フォント(font)とは、
- 文字・活字に関する用語
- 同じ大きさ・書体の活字(印刷に用いる字型)をまとめたもの。
- 文字のデザイン様式、「書体」「タイプフェイス(typeface)」と同じ意味。
- コンピューター等で用いられる書体データ、デジタルフォント・フォントデータ等の略称。
- キリスト教で用いられる洗礼盤(Baptismal ~)・聖水瓶を指す英単語
- 文語表現で泉・源泉などを指す英単語
本記事では上記の1.について大まかに、特にIII.について詳しく述べる。
概要
文字を単語・文章等の形にして使う時、同じ使用箇所・使用用途・文字種においてそのデザインをバラバラにすることはまずなく、決められた特徴を持つデザイン(狭義の「書体」)に統一することがほとんどである[1]。活版印刷においてもその原則は変わらず、また実体を持つ物体である活字を用いるため、同じ書体・同じ文字の大きさで活字をそれぞれまとめると都合が良かったと思われる。このひとまとめにしたものが「フォント」の原義である。
コンピュータの普及に伴って物理的な活字に相当するものもデジタルデータ(フォントデータ)となり、現在ではこのフォントデータを指して単に「フォント」と呼ぶようになっている。フォントデータは物にもよるが使いたい書体に対応するフォントデータが一つあれば文字の大きさ・太字・斜体等を好きに変更することが出来る。
厳密には文字のデザイン/形状である「書体」と文字の表現手段である「フォント」は異なるものであるが、やはりコンピューターの普及に伴って「書体」を「フォント」と呼ぶことが多くなり、現在では専門家以外からは同一視されることがほとんどである。
狭義の「書体」としてのフォント
文字の発展・印刷技術・その時々の流行等によって様々な書体が誕生し、その結果今日では多種多様な書体が存在する。
具体的な書体を取り上げての詳しい歴史の解説等は本記事では割愛し、ここでは母国語が日本語である人が主に目にするであろう和文と欧文の書体について、見た目でのざっくりとした分類の代表例を紹介する(厳密には和文と欧文の分類は結びつくものではないが、近いものを並列して挙げている)。
デジタルデータとしてのフォント
前述したように、現在「フォント」という言葉はフォントデータのことを指すことが多い。このフォントデータは書体の違いだけでなくコンピューターの仕様等によってデータ形式が違う等、データならではの様々な分類が存在する。
これ以降、フォントはデジタルフォント・フォントデータの省略とする。
フォントのデータ形式
- ビットマップ
- それぞれのサイズに対し一対一対応で作られているフォント。ようはドット絵である。絵でいうところのペイントツール相当のソフトで製作。電光掲示板に表示されているのがそれ。
- スケーラブル
- 形を大きくしても変わらないように設計されたフォント。絵で言うところのドローツール相当のソフトで製作。OS等のシステムの文字に、今これを読んでいるブラウザの文字は普通こちら。
フォントの文字幅
TrueType の日本語フォントでは、文字幅の扱いの違いによって、おおまかに以下の3種類に分類される。「MS ゴシック」「MS Pゴシック」のように、一見同じデザインのフォントであっても、文字幅の扱いの違いでそれぞれ別フォントとして扱われる。
- 等幅(モノスペース)… MS ゴシック / Osaka 等幅 / IPA ゴシックなど
- かな漢字などの全角文字は正方形の枠に収まるように、英数字などの半角文字は横幅が半分の枠に収まる。全角文字・半角文字それぞれ、すべての文字が同じ文字幅である。
- プロポーショナル … MS Pゴシック / Osaka / IPA Pゴシックなど
- 文字ごとに横幅が異なるフォント。たとえば“i”や“I”は狭く、“w”や“M”は幅広となる。アルファベットでは当たり前の設計だが、実は日本語だと珍しい。とくに漢字までプロポーショナルなものはまず無い。同じデザインの場合、等幅フォントの名前にPを追加した命名が多い。
- 和文は等幅 + 欧文はプロポーショナル … メイリオ / ヒラギノ / IPAexゴシックなど
- 日本語は等幅、欧文はプロポーショナルというそれぞれの標準的な種類を組み合わせたもの。1つのフォントでかな漢字も英数字もいい感じに対応できるのが特長。
市販の OpenType の日本語フォント(ヒラギノ角ゴシック、游ゴシックなど)の多くは和文・欧文ともにプロポーショナル・等幅の両方の形状が含まれており、Adobe PhotoshopやIllustratorなどの高いソフトやCorelDraw(ただしバージョン X6 以降に限る)といった、OpenType の機能をフルに引き出せるごく一部のソフトではこれらを切り替えて使うことができる。逆を言えば、大半のソフトでは一方しか使うことができない。
身近にある代表的な日本語フォント
Windows の標準搭載フォント
- MS ゴシック / MS 明朝
