アメリカ合衆国下院とは、アメリカ合衆国の議会である。
アメリカ合衆国上院とともにアメリカの立法府として機能している。
正式名称はHouse of Representatives(国民の代表者たちがいる館、という意味)。
略称はthe House。
定数は435人で、過半数は218人となる。
定数435人体制は1912年に確定してから1956年まで継続した。
1958年と1960年は定数437人になったが、1962年から再び定数435人に戻り、2018年まで続いている。
アメリカ合衆国の人口は3億2500万人。それに対して下院が435人であり、これはとても少ない。
| 人口 | 下院定数 | 人口÷下院定数(下院議員1人の受け持ち人数) | |
| アメリカ合衆国 | 3億2500万人 | 435 | 74万人 |
| 日本 | 1億2600万人 | 465 | 27万人 |
| ドイツ | 8200万人 | 709 | 11万人 |
| フランス | 6700万人 | 577 | 11万人 |
| イギリス | 6600万人 | 650 | 10万人 |
| イタリア | 6000万人 | 630 | 9万人 |
アメリカ合衆国下院は国民の代表として位置づけられていて、10年に1度行われる人口調査を元に
選挙区の区割りが見直される。
このため、1票の格差が少ない。1票の格差が最大でも2.0を下回るように調整されている。
最も1票に重みがあるのが北東部のロードアイランド州で、下院議員1人につき52万人。
最も1票が軽いのが西部のモンタナ州で、下院議員1人につき99万人。
1票の格差は1.9倍程度に収まっている。
ちなみにアメリカ合衆国上院は州の代表として位置づけられており、各州から2名ずつを選出する。
人口の多い州も人口の少ない州も同じく2名ずつを選出するので、1票の格差が強烈である。
最も1票に重みがあるアラスカ州と、最も1票が軽いカリフォルニア州を比べると格差は66.0倍になる。
任期は2年であり、かなり短い。
主要国の議会の中で解散が行われないものの任期を比較すると、以下のようになる。
| 任期 | |
| アメリカ合衆国下院 | 2年 |
| ドイツ連邦議会 | 4年 |
| フランス下院 | 5年 |
| イギリス庶民院 | 5年 |
| フランス上院 | 6年 |
| アメリカ合衆国上院 | 6年 |
| 日本の参議院 | 6年 |
| イギリス貴族院 | 終身制 |
実際には、2年の任期のなかの1年は選挙準備に追われるらしく、腰を据えて法律作成の仕事ができるのは
わずか1年に限られるという。
代議士なら誰しも「こんなに凄い法律を作成し、国家に多大なる貢献をしました!」と自慢したい。
また、そういう宣伝ができれば選挙でも大いに有利となる。
それゆえ、法律作成の時間を削って何かをすることにはやや消極的になりがちである。
大統領の不正追及などといった、本業とはかけ離れた仕事をする気運はしぼみやすい傾向がある。
アメリカ合衆国下院には、日本の衆議院で頻繁に見られる解散がない。
解散というものを日本の衆議院議員たちは恐れている。日本の衆議院議員は解散権を持つ内閣総理大臣に
頭が上がらないのが実情である。
解散というのは、「議員全員を失職させて、選挙をして、有権者の反応を見ましょう」というものである。
もう少し砕けた言い方をすると「選挙をするぞ!」の大号令となる。
選挙というのはとんでもなく金がかかり、国会議員を借金地獄へ突き落とす恐ろしい儀式である。
田中角栄は「選挙のため3回破産した」と言われるが、本気で選挙に取り組むと大抵そんな具合になる。
財布がスッカラカンになり、借金が膨れあがるのである。
そういう選挙をいきなり実施されるというのは悪夢としか言いようがない。
せめて選挙の期日が決まっていればそれに向けて準備できるのだが、解散されて「1ヶ月後に選挙ね」
と言われると、どの衆議院議員も顔が青くなる。
一般的な社会人の皆さんに通じるような例え方をすると、衆院議員にとっての解散というものは、
「給料日1週間前に友人の結婚式が遠隔地でいきなり開催される」といったところであろう。
財布から万札が羽を生やして飛んでいくイベントをいきなり実施されても困るのだ。
こういう解散というものが、アメリカ合衆国下院には発生しない。
そのためアメリカの下院議員たちは(日本の衆議院議員に比べて)落ち着いた気持ちでいられる。
西暦偶数年の11月第1月曜日の属する週の火曜日に行われる。11月2日~8日のうちのどれかになる。
これを米国では選挙の日(Election Day)と呼ぶ。
西暦が4の倍数の年の下院選挙は、アメリカ合衆国大統領選挙と同時に行われる。
西暦が4の倍数でない年の下院選挙は、アメリカ合衆国中間選挙と呼ばれる。
2年ごとに行われる下院選挙では、定数435人の全員が改選される。
アメリカ合衆国下院の多数を占める政党のトップが、その政党に所属したまま下院議長になる。
ちなみに日本の衆議院議長や参議院議長は、多数派の政党から送り込まれるが、就任時に党籍を離脱する。
