「それよりね、私、嬉しいの!」
>?
(胸の前に手をかざし)
「ドキドキしてるっ、どうしようっ! ずっと気になってたんだよねぇ・・・」
(伏し目がちに)>!
(双眸を潤ませて)
「・・・一条くんのこと」>なるほど
(身をくねらせて)
「明るくて優しいし。さっきだって私のこと庇ってくれてさぁ。か、彼女とかいるのかなぁ?」>・・・さあ
(強引に手を取り)
「ねえお願い、協力してっ! 好きなタイプ訊いてほしいのっ!」>お、俺が? 何で?
(少し拗ねたように)
「しょうがないじゃん! アンタしか頼める人いないんだからっ!」>なるほど
これはアニメ『Persona4 the Animation』#5「Would you love me?」での出来事である。
転校したばかりの主人公・鳴上悠はクラスメイトにして特別捜査隊仲間である里中千枝の伝手で、ロウきゅーぶバスケ部の見学・・・だけつもりが、いつの間にやら済し崩し的に仮入部する羽目になった。
実はこのバスケ部、「パス」と言ったら「ボールをパスする」よりも「練習をパスする」といった具合で、それはもう練習試合どころか存続すら危うい程の見事な幽霊部員っぷりであり(あながちロウきゅーぶも間違ってはいない)、それは女子マネジャー・海老原あいにおいても全く例外ではなかった。
仮入部3日目のパス()練習中。本人が居ないのをいいことに、部員(他部からの寄せ集めばかり)たちは海老原の悪い噂話で盛り上がり束の間の溜飲を下げていた。
しかし「噂をすればエビでゲソ影がさす」、海老原は無表情のまま、部長・一条康の制止(「あ、あの・・・」(°д°;)∩)を無視して歩き去ってしまう。
部員たちが狼狽する中、先程の陰口とも部員間のしがらみとも無縁の鳴上は独り体育館を出て、ついに駐輪場で海老原の姿を捉える。
――この時の会話が、本項目の冒頭のアレである。
鳴上はそもそも表情の変化に乏しい上に眉毛が完全に前髪に隠れているので顔からは内面が読み取りにくく、しかし声には抑制された感情が滲んでいるので、はしゃぎまわる海老原との対比も相まって非常にシュールな場面である。
実はこの前日、鳴上は海老原に誘われて学校を初めてサボり(番長なのに)、デパートでのデートっぽいイベントの後、某スタバでそこそこ意気投合したのだった(ちなみに海老原は私服(白ショルダーのピンク膝下丈ワンピ)だったが、鳴上は補導員の巡回も恐れず学ランのまま・・・さすが我らが番長ッス)。
海老原は退屈そうな部活の時とは違い、実に表情豊かに話しかけてくる。その言葉に耳を傾けながら鳴上が几帳面に折った紙ナプキンの鶴(命名:番長鶴)を見て、海老原はカラカラと明るく笑った後で、
「アンタ、他の男子とちょっと違うね。・・・割と気に入ったかも」
(頬杖ついて、上目遣いで)>!
