コーンスネーク 単語


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コーンスネーク

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コーンスネークとは、アメリカ合衆国の温帯域を原産地とするヘビである。

和名 コーンスネーク、アカダイショウ
学名 Elaphe guttata (Linnaeus, 1766)
英名 Corn snake
有鱗目 Squamata
亜目 ヘビ亜目 Serpentes
ナミヘビ科 Colubridae
ナメラ属 Elaphe
コーンスネーク E. guttata
原産地 アメリカ合衆国南部、東部、中部、
体長 183㎝


概要

赤、黒、黄色からなるド派手な模様が特徴。腹は白を基本として、黒いチェッカー模様がピアノの鍵盤のように並ぶ。

コーンスネークの名前の由来は、この腹の模様がインディアンコーンというトウモロコシの粒のように見えるからとも、トウモロコシ畑にはそれを食害するネズミが多い→ネズミを狙ってコーンスネークが居着く→人間から見ればこのヘビはトウモロコシ畑でよく見つかるので、コーンでも食ってんじゃねえかと思われる→それでコーンスネークと呼ばれるようになったのだ、とも言われている。

おそらく最もペットに向いているヘビである。

コーンスネークが魅力的な10の理由

  1. 無臭である。ヘビ自体は臭わないし、餌は丸呑みで散らかしたりしないので、排泄物さえちゃんと掃除してあげれば清潔に飼育できる。
  2. 巨大化しない。最大で全長183㎝といわれているが、たいていはフルアダルトでも150㎝程度である。そしてヘビの150㎝は、とぐろを巻くと両掌におさまるくらいの大きさしかない。大きすぎず、小さすぎない、ちょうどよいサイズ感である。
    ↓フルアダルトでこれくらい。
  3. コーンスネークは頻繁な世話を必要としない。餌は数日~週に一回、つまり糞をするのも数日~週に一回なので、日々の世話といえば飲み水の交換くらいである。ある程度育った個体は絶食にも強い。外泊を許してくれるペットなのである。
  4. ハンドリングも可能である。ハンドリングとは、爬虫類を手で持って触れ合うこと。コーンスネークはおとなしい個体が多い。飼い主側が扱い方さえ覚えてしまえば腕に巻きつけたり首に巻いたりできる。見るだけでなく、触れ合えるペットでもあるのだ。
    かといって、インコのように始終構ってやらないとストレスで体調を崩すということもない。むしろメンテナンスや餌やり以外では基本放っておいたほうがいいくらいである。
  5. 鳴かない。
  6. 餌は冷凍マウスさえ与えていればいいので、食事のバリエーションに頭を悩ませることもない。
  7. 寿命は15年程度。長すぎず短すぎずでちょうどいい。
  8. 品種改良が進んでおり、カラーバリエーションも豊富。おなじ品種でも表現に個体差があるので、お気に入りの1頭を探す楽しみもある。
  9. 流通する個体はほとんどがCB(キャプティブ・ブリード。養殖されたもの)個体であり、WC(ワイルド・コート。野生で採集されたもの)個体はあまり出回らない。つまりコーンスネークをいくら飼育しようが、わざわざWC個体を選ばないかぎりは自然からの搾取ではないため、原産地の生態系にダメージは与えない。エコなペットである。
  10. 顔がかわいい。
    見よこのつぶらな瞳を。

ヘビ飼育の基本さえ押さえれば、夜店で掬ってきた金魚にひと夏越させるより遥かに簡単に飼える、まさにヘビの入門種といえる。

念のためだが、無毒である。

品種(モルフ)

爬虫類界隈では品種をモルフという。コーンスネークはモルフが豊富で、好みの子を選ぶ楽しみがある。

コーンスネークのモルフは基本的に色彩変異模様変異からなる。まずは色彩から見ていこう。

色彩

基本はノーマル、アメラニスティック、ハイポメラニスティック、アネリスリスティックの4種類。それらを掛け合わせて作られたスノーとゴーストの2種類も紹介。

ノーマル

基本となる原種のカラー。ワイルドタイプとかクラシックタイプなどとも。赤みが強いものはレッドコーンと名付けられていることもある。

野生で暮らしているコーンスネークがこの色で、黄色の3つの色素を併せ持っている。基本すぎてショップではむしろあまり見かけないかもしれない。

原種カラーといってもWCとは限らない。他のモルフを狙って交配させたらノーマルが生まれてきたという場合もある。そういう個体は見た目はノーマルでもさまざまなモルフの血が入っている。だから親のわからないノーマル同士をかけあわせたらアルビノが生まれた、ということもありうる。

たまに本当にWC個体が入荷することもある。WCでもコーンは基本的におとなしい。

アメラニスティック

通称アメラニ。いわゆるアルビノ。黒色色素が先天的に欠乏しているモルフ。ヘビのアルビノというと白蛇を思い浮かべるかもしれないが、コーンのアルビノは赤、黒、黄色のうち、黒が抜けたものを指すので、赤と黄色は残る。よってかなり派手な色彩になる。アルビノレッドコーンとも。