下院議長を退任した後も政界での出世の可能性は残されている。
1995年から1999年まで下院議長を務めたニュート・ギングリッチは議長退任後も政界で存在感があり、
大統領選挙出馬を目論んだり、トランプ政権国務長官就任の噂が広がったりしていた。
2015年から2018年まで下院議長を務めたポール・ライアンは2018年に政界引退したが、
「将来は大統領選挙出馬するのでは」という噂がさっそく流れている。1970年生まれでまだ若いので、
今後に注目すべき人物と言える。
ちなみに日本の衆議院議長や参議院議長は、退任後の政界出世の可能性がない。
いわゆる「上がりのポスト」であり、退任後に政界で出世しようとすると周囲に猛反対される。
そのかわり、名誉職としての格の高さは絶大で、三権の長として国家的行事にひっぱりだこになる。
アメリカ合衆国大統領が辞職したり罷免されたり死亡したり執務不能の状態になったりしたときに、
大統領の地位を巡って政争が起きないよう、大統領継承順位を事前に定めてある。
その継承順位の一番手は副大統領(上院議長を兼務)、二番手には下院議長が名を連ねている。
しかしながら、下院議長が大統領の地位を継承することはまず発生しない。
大統領と副大統領の両者が距離を隔てて別々に行動するように工夫を凝らして日程を組んでいる。
大統領と副大統領が同時に執務不能にならないようにするため、細心の注意を払っている。
下院院内総務は、下院の中で政党の動きをとりまとめる立場の人であり、2人存在する。
下院で多数派を占める政党のトップは先述のように下院議長に就任する。議長職の仕事に追われるので、
政党の動きをまとめる人を院内総務に任命する。
多数派政党の院内総務は、その政党のナンバー・ツーということになる。
下院で少数派を占める政党のトップは、そのまま院内総務に就任し、政党の動きをまとめる。
少数派政党の院内総務は、その政党のナンバー・ワンである。
院内総務と漢字四文字で重々しく翻訳しているが、英語ではLeaderと簡易な言葉で表現されている。
政党の動きをまとめ、反対する政党の議員たちに切り崩し工作を仕掛けるなど大活躍をする。
このため院内総務の名前がマスメディアに出てくることが多い。
アメリカ合衆国上院と立法権を半分に分けあっており、法案や予算案の成立には下院の可決が欠かせない。
日本は衆議院の優越が憲法で定められていて、衆院で可決した法案が参院で否決されても、
衆院の3分の2の賛成で再可決すれば法案が成立する。
また、予算案が衆院で可決して参院で否決されたら、衆院の予算案がそのまま成立する。
アメリカにおいてはそういったことができない。法案も予算案も、上下院両方で可決しないといけない。
法案・予算案について、上院が優越しているわけでもなく下院が優越しているわけでもない。
両院は全くの対等とされている。
予算に関して、下院が先に審議を始める先議権を持っている。
このため、予算に関して、下院議員が言いたい放題の主張をしやすい、という利点がある。
国際的に見てアメリカ合衆国下院は国民に対する人数が少ないのだが、
それでもアメリカ合衆国上院に比べたらはるかに人数が多く、国民に対して細やかな政治活動ができる。
「ウチの選挙区の道路を作ってくれ」といった利益誘導は下院議員の得意分野となっている。
アメリカ合衆国上院には、大統領の提示する人事案について助言と承認を行う権限がある。
この権限は非常に重大で、特にアメリカ合衆国連邦最高裁判所の判事を指名することで、
アメリカ合衆国の政治的風潮を数十年決定づけることもある。
ところが、下院にはそういう権限が一切無い。
下院は法案と予算案を一所懸命に審議するだけであり、上院のような人事権が全くない。
上院に対して下院が地味な印象があるのはこのためである。
下院議員は上院議員や州知事に対して政治家としての格がちょっとだけ落ちる、というのが定説であろう。
大統領選挙に出馬するのは、たいてい、上院議員か州知事である。
下院議員が大統領選挙に出てくることはほとんど見られない。
下院議員の身で大統領選挙に出馬して当選したのは、ジェームズ・ガーフィールドただ1人しかいない。
ガーフィールドは1881年に就任した人物なので、それから130年以上の時が経っている。
下院議員は地元への利益誘導に励むだけで、広い視野を持って軍事・外交を考える経験が足りず、
大統領に就任する資格が足らない・・・という風潮がアメリカ社会にあるのだろう。
なんといっても下院の任期はたったの2年で、選挙準備も考えると実質的活動期間はさらに短い。
忙しくてしょうがなく、暇も余裕も無い、というのが実情である。
このため、アメリカの政界で出世していくには、下院議員からさらに転身する必要がある。
下院議員から上院議員に転身していった例は、ジョン・F・ケネディやリチャード・ニクソンが挙がる。
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最終更新:2025/12/08(月) 20:00
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