スタンダードミサイルとは、アメリカ合衆国で開発された艦対空ミサイルである。
1960年代に開発されたRIM-24『ターター』をベースに開発されて以降、50年以上にわたってアメリカ海軍と主だった西側諸国海軍の主力長距離艦対空ミサイルとして改良を重ねて君臨し続けている。
第1次世界大戦で戦争に投入された航空機は戦間期に登場した空母により、海戦において本格的に導入され、第2次世界大戦において遂にそれまでの海戦における主役、戦艦を駆逐して海戦の主役に躍り出た。これに対抗するため空母、戦艦などの水上艦は戦時中、戦闘機の援護が受けられない場合、艦砲や機銃で対抗したがこれらはレーダーや砲弾に装備された近接信管を以てしても無駄が多く、隙間を突かれて時には大型艦でさえ沈没もしくは数か月にわたって修理で戦線離脱をすることも少なくなかった。
米海軍は1944年からバンブルビー(bumblebee)計画を開始し、新しい防空システムの開発に着手した。ここから、「3T」と呼ばれる「テリア」(1956年就役、2段式の固体燃料推進)、「タロス」(1958年就役、ラムジェット推進)、「ターター」(1962年就役、テリアの軽量化を図ったもの)の3つの対空ミサイルが生み出された。これら3つのミサイルはそれぞれ改良が加えられ新バージョンが作られ続けたが、このうち共通部分が多くなったテリアとターターを統一したのがスタンダードミサイル SM-1である。SM-1(MR)がターターの後継として、ブースターを追加したSM-1(ER)がテリアの後継として使用された。[1]
SMシリーズは基本的にターターから受け継がれたSARH(セミアクティブ・レーダー・ホーミング)を使用している。これは搭載艦の捜索レーダーが探知した標的目標をイルミネーター(専用射撃レーダー)がレーダー波を照射してミサイルに目標位置を知らせながら命中させる方式である。この方式は基本的にイルミネーターの数=同時対応目標数が決まってしまう欠点があったがこれは後述の改良によって大幅に改善されている。また、『タロス』、『テリア』と比べると各種設備が比較的簡素に済むので3000tクラスの戦闘艦にも容易に装備できる=対空ミサイル艦の数を揃えることで艦隊防空力を高めることも可能になった。
特に広く使われている旋回式単装発射機。元々はターター用。初期は対空ミサイルのみに対応していたが後にハープーン対艦ミサイルも運用可能になった。派生型として小型化し対空ミサイルのみに特化した『Mk.22』がある。
連装式発射機で巡洋艦向け。アスロックにも対応している。前任として『Mk.10』、『Mk.11』がある。
キャニスター(弾薬庫兼発射機)式。小型軽量な反面、再装填が停泊時でないと出来ないデメリットがある。
しかし、省スペースでもあるため後付けが容易なメリットもある。
帝政時代のイラン、台湾[2]においてアメリカから購入した大戦型駆逐艦に装備されて運用されただけでなく韓国でも対艦仕様『RGM-66』を搭載したミサイル艇で運用した。
いわゆる垂直式発射機でイージス艦を初めとする西側現用戦闘艦に重要なMk.41システムの中核。SMシリーズだけでなくシースパロー、ESSM、アスロック、トマホークと幅広いミサイルの運用が可能。
SMシリーズの基本形で射程は40㎞だが、テリア運用艦向けに専用ブースターを連結した『ER』では射程70㎞に達していた。なお、イージス艦には未対応。
ミサイルの誘導はSARHに慣性航法を併用する。イージス艦より発射する場合は発射前に目標の位置データを入力し、発射されたミサイルは目標までの最も効率的なコースを取って飛翔、ミサイルが目標に接近した時点で母艦のイルミネーターがCW(連続波 ContinuousWave)の照射を開始する。飛翔途中で目標の速度や飛行方向に変化があれば、改めてデータがミサイルに送られる。イルミネーターが一つの目標に拘束されない為、同時に迎撃できる目標数は増大しており、同時に誘導できるSM-2はタイコンデロガ級で18発、アーレイ・バーク級で14発ともいわれる。SM-1では発射の時点で目標からの反射波を受信していなければならず、これがSM-1の有効射程を制約していたが、SM-2ではこの制約が無いため有効射程はSM-1より60%向上した。ブロックⅡではロケットモーターを延長して射程を増大、有効射程は74km、一説には100km以上ともいわれる。ブロックⅢでは信管が改良された。[3]