最もポピュラーなコーンのひとつ。

ハイポメラニスティック

通称ハイポ。ノーマルから黒色色素が減少したもの。アメラニは欠乏だがハイポは減少である。ノーマルの黒色色素が100%としたら、アメラニは0%。だがハイポは減少なので、ノーマルの75%だったり50%だったりと個体によってまちまちであり、減少の度合いによって印象がまるで変ってくる。

親として使うと、理論的には相手方の黒色色素を減少させた子が生まれる。繰り返すが欠乏させるのではなく減少させるので、どんな子が生まれてくるか想像もできない。新しいモルフが出るとマニアたちは真っ先にハイポと掛け合わせる。新品種を作出するうえで非常に重要なモルフ。

もちろんハイポ自身も、色合いが明るくすっきりとしていてとても美しい。見てよし、交配させてよしの人気者。

アネリスリスティック

通称アネリ。赤色色素が欠乏したもの。赤が抜けているのでモノトーンのようになる。黄色色素を持っているものは喉あたりが黄色くなる。3番目のツイートの個体がそれ。

黄色までも抜けたものはチャコールと呼ばれる。上2つはチャコールであろう。

スノー

アメラニとアネリを交配させるとスノーが生まれる。アメラニで黒を抜き、アネリで赤を抜いたわけである。いわゆる白蛇である。

黄色は残ることが多い。

また、完全な白ではなく、ある程度は模様も残る。

ゴースト

アネリとハイポを掛け合わせて作る。アネリのようなモノトーンだが、ハイポが赤い色素を微妙に残すので、ピンクだったり紫っぽくなったりする。親のハイポがどれくらい黒色色素を減少していたかによってゴーストの表現も変わってくるので、ひとくちにゴーストといっても個体差が大きい。少なくともアメラニのように安定した表現のモルフではない。

模様

模様の変異は基本的に3種類。ここでは混乱をさけるため、色彩はアネリで統一している。

ノーマル

黒い模様の部分をブロッチといい、ブロッチとブロッチの間をスポットという。

ストライプ

ブロッチが細い2本の線に変化したモルフ。全体的にシュッとした印象になる。胃腸が弱い。

モトレー

ブロッチとブロッチがつながって、スポットが本当に丸いスポットになるモルフ。モトリーともいう。

応用

コーンスネークのモルフは、基本的には、色彩変異×模様変異の組み合わせである。

↓スノー×ストライプのスノーストライプ

↓アメラニ×モトレーのアルビノモトレー

↓基本の色彩4種の枠に当てはまらない、新たな色彩変異であるキャラメル(全体的に黄色い)のアルビノであるバター×ストライプのバターストライプ

世界的に絶大な人気を誇るヘビだけあって、ブリードも盛んに行なわれており、いまこの瞬間も新たなモルフが産声を上げている。あなたが新品種を作出することも夢ではない。

こんなのもいるよ

ブラッドレッド

全身が血の滲むような赤に染まるモルフ。幼体は小さく、立派に育て上げるのは至難。

ブリザード

スノーを超えた純白。胃腸が弱い。

バブルガムスノー

スノーのうち、ブロッチが緑で地色が白、ブロッチの間のスポットがピンクのものをバブルガムという。

ここまで美しいバブルガムはそうそういない。

ラベンダー

全体が淡い紫に染まるモルフ。日本人好みの落ち着いた色合い。オスはピンクがかった美しい色彩になることが多い。ラベンダーにかぎらずコーンはオスのほうが派手になる傾向にある。

ゴーストに似ているが、黒があまり入らず、黄色色素を持っていない。

ハイポラベンダー

ラベンダーとハイポをかけあわせたもの。ラベンダーを一気にスーパースターにした火付け役である。「ハイポを導入すると暗色部が明るくなってさわやかな感じになる」という感覚を、ラベンダーとの比較でなんとなくでも理解してもらえればさいわいである。

飼い方

必要なものは、①ケージ、②床材、③保温器具、④水入れ、⑤温度計が基本である。

ケージ

熱帯魚用の水槽でも、爬虫類専用のケージでも、昆虫用のプラケースでもいい。衣装ケースやシューズボックスでキープしている飼い主もいる。なんであれ重要なのは、蓋ができること。これにつきる。

ヘビは見た目通り脱走の名人なので、とにかくきっちり蓋ができるものを選ぶ。そこを考えると水槽よりはプラケに軍配があがるか。

爬虫類用のケージはさすがに考えられていて、しっかり隙間なく閉まる金網の蓋があり、しかも保温器具などのコードをケージ外に出すための穴もある。前面のガラスが前開きになるのでメンテナンスもしやすい。大型の個体だと自力で前面ガラスを開けることもあるが、鍵付きのケージもある。

ケージの大きさは、飼おうとするコーンのとぐろ3つぶんくらいの活動スペースが確保できれば問題ない。あまり最初から大きなケージで飼うと、保温がうまくいかなかったり、ヘビが怯えたりする可能性がある。