- Windows の標準フォント。Windows 3.1(1992年)から現時点で最新の Windows 11に至るまで標準で搭載されている。小さいサイズでの表示向けにビットマップのデータも含まれており、Windows 環境では潰れずくっきりとした表示になる(その反面、ギザギザで古くさく不格好であるし、特定のサイズを境目に突然文字の太さが変わる)。フォント名の「MS」は全角。
- MS Pゴシック / MS P明朝
- MS ゴシック・明朝のプロポーショナル版。Windows 95(1996年)から現在まで標準搭載されているうえ、ゴシックのほうは Windows 用ウェブブラウザの標準フォントのため、2ch のアスキーアートはMS Pゴシックの文字幅が基準となっている。日本語を含む全角文字までプロポーショナルという仕様は登場当時は非常に珍しく、その後に出た多くの市販フォントの設計に影響を与えた。
- メイリオ
- Windows Vista 以降の標準フォントのひとつ。画面表示での美しさと読みやすさを兼ね備えたものを目指して新たに設計された。MS ゴシックのビットマップにかわって、ヒンティングという表示用の情報がしっかり設定されているため、Windows 環境ではビットマップを滑らかにしたようなくっきりとした表示になる。また、Windows 標準の日本語フォントで唯一、太字用の形状が含まれる(これまでは太字用の形状は存在せず、ずらした文字を複数重ねることで太く見せかけていた)。表示にも印刷にも使いやすいが、等幅フォントがないのが欠点。
- 游ゴシック / 游明朝
- Windows 8.1で新たに搭載され、Windows 10以降は標準となっているフォント。各 3 種類の太さバリエーションがあり、全体的に細め。もともとは数万円するプロデザイナー向けのフォントで、Microsoft Office の付属フォントを含めてもださいフォント
ばかりだった Windows の救世主である。拡張子は .ttf で全角文字は等幅、半角文字はプロポーショナルだが、実は中身は OpenType フォントなので、Adobe のソフトだと本領を発揮する。
しかしメイリオのようなヒンティング情報を含まないので、画面表示には向かない[4]。
Mac の標準搭載フォント
- ヒラギノ角ゴシック / ヒラギノ明朝
- Mac OS X や iOS端末(iPhone / iPad / iPod touch) における標準フォント。本来はプロのデザイナー向けに作られたフォントのため品質が非常に高いうえ、クセも少なく読みやすいというまさに「標準」フォント。市販版では太さのバリエーションがW1~W9と9段階あり、iOS にはW3とW6が、Mac OS X にはさらに太いW8(ヒラギノ角ゴシックのみ)も付属する。
- 游ゴシック体 / 游明朝体
- OS X 10.9 Mavericksで新たに搭載された標準フォント。Windows 8.1 の「游ゴシック」とだいたい同じ仕様だが、フォント名が異なり、付属する太さのバリエーションも異なる。また、拡張子も .otf の純粋な OpenType フォントである。iOS でも、対応アプリはまだ少ないものの利用可能[5]。
- Osaka
- MacOS 9 以前の標準フォント。日本語部分は「平成角ゴシック」、英字部分は「Geneva」の組み合わせである。欧文のみプロポーショナル。MacOS X にも標準で入っているが、より品質の高いヒラギノフォントがあるので現在ではそんなに使われない。
- Osaka 等幅
- MacOS 9 以前の標準フォント。Osaka 同様に最新の MacOS X にも残されているが、欧文も等幅な唯一の日本語フォントなので、現在もテキスト編集用などの用途に使われる。
フリーフォント
- M+ OUTLINE FONTS
- 個人で制作されているフリーのゴシック体、とは一見思えないぐらい高品質なフリーフォント。日本語は等幅で、欧文などはプロポーショナルと等幅の両方が提供される。太さのバリエーションが極細から極太まで7種類もあるのが最大の特徴。さらに、画面表示用としても考慮されているため、濁点が大きめにデザインされており、小さめの文字でも比較的読みやすい。
- 10 年以上にわたって個人制作が続いている壮大なプロジェクトであり、2021年現在も制作中で、漢字はJIS第1水準すべてと第2水準のおよそ半分までとなっている。仮名はGoogleFonts協力のもとで2021年に改刻され、完成度を高めている。
ライセンスの自由度が非常に高く、改変や再配布を含め、あらゆる用途において制約なく使用できるので、不足した漢字を IPA フォントなどと合成して補ったもの(MigMix、Mgen+など)や、加工して丸ゴシック化したもの(Rounded M+)など、多数の亜種が存在する。
- ネックだった漢字の収録数は今となってはすでに充分実用的なレベルに達しており、今や大企業に使われることも多くなったフリーフォント界の出世頭である。たとえば、大手レンタル店のTSUTAYAでは、各店の店頭にある「新作情報」の垂れ幕や、店内POPなどの標準フォントとして採用されている。
