この記事は、失踪した記事作成者のPCから発見された手記である。 当局は、記事作成者の情報提供を呼びかけるため、以前、「クトゥルフ神話」の手記公開に踏み切ったが、当局が望むような有望な情報は得られず、新たに発見された、この手記の公開にも踏み切らざるを得なかった。
なお、当局は固く口を閉ざしているが、この手記と一緒に記事作成者のHDDからは大量の冒涜的画像が、 押収された事は公然の秘密となっている。
ハワード・フィリップス・ラヴクラフトとは、米国の幻想、怪奇小説家である。 その最大の功績はシェアワールドとしてのクトゥルフ神話を創始したことにある。 また、土着神話と自身の描く怪奇、幻想世界をリンクさせるという手法や、固有のアイテムを複数の作品内で、使用することによって、あたかも、読者にそれが実在のものであるかのように錯覚させるという技法も確立した。 また、歴史的に神話を持たない米国に、宇宙的恐怖という、それらしきものを与えた点も彼の功績であろう。
なお、以下においては、その略称であるHPLと記述する。
HPLが自身で残した系図に拠れば、彼はクトゥルフ及び、ナイアルラトホテップという旧支配者の末裔である。
彼の直接の両親はサラリーマンの父と、資産家令嬢の母で、生年は1890年。 誕生の地はアメリカ北東部、ニューイングランド地方にあるロードアイランド州プロヴィデンス。 ニューイングランドやプロヴィデンスという言葉に覚えのある、クトゥルフファンも多いかと思うが、HPL自身、彼が幼年期を過ごした、ニューイングランドの街並みに憧憬を覚えていたのは確かなようである。 5歳の頃には既に創作を開始していたが、それは彼の身に起きた不幸が影響している。 つまり、彼が2歳の頃に父親が不全麻痺によって精神を病んでしまった事、それによって環境が変化した事、彼が身を寄せた母の実家、祖父の家が裕福で幼い頃から家庭教師や、膨大な量の蔵書に囲まれて育った、 という類まれな人生が、その後の創作活動に大きく影響しているものと思われる。 14歳の頃には天文学に興味を抱き、科学雑誌などへの寄稿も行っていたが、16歳の頃、幼年期の作品を、全て廃棄して文筆という職業、活動から遠ざかる。 その後、24歳にして再び、文章の添削、指導の仕事を始め、その3年後には再び、創作の道に入る。 33歳のとき、刊行された『ウィアードテイルズ』誌に『ダゴン』を寄稿、以後、同誌の常連作家となる。 このとき、同誌の作家仲間の間ではHPLは指導的な役割を担っていたと思われ、多くの作家が、彼の添削なり、執筆に関する指導なりを受けている。 その中には、ロバート・ブロックやA.ダーレスといった、後にクトゥルフ神話醸成に関わる作家も含まれていた。 結婚は、やはり彼の添削を受けていた作家、ソーニャ・H・グリーンと33歳の頃結ばれているが、 創作の方向性の違い、また、恐らくは人間的価値観の違いから距離を置くようになり、5年で正式離婚している。 その後、少なくとも、表向きは腸癌のため、46歳で永眠している。
ただし、その死に際して、ユゴス星から訪れたものが、ある重要な器官を持ち去った可能性が示唆されている。 また、HPLは魔術師としての名を持っており、たびたび作中に、その魔術名を持った人物を登場させている。 それこそがランドルフ・カーターである。 この事を考えるとき、私の心はかき乱され、言いようもない不安に苛まれる。 カーターは銀の鍵を持っていたのではなかっただろうか? 大いなるウルム=アト=タウィルの導きに与って、門を越え、思いもよらない生物の肉体を支配し、限りない難関を越えて、地球へと帰還を果たしたのではなかっただろうか。 有史以前のミイラがボストンのキャボット博物館に展示されたとき、ミイラを仔細に眺めていった、蝋面のように表情のない人物は、果たして、誰だったのか。 このような事が、たわいもない作家の奔放な想像の産物である事を私は願わざるにはいられない。
