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ファクトチェック

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ファクトチェックfact check, fact-check)、またはファクトチェッキングfact checking, fact-checking)とは、「事実確認」「真偽検証」を意味する言葉である。

概要

単語の意味だけを取れば「ファクト (fact)」すなわち「事実」を、「チェック (check)」すなわち「確認」することを広く指すことになる。しかし通常「ファクトチェック」と言う際には、何らかの情報に対して「真偽を検証する」すなわち「裏を取る」ことを指すことが多い。

ファクトチェックがなされて、情報が「虚偽」「ミスリード」「根拠無し」などであったと判明するケースが記憶に残りやすいので、「嘘やごまかしを見破ることだ」と思っている人も居るかもしれない。

しかし、ファクトチェックの結果「真実であった」と判明するケースや、「真実と虚偽が混ざっている」「判定するための根拠が不足している」という中間の結果となるケースもある。つまり「ファクトチェック」とはあくまで「検証」であり、「嘘だ」と決めつけてかかるものではない。

この用法での「fact check」と言う言葉はおそらくアメリカ合衆国発のものであるようだ。アメリカ合衆国では報道機関が「ファクトチェッカー (fact checker)」という専門の職員を雇用し、報道する前の事実確認/真偽検証作業を行わせる文化があった。

日本でもおそらく2016~2017年頃に有名となったとみられる。Googleトレンドで確認すると、その頃に「ファクトチェック」という言葉の検索数が増加している。また、「ファクトチェック」の記事の初版がWikipedia日本語版に作成されたのもまた2017年であった。その後、徐々に定着しつつある。

事前のファクトチェック

たとえば、まともな報道機関であれば報道を行う前にある程度の「ファクトチェック」を行って「裏を取って」から記事にすることが求められる。企業などが発表を行う際にも然りである。

この場合の「ファクトチェック」はその団体・組織内での、発信する情報の質を高めるためのクオリティコントロールのようなものとも言える。

事後のファクトチェック

一方、「既に発表され世の中に出回っている情報」の真偽を検証する「ファクトチェック」も行われている。報道機関やニュースサイトの報道、企業の発表内容、著名人の発言、SNS等で出回っている噂話、などなど、様々なものがファクトチェックの対象となりうる。

そういった「出回った情報」のファクトチェックを専門に行う団体やウェブサイトも活動している。日本の「ファクトチェック・イニシアティブ」、アメリカの「FactCheck.org」「PolitiFact」「Snopes」などなど多数存在している。

また、メディアなどがファクトチェックの特設ページや特設サイトを設ける例もある。例えば国内では新聞社「毎日新聞」ニュースサイト「BuzzFeed News」はファクトチェック特設ページを設けている。アメリカでは、大手通信社のAP通信ニュース専門テレビチャンネルCNNのサイトにファクトチェック特設ページがある。フランスAFP社は「AFP Fact Check」という特設サイトを設けている。

InFact / インファクト」など、「ファクトチェックを通じた新しい報道」の道を探るとするメディアが新しく発足したりもしている。

それらファクトチェック機関の国際団体として「International Fact-Checking Network(国際ファクトチェックネットワーク)」といったものもあり、「非党派性と公正性」「様々な透明性」「明確で誠実な訂正」など、ファクトチェック団体が順守すべき綱領を定めている。その綱領に合致するかを審査することで、信頼できるファクトチェック団体か否かを判断しているという。

ファクトチェックに対する反発

ファクトチェックがなされて何らかの情報について「虚偽」「ミスリード」「根拠不明」などと判定されたときには、その情報を発信していた人々や、その情報を信じていた人々からは反発が上がることもある。

「そのファクトチェックの手順にはこういった誤りがある」という具体的な反論での反発もあるが、「信じずに検証するなんて!」と「ファクトチェックすること自体」を非難しているケースも少なくない。

また、ファクトチェックされた結果「誤った情報であった」と示されると、かえってその情報を強く信じ込むようになる効果(「backfire effect」)が生じる例があるとも言われる。オカルト分野で観察される、「トゥルー・ビリーバー・シンドローム」に近い現象と言えるかもしれない。