- Source Han Sans CJK / Noto Sans CJK(源ノ角ゴシック)
- Adobe と Google が 3 年がかりで共同開発したフォント。Adobe 版と Google 版とがあり、名前のほか若干の仕様が異なる。日本語環境では「源ノ角ゴシック」と表示される。なお,欧文は元々Source Sans/ Source Serifである。Adobe のデザイナー主導のもと、和文には株式会社イワタ、韓文にはSandoll Communications、中文にはChangzhou SinoTypeといったフォントメーカーがパートナーとして関わり、中国語(C)・日本語(J)・韓国語(K) の3ヵ国語に含まれる莫大な文字を包括的にサポートしている。言語をまたいで共通したデザインのコンセプトを持っているので混ぜても違和感がないうえ、太さバリエーションは7種もある。
- 普通の日本語フォントとして見ても、後述する小塚ゴシックのクセを抜いた上位互換のような感じで、品質が高く使い勝手が良い。それでいて無償であるうえ、改変可能なライセンスであり、細部の仕様を改善した「源真ゴシック」、丸ゴシック化した「源柔ゴシック」など多様な亜種が存在する。
- IPA ゴシック / IPA 明朝
- IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が配布している。漢字対応がきちんとなされた基本書体のフリーフォントとしては初期のものであったので、かつて最も有名だった。MS ゴシックやMS 明朝の代替を想定したフォントなので非常に地味だが、タイプバンクという中堅フォント制作会社の創業者が過去にデザインした書体をベースとしているため、フリーの日本語フォントとしてはとても品質が高い。そのうえ改変した亜種を公開可能なライセンスのため、多様な亜種が存在する。Linux の標準フォントとしても普及している。
- IPA Pゴシック / IPA P明朝
- IPA ゴシックのプロポーショナル版。かななどの全角もプロポーショナルで、Windows の標準フォントがない環境での代替を想定したフォントだが、文字幅に互換性はないのでアスキーアートには向かない。
- IPAexゴシック / IPAex明朝
- 全角文字は等幅(IPA ゴシック or 明朝相当)、半角文字はプロポーショナル(IPA Pゴシック or 明朝相当)にしたもの。一般的な文書向けとされている。
- IPA モナー Pゴシック
- IPA Pゴシック の文字幅を MS Pゴシック相当に調整したもの。Windows 以外の環境でアスキーアートを正確に表示するのにとても重宝される。
代表的な市販フォントブランド
標準搭載フォントやフリーフォントではなく、一定以上の品質のフォントを豊富に利用するにはさまざまなタイプファウンドリーから販売されているフォント製品を利用するのがよい。
契約形態は会社によって異なるが、基本的に市販フォントを動画サイトで使う場合には年契約を利用する(追加料金は発生しない)。年契約でも廉価なプランなどでは動画が許可されていない例もあるため、注意されたい。
なお、各企業については「タイプファウンドリー」の記事からより多くの一覧を確認できる。
- モリサワ
- 文字がまだアナログだった「写植」の黎明期からの長い歴史を誇る大阪のメーカー。同業では「写研」に水をあけられていたが、社運を賭けたデジタルへの移行に大成功したため、現在はフォント業界を牽引するトップメーカーとなった。プロの分野で圧倒的なシェアを誇る。特に出版や広告の分野ではまず無くては仕事にならない存在。
- 「モリサワパスポート」という年間契約(5万円/年。学生は非商用利用限定を条件に1.2万円/4年)を利用する。個性を抑えた比較的まじめな書体が多い。「新ゴ
」のように、一度も目にしないで日常生活を送ることが非常に困難な書体もここのもの。
近年,UD新ゴ初めUDフォント向けのBIZ+が開始し,動画制作などでも自由に新ゴを月100円で使用できたりする。(ただし本家「A-OTF UD新ゴ」とは少し仕様が異なる)
- また、Adobe Creative CloudのAdobe Fontsサービスを使うことで基本7書体と一部のUD書体,旧フォントワークスの一部フォント(タイポスやUDフォント)を無料で利用できるようになった。
- フォントワークス
- 福岡発祥で,2019年に東京に本社を移転した、その名の通りフォント専業のメーカー。設立に台湾企業が関わっていた関係で、外資系企業のように社名に「ジャパン」がついていたが、現在はそれも取れ、ソフトバンク傘下からモノタイプに事業売却という経緯を辿っており、もはや面影は残っていない。