ブロックⅢbでは赤外線画像誘導も併用し、低RCS目標に対応できるようになっている。[4]
それまでのSMシリーズが航空機や対艦ミサイルを目標にしていたのに対し、SM-3は弾道ミサイルを迎撃するミサイルとして開発された。ブースター3基と運動エネルギー弾頭で構成されており、目標の弾道ミサイルを大気圏外で破壊する。射程は1200㎞、上昇限度は500㎞に達するといわれる。
SM-3の最大射高については、実績値として高度247kmで標的を破壊したことが公表されているが、真のスペックは不明のままである。ちなみに軍用衛星の最も低い周回高度は160km未満なので、SM-3は立派にASAT(対衛星兵器)としてカウントできる。[6]
2024年4月に、初めて実戦で使用された(地中海に位置するイージス艦が、イランからイスラエルに向けて発射された弾道ミサイルを迎撃)。[7]
セミアクティブホーミングに加え、AIM-120Cのアクティブホーミングを採用。SM-2で必要だったイルミネーター照射が無くても運用できるため、水平線外などの遠距離目標に対処できる。射距離は公式には130海里(240km)だが、200~250海里(370~460km)程度の実力があるのではないかとも言われる。最大速度はマッハ3.5。最大高度は34kmに達するので、大気圏内(高度100km以内)での弾道ミサイル対処もできる。[8]
SM-6はNIFC-CA(Naval Integrated Fire Control-Counter Air 海軍統合火器管制-対空。米海軍が保有するセンサ(E-2D等)、センサーネットワーク(リンク16等)、武器管制システム(イージス等)、ミサイル(SM-6等)を連接し、レーダー見通し線外にいる巡航ミサイル等の航空目標を迎撃する防空システム)の構成要素にもなっている。このシステムを対艦攻撃に応用する試験も行われており、2016年1月にはSM-6を海上の標的に命中させている。[9]
SM-1をベースに開発された航空機搭載型対レーダーミサイル。
前任のAGM-45 「シュライク」が、射程、威力共に不十分で不評だったことから急遽開発されたもので性能は優秀だったが「シュライク」より高くつくのが難点だったためハイ・ローミックス方式で使用された。
イスラエル向けのAGM-78で制御装置を簡素化した廉価型だが、敵対するシリア軍のレーダーサイトに対して猛威を揮った。なお、地上発射仕様も活用された。
艦載仕様で味方艦艇にレーダーを照射している敵航空機対策用に開発。
対艦ミサイル仕様[10]も存在したがハープーンを初めとする専用対艦ミサイルの登場により姿を消した。
SM-6を空対空ミサイルに転用したもので、2024年の時点ではスーパーホーネットのみが運用できる。
実用には至らなかったが対地ミサイル型の『SM-4』、空対空ミサイル『XAIM-97』、ESSMの誘導装置を乗せた『SM-5』といった具合に多くの派生型、改良型が計画されていた。
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2024.4.15
掲示板
2 ななしのよっしん
2018/05/30(水) 00:51:24 ID: 5Y29SWHXNy
SM-3の項目で「このシリーズでは日本が開発に参加している」とあるけど参加してるのはブロック2からだな。
3 ななしのよっしん
2021/11/24(水) 10:51:46 ID: jPJEtx2/vZ
よく1、2、3、6は聞くけどSM-4とSM-5どこ行ったんじゃと思ったらSM-4は対地バリエーションでポシャって、SM-5はSM-6との競合で負けてたのね…
4 ななしのよっしん
2022/07/04(月) 02:31:36 ID: AfnXVj+6+g
>>3
SM4は無誘導の艦対地ミサイル。
短距離弾道ミサイルだったけれど、命中精度が確保できないとして開発中止。
SM5は開発中止になったSM2の発展型の代案としてESSMの誘導装置を組み込むつもりだったけれど実現せず
sm-4→そもそもトマホークがあるし
sm-5→sm-6誕生でsm-5イラネ
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/16(火) 08:00
最終更新:2025/12/16(火) 08:00
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