あなたもファクトチェックを

上記のように報道機関や企業は内部でファクトチェックを行っているし、世の中に出回っている情報についてファクトチェックを行う専門団体も存在している。

であれば、単なる個人はファクトチェックを行えないのか?と言えば、そういうわけでもない。ある程度のコツさえあれば、プロの領域には程遠いかもしれないが、ある程度のファクトチェックは個人でも行える。

SNSなどで情報をカジュアルにシェアすることができる現在では、個人でもある程度のファクトチェックを行うことは「望ましいこと」「行うべきこと」であるとも言えるだろう。

例えばTwitterで自分の元に届いた情報について「リツイート」ボタンをワンタップするだけで、フォロワーに対して同じ情報をシェアすることができてしまう。

あなたがTwitterを利用しているならば、あなたに「ファクトチェックしよう」という気持ちが欠片も無いならばいつかデマや不正確な情報をフォロワーにもたらしてしまうだろう。

実例

それでは、「既にデマであったと明確に判明している画像」を例にして、ファクトチェックの重要さを実感してみよう。

「アウトブレイク後に武漢市民が移動した痕跡を元にマップ化」という説明文が付けられたり、「武漢人が移動した経路を集計した地図 2019コロナウイルス地図」という説明文が重ねられた、海岸線の一部が見えなくなるほど膨大な本数の赤い線が世界地図に引かれた画像。2020年2月の中旬から下旬頃に、日本語圏のまとめサイトやTwitterなどで流布され、Twitterでは多くの「リツイート」がなされた。以下に、多くの「いいね」や「リツイート」を集めたツイートを掲示する。

まず、ツイート主を見てみよう。1つ目のツイートをしている人物は3.9万人(2021年1月4日現在)もフォロワーがおり、2つ目のツイートをしている人物は5.6万人(同上)もフォロワーがいる。「こんなにフォロワーが居る人物であればそのツイートする情報も信頼できる」と判断したくなってしまうかもしれない。

実際にツイートに付けられているリプライも、このツイートを信じているものが多い。「こんなに多くの人が信じたツイートならば信頼できる」と判断したくなってしまうかもしれない。

1つめのツイートは情報源のURLを掲示している。そのURLの先を訪れてみると、海外情報を翻訳して紹介するブログ「劇訳表示。」の一記事であった。

その記事では下部に「dailymail」と、情報源としたサイトへのリンクを掲載している。このリンクを辿ると、リンク先はイギリスの有名な新聞「Daily Mail」(デイリー・メール)のサイト「Daily Mail Online」であり、確かに翻訳されたとおりの内容や問題の画像が載っている。

海外の有名な新聞社が報じているのならば信頼できる」とここで安心してファクトチェックを終了してしまう人もいるかもしれない。

だが、そうはいかない。「デイリー・メール」は確かに有名な歴史ある新聞社だが、何で有名かと言うと「大衆的なタブロイド紙として有名」なのだ。つまり日本で言うなら「東スポ」レベルの新聞社なのである。

そして、この「Daily Mail Online」のページが述べている内容や掲載している画像の左下に小さく描かれている「Twitter/WorldPopProject」などを手掛かりにしてさらに調べていけば大元になったツイートに辿りつき、結局この画像は「単に世界の航空航路を示すイメージ画像でした」という結論にたどり着く。詳細は以下の「BuzzFeed News」によるファクトチェック記事を参照されたい。

上記の記事内では明記されていないが、この画像の大元は「2011年時点の、世界中の3632の空港を結ぶ航空航路を画像化したもの」であり、2014年8月14日付けの以下の科学論文に掲載されていたものである。つまり2019年や2020年のものであるはずがなかったのだ。

この実例でわかるように、「多くの人からフォローされている人の言う事であってもデマの可能性がある」し、「多くの人が信用した事であってもデマの可能性がある」し、「「海外の有名な新聞社」が掲載している内容であってすらもデマの可能性がある」のだ。ファクトチェックを突き詰めて行うことの重要性がよくわかる事例ではないだろうか。

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関連項目

  • 検証
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  • 陰謀論
  • フェイクニュース
  • ネットde真実
  • インフォデミック
  • エコーチェンバー現象
  • トゥルー・ビリーバー・シンドローム

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