解雇規制 単語


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解雇規制とは労働に関する言葉であり、次の意味を持つ。

  1. 政府国会法律を作ったり裁判所が判例を作ったりして使用者による労働者解雇を制限すること
  2. 労働組合使用者労働協約を結んで使用者による労働者解雇を制限すること
  3. 使用者自主規制して使用者による労働者解雇を制限すること

解雇規制といえばたいていの場合において1.を意味するので、本記事では1.について解説する。

概要

定義

解雇規制とは、政府国会法律を作ったり裁判所が判例を作ったりして使用者による労働者解雇を制限し、経済活動の自由契約自由を部分的に制限することをいう。

解雇の2形態

解雇には2つの形態がある。

1つは普通解雇で、労働者が何らかの規範を破ったことを理由に行われる解雇のことをいう。簡単に言うと、労働者の勤務態度が悪かったり労働者断欠勤を繰り返したり労働者刑法犯罪を犯したりして労働者が規範を破ったことを使用者が問題視して行うのが普通解雇である。

もう1つは整理解雇で、使用者の都合により行われる解雇のことをいう。簡単に言うと、収益が減ったり費用が増えたりして利益が減って経営が苦しくなったときに賃金という費用を減らすため規範を守っている労働者に対して行うのが整理解雇である。

法理その1 解雇権濫用法理

普通解雇と整理解雇の両方に対して、つまり全ての解雇に対して規制を掛ける根拠となる法理は解雇権濫用法理である。労働契約法第16条において解雇権濫用法理が明記されている。

労働契約法第16条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、効とする。

1975年4月25日日本食塩製造事件の最高裁判決で「思うに、使用者解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として効になると解するのが相当である。」と判示され、解雇権濫用法理が確立した(裁判所資料exit)。

2003年7月4日に「労働基準法の一部を改正する法律」(平成15年法律104号)が布され、第18条の2として「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、効とする。」という条文が追加された(衆議院資料exit)。

2007年に労働契約法が新規に立法されて布され、2008年に施行された。その16条は労働基準法第18条の2の条文をそのまま受け継ぐものとなった。

法理その2 整理解雇法理

整理解雇に対して更なる規制を掛ける根拠となる法理は整理解雇法理であり、4つの要件を示して規制している。

整理解雇法理の4要件

  1. 人員削減の必要性(特定の事業部門の閉鎖の必要性)
  2. 解雇回避努力義務の履行(役員報酬の削減、新規採用の抑制、残業制限、希望退職者の募集などを行っていること)
  3. 解雇の選定の妥当性(選定基準が客観的、合理的であること)
  4. 解雇手続の妥当性(労使協議等を実施していること)

整理解雇の権利の濫用について1960年代から徐々に判例が積み上げられ、1970年代オイルショックで整理解雇が多発したのに伴ってさらに判例が増え、整理解雇法理の4要件が明確化された[1]。なかでも有名な判例は1979年10月29日の東洋酸素整理解雇事件の東京高裁判決である(裁判所資料exit)。

終身雇用

解雇規制が導入されると、企業は期限を定めずに雇った労働者を定年まで自由解雇できなくなり、正規雇用労働者に対して終身雇用をすることになる。

抜け道

解雇規制には非正規雇用という抜けがある。非正規雇用の大半は期限を定めて雇用するものであり、契約期間が終了した後に再契約をしないことで実質的に解雇できる。非正規雇用が拡大したのなら「実質的に解雇規制が緩和された」ということができる。

また、最低賃金法律を撤してから成果主義能力主義賃金体系を導入するという抜けもある。解雇規制を掛けられたとしても「300円でハンバーガーを1ヶ買えるという物価準のなかの時給1円」といった安い賃金で雇用するのならそれは解雇するのとほとんど同じ状態になる。

解雇規制の長所

労働者が使用者を恐れなくなり労働に集中できるようになる

解雇規制を導入して終身雇用にすると、使用者の権力が制限され、「解雇の権限を持つ強い使用者」が「解雇の権限を制限された弱い使用者」に変化する。そうなると労働者使用者に対しておびえなくなり、「使用者のご機嫌伺いを優先しよう」と考えなくなり、労働者が労働に集中できるようになる。

