減価償却 単語

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ゲンカショウキャク

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減価償却とは、固定資産の費用を、使用期間に分配して費用化することである。

アニメCGに置ける減価償却については減価償却(プリティーリズム)を参照。

概要

固定資産は長期間使うわけで、即座に費用化してしまうと、実際の原価を把握することが困難になったり、一時的な大赤字叩き出したりするため、非常によろしくない。このため、使用期間にわたって、費用化を行うことになる。これを減価償却と呼ぶ。

日本の税法上、減価償却の対となるのは、以下の3つの条件を満たすものに限られる。

  1. 使用可期間が1年以上あるもの
  2. 取得価額が10万円以上のもの
  3. 時の経過とともに価値が下がっていくこと

まず、1であるが、1年かからずに使い切ってしまうようなものは、固定資産ではないため、減価償却の対とはならず、即座に費用化することになる。次に、2であるが、10万円未満のものは即座に損金(要するに費用)扱いすることができるため、こちらも減価償却の対とならない。最後に、3であるが、価値が下がらないのであれば、資産の購入にかかった金額は売却することにより同額の資金を回収できるわけで、資産の購入を費用にする必要がないのだから、やはり減価償却の対とならない。

次に、日本で認められている減価償却の方法は、以下の3つである。

  • 定額法 - 期間内において均等に費用化をして償却する。例えば5年間、残存価額0で償却する場合、1年ごとに取得価額の20%ずつ費用化する
  • 定率法 - 残存価額のうち毎年一定の割合で費用化をして償却する
    • 200%定率法 - 定率法の亜種現在は残存価額0になるまで償却可だが、通常の定率法で行うと残存価額0にできないこと、仮に1円で止めるとしても初年度にほとんど償却されてしまうことなど不都合が多いため、定額法の2倍の償却率で償却していき、途中から定額法に切り替えて0に近づける。上記の場合は、初年度に40%、2年度に24%、3年度に14.4%、4年度・5年度は各10.8%、費用化する
  • 生産高例法 - 使用予定量のうち、実際に使用した量の割合で費用化して償却する。ごく一部の資産のみに適用可

基本的には定額法か定率法のどちらを使ってもよいが、一部の種類の固定資産は例外がある。

種類 方式
建物形固定資産生物 定額法のみ
鉱業用減価償却資産(建物・構築物など以外) 定額法・定率法・生産高例法いずれでもよい
鉱業権・鉱業用減価償却資産(建物・構築物など) 定額法・生産高例法のどちらか

定額法・定率法において、何年間使用可かの標準的な期限に関しては、減価償却資産の耐用年数等に関する省令exitにて定められており、例えば木造店舗であれば22年、総トン500トン未満の漁であれば9年、電車であれば13年、乗合自動車であれば5年、ダム使用権であれば55年、競走馬であれば4年、温州みかんの木であれば28年などとなっている。

減価償却対となる固定資産を期首に取得した場合は計算が簡単だが、期中に取得した場合、少しややこしくなる[1]

ただし、減価償却には以下の2つの例外がある。

  • 10万円以上20万円未満の固定資産に関しては、3年間で均等に償却することができる。例えば15万円のパソコン10月に購入した場合に、1年から3年まで各5万円というに処理可(日割り計算は行わない。また、残存価額は0円とする)
  • 一部中小企業(資本金1億円以下、かつ従業員500人以下で、事業年度所得の前3年均が15億円以下、かつ大法人子会社、もしくは複数の大法人に保有されている(出資の2/3以上が行われている)会社でない会社のこと)の場合、10万円以上30万円未満の固定資産を即座に費用化することが可。ただし、年間総額300万円までに限られる(事業年度が1年に満たない場合は、数に25万円(300万円を12で割ったもの)をかけたものになる)

なお、減価償却の本質は、固定資産の費用化であることから、当然、それに見合うだけの収益が得られるというのが大前提にある。それが満たされない場合は、減損処理を行い、見込まれる収益分にまで固定資産の価値を一度に減らさないといけない。

また、固定資産の取得のタイミングは、実際にその資産を事業のために使い始めたタイミングである点に注意が必要である。それまでは、例えば建物であれば建設仮勘定で仕訳をしなければならない(当然、減価償却の対にもならない)。