「また今度、遊んであげる。次はちゃんと放課後に・・・・・・ねっ?」
(ニッコリ)
よし、ちょっと紙ナプキンで鶴折ってくる。
いくら硬派を貫く我らが番長とはいえ、やはり鳴上は年頃の健全な男子高校生である。
まあ、表情には出さないが心は傷付いているであろう海老原を気遣って追い掛けたのは、恐らく鳴上の純然たる善意であっただろう。
だが、前日にこのようなやり取りがあったのならば、まあそこそこの展開にちょっとくらい期待を寄せてしまうのはしかたない。しかも私服姿が(顔立ちの派手さは措くとして)実にフェミニン。普段周りにいる女子といったら「警部が動き出すお年頃」「万年緑ジャージ上」「でんじゃらー・・・お、おあげ(もふもふ)」なのだから、さぞや新鮮だっただろう。
その上「嬉しい」だの「ドキドキしてる」だの「気になってた」だの「コーちゃん好き」だの「イカちゃん大好き」だのと想わせぶりな仕草をつけて言われたら、朴訥かつ経験不足な鳴上ならずとも勘違いしてしまうというものだ。
実際、視聴者諸氏とて初回視聴では前回の予告とアヴァンタイトルにミスリードされて、鳴上と同様の気分を多少なりとも味わったはずである。
まったく・・・鶴なんぞ折ったばっかりに、よもや心まで折れてしまうとは。
その反動として、Bパート直前からのあーんな展開もあり、公式配信のコメントでは「えビッチ(えびはら+ビッチ)」etc... といった悲しいワードがみられるようになってしまったが、どうか海老原を誤解しないでやってほしい。
試しに、無気力なマネジャーの仮面(ペルソナ)の下に隠れた彼女の心の動きを追ってみるとしよう。
例えば某スタバでの発言「他の男子とちょっと違うね」というのは、寄せ集めバスケ部の連中(部長除く)のような「海老原(のような女子)を見るのが唯一のお楽しみ」だとか「真偽の知れない噂話や陰口」で盛り上がってる男子ども(無論、それらはそれらで年頃の健全な男子高校生としてはごく一般的な態度ではあるが)とは、鳴上は一線を画しているということ。
鳴上はデートの最中も普段通りのクールさを貫き(なにしろ談笑中に番長鶴を折るほどのマイペース)、それでいてきちんと海老原の言葉に耳を傾けて実のあるかつ肯定的な答えを返した(無口な分、短い発言でも重みが感じられる)。しかもデートに連れ出す時の嘘(部の備品の買い出し)にも薄々だが勘付いていた。
ならば当然、海老原はこう考えるだろう。すなわち、
「――鳴上くんならきっと、他のバカな男子と違ってエロい目や変な色眼鏡で私を見ないで、私の恋の相談にも真摯に乗ってくれる。そして私の望むような答えを選んで、たぶん頼んだら断らないで協力してくれる。しかも頭の回転もいいみたいだから、きっとうまくやってくれる。・・・・・・ルックスもまあそこそこだし(そこそこ重要)」
この位の打算なら意識・無意識問わず誰もがやる(やってしまう)範囲のものだろう。
しかもこの人物評は例の陰口事件の際にすっかり的中してしまうのである(噂話には乗らない、心配して来てくれる、下手な慰めはしない、頼みを聴いてくれる)。もしも海老原のこうした鋭い人物観察眼が、他者による蔑みの視線に怯えるかつての日々の中で育まれたものだとしたら、人の縁とはまこと異なものである。
ただ、例の陰口事件のせいで気が逸り、予定よりもずっと急に鳴上の協力を仰ぐハメになってしまったこと(「また今度、遊んであげる」という発言からして、もっとじっくり彼と交友を深めてから頼むつもりだったのだろう)、そして鳴上もそこそこ年頃の健全な(ryであったのが根底にあったからこそ、今回の不幸な出来事が生まれてしまったのだ。
何しろ海老原には友達と呼べる人間がいない(バスケ試合中での里中との口論で「・・・愛されてる上に、友達までいてさ・・・っ」と漏らしている)ので、他者との適正な距離の取り方がよく判らない。すっかり他者からの視線が行動の原理になっている海老原にとって、自分と世界との境界(ボーダー)は極めて曖昧なのだ。だから極めて傍若無人に振る舞い、手近にあって「自分の手足に等しい世界」である鳴上を従わせようとしてしまう。
>なるほど
そして鳴上もそれを拒まない。果たしてこれは、どこまでを見越した上での相槌だったのだろうか。少なくとも鳴上は、一連のやり取りで生まれたであろう様々な感情をこの一言で韜晦(つつみかく)してしまったかのように見える。
「愚者」は語る言葉を持たず、ただ観客を愉しませるのみ・・・白く塗られた顔の下に本心を隠して。
(視線を前に落とし、何かに言い聞かせるように)
「――もう、一人でも大丈夫だから。」>!?
