コロネーション 単語

コロネーション

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1、Coronation〔英〕:戴冠(式)、即位(式)

2、コロネーション(Coronation V)とは、全世界のシスコン・ブラコンの希望の星20世紀中ごろのフランスの競走馬である。英名のVは同名の馬が過去に4頭いて5頭目ということを示している。

ここでは2について解説する。

ヤバイ。血量ヤバイ。まじでやばいよ、マジヤバイ。

まずこの馬のヤバさを語るには競走馬の配合理論から言及する必要がある。

競馬史を語る上で絶対にはずすことのできない人物に、マルセル・ブサックという人物がいる。
このブサックという人はサラブレッドの配合理論を確立させたとっても凄い人なのであるが、その過程で“おかしなこ”ともいろいろやっているのだ。コロネーションはその“おかしなこと”の極致ともいえる存在だ。

“インブリード”という言葉がある。これは共通の祖先を持つ馬同士を掛け合わせることによって、その祖先の馬の特長を持った馬を産み出すことを狙った試みで、俗に言う近親交配である。考え方としては、「○○(祖先)の血を掛け合わせたら、○○と同じぐらい強い馬が生まれるんじゃね?」という発想である。
なお、個別のインブリードについては○○(共通の祖先)のクロスと呼ばれている。
一例として、クロスの宝庫と呼ばれるエルコンドルパサーの血統を挙げてみよう。赤字になっている名前がクロスしている祖先である、












エルコンドルパサー






Kingmambo

Mr.prospector
Raise a Native Native Dancer
Raise you

Gold digger
Nashua
Sequence


Miesque

Nureyev
Northern Dancer
Special

Pasadoble
Prove Out
Santa Quilla






サドラーズギャル


Sadller's wells

Northern Dancer
Nearctic
natalma

Fairy Bridge
Bold reason
Special


Glenveagh

Seattle Slew
Bold reasoning
My charmer

Lisadell
Foril
Thong

まず上の図を見ると、エルコンドルパサーから3代前と4代前にノーザンダンサーのクロスが発生している。これをノーザンダンサーの3×4のクロスという。
次に、ネイティヴダンサーは実は図に載っていない5代前にも名前が出てくるので、ネイティヴダンサーの4×5も発生している。
さらに、スペシャルとリサデルは全姉妹(両親が同じ姉妹)にあたるため、スペシャル,リサデルの3×3×4のクロスもある。
血量の計算式はここでは省略するが、エルコンドルパサーの血統のうち25.00%がスペシャルとリサデルの姉妹由来、18.75%がノーザンダンサー由来、9.38%がネイティヴダンサー由来と言うことになる。

近親交配にはデメリット面も多く、遺伝子の多様性が損なわれるため、死産や虚弱体質、気性難が生じやすいとされている。人間の近親交配は人類そのものの遺伝子プール自体が多様なためあまり害は生じにくいらしいが、たった3頭の始祖から発展したサラブレッドでは洒落にならないのである。
エルコンドルパサー自体もウイポやダビスタのような競馬ゲームで牧場長が「危険な配合」と言ってくるような大分ヤバい血統なのだが、コロネーションはそれを越えている。



Coronation V

Djebel
Tourbillion
Loika

Esmeralda
Tourbillion
Sanaa

Tourbillion2×2(血量50%)

なんと両親の父親がどちらもトウルビヨンなのである。これは人間に例えたら腹違いの兄妹が愛し合った結果生まれた子供がコロネーションということになってしまう。サラブレッドは父親が同じでもきょうだいとは言わないとか言わないのそこ。
単一クロスで血量が50%も行ってしまうこんなクレイジーな配合はまともな生産者なら誰もやらない。この記事を読んでいる諸兄も牧場長に止められたはずだ。
トウルビヨンもブサック氏の生産馬で現役時代は仏ダービーを制覇、種牡馬になってからは多数の名馬を産み出しリーディングサイヤーになったほどの馬である。ブサック氏としてはトウルビヨン再びという願いがあったのかもしれない。

出生~競走馬時代

こうしたマジキチな血統背景を持ったコロネーションだが、無事に誕生し虚弱なところも特に見られなかった。
だが、異常に気性が激しく、デビュー自体が危ぶまれるほどだったが、調教師が満身創痍になりながらもなんとかデビューまでこぎつけた。禁断の愛の末に生まれた子供はツンギレ少女でした。

2歳のデビュー戦ではツンギレっぷりを発揮あちこちよそ見をする落ち着きのないレースぶりながらなんとか勝利、 次走はイギリスに遠征してそこでも勝利、3戦目ではなんとレコードタイムを2.4秒も縮める圧倒的な走りで快勝。
その後フランスとイギリスのそれぞれ2歳王者決定戦であるモルニ賞、チェヴァリーパークステークスに出走したのだが落ち着きのなさが出てしまいどちらも敗北、結局この年は5戦3勝の成績で終える。

翌3歳はプール・デッセ・プーリッシュ(仏1000ギニー、日本の桜花賞に相当)から始動。やはりツンギレが発動したのだが、持ち前のスピードでなんとか1着同着に。その後は英オークスと愛オークスに挑むもお約束のツンギレでどちらも2着に。
次走は凱旋門賞と決まったのだが、実はこの頃の凱旋門賞は今ほど権威の高いレースではなかったのだ。
しかしオーナーブリーダーである以前に大実業家であったブサック氏が、コロネーションの出走するレースを世界一のレースにしたいと言うことで各方面に働きかけ、結果当時としては世界最高賞金の2500万フランを誇る賞とすることに成功したのだ。なんという親馬鹿っぷりか。
いよいよレース本番を迎えたコロネーションであるが、いつものツンギレっぷりがなりを潜めなぜか珍しく落ち付いており、直線で4馬身半突き離して圧勝してしまう。コロネーションがまともに走ったのはこの凱旋門賞だけと言われている。
マッチポンプに成功したブサック氏も大喜びだったそうな。

翌年4歳時は特に語ることはない。重賞を制覇してクイーンエリザベスステークスで2着になったぐらい。そして周囲の(特にブサック氏の)大きな期待背に現役引退、繁殖牝馬としての生活がスタートする、はずだった。

暗転の繁殖時代

引退して自身のような名馬を産み出す事を期待されたコロネーションであるが、ある問題点が見つかってしまった。
とにかく子供が生まれないのだ。種付けしてもいつも不受胎、受胎しても子供は死産。そう、極端なインブリードがコロネーションにもたらした害は気性難だけではなかったのだ。コロネーションは生殖能力に先天的な問題があったのだ。
10年以上不受胎や死産が続き、まともに生まれた子供は一頭もいなかった……
この結果に失望したブサック氏はついにコロネーションを牧場から追い出してしまう。その後のコロネーションの行方は誰も知らない。

この馬が我々に教えてくれることは、極端な近親交配の成功例と失敗例だけではない。
人間の勝手で交配され、産み出され、消費され、捨てられていくサラブレッドの負の側面を我々に教えてくれたのではないだろうか?
そして付け加えるならば、きょうだい同士で愛し合ってもそう簡単には幸せになれないよという残酷な現実である。 

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関連項目

  • 沢越止
  • ドバイミレニアム(馬主のマッチポンプ的な意味で)
  • 競馬
  • 競走馬の一覧 

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