会社の生産効率を高めるが使用者の機嫌を損ねることと、使用者の機嫌を取ることができるが会社の生産効率を低くすることのどちらかを選択することになった場合、迷わずに前者を選択する労働者が増え、気ある労働者が増える。

の顔色をうかがうとか上の機嫌をとるといった「職務から外れた行為」をする労働者が減り、労働者が労働に集中して職務専念義務を遂行するようになり、労働強化が進み、企業の生産性が高まる。さらには国家全体の生産技術が向上し、労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが上がって国家していく。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。

労働者が使用者に対して積極的情報提供権を行使できるようになる

解雇規制を導入して終身雇用にすると、使用者の権力が制限され、「解雇の権限を持つ強い使用者」が「解雇の権限を制限された弱い使用者」に変化する。すると企業が「解雇の権限を持つ強い使用者」と「解雇されるがままの弱い労働者」で構成される階級社会ではなくなり、無階級社会に近づく。そうなると労働者が「使用者は自分とは出来が違う存在でとても話しかけられない」と考えなくなり、労働者が「使用者は自分と同じような存在なのでどんどん話しかけよう」と考えるようになり、労働者使用者に対して積極的情報提供権(表現の自由)を行使するようになる。

使用者に意見を具申する労働者が増え、上意下達(トップダウン)だけではなく下意上達(ボトムアップ)が行われる企業になり、情報の流通が活発な企業になり、通しのよい企業になり、欠点が修正されやすい企業になり、生産性が高い企業になる。さらには国家全体の生産技術が向上し、労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが上がって国家していく。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。

労働者の労働運動が活発化して労働者の賃金が上がりやすくなる

解雇規制を導入して終身雇用にすると、使用者の権力が制限され、「解雇の権限を持つ強い使用者」が「解雇の権限を制限された弱い使用者」に変化する。そうなると労働者使用者に対しておびえなくなり、「使用者のご機嫌伺いを優先しよう」と考えなくなり、労働運動をすることができるようになる。

ここでいう労働運動は、労働者使用者に対して賃金を上げるように要する行為のすべてをす。「労働者労働三権を行使して使用者労働協約を結ぶ」という本格的なものも含むし、「労働者使用者に聞こえるように賃金の安さを愚痴って使用者効率賃金仮説に基づいて賃金を上げるように誘導する」という簡易的なものも含む。

解雇規制を導入すると、労働者の労働運動が活発化するので、賃金が上がりやすくなる。労働者賃金が上がると労働者の消費が増え、労働者生活準が向上する。また、結婚率や出生率の下落が抑制され、少子化と人口減少が抑制され、政府移民の導入に頼らなくなり、国家における言語や文化の統一性が維持され、国家における情報の流通が円滑な状態が維持され、国家全体の生産技術が維持される。国家全体の生産技術が維持されると労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが維持され、国家の力が維持される。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。

労働者の賃金を安定させて労働者の消費を促進する

解雇規制を導入して終身雇用にすると、労働者が将来の賃金の安定性に確信を持つようになり、労働者が「自分は将来に解雇されるかもしれない」と思わなくなり、労働者が将来不安にさいなまれなくなる。そうなると労働者は予備的貯蓄をする必要性から解放され、消費好みで倹約嫌いの性格に変貌していき、生活準を向上させることができる。

ちなみに消費というのは生活準そのものである[2]。消費が多いと生活準が高くなって生活が豊かになるし、消費が少なくなると生活準が低くなって生活が貧しくなる。

さらには、解雇規制を導入して終身雇用にすると、大な消費が予想される結婚・子作りに踏み切る勇気労働者が持つようになり、結婚率や出生率を上昇させていき、少子化や人口減少を抑制する力を作り出す。人口減少が抑制されると政府移民の導入に頼らなくなり、国家における言語や文化の統一性が維持され、住民どうしの心理的なが小さい状態が維持され、住民が他の住民に対して積極的情報提供権(表現の自由)を行使する状態が維持され、国家の中の情報の流通が円滑である状態が維持される。国家全体の生産技術が維持され、労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが維持され、国家の力が維持される。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。

クラウディングアウトを発生させてバブル経済の発生を抑制する

解雇規制を導入して終身雇用にすると、労働者が将来の賃金の安定性に確信を持つようになり、労働者が「自分は将来に解雇されるかもしれない」と思わなくなり、労働者が将来不安にさいなまれなくなる。そうなると労働者は予備的貯蓄をする必要性から解放され、消費好みで倹約嫌いの性格に変貌していく。