初めてのコーンだとあまり小さな個体はおすすめできないから、ある程度の大きさに育ったものが望ましい。となると、幅60㎝クラスのケージがちょうどいいと思われる。

床材

床材を敷く意義とは、不要な湿気や水分を吸収してもらうことにある。これができてヘビに害のないものならなんでもよい。でも新聞紙だとインクでヘビが汚れるかも。

よく使われるのは犬猫用のペットシーツ。ヘビが糞尿を出したらまるごと交換すればいいのでメンテも楽。衛生的なのでダニも湧きにくい。シーツが白いためダニが湧いたらすぐにわかりやすい(ヘビに湧くダニはたいてい黒い)。ただしシーツの下にヘビが潜ることがよくある。シーツの下で糞尿をされると掃除がやっかいである。その場合はシーツを養生テープで貼りつけてヘビが潜る隙間を塞ぐ。

ハムスター用の広葉樹マットも使い勝手がいい。おがくずみたいなもので、汚れたらその部分だけを回収して、新しく補充すればいいだけなので楽。ただし長いこと使っていると全体的に臭ってくるので、糞尿が付着していなくても定期的に全交換したほうがよい。汚れた広葉樹マットはダニの温床である。
針葉樹のマットはヘビがアレルギーを起こすおそれがある。広葉樹とかアスペンと書かれてあるものを選ぼう。

砂は爬虫類用であっても避けたほうがよい。餌を食べるときに歯茎に付着してそこから炎症を起こしたりする。猫のトイレ用の砂もNGである。

保温器具

ヘビは変温動物なので、とくに餌を消化するときには、外部から熱を補給する必要がある。コーンスネークは温度と水さえ適切なら簡単には死なない。ショップの店員やベテラン飼育者に「うちのコーンの調子が悪いんですけど、どうしたらいいですかね?」と訊くと、十中八九「温度は?」と訊き返してくる。温度はそれくらい大切な要素である。

さて、どんな保温器具を使えばいいのか、何Wのものを選べばいいのか? これはケージを置く環境に大きく左右されるので一概には言えない。まずケージを置く予定の場所の1日の温度変化を確かめよう。あなたが日中に部屋を空けるなら、朝から夜まではエアコンは切ってあるだろう。夜になって帰宅すれば、夏なら冷房を、冬なら暖房をつけるだろう。すると室温は1日のあいだに大きく変動する。低い室温に合わせて保温器具をチョイスしなければならないが、そうすると室温が高くなるタイミングでケージが暑くなりすぎる可能性がある。ケージは温度変化の少ない場所に置きたい。たとえば窓辺は論外。気温の変化の影響を受けすぎる。

勘違いされやすいが、ケージ内は全体を均等に暖かくする必要はない

ヘビは熱が欲しいときには暖かい場所に移動して体温を上げ、反対に代謝を落として省エネモードに移りたいときは涼しい場所へ移る。これを繰り返してその時々に適した体温を選択している。たしかに寒いのは苦手だが、ケージ内のどこに行っても暖かいようでは、細胞が休むことができず、かえって衰弱してしまうのである。

だからケージ内の一か所に高温の部分を作り、そこから離れるほど涼しくなる環境を作ればよい。この高温の部分(ホットスポット)は上限35℃くらい、いちばん涼しい場所(クールスポット)は下限25℃くらいになるようにする。そうしてヘビ自身に居心地のよい温度帯の場所を選ばせるのだ。

つまり、ホットスポットを再現できるよう保温器具をセットし、クールスポットを作れて、なおかつ1日の気温変化が少ない場所にケージを置く、ということになる。

その保温器具だが、普通はパネルヒーターを使う。これをケージの下に敷いてホットスポットとするのだ。もちろんケージ全体ではなくホットスポットの部分だけに敷く。もしこれでケージ内の気温が上がりきらないようなら、暖突(だんとつ)などを追加する。

保温球はヘビが巻きついて火傷するおそれがあるので、ケージの外から照射する。

水入れ

意外かもしれないがヘビはけっこう水を飲む。がぶがぶ飲む。餌がなくともそうそう死なないが水は大切である。

また暑すぎるときや脱皮前はよく水に入る。水入れは湿度維持にも役立つ。よって水入れは常設する。水入れは市販のタッパーで十分だし、水はただの水道水で構わない。カルキが気になるなら浄水器を通してもいい。

水はできれば毎日替えてあげたいが、数日に一回でもいけないことはない。なお、寒い時期だと水道水も冷たいので、交換時は25℃程度に温めてあげたほうがよい。

温度計

ヘビを飼うのが初めてなら、ホットスポットとクールスポットにひとつずつ欲しい。湿度計もあればなおよし。温度計に湿度計も備わった商品もある。

とにかく温度はヘビの生命線である。とくにコーンの不調はほとんどが不適切な温度管理が原因である。

他にこんなものも

・照明

ヘビ自体には照明は必須ではない。しかしながら、初めてヘビを飼う場合、まずは個体をちゃんと見ることが重要である。怪我をしていないか、ダニが湧いていないか、他になにか妙なところはないか。念入りな観察による早期発見こそ、トラブル解決の鍵である。そのためにもよく見えるようケージ内を明るくしたほうがよい。

