AIM-7 スパローとは (エイアイエムセブンスパロウとは) [単語記事]

AIM-7 スパローとは、アメリカ合衆国で開発された空対空ミサイル(AAM)である。なお、「スパロー」とはスズメの意味である。

概要

第2次世界大戦終了直後から開発が始められ、1948年には運用が開始されたが当時の技術では足の遅い爆撃機が撃墜できるのがやっとのレベルであった。

そしてベトナム戦争では熱帯での気候による電子機器の劣化や取り扱いの不味さにより戦果を挙げられなかったという。

それでもこれらの経験と技術の発達により、兵器としての完成度は大きく向上し、西側諸国のベストセラー兵器となっていき、21世紀に入っても徐々に後継機に更新されつつも現役を続けている。

開発

スパローは、米海軍のプログラム「プロジェクト・ホット・ショット」（第二次大戦末期に遭遇したジェット機とカミカゼに対処する空対空兵器を開発する）により、1946年に「スペリー XA AM-N-2 スパローⅠ」として誕生した。しかし「ビーム・ライディング」方式のレーダー誘導システムを採用していたこのミサイルは、爆撃機サイズの目標が水平状態で直進しているときしか命中させることができなかった。スパローの限界を認識した米海軍は1950年代末に改良に着手、レイセオン社が生産した「AIM-7C スパロー Ⅲ」で「セミ・アクティブ」方式の誘導システムを採用した。しかし当時は真空管と初期のアナログ・コンピューター、複雑でかさばる論理回路板を使用してシステムを組む時代で、スパローは信頼性の面で深刻な問題をかかえたまま現役を続けることになった。^[1]

改良点

誘導方式

開発当初はメジャーだったビーム・ライディング方式だったが後にセミアクティブ・レーダー・ホーミング方式に変更され、命中率を向上させた。また、90年代の改良によってデータリンクが追加され中間飛行時に命中コースの変更が可能になった。

推進方式の改良

開発当初は液体燃料を用いていたが後に固体燃料に変更。射程は最初10㎞程度だったが60年代に30㎞、70年代に70㎞と伸び、速度もマッハ2.5からマッハ4に向上している。

ベトナム戦争

ベトナムに派遣されたF-4に装備されたスパローは、敵のミグが有視界内に入る前にレーダーで捉えて発射することで、接近戦をせずに撃墜することが期待されていた。しかしベトナムの空はミグ以外の機体や味方の輸送機も飛行しているため、レーダーで探知した目標がミグなのかどうかがパイロットには判別できなかった。スパローで味方のファントムを撃墜してしまう例が少なくとも3件ほど発生し、その後は、目標を有視界で確認してから攻撃するように命令が変更されたため、結局F-4は接近戦に巻き込まれることになった。^[2]

湾岸戦争

湾岸戦争では多国籍軍のF-15C イーグル等に搭載され、イラク空軍機に対して攻撃を行った。

ベトナム戦争時と比べ、ミサイルや戦闘機の性能が大きく向上したことに加え、AWACSからの正確な敵味方識別ができるようになって、イラク空軍のMiGに対して優位なポジションから攻撃できるようになった。結果、命中率はベトナム戦争時の約４倍の40%と大幅に改善、多数の撃墜を記録した。

派生型

転用

RIM-7 シー・スパロー

スパローを個艦防空用兵器に転用したもので、米英共同で開発が行われていた「モーラー」の開発が失敗に終わったことから、1960年代に急遽開発された。

最初のシステムでは当時生産されていたAIM-7Eにほとんど手を加えずRIM-7Hとして採用し、発射機はアスロックランチャーをベースにしたMk.25・8連装ランチャー、誘導装置に至っては人力操作＋目視標準＋シールド無しという有様であった。

その後、1973年にはセミアクティブ誘導用のイルミネーターを自動化、1991年からはVLSから運用できるようになり（発射直後からミサイルが目標を向くまでは指令付きオートパイロットで飛翔）、2004年からはESSMの運用が始まっている。

AGM-45 シュライク

1960年代にスパローの誘導装置を改造することで開発された対レーダーミサイルでベトナム戦争で多く活用されたが多くの欠点を抱えていた。

誘導装置の拡張性	スペースの問題から誘導装置のレーダー周波数の対応範囲が狭く、周波数ごとに新しい誘導装置を使わなければいけなかった。
威力不足	弾頭がもともと対空用だったので比較的少量であり、命中しても被害が小さいことが多かった。
射程・速度不足	主目標のソ連製ミサイルは30㎞程度だったが本機は 16㎞から40㎞で大差なく、速度もマッハ2と同程度のため、相討ちもしくはアウトレンジされる危険性があった。
射撃範囲の狭さ	誘導装置の問題で命中誤差が±3度と狭い＝事前の情報がきわめて正確なものが必要だった。
レーダー停止に弱い	レーダーを停止＝電波を消されると目標に命中させられなかった。

それでも後進機と比べると安価だったことから活用され続けた。
また、イスラエルではブースターを装備したうえでⅯ4中戦車から砲塔を外して自走発射機化した
『キルション』を開発・運用した。

海外版

アスピーデ

イタリア仕様でロケットモーターをイタリア製に換装し以下の派生型を持つ。

アスピーデ2000	射程延長＋速力延長型
アルバトロス	艦載仕様
スパダ	地対空仕様。

スカイフラッシュ

イギリス仕様で純粋なAAMのみ。誘導装置を中心に電子系が改良されている。

脚注

*「トム・クランシーの戦闘航空団解剖」トム・クランシー平賀秀明：訳新潮社 1997 pp.284-285
*「スーパーウェポン」ジェームズ・W・キャナン青木榮一：訳 1976 ダイヤモンド・タイム社 p.32

AIM-7 スパロー単語

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