マーシャルアーツ(martial arts)とは、幻の格闘技である。
元々は日本語の「武芸」をそのまま英訳した言葉である。
広義的には格闘技全般を表すが、その由来からか東洋の「武道、武術」と結び付けられることが多い。
特定の流派や格闘スタイルを表す言葉ではなく、厳密には「マーシャルアーツ」という格闘技は存在しない。
日本に「マーシャルアーツ」という言葉が広まった切欠は、格闘家ベニー・ユキーデ(映画スパルタンXでジャッキー・チェンと戦った人)の発言である。
私はフルコンタクトで戦うマーシャルアーティスト(武道家)だ。
「アメリカのプロ空手協会から分離独立した世界キックボクシング協会」という出自が把握しにくかったせいなのか「マーシャルアーツ」という独自の流派の使い手と誤解され、この影響を受けて「全日本マーシャルアーツ連盟」が発足。
特徴的なパンタロン姿と共に、アメリカ式ボクシング空手は「マーシャルアーツスタイル」として認知され、タイガーマスクをはじめとしたプロレスラーのギミックとしても用いられた。
さらに劇画作家であり格闘技プロモーターでもあった梶原一騎によってこの誤解は助長されていく。
マーシャルアーツとは米軍が使う格闘術である
これらの影響を受けた世代が格闘ゲームの開発に関わったことで「マーシャルアーツ」は定義も内容も不明確なまま使い手を増やしていくことになる。
「リーボック・マーシャルアーツ」という武道の動きを導入したエクササイズが切欠となり、マーシャルアーツの名を冠した格闘技系エクササイズが多数作り出され、転じて格闘エクササイズの事をマーシャルアーツと呼ぶ向きもあるが、これも厳密には誤りである。
「リーボック・マーシャルアーツ」は単に「リーボック流武道」という名称で売り出したに過ぎない。
略称は「MA」で、格闘技能で2倍のダメージを与える技能である。
ややこしい話だが、語源である「武道」は別枠扱いで併用や混合はできない。
「MA」は素手での格闘技術全般を示す漠然とした「格闘術の心得」を指し「武道」はより詳細な格闘技能を示すらしい。
格闘ゲームには古くからマーシャルアーツの使い手が点在しているが、前述の通り定義そのものが曖昧であるため内容も千差万別である。
以下に代表的なものをいくつか例に挙げる。
初代『ストリートファイター』の敵キャラクター。『餓狼伝説』のジョー・ヒガシとは無関係。
裏マーシャルアーツ界のチャンプというよくわからない肩書きだが、上半身裸に赤い長ズボンという出で立ち、得意技がローリングソバットという点はベニー・ユキーデ自身の影響が見られる。
共に初代『餓狼伝説』から登場しているマーシャルアーツの使い手。
テリーはジェフ流喧嘩殺法とのミックス、ダックはダンスの要素を加えており独自性が強い。
『ファイナルファイト』出身のキャラクター。
『ストリートファイターZERO』に出演した際、日本で修行を積み「ジャパニーズ・マーシャルアーツ」なる独自の格闘技を体得。
格闘スタイルはほぼオリジナルでありながら「日本で体得した武術」という言葉の意味だけは忠実。
『鉄拳』シリーズのキャラクター。
マーシャルアーツの達人という触れ込みであるが、この場合は自身の名を冠した「マーシャル武術」とのダブルミーニングである。
格闘スタイルは自身のモデルであるブルース・リーの影響が見られる。
米軍が使う格闘術という説明を真に受けて、軍人の代名詞としてマーシャルアーツを格闘スタイルにしている例は多い。
定義は不明確なままなので、内容も見事にバラバラである。
中には『堕落天使』のハリー・ネスのように空手家が武術顧問であることが明確な場合もある。
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最終更新:2025/12/24(水) 06:00
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