国家全体の限界消費性向MPCが高まって限界貯蓄性向MPSが低くなり、消費が増えて投資が減り、クラウディングアウトとなり、実質利子率が上昇していく。実質利子率が上昇することで、実質利子率が低すぎる状態を解消することができ、バブル経済の発生を抑制でき、国家経済を安定させることができる。

実質利子率が低くなりすぎると、需要がいのに需要が有るかのように見せかけて投資から融資を騙し取る投資詐欺を行う知犯罪者が増え、過剰投資と呼ばれる状態になって不良債権が増え、バブル景気バブル崩壊の両方を作り出し、強な負の需要ショックを作り出し、長期にわたる深刻な不気を発生させ、将来世代を苦しめる。

大企業と中小企業の格差が縮小する

解雇規制を導入すると、企業経営者は「労働者をいったん雇うと簡単に解雇できない」と思うようになり、業績を拡大して市場占有率を増やす機会に恵まれたとしても簡単に労働者を雇用しなくなる。そのため、市場占有率が低いままの大企業ばかりになり、「が社は市場占有率が高いので君たちはが社の要を受け入れるしかない」と協力企業に威圧する大企業が減る。

大企業の協力企業が、大企業に対して値上げ交渉をしやすくなり、大企業に対して価格転をしやすくなり、収益を増やしやすくなり、労働者に支払う賃金を増やしやすくなる。このため、大企業に勤める労働者と「大企業の協力企業」に勤める労働者賃金格差が縮小する。「大企業の協力企業」というのは多くの場合において中小企業であるため、大企業に勤める労働者中小企業に勤める労働者賃金格差が縮小し、格差社会になりにくくなって平等社会に近づき、階級社会になりにくくなって無階級社会に近づく。

中小企業労働者が「大企業労働者は自分とは出来が違う存在でとても話しかけられない」と考えなくなり、「大企業労働者は自分と同じような存在なのでどんどん話しかけよう」と考えるようになり、中小企業労働者大企業労働者に対して積極的情報提供権(表現の自由)を行使するようになる。国家の中で情報の流通が活発化し、欠点が修正されやすい国家になる。さらには国家全体の生産技術が向上し、労働生産性Y/Lと資本生産性Y/Kと実質賃金と実質資本レンタル料と実質GDPのすべてが上がって国家していく。そのことはコブ=ダグラス生産関数で簡単に計算できる。

労働者の離職率が下がる(ただし失業率が下がるとは限らない)

解雇規制を導入して終身雇用一般化すると、使用者によって労働者解雇しにくくなるから、労働者の離職率が下がる。

ただし、解雇規制を導入すると、使用者が「労働者をいったん雇うと簡単に解雇できない」と考えるようになり、雇用に対して慎重になるので、失業者の就職率が下がる。このため解雇規制を導入したとしても失業率が下がるとは限らない。

経済学者経済の状況を測定するときに最も頻繁に使う経済統計は、実質GDPインフレ率と失業率の3つである[3]。そして、失業率は、労働者の離職率と失業者の就職率という2つの要因によって決定される[4]

端的に言うと、解雇規制を導入したとしても国家経済の状況が好転するとは限らない。

解雇規制の短所

軍隊風の組織を作れなくなる

解雇規制を導入して終身雇用にすると、使用者の権力が制限される。このため労働者使用者の顔色をうかがわなくなり、使用者を中心とした中央集権の組織にならなくなる。

使用者に対して口答えばかりする生意気な労働者が増え、口うるさくて厄介労働者が増え、「上の言うことは絶対である」とする軍隊の組織を作れなくなり、上意下達(トップダウン)の底が行われなくなる可性が発生する。

労働者の消費を促進し投資を減らす

解雇規制を導入して終身雇用にすると、労働者が将来の賃金の安定性に確信を持つようになり、労働者が「自分は将来に解雇されるかもしれない」と思わなくなり、労働者が将来不安にさいなまれなくなる。そうなると労働者は予備的貯蓄をする必要性から解放され、消費好みで倹約嫌いの性格に変貌していく。

