ボルチモア級重巡洋艦とは、アメリカ海軍で運用されていた巡洋艦のクラスである。
第2次世界大戦前にワシントン海軍軍縮条約の枠内で建造された『ニューオーリンズ』級の後継、更に開戦直前に就役した事実上の試作艦『ウィチタ』での経験を活かしつつ建造前に失効した軍縮条約の制約なしで余裕を持たせた設計に基づき建造された。
計画では24隻を建造する予定だったが重巡洋艦となったのは17隻で2隻が軽航空母艦へ転用、1隻が指揮専用艦に変更され、更に重巡洋艦5隻が対空ミサイル巡洋艦へ改造された。
なお、本級の内大戦後に就役した8隻(半分が未成)を『オレゴン・シティ』級に分類する事がある。
船体は『ニューオーリンズ』級、『ウィチタ』を上回り全長205m、全幅21mと全長なら日本の『高雄』型をやや上回り、戦艦である『扶桑』型、『伊勢』型と同等である。
排水量は基準でも1万4700t、満載なら1万7300tと同様に前述の日米重巡洋艦を上回っている。
機関出力は1万2000馬力で大型化+装甲板強化にも関わらず最高速力33kt、15㏏で1万海里と『ウィチタ』と変わらない。
アメリカ海軍の重巡洋艦の為、魚雷は装備しない代わりに3連装式20㎝砲を艦首側に2基、艦尾側に1基配置していた。
一方で副砲は建造当初から従来の単装に代えて連装式12.7㎝両用砲を艦上構造物を囲む形で6基配置し対空近接戦闘用に4連装式40㎜機関砲と単装式20㎜機関砲も多数装備していた。
また、艦尾側にカタパルトを設けて水上偵察機を最大4機を運用出来た。
因みに第2次世界大戦後に運用された艦の中には近接戦用の機関砲を連装式76㎜両用砲に差し替えた艦もいる。
1943年から就役が始まった本級は連合国の反攻が始まっていた第2次世界大戦で欧州・太平洋両戦線にすぐさま投入された。
尤もこの頃には水上艦同士の海戦は殆ど起こらない状況になっており敵航空機相手の対空戦闘か敵地への上陸時と沿岸部での味方地上部隊への支援=艦砲射撃で戦果を挙げている。
その一方、軍首脳部の司令部としての運用、要人輸送にも従事しており1945年2月にスエズ運河を構成するエジプト・グレートビター湖に停泊していた『クインシー』で時のアメリカ大統領セオドア・ルーズベルトとサウジアラビア国王・イブン・サウードの会談が行われ石油供給と引き換えにアメリカの軍事援助をサウジアラビアが受ける『クインシー協定』が締結された。
大戦終結後は復員兵を帰国させる『マジック・カーペット』作戦を経て多くの艦が予備役となったが米ソ冷戦に伴って整備・改修して復帰が始まり朝鮮戦争、ベトナム戦争に従事した。
また、戦艦には及ばないものの大口径砲を備えた威容と指揮設備から艦隊旗艦を務めることも多かった。
それでも後述する改造型を含めて次第に旧式化が進んだ結果、1980年代に全艦が退役した。
1950年代に2隻が改造され後部主砲を撤去+艦上構造物も一部改装して艦対空ミサイル『テリア』用連装発射機を2基+レーダー等関連設備を艤装した。
しかし1960年代には能力向上が見込めなくなった事からミサイル関連設備を撤去して艦首側の火砲のみでベトナム戦争での火力支援に従事後、1970年に退役した。
1960年代に3隻が改造された。
このクラスは1隻のみの建造となった原子力ミサイル巡洋艦『ロングビーチ』に続く『万能艦=オールミサイル艦』として以下の改造が施された。
| 艦上構造物 | 全てを交換し煙突もマストと一体化した マック式として関連電子設備を大量追加 した。 艦橋も含めて高層化した事から重心の 負荷を下げるためアルミを多用した。 |
| 艦対空ミサイル | 艦首と艦尾側に『タロス』用、艦橋両舷 に『ターター』用連装発射機を各2基 艤装した。 |
| 対潜装備 | 中央部に『アスロック』8連装発射機、 両舷にMk.32短魚雷発射管を艤装した。 また、艦尾にヘリポートが設定されて 小型ヘリの運用も限定的に可能だった。 |
| 艦砲 | 前述の通り『オールミサイル艦』として 建造されたが後に連装式12.7㎝両用砲を 第2煙突両舷に2基復活させた。 |
| 運用 | 1970年代に『ターター』の性能向上に より『タロス』が持て余された事により 艦隊旗艦としての運用中心となった後、 1980年に退役した。 |
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最終更新:2025/12/21(日) 06:00
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