簿記での記帳方法

簿記で減価償却を記帳する方法は、直接法と間接法の2つがある。有形固定資産の場合はどちらも可だが、形固定資産や繰延資産(原則として費用として処理するが、例外として資産として減価償却を行うようなもの。創立費などが該当)は直接法のみである。

直接法

端的に言えば、固定資産勘定から直接減算するというものである。利点としては、ひと見ただけで固定資産の残額がわかるというのがあるが、一方、取得価額が不明になるという問題点がある。

2022年4月1日に、会社の事務所用のビル完成し、使用開始した。このビルコンクリート造であり、この会社の年度は4月1日開始、3月31日終了である。このビルの取得価額は1億円であり、代金は電子記録債権で支払った(実際には消費税などが絡んで複雑になるが割愛)。

借方 貸方
建物 100,000,000 電子記録債務 100,000,000

その後、決済が当座預金から引き落とされるわけだが、当該記帳は今回の趣旨ではないので割愛

2023年3月31日、減価償却を行う。減価償却期間は50年間である。建物は定額法で処理する。

借方 貸方
減価償却費 2,000,000 建物 2,000,000

以下2071年まで全く同じ仕訳を行う。

2072年3月31日、減価償却を行う。備忘価額は1円とする。

借方 貸方
減価償却費 1,999,999 建物 1,999,999

間接法

端的に言えば、減価償却累計額勘定を立てて、そこにそれまでの減価償却した額の記録を行うというものである。したがって、固定資産勘定には取得時の価額が入ったままである。現在の固定資産の残額は、固定資産勘定の額から減価償却累計額勘定の額を引いたものになる。

先ほどと同一のシナリオで、減価償却を行うと、このようになる。

2023年から2071年の3月31日

借方 貸方
減価償却費 2,000,000 建物減価償却累計額 2,000,000

2072年3月31日

借方 貸方
減価償却費 1,999,999 建物減価償却累計額 1,999,999

有形固定資産であれば、どちらの方式をとっても帳簿を見れば固定資産の残高が把握できるため、何の問題も起きない。例えば2052年3月31日時点での残額は、直接法であれば建物勘定の4000万円、間接法であれば建物勘定の1億円から建物減価償却累計額勘定の6000万円を引いた4000万円となり、両者の間に違いは生じていない。

備忘価額は残す?残さない?

備忘価額を残すのは、有形固定資産の場合である。これは、資産として形があるのに、会計上消え去ってしまうことを防ぐためである。

これに対し、形固定資産および繰延資産に関しては、備忘価額は残さない。例として、特許権(償却期間8年)を期首に取得した場合、8年に残額すべてを償却し、1円も残さない。

関連動画

関連リンク

関連項目

脚注

  1. *具体的には、実際の使用期間分のみ減価償却する。例えば定額法・償却期間5年の固定資産を下半期の頭に使用開始したら、1/5の半分、1/10だけ減価償却する
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  • 2 ななしのよっしん

    2025/01/08(水) 23:09:12 ID: rFy1qO3lVl

    こいつのせいで仕事で導入されるノートPCとかが10万円未満のものばかりになる

  • 👍
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  • 3 ななしのよっしん

    2025/02/17(月) 11:33:22 ID: tjPX468gHU

    簿記で言う減価償却概念はおおむね理解してるつもりだが
    喩表現として出てくる“減価償却”で言わんとしてることが分からない

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    👎
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  • 4 ななしのよっしん

    2025/02/17(月) 11:53:03 ID: tjPX468gHU

    漢字に引っられて価値が減る分を計上するとかいう解釈をすると却ってよく分からなくなる。
    記事で丁寧に解説してる通り、既に取得した資産の費用を(例えば建物とかの利用の実態に合わせる為に)使用可期間で分割して計上するというのが本質であって、時間経過によって価値が減ずる々はちょっとズレてくる。
    土地が減価償却出来ないように関係ではないんだが

    で、上の話の大前提として
    会計というのは、“ある会計期間”(通常は1か)での費用と収益を金や物の出入りをありのままに記録するだけだとおかしくなるんで手直しして正確に把握するためのものだという理解がまず必要になる
    未払い費用だとか未収収益だとかの繰越もそう
    何の為にこんなことするのか?という視点がしっかりしてないと分からなくなる

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