進する動きがある。
このように、人工知能関連では現在、様々な面で追い風が吹いている。逆に言えば、この技術で出遅れれば、軍事的・経済的・金融的に重大な不利を被る可能性があるという危機感を、政府から民間企業までが持ちつつある。
2012年に、グーグルと共同研究していたスタンフォード大学のアンドリュー・エンが、YouTubeから静止画を1000万枚ほど取得し、コンピュータを1000台並べた並列計算システムに放り込んで3日間ぶっ通しで計算させたところ、ニューラルネットワークの中に猫を認識するパターンが現れた。この取り組みは「人工知能には事前に何も教えていないのに、コンピュータが自身で「猫」という概念を獲得した」実例として話題になった。[1]
米カリフォルニア大学バークレー校(UCバークレー)では、ロボットが試行錯誤を繰り返しながら組み立て作業などの課題を自ら学習していくアルゴリズムを開発した。[2]
バークレー校が公開した動画では、ロボットが何度も何度も失敗を繰り返しながらより良い動きを自分で学習していく。あたかも赤ん坊が手の使い方を覚えていくように生々しい学習過程、そして最終的な動きを見ることができる。BGMがEDMっぽいのはご愛嬌。というか動きが本当に生き物みたいでキモい。東工大名誉教授・森政弘氏(有名な「不気味の谷」の提唱者で、ロボコンを主催してきた制御工学の権威)のご感想を伺いたいところである。
2016年3月9日、Google(の買収したDeepMindというベンチャー企業)の開発したAlphaGoが囲碁世界チャンピオンのイ・セドルを破った。買収した企業名からも推測される通り、これはまさしくディープラーニングの成果である。
囲碁は「持ち駒ルールがあるためチェスよりはるかに複雑」と言われる将棋よりもさらにはるかに複雑なゲームであり、いくらコンピュータでもディープブルーやボナンザのような力任せな読みではどうしようもなく、今後10年は一流プロに勝てないと思われていた。実際、囲碁のソフトは中々強くならなかった。
しかしディープラーニングは今までの人工知能とは異質でイメージによる判断をし、機械学習の「学習方法」も違う。要するに既に述べたとおり脳の数学的模倣である。
これを用いてプロ同士の膨大な対局記録から学んだことで人間のトップレベルの読みと大局観をつけ、今度は人間最強レベルのコンピュータ同士で対戦させて学習をすすめ、人間を超える棋力を獲得させることに成功したとみられる。詳しくはこちらのワイアード誌のサイトに述べられている。
「東洋の神秘」の現代における一つの象徴であった囲碁だが、量子コンピューターのような計算能力による完全解析を待つまでもなく、新しい方法によって予想よりもずっと早く、本質的な部分で壁が乗り越えられたことになる。巨人IBMがかつて達成したことを21世紀の巨人Googleがまったく違う手法で塗り替えたことは非常に象徴的な意味を持つ。
ディープラーニングのようなアメリカ発のテクノロジーのお祭り騒ぎはかつてナノテクノロジーでも起こった。しかし、エリック・ドレクスラーという人物が主導したこのフィーバーは「創造する機械」というアイディアが根本にあるもので、その鍵となる「アセンブラ」という最初の分子ロボットの実現方法に具体性がなく、結局現在に至るまで実現していない。それに比べるとディープラーニングはすでに成果を続々と挙げてきている点でまったく違う段階にあるといえるだろう。人工知能は最後の壁を超えたのではないかとさえ言われている。
どちらかというと、シンギュラリティ・フィーバーがナノテクフィーバーに近いかもしれない。後述するがまだ細胞レベルのヒトコネクトーム計画の完遂もめどが立っていない段階で、人間の脳を超えるという話をしてもあまり現実味がない。ディープラーニングはそうした夢物語ではなく、すでに確立しつつあり成果が出てきている重要技術である。これを混同するとEUのような過ち(ヒトコネクトーム計画の項を参照)をしてしまうことになるだろう。
シンギュラリティを語るレイ・カーツワイルの話に突っ込みを入れるなら、生物の進化速度などを対数グラフにしているが、コンピュータの処理速度はともかく、生物については何をもって進化の度合いを数値化しているのか不明である。また「シンギュラリティ大学」は大学と銘打っているが、実際は学位を授与する制度的な大学ではなく、あくまでシンクタンク的な組織で、ベネフィット・コーポレーションという新しいタイプの企業である。
実際のところ、本当に人間そっくりの知性を構築するためには、ヒトのコネクトーム(神経回路地図)をすべて読み取り記録するというヒトコネクトーム計画を完遂する必要がある。これはc-エレガンスというきわめて単純な多細胞生物においてすら相当な苦労をして初めて達成されたものであり、人間の脳などというものの場合は壮絶な困難が予想される、というか今世紀中にできるかどうかとも言われる。