照明は熱帯魚用の1灯式でかまわない。昼行性のトカゲのような紫外線も必要ない。

朝点灯して、夜消灯する。見るときだけ点灯するのはかえってストレスになりかねない。

・ピンセット

餌をあげるさいのマストアイテム。金属製だとヘビが飛びついてきたときに先端で口内を怪我するかもしれないので、竹製のほうがいいかも。

・流木

実はコーンは木登りが得意である。全身の筋肉を使う立体活動は運動不足解消にも役立つ。適当な流木を1本立てかけておけば、夜な夜な大喜びで木登りするコーンの姿を拝めるだろう。

餌やり

日ごろ世話をすることがあまりないヘビ飼育において、最大のイベントといっても過言ではない餌やり。個体ごとの個性が最も強く表れるのもこの瞬間である。ヘビとの真のコミュニケーションの時間でもある。

餌はマウス、つまりハツカネズミだけで問題ない。マウスはヘビにとって完全栄養食である。これだけで累代飼育できる。つまりマウスだけで、終生飼育のみならず、繁殖して生まれた子供たちも育て上げられるのだ。

マウスは冷凍されたものが各社から販売されている。ヘビを売っているショップにはまず間違いなく置いてあるだろう。当然、冷凍庫で保管するわけだが、同居人がいる場合おそらく許可してもらえないだろう。土下座してもダメなら、冷凍餌専用に小型の冷凍庫を買ってしまうのが手っ取り早い。

マウスはヘビの大きさに合ったサイズを選ぶ。

ピンクマウス

生まれたてのマウス。まだ毛が生えてないので初々しいピンク色。目も開いていない。

ピンクマウスもS、M、Lなどとサイズ分けされている。

ファジー

毛が生え始めたかな? というサイズ。ピンクのLとあまり変わらなかったり。

ホッパー

これくらい育ったものはぴょんぴょん跳ねるため、こう呼ばれている。

アダルト

ホッパーよりさらに育ったもの。アダルトのなかでもS、M、L、LLなどとサイズ分けされている。

リタイア

種親として使われたあと、生産性の落ちた個体。鶏でいう廃鶏。脂肪分が多いともいわれている。

あげかた

サイズとしては、ヘビの胴体のいちばん太い部分と同じくらいの太さのマウスが標準である。

冷凍されているマウスを解凍して与える。解凍の方法はいくつかある。

まず、電子レンジの解凍モードで解凍する方法。温めすぎると生卵をチンしたときのようにマウスが爆発して庫内がスプラッタになるので注意。念のためタッパーに入れて蓋をしておこう。同居人がいる場合はまず許してもらえないのが難点か。

タッパーに水を張ってそこに放りこんでおくという手もある。手間もコストもかからない。

ぬるま湯につけてもいい。煮てしまうとマウスのタンパク質が変質してしまうため、せいぜい40℃くらい、もしくは人肌くらいがいい。

「マウスを直接水に浸けたら匂いが洗い流されてしまう。マウスを袋に入れた状態で水なりぬるま湯に浸けるべきだ」という意見もある。匂いが少ないと反応しない個体もいるかもしれない。一方で、「ちょっとくらい濡れていたほうが呑みやすい」という主張もある。

コーンは個体によってわりと好みが異なるので、ご自分の都合と、飼っているヘビの性格と擦り合わせて、ベストな方法を模索していただきたい。だいたいは直にぬるま湯に浸けて温かいうちに与えれば食いつくはずである。

いずれにせよ、解凍するときはマウスの芯までしっかり解凍できていることを確かめる。解凍が不十分だとヘビが吐いてしまう。

与えるときはピンセットを使う。マウスのケツを挟んで、頭をそっとヘビの鼻先に寄せていく。このとき急な動きをするとヘビが怯えて餌どころではなくなるので注意。ヘビが舌を頻繁に出し入れしはじめたら、餌に興味をもった証拠。そのままじっとしていると、目にもとまらぬ神速で飛びついたり、あるいは吻先をマウスに押しつけて自身の口をこじ開けるようにして呑み始めたりと、個体ごとの流儀で食事に入る。

初めて給餌するときは、とりあえず1匹だけ与える。ヘビが餌を食べさえすれば飼育は8割成功したようなもの、とよくいわれる。逆にいえば飼育になにか問題があればヘビは餌を食べない。気に入らない環境で餌を食べるくらいなら彼らは餓死を選ぶ。

ということで、最初の給餌は食べるかどうかを確認する作業である。ヘビに「この新居いかがですか」とお伺いを立てるわけだ。餌を食べてくれたら、それはヘビがあなたのケージを気に入ったと言っているということである。給餌はヘビとのコミュニケーションといったのはこういう意味である。

