シャイニング (映画)とは (ヒアズジョーニーとは) [単語記事]

RED RUM　RED RUM ・・・・

シャイニングとは、スタンリー・キューブリックの映画である。

お概要さまだよ～

キューブリックが生涯監督した全16本の映画で唯一のホラー映画。彼の作品では最後から3番目の作品にあたり、この作品以降は約20年で僅か2作品しか撮らなかった。

最初は146分あった作品だが、このバージョンはキューブリックと親しかった大学教授のみが現在も所有しているらしく、全長版を観る事は今のところ不可能。次に全米で公開された時にはラストが3分削られて143分になり、これが今のところの決定版となっている。さらに国際公開版として全体的な展開をスピーディにまとめ、説明的なシーンをカットして119分となった。日本で最初に劇場公開されたのも119分バージョン。この119分版がキューブリックの最終意思とされている。日本で143分バージョンが見られるようになったのは、ビデオが発売されてからである。

ちなみに、おすぎ曰く、143分の方が面白いので初心者にオススメだそうな(この記事書いた人も同じ。異論は認める。)
違いが知りたい人はこちらを参照してみよう。

原作は『キャリー』『スタンド・バイ・ミー』で有名なスティーヴン・キング。
処女作『キャリー』で見られた超能力の要素にホラーを加えるという部分がより明確になっているが、実は原作と映画だと大筋は同じながらも結末をはじめとして大きく異なる部分が多いため、キング自身は映画版のことはあまり認めていない(事実、後年キング自身が監修した真のシャイニングがテレビドラマとして作られている)。

しかし、映画版はそんな原作者との対立などものともせず、大ヒットを記録。キューブリック作品の中では娯楽性に舵を切ったこともあって、ラジー賞にノミネートされるなどしたものの、当時からジャック・ニコルソンを筆頭とした俳優陣の狂気に満ちた演技(しかし、嫁役が一番怖いなんて意見も)や数十回のリテイクは当たり前だったという風景描写は好評を得ており、原題でも作品そのものの評価は依然として高い。特に彼の死後からは『ホラー映画の偉大な古典』としてアルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』と共に並び称されるまでになっている。

一部では、本映画は2部構成ではないのか?という説がある。ジャックが迷路を見つめて家族に向かって睨みを利かせた後のシーンからは「ジャックの描いた小説を映像化したものである」という見解である。

2014年にはこの映画の謎を検証するドキュメンタリー「ROOM237」が公開されているが、その評価には賛否ある。

狂気の完全主義

この映画で一番有名なものといえば、ギネス記録にまでなったというとんでもないリテイク回数であろう。

この映画からステディカムが本格導入され、ビデオチェックが可能になったことで、撮った映像をすぐに見られるような環境が構築できたキューブリックは、その常軌を逸した徹底ぶりがさらに進んでいった。

オールバックホテルは、外観以外は全部イメージどおりになるようにセットを作らせ、昼間のホテル内のシーンは太陽光と同じだけの70万ワットの光を準備させ、その光量だけで自然光による撮影を再現、とにかくSFXを徹底的に廃して実写に拘り、本物の山奥でロケをしたかのような映像となった。

しかし、このぐらいはまだ序の口。これからが、本当の病的完全主義だ。

通常シーンでも、40テイク、50テイクのやり直しは当たり前で、俳優の演技が自然になるまで徹底的なまでに追い込んでいき、そして完璧な自分のイメージどおりになる演技を引き出すまで撮影をやめることが無かった。

ダニーがハロランに「シャイニング」の話を聞くシーンは148テイクが費やされ、子役は平気だったが、仕舞いにはハロラン役の方が泣き出してしまう始末だったという。同じく、ジャックがストレス発散のためにボールをぶつけているシーンも、思い通りにボールが弾むまで数日撮影が続けられてようやくOKテイクが出た。このシーン、僅かワンカットなのに・・・

ジャックの狂気を確信したウェンディがジャックをバットで殴るシーンも思うようにいかなかったため、127テイクが重ねられた。
さらに、この映画で一番有名で、ポスターやDVDのジャケットにもなっている「お客様だよ～」のシーンは僅か2秒ほどのシーンでありながら、190テイク以上が重ねられ、アドリブで出たあのセリフと共にようやくOKになったのがあの完全に頭のネジが外れてしまった男の顔である。ニコルソン、ある意味本当に気ィ狂いそうだったのかもしれない。

エンディングでは、逃げ延びた母子と支配人のアルマンが再会して黄色のボールを受け取るというシーンがあり、これにも思うとおりにボールが弾むまで132テイクが費やされたが、このシーンは最終的にカットされた。

演技以外でも、冒頭から幾度となく登場する血の海がエレベーターから溢れ出すシーンは、3テイクだけだが、通常撮りなおすようなシーンではないため、リテイクの度に清掃するのが大変だったそうな(撮影完了まで9日もかかった)。一方で2テイクほどで済んでしまったシーンもあり、それには逆にスタッフが唖然としたらしい。また、印象的でトラウマにすらなりそうな双子姉妹のシーンは、実は双子ではなく、『双子のようによく似た』姉妹が使われている。モチーフは「1967年、ニュージャージー・ローゼル　一卵性双生児」という写真から。

こうした監督の異常な拘りによって、撮影は遅れに遅れて11ヶ月もかかってしまい、エルストリー・スタジオで撮影予定の映画が延々と待たされるハメになった。その中にはウォーレン・ベイティ『レッズ』、スティーヴン・スピルバーグ『レイダース失われた聖櫃』も含まれる。

ジャックとのラストバトルになる巨大迷路のシーンは、ダニー役の子供に自由に逃げて貰うことでリアリティを引き出したが、本当に迷子になるスタッフが続出。無線で居場所を確認しながら撮影を行った。チェスが趣味で頭がキレるキューブリックはそれを鼻で笑っていたが、自分もその迷路で迷子になった。

ここまでの完全主義を通しながらも、オープニングではヘリコプターのローターや影が映り込んだままになっているというミスがあるが、これは本来映っていないはずのもので、スタンダードサイズ4:3の画角で発売された旧DVDのみで見られるものになっている。