クリヴァク級フリゲートとは、ソビエト海軍で開発されたフリゲートである。
ソ連海軍での区分は警備艦。
クリヴァク級はNATOコードネームで、正式名称は1135号計画「ブレヴェースニク(ミズナギドリ)」。
元々は大型対潜艦と分類されており、規模や任務的には米海軍のノックス級フリゲートや海上自衛隊のやまぐも型護衛艦に相当する。
しかしこちらの主兵装はRPK-4メテル対潜ミサイル。
日米艦が装備するアスロックの5倍の射程を持ち、小型の対潜フリゲートとしては破格の武装と言える。
後の近代化改修では対艦攻撃能力を付加され射程も延伸されたRPK-5ラストルーブに換装された。
クリヴァク級は優れた設計から派生型も多く存在する。
砲戦能力を強化し、ヘリ発着艦スペースを付加したクリヴァクⅡ級。対潜ミサイルを廃し、ヘリ運用能力に特化した国境警備向けのクリヴァクⅢ級。
バランスの取れた武装に上部構造物をステルスデザインで一新したインド海軍輸出向けのタルワー級(改クリヴァクⅢ級)。そしてタルワー級をベースにフルスペックの装備を搭載した最新鋭艦のアドミラル・グリゴロヴィチ級がある。
冷戦期にはソ連海軍のワークホースとして大量建造され、対潜哨戒やパトロール・警備任務に東奔西走した。
特にクリミア半島沖で起こった米ソ艦艇衝突事件の「ベズザヴェートヌイ」の活躍が名高い。
1988年、ソ連軍の重要施設が立ち並ぶ黒海沿岸に米海軍第6艦隊所属のタイコンデロガ級巡洋艦「ヨークタウン」とスプルーアンス級駆逐艦「カロン」が侵入。シギント活動(電波偵察)を実施した。
これに対しソ連海軍黒海艦隊は国境警備艦「イズマイール」と捜索救難艦「ヤマール」に監視を、そしてクリヴァクⅠ級フリゲート「ベズザヴェートヌイ」とミルカ級コルベット「SKR-6」にスクランブル出撃を命じた。
「ベズザヴェートヌイ」は警告と進路変更要請を打診するも「ヨークタウン」は無視。
無線で再度警告するも「ヨークタウン」は無害通航権を傘に着て再び無視。
この進路では米艦艇が領海侵犯までするつもりなのは明らかであった。
「こっちは小型の対潜艦2隻。向こうは大型駆逐艦にご自慢のイージス巡洋艦。畜生、嘗めてやがる」
黒海艦隊司令フロノプーロ大将は歯軋りをした。遥かに格上の相手に武力行使する訳にもいかない。だがこのまま黙って見ているのは論外だ。
熟考の末、フロノプーロ司令は「ベズザヴェートヌイ」を通じて米艦艇へ通告した。
「貴君がこのまま進入し、我が国の領海を侵犯した場合、体当たりを持って領海外へと排除する」
本来体当たりの任を受けるはずだったのは「ヤマール」であった。
しかし元々が木材運搬船で頑丈でこそあるものの速力が15ノットと遅く、快速の米艦艇には到底追いつけない。さりとて「イズマイール」では体当たりを行うには小型すぎる。
そうして消去法で選ばれたのは「ベズザヴェートヌイ」と「SKR-6」。しかしそれでもクリヴァク級の排水量は3000トンクラスで、米艦艇はその3倍近い。「SKR-6」に至っては10倍近い相手になる。
前例の無い、無謀に等しい任務であった。
「我々の先達はクラウツの侵攻にも決して屈しなかった。カフカス魂を見せてやれ」
「ヨークタウン」は平和的航行であると主張してついにソ連領海に侵入。「カロン」もそれに続いた。警告は再三無視された。
悠々と航行する米艦艇だったが、ふと振り返ると青ざめた。既にギリギリの間隔で併走していたソ連艦艇が増速を掛けてきたのだ。
「まずい! 連中、本気だ!」
先ほどまでの余裕は何処へやら、慌てて警告を発するも今度は自分たちが無視される形となった。
「ベズザヴェートヌイ」は「ヨークタウン」へ、「SKR-6」は「カロン」のそれぞれ左舷50mという超至近距離にまで接近した。
そして最終警告がなされるも米艦艇は拒否。その瞬間、両警備艦は最大戦速で突っ込んだ。
「ヨークタウン」は艦尾左舷に衝突され、装填状態のハープーン対艦ミサイルランチャーを破壊された。
「カロン」も艦尾左舷に衝突され、こちらは搭載艇を失った。
体当たりを敢行した両警備艦にはさしたる損害も無く、再び退去勧告を発し始めた。
「即刻領海外へと退去せよ。さもなくばもう一度“クレイジー・イワン”をご披露する」
返答こそ無かったものの、米艦艇両隻は進路を転進。ソ連領海から完全に退却した。
「ベズザヴェートヌイ」。その名は「献身的な」を意味する―
()内はNATOコードネーム
・クリヴァクⅠ級
AK-726 76mm連装砲 2基 (クリヴァクⅡ級ではAK-100 100mm単装砲)
9M33オサーM(SA-N-4ゲッコー)個艦防空ミサイル2連装ランチャー 2基
RPK-4メテル(SS-N-14サイレックス)対潜ミサイル4連装ランチャー 1基
RBU-6000スメルチ2 12連装対潜ロケット爆雷砲 2基
533mm長魚雷4連装発射管 2基
・クリヴァクⅢ級
AK-100 100mm単装砲 1基
AK-630 30mmCIWS 2基
9M33オサーM(SA-N-4ゲッコー)個艦防空ミサイル2連装ランチャー 1基
RBU-6000スメルチ2 12連装対潜ロケット爆雷砲 2基
533mm長魚雷4連装発射管 2基
艦載機
Ka-27PS(ヘリックスD)調査・救出ヘリコプター 1機
・タルワー級(改クリヴァクⅢ級)
A-190E 100mm単装砲 1基
カシュタン(CADS-N-1)複合型CIWS 2基(前期建造艦のみ)
AK-630 30mmCIWS 2基(後期建造艦のみ)
9M38M2シチューリ-1(SA-N-12グリズリー)艦隊防空ミサイル単装ランチャー 1基
3M54E1カリブル(SS-N-27シズラー)対艦ミサイル8連装VLS 1基(前期建造艦のみ)
PJ-10ブラモス対艦ミサイル8連装VLS 1基(後期建造艦のみ)
RBU-6000スメルチ2 12連装ロケット爆雷砲 1基
533mm長魚雷2連装発射管 2基艦載機
Ka-28(ヘリックス)/HAL ドゥルーブ対潜・哨戒ヘリコプター 1機
記事内でも触れた衝突事件。
クリヴァク級フリゲートに関するニコニコミュニティを紹介してください。
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最終更新:2025/12/23(火) 20:00
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