国家全体の限界消費性向MPCが高まって限界貯蓄性向MPSが低くなり、消費が増えて投資が減り、クラウディングアウトとなり、実質利子率が上昇していく。実質利子率が上昇しすぎると、投資が減って将来の生産設備が減り、将来の資本量が減り、将来において国家の実質GDPが下がり、国家が衰退する。

企業の倒産の危険性が高まる

解雇規制を導入して終身雇用にすると、消費が増えて投資が減り、クラウディングアウトとなり、実質利子率が上昇していく。実質利子率が上昇すると企業の利払い費用が増えて企業の税引後当期純利益が減る。

また、解雇規制を導入すると、使用者の権力が制限され、労働者使用者に対しておびえなくなり、労働運動をするようになる。そうなると賃金が増え、企業の費用が増えて税引後当期純利益が減る。

また、解雇規制を導入すると、企業賃金を「気に対応する調整弁」として使えなくなる。不気になって業績不振に陥って収益を低下させた企業は、解雇規制のために賃金一気に削減できないので、税引後当期純利益を減らしやすくなる。

つまり、解雇規制を導入すると企業倒産の危険性が高まり、企業倒産しやすい社会になる。

自由貿易に対応できる企業を作りにくくなる

解雇規制を導入すると、企業経営者は「労働者をいったん雇うと簡単に解雇できない」と思うようになり、業績を拡大して市場占有率を増やす機会に恵まれたとしても簡単に労働者を雇用しなくなる。そのため、市場占有率が低いままの大企業ばかりになる。

自由貿易を導入すると、企業安価海外産の商品と競争することになるので、市場占有率を高めてスケールメリットの恩恵を受けて安価な商品を生産できる体制をつくらねばならなくなる。解雇規制を導入すると大企業であっても市場占有率が低いままとなり、スケールメリットの恩恵を受けづらくなり、自由貿易に対応しづらくなる。

解雇規制は保護貿易を基調とするに適合しやすく、解雇規制の緩和は自由貿易を基調とするに適合しやすい。

失業者の就職率が下がる(ただし失業率が上がるとは限らない)

解雇規制を導入して終身雇用一般化すると、使用者が「労働者をいったん雇うと簡単に解雇できない」と考えるようになり、雇用に対して慎重になるので、失業者の就職率が下がる。

1990年代日本は、1990年バブル崩壊が発生してから長期にわたる不気となっていた。解雇規制を維持する企業1993年頃から新卒の採用を大いに削減し、氷河期世代を生み出した。

ただし、解雇規制を導入すると労働者の離職率が下がる。このため解雇規制を導入したとしても失業率が上がるとは限らない。

経済学者経済の状況を測定するときに最も頻繁に使う経済統計は、実質GDPインフレ率と失業率の3つである。そして、失業率は、労働者の離職率と失業者の就職率という2つの要因によって決定される。

端的に言うと、解雇規制を導入したとしても国家経済の状況が悪化するとは限らない。

部門間シフトを抑制する(反論あり)

「解雇規制は部門間シフトを抑制し、解雇規制の緩和は部門間シフトを促進する」とされることがある。部門間シフトは衰退産業から有望産業へ労働者が移動することなどをす。

それに対して、「解雇規制は部門間シフトを抑制するわけではない」と反論されることがある。「解雇規制は使用者の権力を制限して使用者解雇を抑制するだけのものであり、労働者の自発的な離職を規制しているわけではない」というのがな根拠である。

「解雇規制は部門間シフトを抑制するわけではない」とする人は「部門間シフトを促進したいのなら解雇規制を緩和するのではなくリスキリング職業訓練)を大々的に行うべきだ」とする傾向がある。「衰退産業Aの労働者に対してリスキリングを施さないまま解雇しても、その人は衰退産業Aに適する技しか持っておらず、相変わらず衰退産業Aでの就職を希望するので、部門間シフトが達成されない」というのである。

解雇規制と社会の変化

解雇規制は社会のあり方に影響を及ぼす

保護貿易が推進されることで解雇規制が強化されたり、自由貿易が推進されることで解雇規制が緩和されたりすると、労働者生活が及ぶだけではなく、企業の経営に大きなが及び、社会全体の雰囲気や構造が大きく変化する。