正確に言えば、コネクトームにはいくつもの階層がある。現在すでに解析が完了したのは部位コネクトームであり、これは2015年に完了し、その成果を用いた研究が始まっている。部位コネクトームより細かく見たのがニューロン・タイプ・コネクトーム、そして本当に細胞一つ一つのつながりを完全に把握するものがニューロン・コネクトームである。
後者二つの解析はきわめて膨大な作業が必要となる。たぶん高速物量作戦が得意なアメリカがまたやってくれるのだろう。ヒトゲノム計画も日本が先んじたものだが最後はアメリカが完全に持って行った。EUは方向性を見誤り、だいぶ出遅れたようだ。このへんの事情はコネクトーム研究の現状を報告する書籍の訳者がこちらで色々と述べておられる。
困難の中心はデータの獲得ではなくて実は画像処理にある。脳の画像データについては、自動的に脳を超精密にスライスして丈夫で透明なシートに載せて顕微鏡で撮影する技術がすでに確立済みである。問題は、コンピュータの補助もあるとはいえ未だに人の判断に頼って接続を判定しているため、膨大な手間と時間がかかる点にある。
これはディープラーニングのようなパターン認識に優れた人工知能の進歩に従って高速化が可能になりうる分野であり、より早期に完了する可能性は小さくないと思われる。コネクトーム計画の推進者によれば画像の中の「細胞の境界」の判定が未だにコンピュータには難しいということだが、これこそディープラーニングが可能にしつつある技術である。
現在のGoogleなどの機械翻訳は、統計的手法など新しい発想を用いているとはいえ、正直お粗末なレベルであり、実用上助かるには助かるが、人間の通訳の代わりになるような汎用性はまったくない。このため、英語を母語としない者は海外で働いたり科学研究などをする際、ある程度は英語を理解する必要に迫られる。
しかし、この新しい技術によって十分に自然な翻訳が速度的にもコスト的にも実用レベルで使えるようなものが実現すれば、もはや英語圏の優位性は崩れ落ちることになるだろう。英文学などをより深く味わいたいといった欲求を除けば、英語を学ぶ必要がなくなるからである。教育機関のカリキュラムも変容し、英語という科目が消滅するかもしれない。
また古典文法を学ばなくても、ラテン語や古代ギリシャの文献、平安文学から論語原文まで誰もが容易に触れることができるようになるだろう。訳注も自動的に付くかもしれない。楔形文字から手話まで、十分なデータの揃った言語なら何でも扱えるはずである。
翻訳の速度とコストにもよるが、国際的なアウトソーシングは爆発的に激化することになる。かつて日本語という壁で阻まれていた国内労働市場は、ネットを介して可能な職務であればすべて容易にアウトソーシング可能となる。英語が優位性を失うと同時に、言語の壁という非関税障壁も消失する。ただし、契約の仕方やルール感覚などは異なるので、そうした部分での違いは残る。
バベルの塔の物語に記された呪いは克服され、地上の全人類は自由に深いコミュニケーションを取るようになる。この事がもたらす学術的・文化的・政治的影響は想像を絶する深さと大きさを持つだろう。いわゆるシンギュラリティがもし起こるとしても、そのはるか手前でこれは実現するはずである。
掲示板
61 ななしのよっしん
2023/02/25(土) 18:05:13 ID: zJTdMIaXQk
>>51
完全にあらゆる事を差別なく褒めるというのは人間の能力的に無理なので、褒めるというかコミュニケーションを続けているだけでも基本的に子ども側に相応の情報は伝わる
また褒めるにも技術が必要で結局大人も褒めて練習するしかないし、最低限向き合えているなら効率的な褒め方(および例外的に叱るべき場面)はその内学習できる
大体は褒める事になれてない人が褒めまくったつもりになっても、実際には褒めるのが足りず思わず怒ってしまう場面も多いので、誤解混じりでも「全部褒めろ」と言った方が結果的に望ましい
それはそれとして「行動内容を検討せず場当たり的に褒める」「自分の都合の良い事ばかり褒める」と流石に子供にもバレる(テストの点数だけ褒めて内容を聞かないとか授業で頑張った話を聞き流すとか同じ内容でも気分次第で褒めたり褒めなかったりするとか)
62 ななしのよっしん
2023/02/25(土) 18:06:25 ID: zJTdMIaXQk
生物の場合、叱ると機械と違って基本的に学習自体を忌避するようになる
昔は親が交流に時間をかけられないから、最低限叱って後は本人の可処分時間を使って自習させるのが効率は良かったのかもしれない
虐待(居ない方がマシ)→無視(居ないのと同じ)→高圧的(少なくとも面倒は見る)→理想的教育状態、と段階があると思うので技術がないなら無視以下よりはマシというだけかもしれない
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最終更新:2025/03/24(月) 11:00
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