- プロ向けのフォントにおいて、モリサワと二強を形成している。基本的に年間契約(2.4~3.6万円/年、学生は非商用限定で5千円/4年(さらに年会費不要))。この年間契約のシステムをいちはやく取り入れ、同時に利用規約をゆるめて面倒な条件を廃したこと、さらにデザイン性と品質を兼ね備えた書体が充実していることから、ゲームや放送テロップなどの映像分野でシェアが高い。例えば、これ
やこれ
、これ
あたりは見覚えのある人も多いはず。
- かっこよくてクオリティも高い筆文字で有名だが買うとなるとすごく高い「白舟書体」や「昭和書体」も一時期これの年間契約内で使えるようになっていたため、舞台が戦国時代だったり、ヤンキーがたくさん出たりするようなゲームの文字がいちいちかっこよくなったことがある(契約満了済)。
- 入会金がネックながらモリサワよりも大幅に安価という利点があったが、2021年にプランの刷新があり以降は入会金を撤廃した代わりにモリサワと同じくらい(45,000円/年)となっている。
- ダイナフォント(ダイナコムウェア)
- 台湾のメーカー。日本語260書体+おまけ多数の買い切りパッケージが1万円前後で買えるという安売り攻勢で価格破壊を起こし、個人向けフォントの市場を切り拓いた。そのため同人誌などに用例が多い。一部が年賀状ソフトなどのおまけとしてよく付属しているので、フォントを気にしない個人レベルでも非常に身近。
- 品質はまちまちで「普通の書体」にはめっぽう弱いが、個性的な書体には良いデザインが多く、特にゲームの分野においてはフォントワークスと肩を並べる。
- フォントパックについては、安い分なのか前の二社に比べてさまざまな用途において追加料金がかかる
。「個人がニコニコ動画にうpする動画に使用する」だけでも、問い合わせると「5万円です」と言われ、しかし、多くの個人がそれを知らぬまま動画内に活用しているのが実情であるが、それに対する申し立てなどは(少なくとも個人に対しては)特に行われていないもよう。
- 現在はパッケージの販売を切り上げて「ダイナスマート」という年間契約を主軸としている。数種の料金プランがあり、映像などに利用できない最廉価プランは7,480円/年と相変わらず業界最安価。映像などへの商用利用の上位プランは45,650/年。
- イワタ
- 東京に本社を持つ、岩田母型製造所を源流とするメーカー。新聞用扁平書体の開発など、新聞社や官公庁・自治体向けの書体に強い。パナソニックやカゴメなどの製品でよく見られる「イワタUDフォント
」が有名。フォントワークスの年間契約システムを取り入れているが、フォントワークスのそれとは違い学割は用意されていない。
- Adobe Fonts
- 世界最大のソフトウェア開発会社であるAdobeで利用できるフォントサービス。モリサワ、フォントワークス、タイプバンクをはじめ多くの会社一部の書体を、追加料金なしで利用できる。元はTypekitという名称だった。小塚ゴシック・小塚明朝といったAdobeの独自書体も利用できる。
- 各社のサービスと異なる点にフォントの永続提供が確約されていない点があり、例えばモリサワから提供されていた多くの書体の入れ替えなどが起きている。しかし、それでも書体の数が非常に豊富なうえ自由なライセンスで利用ができるので、そのデメリットを加味しても利用者は非常に多い。
- タイププロジェクト
- もともと『AXIS』というデザイン雑誌のためだけに作られたらしい「AXIS」フォントが非常に有名。7種類の太さがあるシンプルで読みやすい現代的なゴシック体で、太さごとに2万円もするべらぼうに高いフォントだが、Appleや任天堂、マクドナルドが会社ぐるみで採用するなど特に広告あたりの分野でアツく、Appleのサイトに表示される日本語は全部このフォント。
- 他にもゴシック・明朝などの様々なフォントをリリースしており、買い切りではない年間契約の「TPコネクト」(30,000円/年)で全てを利用することもできる。
- FONT×FAN(フォントアライアンス)
- 比較的最近できた個人向けの廉価なフォント集。他社と違い、さまざまな会社やクリエイターのフォントをかき集めているのでダイナフォント以上に玉石混交だが、ダイナフォントよりある程度規約が緩く、個人が動画投稿に使うのは非商用であればOKらしいので、ニコニコ的には注目しておきたいところ。
ニコニコ動画に記事のあるフォント・書体
関連項目
脚注
- *あくまで何の脈略もなく書体が変わることはないというだけで、見出しはゴシック体で本文は明朝体(ただし強調部分はゴシック体)、仮名はアンチック体で漢字はゴシック体(アンチゴチ、漫画でよく用いられる)等、使用箇所・使用用途・文字種で異なる書体を使用することは少なくない。
- *なおOpenTypeはPostScript Type2に相当[3]
- *。
- *Windows は文字表示のシステムの進化が XP 以来 10 年以上止まっていて、8.1 においてもヒンティング情報がないと小さな文字をまともに表示できない。つぶれてガタガタになる。
- *アプリ上から追加でダウンロードする形になる。