解雇規制が維持された社会と、解雇規制が緩和された社会というのは、対照的なところがある。

企業の多角化

解雇規制が緩和された社会があり、その社会の中の企業機械化などの技術革新が進み、50人の余剰人員が発生したとする。その場合、企業は50人の人員を解雇して、本業に専念し続けることになる。企業経営の多化を好まず、専業企業が兼業企業変身しない。解雇された50人は他の企業転職していく。

解雇規制が維持された社会があり、その社会の中の企業機械化などの技術革新が進み、50人の余剰人員が発生したとする。その場合でも、企業は解雇規制があるので社員終身雇用せざるを得ない。企業は50人の人員で新規事業を開拓していくことになり、いわゆる社内ベンチャーを立ち上げることになり、企業経営の多化に一歩踏み出すことになり、専業企業が兼業企業変身していく。

解雇規制が緩和された社会では企業の多化があまり進まず、本業に専念する専業企業が増えやすい。本業に専念する企業の方が企業力を評価しやすく、社債や株式の値段を付けやすい。これは株主資本主義者の好む直接金融に合致する企業である。

解雇規制が維持された社会では終身雇用の維持のために企業の多化が進み、「本業1つと副業1つ以上を抱えた兼業企業」という企業が増えやすい。「本業1つと副業1つ以上を抱えた兼業企業」に対しては、副業を「全くの駄」と評価することもできるし「将来に大化けするかも」と評価することもできるので、評価するのが難しく、社債や株式の値段を付けにくい。株主資本主義者の好む直接金融に合致しにくい企業である。

自給自足

解雇規制が緩和された社会では社会的分業を底しようという気運がやや濃くなり、「『屋』ということだし、が社でやってみるのをやめて、ヨソの会社にやってもらおう。その方が合理的だ。余計な社員全員解雇したのでヨソの会社にやってもらうしかない」という気がやや濃くなり、自給自足の傾向がやや薄くなる。

解雇規制が維持された社会では社会的分業を底しようという気運がやや薄れ、「ヨソの会社にやってもらうのではなく、が社でやってみようか。終身雇用を保障していて社員解雇できないので社員が余っている。その社員活用しよう」という気がやや濃くなり、自給自足の傾向がやや強くなる。

社内ベンチャー

解雇規制が緩和された社会で新規産業が勃するときは全く新しいベンチャー企業が起業することが流となる。ベンチャーは、既存企業から企業経営のノウハウを引き継ぐこともできないし、既存企業から人材面や資金面での支援も見込めるわけでもないので安定感に乏しい。ただし、社員背水の陣に立たされるので、「死にものぐるいでやる」という雰囲気はやや濃くなる。

解雇規制が維持された社会で新規産業が勃するときは、既存の企業の中に新規部門が発生するという社内ベンチャーの形式が流となる。社内ベンチャーは、既存企業から企業経営のノウハウを引き継ぐこともできるし、既存企業から人材面や資金面での支援も見込めるので安定感がある。ただし、社員背水の陣に立たされるわけではないので、「死にものぐるいでやる」という雰囲気はやや薄れる。

共存共栄の牧歌的な世の中

解雇規制が緩和された社会では、それぞれの企業が簡単に従業員を解雇できるので、業績拡大のチャンスが転がり込んだときに「正社員を増やしたあとに経営不振になったら、従業員を解雇してしまえばいい。ゆえに雇用の拡大は経営の負担にならない。いくらでも雇用を拡大してよい」と考えるようになり、雇用拡大に対して積極的になり、業績拡大のチャンスに飛びつくことになる。そうした企業ばかりになるので、業績を拡大する企業が一人勝ちして独占に突き進むという現象が起こりやすく、少数の大規模企業が多くの市場占有率を占める独占・寡占の社会になる。小規模企業・中規模企業は淘汰され、弱肉強食優勝劣敗の殺伐とした世の中になる。

解雇規制が維持された社会では、それぞれの企業終身雇用の維持をめられるので、業績拡大のチャンスが転がり込んだとしても「終身雇用正社員を増やすと、経営不振に陥ったときに経営の負担になる。うかつに雇用を拡大するわけにはいかない」と考えるようになり、雇用拡大に対してきわめて慎重になり、業績拡大のチャンスを見送ることになる。そうした企業ばかりになるので、業績を拡大する企業が一人勝ちして独占に突き進むという現象が起こりにくく、小規模企業・中規模企業が多く併存する社会になり、共存共栄の牧歌的な世の中になる。