食べ始めたら、刺激を与えないようそっとしておく。

後日、ぶじに糞をしたら、次は5匹くらい解凍して、食べるだけ与えてみる。もういらないとそっぽを向いたら、次回からはその食べたぶんの8分目くらいの数でいい。常に限界まで満腹にしなければならない生き物でもない。

忘れてはならないのが、ヘビは日々成長しているということだ。最近餌が楽に呑めるようになったなと思ったら、空腹時の胴体の太さを確かめて、マウスを適宜サイズアップさせていこう。

餌やりの頻度だが、かなり個体差がある。個体差ばっかりじゃねえかといわれそうだが実際そのとおりなのでしょうがない。基本としてはピンクを食べているような時期は糞をしたら餌という感覚、ホッパーあたりを食べ出したら週一くらいでいいと思われるが、ヘビにもその時々で気分というものがある。とくに異常もないが「今日はあんまりおなか空いてないから」という理由で食べないこともある。脱皮前は食べないという個体もいれば、脱皮前でもお構いなく食べる個体もいる。

温度と水さえちゃんとしていれば、幼体なら2週間、成体なら1ヶ月は絶食してもびくともしない生き物なので、餌を食べなかったり、前回より食べる量が少なかったとしても、神経質になることはない。食べなかったマウスは再冷凍すると品質がガタ落ちするのでもったいないが廃棄しよう。こういうとき、ほかにマウスを食べられる爬虫類を飼っているとそちらに処分をお願いできる。

ヘビが拒食したら、まず温度を確かめる。これといって問題がないなら、とりあえず数日様子を見る。それまでコンスタントに食べていた個体なら、いつのまにか自己解決するだろう。気まぐれで食べないだけということも全くないわけではないのだ。

吐き戻し

食べたはいいがなんらかの原因で消化が遅れた場合、体内で腐敗してしまうのを防ぐため、餌を吐き戻すことがある。

まず、吐いたからといってあわてて給餌しないこと。ヘビの胃酸は丸呑みした獲物を毛皮も骨も溶かしつくすほど強力である。その胃液ごと吐くのだから食道や口へのダメージは大きい。ダメージを負ったまま食べさせると感染症を引き起こすかもしれない。また、吐いた原因が解決できていない場合、食べてもまた吐いてしまう結果につながる。嘔吐を繰り返すとやがては拒食するおそれもある。最悪の場合は衰弱死する。吐いたら最低1週間くらいは給餌しないほうがいいだろう。

前述のとおりヘビは絶食くらいでは簡単に死んだりしない。吐いた原因を突き止め、解決し、そのあいだにヘビには吐き戻しのダメージを回復してもらう。

吐き戻しの原因のトップは低温である。消化器官を動かすのに必要な温度が足りなかったため、消化が腐敗に追いつかなかったのだ。温度を確かめ、ホットスポットですら寒い場合は保温器具を見直し、必要なら追加する。

パネルヒーターでお腹だけ温めるのではなく、ケージ内で呼吸する空気も暖かくなくてはいけない。暖突や保温球で空気を加温しよう。

いっそエアコンの暖房を1日中つけて部屋ごと加温する方法もある。多数の爬虫類を飼育している愛好家はエアコンで部屋ごと温度管理していることが少なくない。エアコンを使う場合は暑くなりすぎないことと、乾燥に注意。

次に、給餌直後のハンドリングや衝撃で、ヘビを怖がらせた、あるいはびっくりさせたのかもしれない。ヘビに餌を与えた日とその次の日くらいは極力そっとしておこう。

マウスの解凍が不十分だったのかもしれない。解凍時は、指でマウスの腹と背中を押して、冷たい部分がないか入念に確認しよう。

なお、ストライプ系やブラッドレッド、ブリザードあたりのモルフは、なぜか妙に胃腸が弱く、おなじサイズの他のモルフなら問題なく消化できる量の餌でも吐いてしまうことが多い(そのくせ食べることは食べるのでタチが悪い)。これらのモルフを飼う場合は、小さめの餌を少なめに、糞をしたら新たに与えるというデリケートな管理が必要となる。よって、初めてのヘビ飼育でストライプやブラッドレッドやブリザードは避けたほうが賢明である。

脱皮

ヘビは脱皮する。だれもが知っているがその神秘的な瞬間を目にすることができるのは、ヘビ飼育者の特権である。

ヘビは脱皮が近づくと、たいていは1日中じっとして動かなくなる。何日かすると体色がくすんできて、やがて眼が白濁する。

目の色が戻ったら、もうじき脱皮が始まる。

初心者のうちは眼が濁るまで脱皮の兆候に気づけないだろう。慣れてくるとスノーのような白っぽいモルフでも体色の変化でそれと気づけるようになる。

脱皮自体は10分かそこら、長いものでも1時間で完了するので、実際に脱ぐ瞬間を目の当たりにする幸運に恵まれたら、じっくり観察させてもらおう。

そして、脱皮直後のヘビは色彩が最も瑞々しく美しい。

ちなみに、ヘビは目まで脱皮する。

脱皮はヘビの健康のバロメーターでもある。やせすぎていたり、脱水気味とかケージが過度に乾燥していたらきれいに脱げずに失敗する。見事に一本脱ぎしてくれると飼い主も嬉しくなるものである。