「あんた優しいからさ、ちょっと甘えさせてもらったの。フられたショックから立ち直るまで・・・・・・。」
(伏せた瞼をパッと開き、眼だけで鳴上を見る)
「そのまんま、あんたを好きになれるかも? って想ったけど。」
(苦笑い)>・・・・・・
第5話の幕引きは、海老原のこの告白から始まる。この発言の後も彼女をビッチ扱いする悲しいコメントが流れた。その気持ちも解らなくもないが、ちょっと待ってほしい。これは海老原による最大級のお詫びと感謝の言葉なのだ。
鳴上と仮契約仮のお付き合いを始める直前、海老原は自分の暗い過去と、現在に繋がるトラウマとルサンチマンを鳴上に打ち明けている。つまりカードゲームでいえば手札と戦略を一度完全に晒した状態である。となると鳴上はポーカーフェイスがまあまあ得意で、しかもゲスト(海老原)の意を汲み、誰も損をしないゲーム展開を構築しようと陰で努力するディーラー、といったところか。
だから、ここで素直に「甘えちゃってごめん。惑わせちゃってごめん。お互い違う出会い方だったら良かったのにね」などと謝罪の言葉を述べてしまえば、鳴上のディーラーとしてのこれまでの苦労や資質を却って貶めてしまうことになる。第一、そんな素直なのエビちゃんらしくないやい(本音)。ここはあくまで自分も海老原として仮面(ペルソナ)を被り続け、いつも通りの自分で勝負するのが最もベターな選択なのではないだろうか。
大丈夫、言葉にしなくてもちゃんと心は伝わっている。その証拠に鳴上の口から、相手の言葉に対するあらゆる感情を韜晦(つつみかく)してしまう「>なるほど」が出てこないではないか。
ここで少し視点を変えて、例のオサレOP「Sky's the Limit」(※青天井、つまり「限界の無い、望むままに」という成句)の歌詞と絡めて考えてみよう。
それまでの海老原が見せてきた「きっと皆に愛されるだろう美しい少女」というトランスパレンスィ(透明性=素のままの自分、と想い込んでいたもの)は、本当は「ただの欲望や興味の対象でしかなく、本当は誰にも愛されていない」イミテーション(雑誌等を真似ただけの虚飾)の仮面に過ぎなかった。
しかし彼女は鳴上の前に過去をさらけ出し、仮の恋人として共に現在を見つめ直すことで、本当に身にまとうべき仮面――「誰かに愛されたい他律的な少女・海老原」ではなく「本当は誰かを愛していたい自律的な少女・海老原」――を見つけた。里中とのキャットファイト取っ組み合いはそのトリガーで、同時に里中の言葉と互いの暴力の刺激によって、鳴上を含む世界と自分との境界にも気付かされる(そして里中の方も自分の気持ちに・・・?)。
そして一条の前向きな翻意という最後の一押しがあって、ようやく海老原はフライト(飛翔)できるようになった。
「・・・あの、一条くん・・・。」
「?( °д°)」
「私は、バスケ部にいても、いい・・・?」
「ん、当ったり前じゃん! ( ^д^)」
「・・・・・・・。」
この新しい仮面こそが翼、つまり現在から先に繋がる無限の未来へ自力で羽ばたくための力である。海老原が飛ぶ――つまり「エビフライ」!(この際スペリング違い等のツッコミは、鳴上の即ギリ(後述)と同じ勢いで拒否)
・・・・・・ともあれ、まだまだ若い彼らには更なる試練が降りかかる事になるだろう。しかし、それらを乗り越えた時にもたらされるであろう、彼らの本当の成長に心から期待したい。
――運命の子供よ。きみは麗しい。と、オサレED歌詞も無理矢理絡めてみたがどうか(とED冒頭オサレポーズで)。
>不束者ですが・・・
(寄せ集めバスケ部部員たちの前で、部長に仮入部の挨拶を促されて)
>えーっと・・・エビ?
(仮入部の翌日、校舎の階段で遭った海老原に声を掛けられて)
>ム、ムリ・・・
(仮恋人2日目、海老原に謝罪代わりの「愛してる」を迫られて)
>『・・・いや、でも、今かけ直さないと、後でもっと大変なことに・・・っ』
(海老原(登録名:エビ、着メロ:ツィゴイネルワイゼン)からの電話を即ギリした後での心の言葉)
公式配信第5話 第5話まとめ
>なるほどに関するニコニコ市場の商品を紹介してください。
>なるほどに関するニコニコミュニティを紹介してください。
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最終更新:2025/12/21(日) 02:00
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