フライングフォックス(Flying Fox)とは、1896年生まれのイギリスの競走馬である。牡・鹿毛。
父Orme、母Vampire、母父Galopinという血統。
父Ormeは2歳時に6戦5勝でクラシックの有力馬と目されていたが、クラシックでは何者かに毒を盛られ春二冠を棒に振ったこともあり勝利できなかった。しかし最終的に18戦14勝という成績を残して種牡馬としても活躍した。更にその父Ormondeは無敗のイギリス三冠馬である。両馬とも初代ウエストミンスター公爵が生産・所有している。
母Vampireは2勝しただけだったが良血を見込んでウエストミンスター公爵が1000ギニーで購入した。しかしVampireは自分の子供を噛み殺してしまうほどの気性難の持ち主であった。Vampireの父はあのSt. Simonと同じGalopinといえば察していただけるだろうか。
ウエストミンスター公爵はこのVampireが人様の種牡馬を傷付けることを憚ったため、Galopinの3×2の強いインブリードができることを承知で仕方なく自ら所有の種牡馬Ormeを種付けすることにした。
ウエストミンスター公爵の所有でフライングフォックスと名付けられた馬は祖父Ormondeや父Ormeと同じジョン・ポーター調教師に預けられた。入厩する前からポーター師がダービー馬候補と見初めたほどの素質馬だったという。
2歳の6月にニューステークスでデビューすると、後のオークスステークス優勝馬Musaに3/4馬身をつけて勝利した。その後ストックブリッジフォールステークスも優勝した。インペリアルプロデュースステークスでは136ポンド(約61.7kg)も背負わされSt. Grisに敗北した。ミドルパークプレートに出走するとアメリカ産馬Caimanの2着に敗れた。2歳最後のレースとなったクリテリオンステークスでは楽勝し、2歳時の戦績は5戦3勝だった。
冬の間は十分な休養を与えられ、3歳時の初戦、2000ギニーステークスに出走すると、ミドルパークプレートで敗れたCaimanに2馬身をつけて楽勝した。
ダービーステークスではフランスのHolocausteが出走してきた。Holocausteはグランクリテリウムなどを優勝したが、ジョッケクルブ賞(フランスダービー)で出遅れ、また直線で不利を受けたことで3着に敗れた。そしてその3日後にダービーステークスに参戦しフライングフォックスの最大のライバルとされていていた。レースではHolocausteをフライングフォックスが追う形となったが、直線でHolocausteの足が粉砕骨折し、競走中止(予後不良)となった。競馬場が静まり返る中フライングフォックスは1着でゴールした。ライバルの悲劇が起こったこのレースでウエストミンスター公爵は大喜びしたため周りのジョッキークラブ会員から白い目で見られたという。
フライングフォックスは次にプリンスオブウェールズステークスで131ポンドを背負い優勝し、エクリプスステークスでも130ポンドを背負い優勝した。ウエストミンスター公爵は優勝賞金をロイヤルアレクサンドラ病院に寄附した。病院には記念としてフライングフォックスの風見が飾られた。
セントレジャーステークスではCaimanに3馬身差をつけて優勝し三冠を達成した。ウエストミンスター公爵はOrmonde以来2頭目の三冠馬のオーナーとなった。2頭の三冠馬のオーナーになったのは初であった。
1か月後のニューマーケットでのジョッキークラブステークスでも楽勝し、この年のレースを終えた。
ところがこの年の12月にウエストミンスター公爵が病死したのだった。フライングフォックスを含むウエストミンスター公爵の所有馬の殆どが売りに出されることになった。なおその中に牝馬で後にクラシックの5レースすべてに出走し、そのうち4勝をしたSceptreも含まれていた。
フライングフォックスは前代未聞の3万7500ギニーという高額でフランスの馬産家エドモン・ブランが購入した。
ブラン氏はその後も走らせるつもりだったようだが、気性難のフライングフォックスを扱える調教師をフランス内で見つけることはできず、引退して種牡馬として供用されることになった。
通算11戦9勝。
フライングフォックスは種牡馬としては初年度からジョッケクルブ賞優勝馬Ajax、プール・デッセ・デ・プーラン(フランス2000ギニー)優勝馬Gouvernantなどを送り出し、1904年、1905年、1913年の3回のフランスリーディングサイアーとなる活躍を挙げて1911年に15歳で死亡した。
フライングフォックスの子孫にはアメリカリーディングサイヤー4回のSir Gallahadとその息子のアメリカ三冠馬Gallant Fox、偉大な牝系を作り上げたLa Troienneなどがいて、現在にもその影響力を伝えている。
Orme 1889 鹿毛 |
Ormonde 1883 鹿毛 |
Bend Or | Doncaster |
Rouge Rose | |||
Lily Agnes | Macaroni | ||
Polly Agnes | |||
Angelica 1879 鹿毛 |
Galopin | Vedette | |
Flying Duchess | |||
St. Angela | King Tom | ||
Adeline | |||
Vampire 1889 黒鹿毛 FNo.7-d |
Galopin 1872 鹿毛 |
Vedette | Voltigeur |
Mrs. Ridgway | |||
Flying Duchess | The Flying Dutchman | ||
Merope | |||
Irony 1881 栗毛 |
Rosebery | Speculum | |
Ladylike | |||
Sarcasm | Breadalbane | ||
Jeu d'Esprit |
クロス:Galopin 3×2(37.5%)、Vedette 3×4×5(21.88%)、Stockwell 5×5(6.25%)、Voltaire 5×5(6.25%)
掲示板
1 ななしのよっしん
2021/08/02(月) 10:05:07 ID: xKFuUzqTTd
凱旋門賞を獲る華々しい成績も気性難不受胎死産の厄スリーアウトで捨てられる事になった悲劇のコロネーション
脅威的な強さで日本外征の尖兵として凱旋門賞2着、年度代表馬となるも7歳で急逝し徒花となったエルコンドルパサー
それらを鑑みるとものすごく希少なインブリードの「当たり」であるのがよくわかる
2 ななしのよっしん
2023/01/18(水) 02:30:55 ID: eO31ZRzukd
アメリカ三冠馬ギャラントフォックスから飛んで来て「空飛ぶ狐」ってどういうこと…?と思ってたら
「Flying Fox」=オオコウモリなんだな
母Vampire(=「吸血鬼」)からの連想だと考えれば自然だ
まあそれならGallant Fox=「勇敢な狐」って何だってことだが
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最終更新:2025/03/23(日) 05:00
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