脱皮不全

きれいな一本脱ぎにならず、体に皮が残ってしまう状態を脱皮不全という。放っておくと皮が乾燥して縮み、しめつけて、壊死を引き起こすことも。ヘビが脱皮したら抜け殻を観察して、どこか欠けたところはないか確かめよう。

脱皮不全が起きたら、飼育者が脱がしてあげなければならない。適温の水を張った容器にヘビを入れて(溺れさせないように!)、皮をふやかしてから優しく剥いでいく。

脱皮に失敗した場合、皮が残りやすいのは尻尾の先。これを残しておくと壊死した尻尾の先端が腐ってポロリと落ちる。一本脱ぎしているようでも、尻尾に皮が残っていないか確認する習慣を心がけよう。

ハンドリング

ヘビは触ることのできる爬虫類である。しかしほとんどの人はヘビをどう触っていいかわからないはず。ハンドリングの極意は「習うより慣れよ」である。

ヘビは小さい時期ほどキレやすい。捕食者であるヘビも、子供のうちはむしろ食べられることのほうが多い弱者だからだ。成長して体が大きくなると精神的に余裕が出てくるのか摑んでも咬みついたりはしなくなる。ハンドリングはそこそこ育ってからにしよう。実はヘビは小さい個体より大きいほうが保持しやすいのだ。小さいと指の隙間を素早くすり抜けてしまうし、力加減もどうしていいかわからないだろうから、あれよあれよと言っている間に逃げられてしまう。これが大きめの個体だとしっかりと持てる。

ヘビをケージから出すときは、そーっと手を近づける……これはNGである。ヘビにとって自分にそーっと接近してくるものは天敵である。ヘビの胴体を優しく、それでいてさっさと摑んで出す。ヘビにいま自分がなにをされているのか反応するひまを与えないのがコツ。だからといって素早く出そうとしすぎてヘビの頭とかをぶつけたりしないように。

「ヘビは首を摑むもの」と思い込んでいる人は意外と多い。自分に置き換えてみるとわかるだろうが、首を摑まれて嬉しいわけがない。あと、尻尾付近を触られるのもヘビは嫌がる。あなたも尻をナデナデされたら嫌だろう。ヘビを摑むときは胴体にしよう。

ヘビがいちばん嫌うのは落下である。見ての通りヘビには手も足もない。つまり落ちたら受け身がとれない。ヘビにとって落下は死を意味する。だから不安定な持ち方をされると不安になって暴れるし、ひどいときにはハンドリングそのものを嫌がったり、あなたを敵と認識して、拒食するようになるかもしれない。ヘビを持つときは、ケージから持ち上げたらすぐに腕に巻きつけたりして、ヘビの身体全体が安定するようにしてあげよう。

ヘビのハンドリングで重要なのは「怖がらないこと」である。飼育者側が怖がっているとヘビを持つ部分が少なくなる→安定しないのでヘビが暴れる→飼育者がよけいに怖がるという悪循環になる。コーンはよほど機嫌が悪くないかぎりは人を咬まない。絶対ではないが、ほぼ咬まない。そんなわけで、「咬めるもんなら咬んでみろ」と、どーんと構えてハンドリングしたほうがうまくいきやすい。

繁殖

コーンスネークはヘビどころか爬虫類のなかでも最も繁殖させやすい動物である。これも世界中で飼育され次々と新しいモルフが誕生している理由だろう。どれくらい繁殖が簡単かというと、初めてヘビを飼うという人が、まず1匹買って、コーンにのめりこんで、ショップでもう1匹買ってきて、その2匹をおなじケージで飼育していたら、いつのまにか卵が産まれていた、ということがあるほど。

偶然に頼らず意図的に繁殖させる場合、最も重要なのは種親である。オスは1歳半過ぎていれば使えるが、問題はメス。なにしろメス親は栄養満点の卵を作らなければならない。しっかりと成育した個体でないといい卵にならないし、最悪の場合、エネルギーを卵にもっていかれて産後に衰弱死することもありうる。とにかくメスは順調に育った3歳以降のガッシリした健康的な個体を選ぶ。人間の出産もそうだが、ヘビの産卵も命がけなのである。

雌雄を判別するには、セックスプローブを使用するのが確実。

怪しいプレイの道具ではない。これを総排泄腔に挿入して、なんの抵抗もなくスルスル入っていくのがオス、半分くらいしか入らないのがメスである。ショップ店員やベテラン飼育者に使い方を伝授してもらうといいだろう。

ある程度育った個体で、そこそこ値の張るモルフなら、最初から雌雄を明記して販売されていることが多い。プローブを使うのが怖い人はオスかメスか判別された状態で売られている個体から選ぶのも手である。