守りの経営

解雇規制が緩和された社会では、「攻めの経営」「市場占有率を他の企業から奪い取ることを優先する経営」をする企業ばかりになり、「急成長して一攫千金を狙おう」と欲望ギラつかせる企業ばかりになる。また、小規模企業から大規模企業へ急成長する企業が発生しやすいので、株式投資をする者にとっても「濡れ手に(あわ)」の一攫千金(いっかくせんきん)を実現しやすくなる。

解雇規制が維持された社会では、「守りの経営」「市場占有率を他の企業から奪い取ることを優先しない経営」をする企業ばかりになり、「従業員の人生を預かっているのだし、従業員を確実に養うことが大事だ。顧客を確実に保持して経営を安定させよう」と考える企業ばかりになる。また、小規模企業から大規模企業へ急成長する企業が発生しにくく、ジリジリとゆっくり規模を拡大させる企業しか出現しないので、株式投資をする者にとって「濡れ手に」の一攫千金を実現しにくくなる。

まとめ

以上のことをまとめると次のようになる。

解雇規制の緩和 解雇規制の維持
機械化などで余剰人員が発生したとき 余剰人員を解雇する。企業が本業に専念し続け、専業企業のままであり続ける 余剰人員で社内ベンチャーを立ち上げて企業を多化させ、兼業企業変身する
直接金融への合致度 企業力を測定しやすく、株式や社債の価格を決めやすく、直接金融に合致しやすい 企業力を測定しにくく、株式や社債の価格を決めにくく、直接金融に合致しにくい
社会のあり方 社会的分業を底しようという気運がやや強い。「屋、他の人に任せた方が合理的」という気運がやや強い 自給自足の気運がやや強い。「自分たちでやってみよう」という気運がやや強い
新規産業が勃するときの様子 起業精神あふれる人がベンチャー企業を創設する。安定性がないが、死にものぐるいの気がやや強い 既存企業の内部に社内ベンチャーが発生する。安定性があるが、死にものぐるいの気がやや薄い
企業の雇用拡大に対する姿勢 「経営不振になったら従業員を解雇すれば良い」と考えるので、気軽に雇用を拡大する 「経営不振になっても終身雇用を維持せねばならない」と考えるので、うかつに雇用を拡大できない
企業の業績拡大に対する姿勢 業績拡大のチャンスを決して逃さない 業績拡大のチャンスみすみす逃す
市場占有率の様子 市場占有率を急拡大させる企業が増え、大規模企業による寡占や独占が増え、小規模企業・中規模企業が淘汰される社会になる 市場占有率を急拡大させる企業が増えず、大規模企業による寡占や独占が増えず、小規模企業・中規模企業が多く併存する社会になる
世相 弱肉強食優勝劣敗となり、殺伐とした世の中になる 共存共栄となり、牧歌的な世の中になる
流となる企業経営 攻めの経営。市場占有率を他の企業から奪い取ることを優先し、急成長して一攫千金を狙う 守りの経営。従業員を養うことと確実な顧客を保持することを優先する
企業の成長 小規模企業から大規模企業へ急成長する企業が発生しやすい 小規模企業から中規模企業へジリジリとゆっくり成長する企業が発生しやすい
株式投資の魅力 濡れ手にの一攫千金が期待できる。一発当てて大けすることが期待できる 濡れ手にの一攫千金が期待できない。一発当てて大けすることが期待できない

関連リンク

関連項目

脚注

  1. *『競争と感(中央公論新社大竹文雄』163ページ
  2. *マンキュー マクロ経済学 応用編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』の3ページに次の文章がある。・・・「祖が若かった頃の生活がどのようなものだったか聞いたことのある人は、経済成長に関する重要な教えを学んだに違いない。その教えとは、ほとんどの々において、大半の家族が時代とともに物質的な生活準を大幅に改善してきたということである。この進歩は所得の増加によるものであり、それによって人々はより多くの量の財・サービスを消費できるようになった。」・・・マンキュー教科書のこの文章は「実質GDP(所得)が増加するとそれを原因として消費が増えて生活準が上がる」ということを摘する内容である。
  3. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー』5ページ、26ページ
  4. *『マンキュー マクロ経済学入門編 第3版(東洋経済新報社)N・グレゴリー・マンキュー220~223ページ
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