その最も特筆すべき点は、あらゆる偏見から解き放たれた平等主義者であったという点であろう。 但し、客観的に見れば、あくまでも当時の価値観からすれば、という注釈を加えざるを得ない。 その一方、生前は社会的評価に恵まれず、怪奇小説家という当時、あまり褒められたものではなかった職業柄、ある程度は社会に迎合しなければならなかったのは間違いないので、こればかりは本人に尋ねるより他にない。 個人的見解を述べさせて頂くのなら、その感性はいまの日本人に近く、如何なる宗教、宗派にも属さず、それでいて、そういったものに一定の敬意を払っていたようである。 また、彼の生きた時代は第二次世界大戦の最中であり、その住まいはニューヨークや米北東部という、比較的有色人種、マイノリティの多い地区で、戦時中という事もあり、人種偏見が奴隷制時代を除いて、猖獗を極めた時代でもあった。 にも関わらず、彼の友人にはユダヤ人なども多く、また、アジアの文化、文明に対して、欧米のそれよりも優れているという価値観を抱いていたようである。 事実、彼の小品『ヒュプノス』において、アインシュタインの事を「東洋人の目を持つ男」と評している。 彼が幼少期を過ごした米北東部が、比較的黄色人種の移民が多い地域であった事も影響しているかもしれない。 また、ナチスドイツによるユダヤ人迫害に関しては、明確な批判を行っている。 時代背景や、彼が、当時、エンターテインメントとしてあまり認められていなかった怪奇作家であったという事実、これらを鑑みると、より、彼の言動が偏見から解き放たれたものであったか理解できるはずである。 但し、作中では東洋人やアラブ人を、当時の一般的偏見の見地から扱っている。 それを以ってHPLを糾弾する人もいるようだが、記事作成者としては、リアリティを与えるためのマクガフィンに、そこまで目くじらを立てる必要もなければ、自身の祖先すら邪悪な存在としてしまえる行動に、真の平等を見る事も可能であると考えるものである。
その作風は大きく分けて2系統に分類できる。 所謂、幻想系と呼ばれる神々や古代文明に関わる情緒的、詩的な小品群と、彼の生み出した、宇宙的恐怖、そしてキリスト教的背徳を背景とした怪奇系の作品群である。 また、幻想系と怪奇系の中核を為す形で、ナイアルラトホテップの登場する『未知なるカダスに夢を求めて』や、『ウルタールの猫』のような夢を主題とした夢の国物語群も、HPLの作品を理解する上で欠かせない。 幻想系に関して言えば、エドガー・アラン・ポォや、ロード・ダンセイニの影響が強く見られる。
この手記を残した事で、私の身にも御大と同じ考えるだけでも恐ろしい事が起きるであろう。 そうなった場合、だれでもいい。 HDD内部に残されたデータを全て処分して欲しい!特にDドライブを念入りにだ!
万が一の場合、この遺言が、必ず、そして完全に実行される事を望む。
掲示板
113 ななしのよっしん
2024/05/24(金) 21:48:38 ID: UtRgU52gfO
「探索ホラーアドベンチャーで部屋の中にある怪しい物をクリックしたら出るテキスト」を全部一つの文章として並べたような構成だからな
ピックマンのモデルとかはもろにそういう構成だし、クトゥルフの呼び声はクトゥルフにまつわるファイルを読んでいく話
順番的には逆で、それが探索ホラーやTRPGに影響を与えたんだろうが
114 ななしのよっしん
2025/01/30(木) 00:42:26 ID: x3kCBUDt4w
>>107
1シリーズじゃなくて全集が文庫本×7で、
10ページくらいのSSも多いから
文字数だけなら今の環境ならたぶん誰でも書ける量なんよね
それがここまで多くのボードゲームの原作になって、
原作にしたTRPGがTRPG界隈を圧巻して
1つのジャンルにもなってるという
言ってみれば小説界のマイクラとか東方とかStardewValleyみたいな感じだと思う
ただ、この辺の作者と違ってクトゥルフ神話はラブクラフト本人が
売り上げを回収できたわけじゃないのが残念だな
115 ななしのよっしん
2025/03/15(土) 15:43:29 ID: /t1hcvTAhI
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最終更新:2025/03/15(土) 21:00
最終更新:2025/03/15(土) 20:00
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