クーリング

コーンスネークは冬に冬眠し、春になったら目覚めて交尾して産卵。卵は初夏に孵化する。飼育下でもこのサイクルを再現するのが基本である。

2匹をいっしょに飼っていたら産卵していた、ということもあるくらいだから、冬眠は不要の場合もあるが、繁殖はオスとメス双方が発情期に入らないと実現しない。人間とかいう類人猿は一年中いつでも交尾と繁殖が可能なのでいまいち想像しにくいかもしれないが、地球上のほとんどの動物は一年のうち限られた日数の発情期にしか繁殖できないし、交尾もしない。そしてコーンスネークも例外ではない。

そのため、オスとメスを同時に発情期に入らせるためには、冬眠、つまりクーリングでヘビの体内時計をいったんリセットしてやるのが、いちばん確実なのである。

冬眠に向けた準備

まず冬眠をはじめる時期を決める。仮に1月初頭から冬眠させるとするなら、11月中頃から餌を止めて、体内に残っている糞を出し切らせる。最低でも胃に内容物が残らないようにすること。これ以前の夏~晩秋まではたっぷり餌を与えて、冬眠のための体力をつけさせておく。

いざ冬眠

12月中旬くらいになったら、徐々に温度を下げていく。暖房を使わない部屋、あるいは廊下にケージを移動し、保温器具に接続したサーモスタットの設定温度を数日ごとに下げると楽。1週間ほどかけて12℃前後まで落とそう。冷蔵庫みたいに寒いとさすがに凍死するし、ヘビが活動できる温度でもダメ。ワンルームの住まいだと暖房で玄関まで暖まってしまうかもしれないが、たいていの物件で玄関は安定して寒いはず。しかし、日本はおなじ都道府県でも山間部と平地ではまるで気候が異なるという場合がままあるので、「関東以南なら玄関とリビングの間の廊下あたりがちょうどいい」などとひとくくりにできない。ご自分でいい塩梅の場所を見つけていただきたい。

ふだんは複数飼いしている場合でも、冬眠は個別に行なわせる。ケージには広葉樹マットを厚めに敷いて潜れるようにしておく。

また、コーンは冬眠中でも水を飲む。クマの冬眠と違って、コーンの場合は、クールスポットで代謝を落としている状態の延長と考えたほうがいいのかもしれない。厚く敷いた広葉樹マットが入らないような水容器を設置してあげよう。

暗くしてヘビを落ち着かせるため、ケージには布をかぶせる。

冬眠中は基本的にそっとしておく。水が干上がってないかたまに確認する程度にとどめよう。ヘビを刺激しないよう慎重に行なうこと。

目覚め

2か月もしたら、ケージを室内に戻し、また1週間かけて通常の飼育温度にまで上げていく。小さめの餌を与えて様子見をし、なんの問題もないようなら通常飼育に切り替える。そうこうしているうちに脱皮の兆候が見えてくるはず。そうなればいよいよ交尾のチャンス到来だ。

交尾

冬眠明け最初の脱皮直後のメスはフェロモンを放出しているらしく、オスがやけに興奮する。そのためこのタイミングでオスを投入するとうまくいきやすい。ちなみに、コーンには縄張り意識がないので、メスのケージにオスを入れても、その逆でも構わない。

たいていはオスがすぐさまメスにアプローチして交尾を始めるが、どうにもその気がない場合はいったん分けて、翌日また試してみる。何回かやってみて交尾しないなら、一晩そのままにしておこう。

交尾が成功していれば1ヶ月ほどでメスの腹部が膨れてくる。もしその気配が見えないようなら、またオスとペアリングさせてみよう。冬眠後のオスは3か月くらいは発情している。焦らず気長にいこう。

抱卵

交尾後、メスは異様に食欲が増進する。食べるだけ食べさせていい。交尾後1ヶ月ほどでメスは腹部が急激に膨満してくる。加えて、あれだけ餌を食べまくっていたのにパタッと拒食する。食べる個体もいるだろうが、その場合は小さめの餌を少なめに与えるにとどめる。そして脱皮して1週間くらいすれば産卵がはじまる。

産卵床

脱皮したら、水容器は撤去したほうがよい。水容器に産卵してしまう可能性があるからだ。

かわりに産卵床をケージに導入する。産卵床といっても大仰なものではない。100円ショップのタッパーでじゅうぶん。蓋にヘビが楽々出入りできる穴をあけて、中には湿らせた水ゴケを敷き詰める。湿らせる目安としては、水ゴケをやや強めにぎゅっと握ったときに水が滴るくらいがよいが、あまりシビアなバランスは要求されない。産卵床をケージ内に入れておけば、まず、メス親は素直にそこへ入って産卵してくれるだろう。

産卵と孵化器

産卵の瞬間はなかなかお目にかかれない。気がついたらメス親がとぐろを巻いて卵を抱いているという感じである。

↑コーンスネークの貴重な産卵シーン。

ぶじ産卵したら孵化器を用意する。孵化器も産卵床とおなじようにタッパーと水ゴケでいい。産卵床をそのまま孵化器に使ってもいいのだが、産卵と同時に糞をすることがよくあるので、卵を孵化器に移せる準備はしておいたほうがいいだろう。蓋にはキリで小さな穴をいくつかあけておく。

卵の扱いについて注意がひとつ。それは天地を逆さまにしないこと。

爬虫類の卵は、卵黄の上に乗っかる形で胚が発生する。だから逆さまにされると胚が卵黄に潰されて死んでしまう。あなたが卵を見つけたときにはすでに発生が始まっているかもしれない。卵を移すさいは天地無用が鉄則である。

わかりやすいように卵にマジックペンで印をつけておくのがベター。日付を書いてもいい。印を常に上にして扱うわけだ。

卵が意外とふにゃふにゃしていて驚くかもしれない。殻というより皮である。これ触ってもいいのかと不安になるだろうが、けっこう丈夫なので、潰したり上下を逆さまにしたりしないかぎりは大丈夫。おそるおそるつまんでいるとかえって落としてしまいやすいので、さっさと移した方がいい。

孵化器は28℃くらいに保つ。水ゴケが乾燥しないよう留意しよう。

キャンドリング

卵をライトで照らすと中身が透けて見える。これをキャンドリングという。

有精卵は内部に血管が走っていたり、成長が進んでいるものはボウフラみたいな仔ヘビがピチピチ動いているのが見えたりする。

↑血管が見えるのは有精卵。成長が楽しみである。

無精卵だと黄色一色だったり、光を透過しなかったりする。そういう卵は取り除く。有精か夢精か判別がつきにくかったら、ひとまず有精卵から離しておいて、表面がどす黒く変色しはじめたら廃棄しよう。

孵化(ハッチ)

2か月くらいすると孵化がはじまる。殻を自力で破いて出てくるわけだが、顔を出しては引っ込めるのを2日くらい繰り返すものも多い。長いものでは殻に切れ目さえ入れないまま4日も5日も出てこない個体もいる。そういう卵はよく切れるカミソリで切って生死を確認する。生きているならそのまま放っておこう。いずれ出てくる。

孵化したばかりのヘビをハッチリングという。ハッチリングは極めて乾燥に弱い。孵化したあともそのまま孵化器でキープしよう。あまり水は飲まないようだが加湿器の役割も果たすので浅い水入れを設置してもよい。

やがて1週間もすると目が白くなって脱皮の兆候が見えてくる。このタイミングで個別管理に移行する。小さめのプラケースがちょうどいいだろう。床材もやはり湿らせた水ゴケが無難。

生まれて初めての脱皮(ファーストシェッドという)をすませ、そこからさらに1週間、つまり孵化からだいたい2週間くらいは、体内に残った卵黄の栄養分でことたりる。卵黄を吸収しきるまでは餌を食べようとしない。ファーストシェッドから1週間を目安に給餌をはじめてみよう。

ハッチリングの拒食

ハッチリングには必ずといってよいほど拒食する個体がいる。ファーストシェッドから1週間以上経つのに餌を食べようとしない個体には、強制給餌が必要になる。要は、無理やり食わせるのである。

ハッチリングの大きさにもよるが、ファジーやホッパーから引っこ抜いた手か足、あるいはピンクマウスのSSを用意する。次に拒食個体の首根っこを親指と中指で挟み、人差し指をヘビの頭の上に乗せる。で、餌を口に押しこむ。抵抗するだろうが呑ませる。咥えさせたら、あとはそっとケージに戻せば自分で呑みはじめるはずだが、呑まない場合はこちらが喉の奥まで押しこむ。とにかく餌を食わせて、眠っている消化器官を動かしてやるのだ。どうやらハッチリングの拒食は、ある程度育った個体の拒食と違い、そもそも餌を食べること自体を知らないらしく、ゆえに放っておいても改善されないことが多い。強制給餌で「餌を食べて、糞をする」というサイクルを作ってやるわけだ。

しかし、よほどめずらしいモルフや、デザイン交配で狙いどおりのモルフの作出に成功した場合ならともかく、生まれた全個体を最後まで飼育できるかどうか、よく考えてみていただきたい。拒食するハッチリングはもとより淘汰される運命だったともいえる。自力で餌を食べられる個体だけ育てるという方針も、決して間違いではない。そのあたりは個々の飼い主の判断に委ねたい。いずれにせよ、「強制給餌してでもハッチリングはすべて育て上げねばならない」とか、「自力で食べられないハッチリングは自然界では淘汰されるのだから強制給餌は間違っている」などという押しつけは、厳に慎みたいところである。

関連動画

関連項目

  • 動物の一覧
    • 爬虫類
  • ボールパイソン
  • フトアゴヒゲトカゲ(コーンスネークに並んでペットとしてポピュラーな爬虫類)

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